ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

ジョセフ・クローミー「ペピック ピノ・ノワール」。難民からオーストラリアワイン界の大物に上り詰めた男の人生がすごい。【JOSEF CHROMY PEPIK Pinot Noir】

ソムリエ・田邉公一氏おすすめのU3000円ピノ・ノワール

ソムリエでワインディレクターの田邉公一氏が、自身のツイッターで当該ツイートをリツイートした全員にワインをオススメする、という凄まじい企画を実施されていた。

2020年11月18日時点で300件をゆうに超えるリツイートがされており、現在は田邉氏が宣言通りひとりひとりに丁寧におすすめワインとその理由を説明している様子がタイムライン上で確認できるという状況(応募は締め切り済)。

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ソムリエ・田邉公一氏にオススメいただいたジョセフ・クローミー「ペピック ピノ・ノワール」を飲みました。

新規ファンを獲得し、ファンのロイヤルティを高める超絶効果的なブランディング手法だと感嘆しつつ、私もちゃっかり応募させていただいたところ、比較的早めに応募したこともあり、ご回答をいただくことができた。これすっごくうれしいですね。

田邉氏がワインを選ぶ手がかりとされているのが、Twitterのプロフィール欄、そしてヘッダ画像だ。たとえばヘッダ画像に花の写真が使われていれば、フローラルな香りのワイン、プロフィール欄に好きな国や場所が書かれていればそこのワインと言ったようなイメージ(もちろん実際はもっと複雑なアルゴリズムで提案をされていると思う。あくまで概略として)。

ちなみに、現時点での私のTwitterのプロフィールはこのような感じ。

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なんていうんですかね。そのままっていうか、サービス問題っていうか、「3000円以下のおすすめピノ・ノワールを教えてください」ってほぼそのまま書いてあることもあり、3000円以下のおすすめピノ・ノワールを教えてくださった。それが、ジョセフ・クローミーの「ペピック」だ。もちろん即購入し、今日開栓とあいなった。

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生産者ジョセフ・クローミーの人生がすごい

さて、ジョセフ・クローミーはオーストラリアはタスマニアの生産者。ジョセフ・クローミーはそのオーナーの名前で、その人生は一言でいって半端ない。ジョセフが生まれたのは1930年。彼が生まれたチェコスロバキアは戦中はナチスドイツ、戦後はソビエトの占領下にあった。「ここにいては未来がない」そう考えた19歳のジョセフは、1950年、荒廃したチェコの村から、二人の仲間とともに地雷原・犬・兵士に守られた国境を越えて国外に脱出することを計画する。

苦難の日々の末オーストラリアに移住。そこで肉屋として働き、ついには自分の会社ブルーリボン・ミート・プロダクツをタスマニアを代表するブランドにまで育て上げると、1993年オーストラリア証券取引所に上場。タスマニアを代表する財界人となったジョセフは2007年、76歳にしてジョセフ・クローミー・ワインズを立ち上げると短期間で大成功を収めたというストーリーだ。

まるで90年代初頭に大ヒットして2013年に映画にもなった小説『悪童日記』の世界。ジョセフは脱出に成功し、立身出世を遂げた。しかし、ともに脱出を図った二人の仲間は失敗。一人は脚を撃たれ、一人は音信不通になったそうだ。もしそのときジョセフもつかまっていたら、いま私の目の前にあるボトルは存在していないかもしれない。歴史を学ぶことの面白さが、ワインのボトルのカタチをして目の前にあるといった気分だ。まさか田邉さん、歴史好き、調査好きである私のプロフィールを考慮してこのワインを……!?(考えすぎだが田邉氏のスキルならあり得ない話ではないと思えるからスゴい)

そんなわけで、生産者としてのジョセフ・クローミーは、南アフリカのグラハム・ベックとか、チリのエラスリスとかパターンの、実業家が本業で大成功、その資本とノウハウをワインビジネスに持ちこんでこれまた大成功というずっと俺のターンパターン。元は難民だったわけだから、人生のレバレッジの利かせ方でいえばジョセフがNO.1かもしれない。

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1930年生まれのジョセフは御年90歳。南アフリカの「グレネリー」を78歳で立ち上げて95歳の今も存命のマダム・メイもすごいが、90歳になった今も年イチペースで映画を撮ってるクリント・イーストウッドみたいなすごい人たちがワイン界にもいる。今の時代70歳くらいじゃまだ若手なんじゃないかってレベルだなあ。

ジョセフ・クローミー「ペピック ピノ・ノワール」はどんなワインか?

さて、ペピックはそんなジョセフ・クローミー社の廉価レンジ。毎日の乾杯と食事に合わせて気軽に開けてねというワインで、手に取ってみると本当に物理的に軽い。重さをはかってみたが、わずか1116グラムだ。750mlのワインが入ってこの重さだから、ボトル自体は相当軽量ということでボトルが軽いと輸送時の炭素排出量が減らせる。長期保存するものでないならば、私は缶でも紙パックでもビニール袋でも、ワインを入れる容器はなんでもいいというか環境にいいものを選ぶべきだと考える派なので、これはナイスだ。サスティナブルであることは生産者を応援する理由になる。

ワインはジョセフ・クローミーの本拠地であるタスマニアの北部、タマラバレーで収穫されたピノ・ノワールを100%使い、オープントップの発酵槽で発酵、圧搾後、フレンチオークの古いバリックとステンレススティールのタンクでマロラクティック発酵を行うそうな。その味わいやいかにとスクリーキャップをくるくる回し、グラスに注いで飲んでみた。

