ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

クリュ・ボジョレーってなんだっけ? 「モルゴン」を飲みつつ調べてみた

ワリュボジョレガメイモルコシとクリュ・ボジョレーとガメイとモルゴン

コンビニで「ワリュボジョレガメイモルコシ」という謎のポップがつけられたワインを見つけたので買った。

正確には「クリュボジョレー ガメイ モルゴン」と言いたいはずのやつで、価格は1650円。ちなみに商品名は「フランソワ マルテノ オスピス・ド・ボージュ モルゴン」というもの。

ボジョレーには「ボジョレー」「ボジョレー・ヴィラージュ」「クリュ・ボジョレー(クリュ・デュ・ボジョレー)」と3つの格付けがあり、モルゴンはそのクリュ・ボジョレーのうちのひとつでたぶんムーラン・ナ・ヴァンとかサンタムールとかと並ぶ有名村。それが1650円は普通に安い。

上に挙げたのはボジョレーワイン公式サイトのスクショ。ボジョレーには12の地域があり、薄い緑が「ボジョレー」で見ての通りボジョレー地区の南に多く分布している。濃い緑がボジョレー・ヴィラージュ。残りの10個がクリュ・ボジョレーで、ボジョレーの北側に集中していることがわかる。オレンジで示されているモルゴンはその中央部に位置するボジョレー最大のクリュだ。

ボジョレーは地区全体で1万4500ヘクタールの畑があるが、驚くべきことに植えられている品種はわずか2種で、赤のガメイと白のシャルドネだけ。しかも97%がガメイという種田山頭火もビックリの分け入っても分け入ってもガメイ状態。ボジョレーの赤はすなわちガメイだし、ボジョレーのワインはそもそもほぼ=ガメイだ。

今回飲んだのの輸入元はスマイル。コノスルでおなじみ。

ワリュボジョレガメイモルコシに話は戻るのだが、このコンビニの発注者の方はワイン好きなのだと思う。なぜならばこの商品はすでに述べたように「フランソワ マルテノ オスピス・ド・ボージュ モルゴン」なのだ。つまり「ワリュ ボジョレ」も「ガメイ」も商品名にはない。

つまり、発注者の方の判断でこのワインはクリュボジョレー格付けであり品種はガメイであることをPOPに記したということになり、これは実にワイン好きムーブなのではないかと思うのだ。グッジョブ、セブンイレブンの方。完全に売れ残ってたけど。

 

オスピス・ド・ボーヌならぬ「オスピス・ド・ボージュ」とは?

次に気になってくるのが「オスピス・ド・ボージュ」のところだ。オスピス・ド・ボーヌじゃないんだ、となる。オスピス・ド・ボーヌといえばブルゴーニュの中心地であるボーヌに所在するワインのオークションで有名な元慈善病院。てっきりそれかと思いきや「ボーヌ」ならぬ「ボージュ」なわけです。オスピス違い。

himawine.hatenablog.comじゃあオスピス・ド・ボージュってなんだろうと生産者であるフランソワ・マルテノの公式サイトをチェックすると解説を見つけることができた。話はシンプルで、オスピス・ド・ボーヌの物語とほぼ同じ。設立は1240年。篤志家の寄付による慈善病院がブドウ畑を寄進され、やがてワインオークションを開催し、その収益を病院の運営費に充てるようになったのだそう。

そして現在フランソワ・マルテノはオスピス・ド・ボージュの独占パートナーになっているのだそうだ。ドメーヌ・オスピス・ド・ボージュのワインをネゴシアンであるフランソワ・マルテノが売ってる、みたいなことなのかな。

 

フランソワ・マルテノとGCFグループ

さらに調べてみると、フランソワ・マルテノは現在GCFグループの傘下に入っているようだ。GCFグループは本ブログにたびたび出てくるフランスの大手企業で、フランスの安ワインについて調べるとしばしば出てくる名前。

himawine.hatenablog.com

Googleマップで見る限り、ムルソーに所在するフランソワ・マルテノの本社もピカソのコレクションを中心とした現代美術を中心に展示する美術館、と言われれば「なるほど」と納得しそうな外観だ。「生産者が巨大企業である」は国、産地、品種を超越した安ワインをおいしくするもっとも重要なレシピ。自ずと期待が高まってくる。巨大企業、だーい好き。

フランソワ・マルテノ社はオスピス・ド・ボージュと独占契約をしており、そのワインはおそらくGCFグループの流通網によって世界中に運ばれている。クリュ・ボジョレーのワインがニッポンのコンビニで1650円で買える理由はこのあたりにあるのかもしれない。うーん、スッキリした。あとは飲むのみだ。