ジョセフ・クローミー「ペピック ピノ・ノワール」を飲んでみた

で、これがすごかった。光に透かしたルビーのような薄めの赤色、グラスから匂い立つ香り、そして味のすべてが「おいしい新世界の2000円台ピノ・ノワール!」って感じではなくて、「2000円台で買える超コスパブルゴーニュ」みたいな感じ。いやお前ブルゴーニュのなにを知ってるんだと問われたら泣きながら帰宅するしかないんだけれどもとにかくそう感じてしまったものは仕方がない。

なによりすごいのは、私が「3000円以下のピノ・ノワールを探してる」ってプロフィールに書いてある意図は、「ブルゴーニュは高いから、ブルゴーニュっぽい安くておいしいやつを探してる」の意、なのだがそれに対しての満点解答感がすごい。おそるべし田邉氏。私は田邉氏のことをフォローさせていただいているが面識はない。それでいて、鼻先に「王手!」とビシッと歩を張られて一発で詰まされたような感覚がある。いやはや、プロってすごい。

ペピック」の意味は?

最後にワインの名前の由来について。「ペピック」とは、チェコでお母さんが「ヨセフ」という名前の子どもを呼ぶときに使うニックネームなのだそうだ。ジョセフのチェコ読みはおそらくヨセフなので、つまりこれはジョセフ・クローミー90歳が幼き日に母に呼ばれた名前ということになる。公式サイトにはジョセフのお母さんの情報はないが、19歳で単身国を出たジョセフは、その後の人生で彼をペピックと呼ぶ人と再会することができたのだろうか。

浦沢直樹のど名作漫画『マスターキートン』に「貴婦人との旅」という一編がある。主人公が列車で出会った一人の老婦人は、実はドイツの分裂によって夫と息子と引き裂かれ、祖国をなくして流浪の旅を続ける東ドイツの元貴族の奥方だった、という話。チェコ人だと名乗るその経歴も身の上もすべてが嘘なのだが、故郷であるザクセン民謡を歌いながら流した涙だけは真実であった、と書いてるだけでも心震える名作なんだけれども私が思い出したのはこの話だ(長い)。

誰か故郷を思わざる。

もちろん本当の意図はわからないが、ペピックという名前には、実業家ジョセフ・クローミーの故郷への思いが込められているのは間違いがないと思う。ペピックはふるさとの味がするワイン。私のふるさとはチェコではなくて千葉だけれども。この原稿を書き終わったら、実家の母に電話してみよう。私の名前はヨセフではないけれども。田邉さん、素晴らしいワインと、故郷に思いを馳せる時間をありがとうございました。

3000円以下のおいしいピノ・ノワール、まさに!

【ギィ・サジェ ロゼ・ダンジュ】不遇? ロゼ・ダンジュとその主要品種グロロについて調べてみた。 【Guy Saget Rose d'Anjou】

フレンチのランチで飲んだロゼ・ダンジュがおいしかったので調べてみた

週末にフレンチレストランで昼食を食べた。フレンチレストランでランチだってのに水を飲んでる場合ではないのだがあんまりガッツリ飲むわけにもいかない状況だったので、熟考の末グラスワインのロゼを375mlデキャンタでシェアすることとした。前菜はキッシュ、メインは若鶏のクリーム煮を選択。ここに冷やしたロゼは幸せへの特急券で間違いないでしょうどう考えても。

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ギィ・サジェ ロゼ・ダンジュを飲みました。

で、結果的にこれが大変おいしかった。キッシュにも濃厚な若鶏にもよく合った。なんならバゲットにも合った。残念な点は1点だけでそれは「もっと飲みたかった」という点なのでワインに落ち度はない。いやーおいしかった。幸せをありがとう、とボトルを見せてもらうと「ロゼ・ダンジュ」と書いてある。ロワールかどこかのやつだよねという曖昧な記憶しかなかったので、帰宅後に調べてみたら驚いた。ロゼ・ダンジュって……なんか評価、低くない!? (私の給料……安すぎ!? みたいなノリで)

ロゼ・ダンジュと主要品種グロロの評価が低い件

まずwinesearcher.comによる説明はこうだ。

「ロゼ・ダンジューは、フランス西部のロワール渓谷のワイン産地、アンジュー地区のロゼワインのアペラシオンです。一般的には、主にグロロー・ノワールから造られるより甘口のロゼワインのイメージが強いですが、現在ではその重要性は低下しています。特に、カベルネ・ダンジューのタイトルで造られるより複雑で真面目なロゼワインと比較すると、その傾向は顕著です」

なんだこりゃ。名指しで「重要性が低下している」と書かれているワインなんて初めて見たレベルですよこれは。「複雑で真面目なロゼワインと比較すると」ってひどくないですか。「優秀で真面目なお兄ちゃんと比較すると」ってそういう言葉に子どもは傷つくんだよ(次男)! さらに、メイン品種である「グロロ」について調べてみると、そのwikiにはこんなことが書いてある。

「本来は赤ワイン用の品種であるが、これで作った赤ワインはえぐみや酸味が強く、いわゆる刺激性強い香味で、その割にはこくのあるワインにならないため、現在はもっぱらロゼワインに作られている。大量生産され、フランスのロゼワインとしては最もポピュラーで、かつ安価なロゼ・ダンジュは、この品種を中心に作られている。」

ひどくないですかこれまた。先発では使い物にならないから仕方なく敗戦処理で投げさせてます。年俸も安いし。みたいな言い方ですよプロ野球の投手でいえば。グロロはカラスの羽に果皮の色が似ているからフランス語のカラスにちなんで名付けられっていうし、なんですかね、醜いアヒルの子感がすごいよカラスだけど。ただ一方、エノテカはこう説明してもいる。

「ロゼ・ダンジュは、ロワール地方の中のアンジュー地区で造られている、グロロ種を主体としたロゼワインプロヴァンスロゼ、タヴェルと並び、フランスの三大ロゼワインの1つとして知られています。淡いサーモンピンクの色合いで、チャーミングなアロマが特徴。特に女性に人気の高いロゼワインです」

さすがエノテカ。これから売ろうとするワインを実に簡潔に、美しく表現することに成功しているが、「赤ワインに使うとえぐみや酸味が強くてこくもない品種を用いた、複雑で真面目なロゼワインと比較すると重要性が顕著に低下しているワイン」ですって書いたら売れるはずがなかった冷静に考えると。 

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ロゼ・ダンジュはその飲みやすさから1980年代半ばころまで大人気だったんだそうだ。しかし、その後のワインブームでは“複雑で真面目な”赤ワインなどに押されて需要は急降下、今に至る、みたいな感じのようだ。そういえばワイン初心者のころ(今もだが)、「ロゼは甘口というイメージから、敬遠する人も多い」みたいな文章を幾度か目にしたことがある。あれは、ロゼ・ダンジュのことだったのかもなあ……。

ギィ・サジェ ロゼ・ダンジュを飲んでみた

さて、ロゼ・ダンジュはAOC名で、ワインの名前はギィ・サジェ ロゼ・ダンジュ。AOCはもちろんロゼ・ダンジュ。生産者はサジェ・ラ ・ペリエールで、輸入元のサッポロビールによれば、ロワール河上流のプイィ・シュール・ロワールで8代続く家族経営のワイナリーで、当代に代替わりしてから急激な成長を遂げたとのこと。Googleマップで所在地も確認してみたが、なるほど発展した感がみなぎる外観をしていた。

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ロジェ・ラ・ペリエール(画像右)の急激に成長した感すごい。(画像はGoogleストリートビューの画面キャプチャ)

で、とにかく冒頭に挙げたように私はこのワインを大変おいしく飲んだのだった。コノスル レゼルヴァ ゲヴュルツトラミネールが終売となったいま、ワインを普段飲まない友だちとの飲み会枠に2番バッターとして採用すべしはこれなんじゃないかと思っているレベルだ。

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vivinoの点数も3.9点と高いんですよこれがまた

カラスの羽に似た果皮の色を持つグロロで造ったこのワイン、とにかくわかりやすく甘酸っぱい。そして飲みやすい。わかりやすい・のみやすい・そして端的に安いのやすい三拍子。トリプルやすい。ドライではなく、超ほんのりスウィートながら甘すぎず食事を邪魔しない。梅とかアンズのような酸味と甘味で。

私は日本酒は辛口が好きで、ビールもドライなやつとか水っぽいスッキリしたものが好み。コーヒーに砂糖は入れないし、清涼飲料水も基本的には飲まないが、なんでかワインだけは甘口に抵抗感がまったくない。むしろ好き。そこに適度な酸味が加わるともうたまらん、となる。

ただ、ここで大きく懸念されるのはこのワインをおいしいと感じたのはプロが作る卓越した料理と合わせたからこそのおいしさだったのではないかという点だ。そのあたりを検証するため、ボトルでも購入してみたいと思う次第。安いし。

それにしても、夏ごろまで私はロゼに苦手意識を持っていたのだった。今ではすっかりロゼ大好き。フランスではロゼは夏の風物詩だとなにかに書いてあったが、窓の外の紅葉を眺めながら日本の秋に飲むロゼも、どうしてなかなかいいものである。

アストラーレ ロッソ ヴィノ ディタリア。1000円で買えるイタリア赤ワインの実力は?【Astrale Rosso Vino D'italia】

アストラーレ ヴィーノ ロッソ ディタリアとはどんなワインか?

ある日街を歩行していたら「酒のやまや」があったのでなんの用事もない上に次の予定もあったが入った。「酒のやまや」には入店したことがなく、そこでどんなワインが売られているのか知りたかったからだ。人生はいつだってナウ・オア・ネバーの連続だ。

せっかくだしなんか買おうと思い立ち、となると1000円台のなにも考えずに開けて飲めるワインが欲しいなあ、財政的に、と探した末に手に取ったのがアストラーレ ヴィーノ ロッソ ディタリアである。お値段1000円+税。安いぜ。

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アストラーレ ロッソを飲みました。お値段1000円+税。

このワイン、「イタリア安ワインの逆襲がはじまった!」からはじまる店頭POPのテンションが妙に高い上に情報量も多い。「逆襲」で検索すると「攻撃されていた者が、勢いを転じて、反対に攻撃すること」だとあるけれど誰に攻撃されてたんですかね。チリワインとかか。

さて、POPによると生産者は「キャンティの名門ピッチーニ社」であり、「イタリア各地の良質葡萄をブレンドして、一つ上の美味しいワインを造る!」がコンセプトなのだそうで、イタリアの周りを十二星座がグルリと囲むラベルデザインはそのコンセプトを表現しているようだ。アストラーレはイタリア語で「星」。「ヴィンテージ無し、その上毎年セパージュ変更ですが、なぜか美味い!」とPOPは結ばれる。「なぜか美味い!」の破壊力が素晴らしすぎてじゃあ買うわってなった。理由わかんないのかよ!