 

フランソワ マルテノ オスピス・ド・ボージュ モルゴンを飲んでみた

外観は明るいけど深みのあるガーネット。香りはけっこうあからさまにイチゴですねこれは。飲んでみるとまだちょっと青い野イチゴのような少しの青みと酸味と果実味。そこになんだろこれ。ピンクペッパーみたいなニュアンスとしての甘味を伴うスパイシーさみたいなのも感じる。

vivinoの評価は3.5。値段を考えれば十分です。

総じてこれはすごい! 2000円台後半の味わい! とかではないのだが価格なりにキチンとおいしく「1650円で買ったワインがこの味だったら納得だわ」という味。主力の怪我でスタメンとして出てるときのチームは弱いがベンチには欠かせない選手、みたいなサードの守備固め的味わい。

モルゴン、というと名前の力強さに引っ張られて味わいも力強い気がしてしまうが、味筋は甘渋スムース&エレガントで、マッシュルームを入れずにシメジ、しいたけ、まいたけを大量に投入したキノコまみれハヤシライスとめっちゃくちゃ合った。そういや液体にもほんのわずかにキノコ感があるかもしれない。果実味、渋み、酸味のどの要素も突出しない調和の妙という意味で、個人的にはブルゴーニュよりむしろボルドーを感じるワインのようにも思えた。

コンビニで1650円で買えるクリュボジョレーはどう考えても貴重。万が一見かけたらお手に取ってみてください。

楽天だと1000円台前半で買える↓

ふるさと納税で山崎ワイナリーのピノシャルドネのセット出てます↓

 

 

「日本ワイン会」でミエ・イケノを飲みながら“日本の国際品種”について考える

「プルール」主催の日本ワイン会に行ってきた

ワインショップ・プルール代表のYukariさんにお誘いいただいてワイン会に参加してきた。お店を貸し切って日本ワインの試飲会を開催、せっかく1日借りていることだし夜の時間はワイン会をしようという趣旨。

プルール主催のワイン会に参加してきました。

試飲会で残った日本ワインを飲み干しつつ、参加者持ち込みのワインも飲みつつ、みんなで持ち寄った食事と会話を大いに楽しむという楽しいに決まってるでしょこんなもん度2万%の会であり、確率が2万%なのでもちろん最高に楽しい会だった。

会の詳細は同席された安ワイン道場師範の稽古日誌に詳しいのでそちらを参照いただくとして、私は今回のワイン会を通じて深く印象に残ったことについて書きたい。

 

「プルール」主催・日本ワイン会のラインナップ

と、その前にこの日飲んだワインをまとめてみた。こんな感じだ。

レ・ヴァン・ヴィヴァン「シードルあお2021」
ブラインドA
ブラインドB
木谷ワイン「奈良ワインヌーボー2022」
ベルウッドヴィンヤード「コレクションスペリオール 2021 CH et SB」
カーブドッチ「ぺんぎん(ケルナー)2021」
ブラインドC
ココファームワイナリー「こことあるシリーズ ぴのろぜ2020」
ココファームワイナリー「こことあるシリーズ ピノ・ノワール2019」
ドメーヌ ミエ・イケノ「ミエイケノ八ヶ岳ピノ・ノワール2019」
ル・サンク ワイナリー「ピノ・ノワール2019」
レ・ヴァン・ヴィヴァン「デラ2021」
カーブドッチ「おうむ(ツヴァイゲルト)2021」
ドメーヌ ミエ・イケノ「ミエイケノ月香シャルドネ2019」

このうちブラインドA、Bは参加者のおひとり・ミケさんのお持ち込みで、ブラインドCと表記したワインはワインマーケットパーティ店長・沼田さんが持ち込まれたワイン。まずはこの3本のワインについて記していきたい。

 

ワイン会ならではのお楽しみ。ブラインドにみんなで挑戦

まずブラインドA&Bだ。「飲み比べたら面白いと思って」と持ち込まれたこちらのワイン、

・品種はともにシャルドネ

・片方は日本ワイン

・片方はスーパーで買うことができる

・両者の価格差はおそらく1000円程度

と、ガッツリ目のヒントをいただいてのブラインドとなった。銘柄まで当てにいこうみたいな雰囲気のなか私は以下のように予想した。

「AもBも樽が効いているがAのほうがよりたるたるしてるので意表をついてAが日本ワインと予想。スーパーで買える樽の効いたシャルドネはルイ・ジャドかシャブリかカリフォルニアくらいしか思いつかずカリフォルニアほどの樽具合ではなくシャブリほどの酸がないようが気がすることからBはルイ・ジャドのソンジュ・ド・バッカスと予想。ソンジュ・ド・バッカスはスーパーなら3500〜4000円くらいすると思うので同価格帯で樽の効いた日本のシャルドネで味わいにものすごい安定感があるからおそらくは大手ということでシャトー・メルシャン 椀子シャルドネ! いっけえええッッッ!」と予想したのだが外れた。カスリもしなかった。