アストラーレは様々な土地のブドウ、複数ヴィンテージをブレンドして造るワイン

各地のブドウを集めて造る、というとカリフォルニアとか南フランスとかのイメージで、当然ながら原産地呼称制度とかとはほぼ無縁になるんだろうけど、1000円で買うワインは大企業の大量調達、大量製造のワインのほうがロマンはないけどおいしいことが多い気が個人的にしている。

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公式サイトにも「アペラシオンの境界やルールに関係なく、最高品質のブドウを選ぶことができます」と書いてある。また、「ブレンド哲学を様々なヴィンテージの調和で表現してます」とも記載がある。複数ヴィンテージのワインをブレンドしてリリースしてるということだろうけど思い込もうとすればシャンパーニュみたいな手法ってことだなと思い込むことが不可能ではない。テンションは誰かが上げてくれるものではなく、自分で上げていくものである。おっ、シャンパーニュみたいな手法じゃん!

高級ワインは原産地とヴィンテージが超重要だが1000円のワインの場合正直あまり重要とは思えない。むしろマルチ原産地、マルチヴィンテージのメリットのほうが大きい気がする。これは楽しみになってきましたぞ(ちなみにヴィンテージ・エディションもあるみたいだが、日本未導入のようだ)。

アストラーレ ロッソの使用ブドウと製法

公式サイトからはデータシートもダウンロード可能で、それによれば使用品種は40%プリミティーヴォ、30%サンジョヴェーゼ、15%モンテプルチアーノ、15%ネロダヴォラとイタリアの代表的品種がズラリと並んだ感じで、トスカーナ、アブルッツォ、プーリア、シシリーの農家から調達したブドウのようだ。

プリミティーヴォ=プーリアで多く栽培される品種

サンジョヴェーゼ=トスカーナの主要品種

モンテプルチアーノ=ダブルッツォ(アブルッツォ州のやつ)が有名

ネロダヴォラ=シチリアの特産品種

どのブドウがどの産地からというのは明記されていないが、調べてみると使用ブドウと産地は符合する。ということで各品種が特産地から来てる感じがする。来てるに違いない。来てる(ここからが妄想になります)。高まるなこれ。

でもってプリミティーヴォは部分的に乾燥させたり異なるオーク材を使ったりして「伝統的なワイン醸造のアプローチを理解し、それをより大きなスケールで応用」していると書かれている。いいじゃないの。

アストラーレ ロッソを飲んでみた

さてその味わいやいかにとグラスに注いでみると、濃い目の紫色で香りは弱め。いかにも濃くて甘そうな味……かと思いきや、飲んでみると甘酸っぱ系ですねこれは。エノテカの説明によればサンジョヴェーゼ・ピッコロで造られるキャンティは「スミレの花やチェリーのフレッシュな香りがし、果実味と酸味が豊富なワイン」になるとある。プーリアのプリミティーヴォは私のとぼしい経験では例外なく果実味が強くて濃い系だった。3打数3安打でそうだったので、そういう傾向はあると思ってもいいはずで、その両品種がグラスの中で激突している感じがする。プロ野球でいえばスライダーとチェンジアップが持ち球、いずれも決め球とは言い難いけど両者の組み合わせでしぶとく打ち取る投手みたいなタイプ。濃くて甘酸っぱいっていう、わりと味わったことのないスタイルで、これはこれで乙だな。アリだな。1000円で買えると思えば、良コスパと言っていいのではないでしょうか。 

 

楽天だとバッグインボックスが売ってた↓

a.r10.to

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マルセル・ラピエールの20年熟成「モルゴン」がすごい。ガメイ12種飲み比べ試飲会参加レポート

ガメイオンリー。ウィルトスワインの試飲会に参加した

東京・神宮前のショップ、ウィルトスワインで「ガメイだけ」という野球でいえば下手投げの投手だけ集めて先発ローテ組みましたみたいな面白い試飲会をやるというので行った。

飲めるワインは12種類。1種を除いてすべてガメイ100%のワインでそのうち1本はフランスにおける自然派ワインの先駆け的生産者、マルセル・ラピエールの定番ワイン「モルゴン」のなんと2000年ヴィンテージ。ウィルトスワインのスタッフの方個人蔵のものを供出してくださったというこれのみキャッシュオン(1000円)で、残りの11種類は2500円の参加費のみで試飲が可能というイベントだ。

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さて、この日の私の作戦はシンプルだ。現在我が家の最大24本収納のセラーはパツンパツン状態で、きたるべきセールで年末年始のワインをまとめ買いするために枠を確保しなければならない状態。野球でいえばドラフトで新たに戦力を補充するために既存の選手に戦力外通告を行わなければならない時期にあり、セラーを開けるために一生懸命飲んでます、ワインうまい、みたいな時期。たくさんは買えない。なので、飲んだ中でもっともおいしかったものを1本だけ買おう。そう心に決めていた。ちなみに結局2本買った。人生とは恐ろしい冗談の連続である。

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試飲会ラインナップ。12種類のガメイを飲みました。

【印象に残ったガメイその1】アラン・ルナルダ・ファッシュ「ビュジェ・セルドン・メトード・アンセストラル」

さて、話は神宮前のウィルトスワインに戻って私の目の前には12本のワインが、首から1〜12の番号札をぶら下げて鎮座している。参加者にはグラスがひとつ渡され、好きな番号を言うとスタッフの方が注いでくれるスタイル。1番から順に飲んでいき、12番のモルゴン2000にたどりつくという段取りだ。モルゴン、ってなんか約束の地、みたいな語感がありますよね中二病的に言うと。

ここからは特に印象に残ったワインのみを記すが、まずは1番アラン・ルナルダ・ファッシュの「ビュジェ・セルドン・メトード・アンセストラル」がいきなり初球の甘く入ってきたスライダーをライトスタンド中段まで運ぶ先頭打者ホームランだった。なんだこりゃ、めっちゃおいしいじゃないの。

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アラン・ルナルダ・ファッシュ「ビュジェ・セルドン・メトード・アンセストラル」

ピュジェ・セルドンというのは初耳だったのだが、なんでもガメイとプールサールでつくるサヴォア地方の伝統的なロゼスパークリングなんだそうで、造り手はその名手なんだそうだ。っていうか調べたらこのワイン1種類しか造ってないみたい。「そば」しかメニューがなくて店主が「あいよ!」意外言葉を発しないラーメン屋的な印象だ。そのラーメンには店主の生き様すべてが詰まってうまい。アルコール度数は8%で残糖40g/L程度のほのかな甘口とのことだけどわりとはっきり甘く、そしてすっぱく、天国で天使とかが飲むなんかよくわかんない花の蜜って多分この味、みたいなものすごくストレスの少ない甘酸っぱさと気圧低めのやさしい泡のバランスがむっちゃくちゃいい。買います(チョロい)。

【印象に残ったガメイその2】還元臭と私

次に印象的だったのは名前は伏せるがある赤ワインで、いわゆる還元臭というものを初めて嗅いだ。私が初心者丸出しで「これが還元臭ですか〜、ほえ〜」などと言っていると、常連の方々やお店の方が「そうそう」「昔はよくあったよね」「なつかしいなぁ」「きらいじゃないんだよね」「むしろ好き」みたいに盛り上がってて楽しかったです(小学生の作文レベルの感想)。

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瓶熟させれば還元臭はなくなるんだそうで、実際飲んでいるうちに独特な匂いは薄れて旨味だけが残っていった。これは意外と嫌いではなくちょっとクセになる感じ。基本的にはポジティブな情報でないと思うので匿名とするが、印象的だった。

【印象に残ったガメイその3】マルク・デリンヌ「アバランシュ・ドゥ・プランタン」

続いては10番のマルク・デリンヌだ。スタッフの方いわく「成功を約束されているワイン」というワイン。いまはまだ有名ではないが、将来的に必ず評価が高まるであろうという意味合いで、名前のカタカナで検索すると検索結果は驚愕の3件。うち2件はウィルトスワイン絡み。うーん、無名。なんでも、ワイン造りをスタートしたのが2015年とごく最近なんだとか。キャリアは浅いがこれはものすごく明確においしい。

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マルク・デリンヌ「アバランシュ・ドゥ・プランタン」

このおいしさをうまく説明するべく昨日とったメモを見ると「いちばんおいしい」って書いてあったんだけど使えないですねこのメモ。書いたの誰だよ。私ですよ。農薬を使わず、天然酵母で発酵、補糖、補酸、亜硫酸不使用、無濾過、無清澄といういかにも自然派の造り。なんだけど、自然派です。みたいな感じが意外となく、普通の赤ワイン的なものとしてとにかくおいしい。甘酸っぱくて渋みもしっかり、それでいて軽やかみたいな、私がガメイちゃんに期待したいことがすべてハイレベルに揃っている。打率2割8分5厘、25本塁打、30盗塁みたいな選手。

私の味覚レベルはブラインドならワインの品種・産地はおろか豚骨ラーメンと鶏白湯ラーメンの区別がつくかも疑わしいレベルでまったく信頼がおけないが、このワインに関しては参加されていた常連の方々も口々に褒めておられたので間違いなくおいしいと思う。おれの兄ちゃんの友達ケンカめっちゃ強いかんなみたいな虎の威を借るフォクシーフレーバースタイルで言わせてもらうと。これはいいわ。買います(チョロい)。

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【印象に残ったガメイその4】マルセル・ラピエール「モルゴン(2000)」。これはガチ

そして、なんといってもハイライトはマルセル・ラピエール「モルゴン」の2000年ヴィンテージ。これはめちゃくちゃおいしかった。とても20年前に造られたものとは思えないほどフレッシュで、酸味もいきいき、渋みもしっかり、まさに走攻守揃った感じだった。色は少しオレンジがかって歳月の変化を感じさせるけど、本当に搾りたて感まであった。これは飲む美魔女。

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マルセル・ラピエール「モルゴン(2000)」

試飲会には20代前半だという若い女性も参加されていたのだが、その女性が発した「2000年って、どんなことがあったんですか?」という一言から参加者一同で「2000年問題ってのがあってだな」と盛り上がったのも楽しかった。「忘れもせん、あれは20年前のことじゃ……」みたいな村の古老プレーを楽しむことができた。その年にあったこと、その年になにをしていたかをワイワイ話しながら飲むのも熟成ワインの楽しみなんですね。乙!