正解は
A ルイ・ジャド ムルソー 2017
B 熊本ワイン 菊鹿シャルドネ樽熟成 2019

正確にいえばルイ・ジャドだけ一応なんとなくカスってる風なのが逆に残念な惨敗具合。ちなみに同じブラインドに挑んだ安ワイン道場師範はBではなくAを「熊本ワイン 菊鹿シャルドネ樽熟成 2019」と予想。造り手・キュヴェ・ヴィンテージまで言い当てておきながらAとBの2択でミスるという脅威の惜し具合を発揮、この絶妙なもどかしさを出題者のミケさんが「オフサイドですね」と表現しておられて至言だと感じた。幻のゴール感すごかった。

さて、続いてはブラインドCで、恵比寿の名店・ワインマーケットパーティ店長の沼田さんのお持ち込みだ。ほんの少し濁ったような少し自然派感のある外観。こちらはほぼノーヒントでのブラインドとなった。

私は以下のように予想した。

「普通にめちゃくちゃおいしい自然派ピノ・ノワール。酸が強いのでニュージーランドと予想。なんだけど沼田さんの遊びゴコロ的にピノ・ノワールかと思いきや実は違う品種でしたみたいなサプライズを用意している可能性は高く、ゆえに正解はピノ・ノワールと似たなにかと予想。ピノ・ノワールと誤認する品種はいろいろありそうだけど……品種は(なんとなく)サンソー! そして産地は(なんとなく)南アフリカっ! これで決まりだあああああッッ 」と予想したのだが外れた。カスリもしなかった。

正解はなんと中国のピノ・ノワール。「ピノ・ノワールかと思いきや違う」っていうサプライズではなく「原産国がサプライズ」だった。もとより当てられる確率は0%だったが無念だ。

ブラインドの中身が判明し、今回飲んだ14本の品種内訳は以下のようになった。
シードル 1
ケルナー 1
シャルドネ/ソーヴィニヨンブラン1
ツヴァイゲルト 1
デラウェア 2
シャルドネ 3
ピノ・ノワール 5

日本ワイン中心のワイン会ながら、ピノ・ノワールシャルドネ過半数を占めて14本中11本が国際品種。振り返ってみるとその点すごく興味深い会だったのだった。

 

中国ワイン「シルヴァー・ハイツ Jiayuan ピノ・ノワール 2020」の衝撃

沼田さんが持ち込まれた中国ワインは「シルヴァー・ハイツ Jiayuan ピノ・ノワール 2020」というもの。すごくおいしいピノ・ノワールで、沼田さんいわく「あるソムリエの方に飲んでもらったら、『タカヒコ?』と言っていた」というのも納得の味わい。出汁感・梅感を伴う甘酸っぱさがあって非常においしいワインだったのだったサンソーと予想した奴がなにを言っているんだテメーと思われるかもしれないけれど。

これほんとにおいしかった

公式サイトで確認するとビオディナミで栽培、野生酵母で発酵させているようで、全体的に「きれいな自然派」という印象。いただいた2019ヴィンテージはジェームズ・サックリング93点、ジャンシス・ロビンソン16.5+と高得点も獲得しているみたい。わかる。

沼田さんがこの中国ワインを持ち込まれた意図はシンプルで、「日本じゃないけど、アジアワインということで」ということだった。ドメーヌ・タカヒコの名前が出たときに一同「たしかに〜」みたいになったのだが、日本ワインと一脈通ずる感はたしかにあったように思う。

 

中国のピノ・ノワールと日本のピノ・ノワール

この衝撃的な中国ワインを迎え討つカタチとなったのが日本のピノ・ノワールたち。結果的に日中ピノ・ノワール比較試飲みたいになったのが非常に面白かったのだった。

雰囲気的に近い感じだったのが北海道で造るココファームの「こことあるシリーズ ぴのろぜ2020」と「こことあるシリーズ ピノ・ノワール2019」の2本。ともに北海道余市町登町の木村農園のブドウを使用し、10R(トアール)ワイナリーのブルース・ガットラヴさんが醸造するというワイン。木村農園はかつてドメーヌ・タカヒコにもブドウを提供していた余市の有名農園で、それもあってか前述の中国ワインとなんとなくの共通点を感じたような気がする。

ぴのろぜ。前ヴィンテージも飲んでいるがこれは本当にいい。

じゃあその共通点って味わいにおいてはなんだろうとなるのだが、それはピアノの鍵盤の右端のほうをポンと押し下げたときに出る音のようなハイトーンな酸にある気がする。どれも酸味の外殻がしっかりとあり、そのなかに果実味だったり旨みだったりが封じ込められている印象だ。

とくに「ぴのろぜ」は3月の初めの春の野原みたいな温度感の控えめな甘さをビシッとした酸が引き締めてひたすらスムーズ。飲むというより勝手に入ってくる、みたいな感覚に陥る味わい。

全体的に感じる自然派っぽい感じも含めてシルバー・ハイツの雰囲気に似ているような気がしたのだった。もうひとつのロゼじゃないピノ・ノワールのほうも酸味のなかに果実味と旨みが滲んでおいしく、両キュヴェともに北海道のピノ・ノワールの理想形のひとつという気がする。

そして、長野県のミエ・イケノのピノ・ノワールは北海道的な方向性とは異なる王道的な(どちらかといえば)ブルゴーニュ方面を向いたような味わい。酸味主体の味わいではなく渋みと果実味が阿形(あぎょう)・吽形(うんぎょう)金剛力士像的にワインという名の山門を支えるビシッとした構造感があっておいしい。金剛力士像(作画:大島弓子)みたいなイメージだ。どんなイメージなんだよ。

ミエ・イケノ。人気なだけあるおいしさ

一方、新潟県のル・サンク ワイナリーのピノ・ノワールはより日本ワインらしいというか、どこかマスカット・ベーリーAを思わせるかわいらしい香りがあり、ストレートな酸味が魅力の味わい。赤ワインなのにタコの酢の物とか合わせられそう。

といったように、この4本のピノ・ノワールは日本のピノ・ノワールの多様性みたいなのを感じられてすごく面白いなと感じたのだった。僕らが暮らすアジアには、ピノ・ノワールの沃野が広がっている。ような気がする。

 

ミエ・イケノと日本のシャルドネ

この日はシャルドネ単一のワインも2種いただいた。ひとつはすでに記したミケさん持ち込みの「菊鹿シャルドネ樽熟成2019」であり、もうひとつはミエ・イケノの「月香シャルドネ2019」。

月香シャルドネ。さっぱりとクリーミーが両立したような不思議な味わい。

どちらも王道感のある味わいでおいしく、日本でも国際品種から世界基準のワインが造れる証拠感があってこれまた興味深かったのだった。価格がそれなりに高かったり、入手難度が高かったりといったこともあるんだろうけれども。

これまで日本ワインはなんだかんだラブルスカ種だったり甲州とかマスカット・ベーリーAといった日本固有感のある品種を選んだほうが無難みたいに正直思っていたのだが、その認識を改めねばならないと感じられたことがなんだかすごく良かったのだった。国際品種は日本の気候風土に必ずしも合うわけではないかもしれないが、生産者の方々の努力によって国際品種の日本の気候風土への最適化は着実に進んでる気がした。

というわけで、「日本における国際品種」についてつらつら考えつつ、みなさんが持ち込まれたおいしい料理を楽しみつつ(しろさんが持ち込まれたクスクスが異様においしかったことを記しておきたい。武蔵小山のTokyo-Souriumというお店のクスクスだそうで、クスクス観が根底から覆される逸品だった)飲んだワインはどれもとてもおいしかったのだった。カーブ・ドッチの「おうむ」もおいしかったし、そもそもジャドのムルソーってこんなにおいしいんだ、とも思った。

お招きいただいたプルールご夫妻、ワインを持ち込んでくれたミケさんと沼田さん、そしてご参加のみなさん、楽しい時間をありがとうございました。また飲みましょう!

 

Amazonブラックフライデーセールで買ったやつ↓

 

 

ラキュイス・フェレー ブリュット ロゼ プルミエクリュ。一級畑のシャンパーニュを飲んでみた。

ラキュイス・フェレー ブリュット ロゼ プルミエクリュとラグジュアリーシャンパーニュ

ラキュイス・フェレーのロゼシャンパーニュラキュイス・フェレー ブリュット ロゼ プルミエクリュ」を飲んだ。

ラグジュアリーシャンパーニュ、という名前の楽天内のショップで購入したセットに入っていたうちの1本で、ラキュイス・フェレーはランスの南にあるプルミエクリュ村のセルミエに17ヘクタールを所有するという生産者。ラグジュアリーシャンパーニュの商品ページには1960年創業の比較的新しい造り手だと書いてある。