このワインはグラスでの提供のみのため、残り11種のうちからとくに印象に残った1番(3100円税抜き)と10番(4500円税抜き)を参加者特典の10%オフで購入。圧迫するんだよなあ、枠を。こうなるとセラーの上に同じセラー重ねたい。バンドマンがマーシャルのアンプをアンプの上に重ねるみたいに。そんなことを妄想しつつ、とっぷりと暮れた街を北参道の駅へと向かったのだった。

 

ネットでは「1番」が買えるようです。

「タロー プリミティーヴォ ディ マンドゥーリア」。『神の雫』掲載のイタリア赤を飲んでみた。【Talo Primitivo di Manduria】

「タロー プリミティーヴォ ディ マンドゥーリア」は『神の雫』登場ワイン

なんでも酒や カクヤスのワインコーナーに、なぜか漫画『神の雫』コーナーがあった。有名すぎるほど有名なこの作品を私は読んでおらず、あまりに有名すぎちゃってなんなら敬して遠ざけるまであったのだがたまたま目に入ったのもなにかの縁ということで同作掲載ワインを1本買ってみた。それが「タロー プリミティーヴォ ディ マンドゥーリア」だ。

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タロー プリミティーヴォ ディ マンドゥーリアを飲みました。

『マリアージュ神の雫最終章〜』第11巻 #98「美咲の機転」というお話に登場したと店頭POPには記されている。美咲なる人物が一体どういった機転をきかせた結果このワインが物語の中に登場したのだろうか。わからない。気になるけれども今はワインについて調べてみよう。愛読者の方お時間許せばご教示ください。

タロー プリミティーヴォ ディ マンドゥーリアはどんなワインか?

さて、このワインの造り手はイタリアのかかとでおなじみプーリア州のサン・マルツァーノ。さっそく公式サイトを見てみると、あれ、どこかで見たことあるなこれ。確実に過去に見てるなこのサイト、と調べてみると、vivino3000円位かベストバリューワインこと「コレッツィオーネチンクアンタ」を造ってるとこじゃないっすか。あれはおいしかった!

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というわけで期待値は一気に上昇である。ワイン名には「プリミティーヴォ・ディ・マンドゥーリア」とあり、それでDOP(原産地名称保護制度)認定されているようだ。マンドゥーリアは都市の名前。汲んでも汲んでも水位が変わらない不思議な井戸っていうドラクエだったら確実に迷宮化してそうな観光名所があるそうで、そんなマンドゥーリアで採れたプリミティーヴォ100%のワインが名乗れる的なDOPのようだ。

さて、プーリアで造られたプリミティーヴォっていうのも過去に飲んだ記憶があって、あれですよ。カルディ最強ワインの一角とも言われる「チャンキー・レッド・ジンファンデル」。あれはおいしかった(2段落ぶり2度目)! 7カ月前に書いた記事を読んでみると「ぽっちゃりモテワイン。」って書いてある。なにを言ってるんだこの人。自分だけど。

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いずれにしても、造り手、産地、ブドウ、どれも過去に経験していていずれも非常に印象深い。どちらも今年飲んだワインの価格帯別TOP5に入るレベル。ということで今回飲むワインも非常に楽しみになってきた。

タロー プリミティーヴォ ディ マンドゥーリアのブドウと製法

ちなみに、公式サイトの「ニュース」の項を見ると、香港インターナショナルワイン&スピリットコンペティション2020でタロー プリミティーヴォ ディ マンドゥーリア2019がゴールドメダルを獲得したとある。日付は2020年11月11日。このブログ記事を書いているのが2020年11月13日なのでマジで最新ニュースだな。おめでとうございます。念のため当該コンペの公式サイトも調べてみたけどイタリアのスティルワインでゴールドを受賞した6本のうちのひとつみたいです。やるじゃない。

ワイン名の「タロー」は地元の栽培農家の名前。ブドウは海抜約100メートルのエリアで栽培されたプリミティーヴォを100%使用。10日間のマセレーション後、アルコール発酵。フレンチオークとアメリカンオーク樽で6カ月間熟成とある。

タロー プリミティーヴォ ディ マンドゥーリアを飲んでみた

さて、味はどうかなと飲んでみるとこれはまさに予想通りのおいしさ。ブルーベリージャムみたいな甘やかな香りがして、飲んでみるとあれですよ。群馬あたりの山のほうの道の駅で売ってる地元産のよく知らない果実でつくったジャムとかそういう味。コケモモ、とかそういうの。すっぱ甘くてちょいワイルドで後引く感じ。野の味。そこに、ローストしたコーヒーをお湯でうすめたウルトラアメリカンコーヒーみたいな香ばしさが加わって、藤子不二雄A先生風にいえば「ンマーイ!」が出る。ときわ荘のそばにある松葉のラーメンを初めて食べた満賀道雄(のちのA先生)状態。松葉は現存するのだそうで、ぜひとも行きたいものであるワインの話だった。街中華にこのワイン合わせたら楽しかろうなあ。シューマイ、レバニラ、肉団子ととかってメニューに合わせたい。絶対合う。

とにもかくにも、豊かな果実味と、ちょっとの酸味、14度と高いアルコールと濃くて甘めの味。個人的に寒い季節に飲みたくなるイタリアの暖かい地方のワインの特徴が存分に発揮されてる感じがした。予想をはるかに超える味、とかではないけれど、しみじみおいしくて。うんこれこれ、みたいな感じがする。

「チャンキー・レッド・ジンファンデル」もおいしかったがこれもいい。プーリア州の親しみやすいおいしい安ワイン、カクヤスに行かれた際には是非、である。

ネットで買ったほうが安いけど↓

カクヤスで500円で買えるカバ「ヴィダデルスール」はどんなワイン? 生産者、製法、味などを調べて飲んだ! 【Vidadelsur Brut】

ヴィダデルスールはどんな意味?

「なんでも酒や カクヤス」の前を通りがかるとなぜかつい入店してしまう、という奇妙な習性が私にはあるのだが、先日久しぶりに通りがかったので入ってみると見慣れないワインがあった。カクヤスが最近はじめ、大人気で累計100万本を売っているという税別500円の「ワンコインワイン」、そのラインナップに新たなワインが加わっていることに気づいたのだ。こんなもん買う一択だわととりあえず2本買ったうちのひとつが今回取り上げるスペインのカバ、「ヴィダデルスール」である。あと関係ないけどサッポロクラシックも買った。サッポロクラシックは私がもっとも(段違いで)好きな缶ビールだが、東京では北海道のアンテナショップとかでしか基本買えないのになぜかカクヤスではたまに買えるんですよワインの話だった。 

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さて、ヴィダデルスールとはどんな意味かとまずは名前から調べてみると、Vidaはスペイン語で生活、人生、命、みたいな意味。delsurは「南から」という意味のようだ。ワードの組み合わせからは様々な意味がとれそうだが、ひとまずここは「南国生活」ということで手を打とう。なんかカバっぽいし。VIDADELSURは「南国生活」という意味だと解釈して先に進みます間違ってたら教えてください。

ヴィダデルスールの造り手はアンダルシアの「ボテガス・オリベロス」

さて、なんでも酒や カクヤスで税別500円で売られているスパークリングワイン、略称・カクヤス500円泡は安ワインゆえに調査が難航するケースが多いが、このワインに関しては名前で検索したらあっさり製造元のプロダクトページにたどり着くことができた。

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ヴィダデルスール ブリュットを飲みました。

造り手は1940年創業のボテガス・オリベロス。本拠地はアンダルシア地方の大西洋に面したエリアにあるウエルバというところだそうだ。スペインの国土のかなり南西、ポルトガルとの国境に近い場所にある街みたい。遠いところからよく来たなあ。500円だっていうのに。

さて、どんなワインかを見て行きたいのだがいかんせんサイトがスペイン語オンリー。私はスペイン語がわからないのでグーグル翻訳に頼って調べていく。まずは概要をつかむべく「ディスクリプション」の項を読むべくコピペを行うと、GoogleのAIはこう翻訳してくれた。
「説明:小さくてしつこい泡」
いや待て。わかるけどちょっと待って。AIくんさ、なんていうか、若干ニュアンス違わない? と思わず問いただしたくなるワードチョイス。でもまてよ、カバにおける泡を表現するのに「しつこい」は必ずしもネガティブではないかもしれない。舌にまとわりつく小さくてしつこい泡……悪くない!

ヴィダデルスールの使用ブドウはマカベオとパレリャーダ

といったような脳内猿芝居を15秒くらい楽しみつつ先を読み進めると、使われているブドウはマカベオ90%にパレリャーダが10%。カバに主に使われる3品種のうち、チャレッロが使われていないようだ。「カバ(ワイン)」のwikiによれば、「チャレッロ種はワインの骨格を作り、マカベオ種は果実香を与え、パレリャーダ種は香りに華やかさを与える」とある。ならばこのワインは華やかな果実の香りがする的なことだろうか。

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やや余談だが、カバ発祥の地はフランスとの国境地帯のカタルーニャで、1851年にホセ・ラベントスという人物がシャンパーニュと同じ製法でスパークリングワインを造ることを思い立ったのが始まりだそうだ。その後、カバが大人気になったあとで地理的範囲の画定をする必要があったため、「既存のカバワイン生産者の生産地域をなぞる形でカバ(DO=デノミナシオン・デ・オリヘン=原産地呼称)の範囲を画定させた」のだそうだ。なので、カバという呼称は生産地を指すのではなく、製法を示す。なので、カタルーニャからかなり遠いアンダルシアでもカバが名乗れるんだそうだ。へー。

ヴィダデルスールの製法はカバなのでメトード・トラディショナル(伝統製法)

今回のワインに話を戻すと、いや戻しておいてアレなんだが、これ以上はとくに追記することがない。製法はカバなので瓶内二次発酵だろう。そして、カバの規程は9カ月以上の瓶内熟成なので9カ月以上瓶内熟成しているはずだ。シャンパーニュにハズレはないが、カバにもハズレが少ないのは、やはりこの伝統製法のおかげだ。ありがとう、メトード・トラディショナル。フォーエバー、メトード・トラディショナル。公式サイトもしっかりしているし、普通においしいワインが飲めそうな気配だ。

ヴィダデルスールを飲んでみた

で、開栓してみるとかなりすっきりしたレモン系の香り。飲んでみると味わいは酸味が主体で個人的には好きな感じ。私の味覚はワインに関して「すっぱい」と「果実味がある」くらいしか味を判別できないが、比率としてはすっぱい8;果実味2くらいの感じを小さくてしつこい泡が包み込む。いいじゃないの小さくてしつこい泡。500円という価格を考えればアリofアリではないかと思います。おいしいですよ普通に。香りと味が一貫している。これは南国生活。シャンパーニュのような複雑性はないけれど、南の国ではスッキリしたお酒がうまい。それに500円で買えるシャンパーニュは地球上にない。

ラベルもいい。カクヤス500円泡はこれだからあなどれないんだよなあ。

シャンパーニュといえば↓

安くておいしい非・シャンパーニュといえば↓

「いまでや銀座」の角打ちで山梨ヌーヴォーを飲んでみた。【ドメーヌ・ポンコツ/勝沼醸造/酒折ワイナリー】

「いまでや銀座」で「ワイン選べる3種飲み比べ」2000円を試した

先日、JR千葉駅構内にある酒屋「いまでや」の角打ちに行ったところ気になっていた日本ワインをいくつか飲むことができて大変楽しい時間を過ごすことができた。私は東京に住んでいるので、次は銀座店に行きたいものだと思っていたところ都合よく銀座でぽっかり時間が空いた。となれば向かうはGINZA SIX地下2階のいまでや銀座一択だ。いまでやの創業地は千葉県千葉市仁戸名。私は中学校時代に野球部で仁戸名中と練習試合をしたことがあるので、いまでやとは縁がある(ない)。

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この日の角打ちメニューがこちら。★印は購入可能なものとのこと。

日本酒とワインで埋め尽くされた店内の一角にある角打ちコーナーに陣取り、メニューを開く。日本酒のラインナップもいつもながら魅力的だが、私はワイン好き。「ワイン選べる3種飲み比べ」2000円税込をオーダーするしかないでしょうここは。そう決めた上で、脳内作戦会議スタートである。この3杯をどう構成するかによって、今からはじまる20分くらいの満足度は大きく変わる。

「ワイン選べる3種飲み比べ」まずはドメーヌ・ポンコツ「jaropy」を飲む。

まず、いまでやは日本ワインに力を入れているお店なので、日本ワインを中心に選んでいきたい。泡があれば、泡、白、赤の秋山・清原・デストラーデ的なクリーンナップを構成すれば事足りるのだが、生憎泡が選べない。となると、白・白・赤でいくか、白・赤・赤でいくか、というのがまず常識的な考えと言えるはず。いずれにしても最初は白じゃないですかね、無難に。ということで、まずはドメーヌ・ポンコツ「jaropy」をオーダーした。そりゃまあ気になりますよ名前が。名前! ってなる。どうしったってなる。

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ドメーヌ・ポンコツ「jalopy」。白っていうかオレンジですねこれは。

でもって注いでもらった「jaropy」を見ると、うーん、オレンジ。白っていうかかなり明確にオレンジワインですねこれは。調べたところドメーヌ・ポンコツは中伊豆ワイナリーで15年間ワイン造りに従事した松岡数人さんが山梨で造るワインなのだそうだ。

「jaropy」はデラウェアを5〜7日マセレーション、自然酵母を使ってステンレスタンクで発酵後、古樽で4カ月熟成させたワインとのこと。価格は1600円。グアバみたいな特徴的な香りがするわりに、味わいはドライで、むしろキリッとしてる。スッキリ飲めて悪くない。「jaropy」は、ポンコツ車、みたいな意味なんだそうだ。徹底的なポンコツへのこだわりである。

山梨ヌーヴォ・勝沼醸造のアルガーノ甲州2020を飲んでみた。

さて、jaropyを飲み干して一息つき、2手目以降の作戦を立てようとメニューに目を落とすと、あれこれ山梨のワインばっかだな。スタッフの方に聞くと、11月3日解禁の山梨ヌーヴォがいくつか開いているようだ。あらいいじゃないの。初物を食べると寿命が伸びるので、それで行ってみることとする。

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ルガーノ甲州ヌーボー。大変すっきりしているなかに果実味も感じられ、おいしいです。

まず試したのは、勝沼醸造のアルガーノ甲州2020。色は限りなく透明に近いイエローで、これはもう本当にイメージする通りの甲州の新酒、という味がした。ARUGANOってどういう意味だろうか、語幹的にはスペイン語、あるいはポルトガル語とか? と調べてもどうも出てこないのでおかしいなと公式サイトを見ると社長の名前が有賀さんとおっしゃるようだ。「有賀(さん)の(?)」という意味なのだろうか。謎である。

謎だがワイン自体はすっきりしておいしい。香りはグレープフルーツみたいなさわやか系。味も超スッキリで淡麗な感じ。で、ほんのわずかに果実味があっていいバランス。

本日のベストグラス。酒折ワイナリー「にごり甲州 甲府地区」

さて今日のベストグラスは最後に飲んだ酒折ワイナリーの「にごり甲州」だった。これは抜群においしかった。3打席目に飛び出したホームラン感があった。

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酒折ワイナリー「甲州にごり 甲府地区」。抜群においしかった。

甲州にごり」には地区違いで「甲府地区」「穂坂地区」「八幡地区」の3種類があるようで、これは「甲府地区」。公式サイトの商品説明を見ると、「甘味が多く苦味の少ない、バランスの良いフルーティな味わいです。普段ワインを飲み慣れていない方にも楽しんでいただきやすいワインです」とある。

実際、接客してくれた日本酒飲みだという女性スタッフの方も普段はワインを飲まないがこれはおいしくて飲むのだと教えてくれた。おいしいだけに人気で店頭ではもう完売。角打ちでだけの提供なんだとか。そりゃラッキーだわ。さすが甲府地区、武田信玄のお膝元である。それに東海大甲府は野球が強いしワインの話だった。

甲州にごり 甲府地区」はセミスイートという感じで、かなりハッキリと甘い。甲州はこんなに甘い仕上がりにもなるのかとちょっと驚きだ。ただ酸味もしっかりあるので意外と飲み飽きずにスイスイ飲める。これはワイン苦手な女性とかにはピンポイントで起用していいんじゃないでしょうか。にごり、とあるが、日本酒の濁り酒のような明確な濁りはなく、私のグラスに注がれたものに関してはほぼ透明と言ってよかった。ブドウを中心としたフルーツのアロマオイルを温めました、人肌で。といった印象のやさしい香りもいいし。これは自分を甘やかしてくれる酒。

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「いまでや銀座」はGINZA SIXの地下2階。またお邪魔します。

ワインはそれぞれ70mlとのことだが、とくに軽量するでもなくスタッフの方がどぼどぼ〜と豪快に注いでくれて、3種類楽しめて2000円ポッキリ。うーん、やっぱり楽しい。日本に角打ち文化があって良かった。というわけで楽しい気持ちでいまでや銀座での角打ちワインを終え、木枯し吹く銀座の街を後にしたのでした。また行きます。