のだが、この記事によれば創業者は1960年以前からブドウを栽培しており、シャンパンの製造開始は1966年。これまでは個人客とレストラン向けの販売がほとんどで輸出はほぼ行なっておらず、栽培されたブドウの約半分はニコラ・フィアットやマムなどの大手メゾンに販売していたことから、日本への輸入は今回が初、なのだそうだ。

 

ラキュイス・フェレー ブリュット ロゼ プルミエクリュと協同組合

自社畑のブドウでワインを造っているならRM的なことなのかな、と思ったらさにあらずで、前掲の記事によれば「プレス、醸造ブレンド、キュヴェの瓶詰めを地元の協力者に依頼する一方、リドリング、ディスゴリング、リキュールの添加といった作業をドメーヌ内で行う」とあり、区分としては協同組合に分類されるのだそうだ。

himawine.hatenablog.com

「自分の畑で収穫したブドウからつくられた原酒のみで、シャンパーニュをつくる(シャンパーニュ委員会『用語集』より。以下同)」レコルタン・マニピュラン(RM)でなく、

「組合員が栽培したブドウからつくられた原酒でシャンパーニュをつくり、組合ブランドとして出荷する」コーペラティヴ・ド・マニピュラン(CM)でなく、

「協同組合メンバーが自分の畑の収穫を組合へ持ち込み、組合製造ワインを自分のブランドとして出荷する」カタチになるのでレコルタン・コーペラトゥール(RC)ってことになるんだと思いますたぶん。

栽培(自社)→醸造・瓶詰め(組合)→動瓶/澱抜き/糖分添加(自社)、という流れ。これだと自社に醸造設備がなくても大丈夫なので理にかなってる感ある。

 

ラキュイス・フェレー ブリュット ロゼ プルミエクリュを飲んでみた

畑における品種の構成比はピノ・ムニエ70%、ピノ・ノワール15%、シャルドネ15%だそうで、土地自体がムニエとピノ・ノワールの栽培に向いているみたいなことが書いてある。今回飲んだキュヴェはムニエ80%、シャルドネ20%という比率。そこにムニエで造った赤ワインがブレンドされているのだそうだ。

果皮から色素を抽出するセニエ方式でなく、赤ワインを入れちゃうアッサンブラージュ方式。ロゼは基本前者によって造られるワインだが、シャンパーニュでは赤ワインを混ぜちゃってOKなのすごい。

ムニエといえば、シャクッと果実を丸かじりしたような果実味が魅力の品種だと個人的には思っているのだが、飲んでみると実際に果実感がすごく強い。販売価格7700円というだけに薄っぺらい感じがない骨太な印象で、シャンパーニュらしいパン的な香りと花の香りが豊かに漂う飲むウキウキ通り商店街状態。3日をかけてゆっくり飲んだが、初日は旺盛な泡を楽しみ、3日めはごく微発泡のロゼワインとしてコクがあっておいしい、みたいになった。

3本で1万円ちょっとのセットで買ったのだが、値段に対してこれはかなり良かった。このショップ、たまにめちゃくちゃお得なセールをやっているのでちょこちょこチェックしていこうと思います。

購入したのはこのセット↓

 

 

クレマン・ド・ブルゴーニュはどんなワイン? 品種や歴史を調べてみた

クレマン・ド・ブルゴーニュについて調べてみた

クレマン・ド・ブルゴーニュについて調べると、「品質においてはシャンパーニュに匹敵し、価格においてはシャンパーニュよりずっと安いスパークリングワイン」みたいな文言が出てくる。

ほんとかなあ、と私はつねづね思ってきた。シャンパーニュとはやっぱりぜんぜん違うし、価格もわりとするカヴァ飲も。
こんな感じが今までの私のクレマン・ド・ブルゴーニュとの関係性だった。

なんでなのか、と私は考えていた。シャンパーニュとクレマン・ド・ブルゴーニュ、製法においては熟成期間くらいしか規定においては違いがない(シャンパーニュはNVで15か月、クレマン・ド・ブルゴーニュは9か月)みたいな印象があるし。

ではなんで味が違うのか。そもそもクレマン・ド・ブルゴーニュってなんなのか。クレマン・ド・ブルゴーニュならではの良さってなんなのか。よくわからないので一度がっつり調べてみることにした。

 

クレマン・ド・ブルゴーニュの歴史

最初に、クレマン・ド・ブルゴーニュはそもそもどのような経緯で生まれたのだろうかと調べると、話は1822年にさかのぼる。

当時シャロン・シュル・ソーヌの市長だったフォルトゥネ・ジョセフ・プティオ・グロフィエなる人物がスパークリングワイン市場の可能性に気づき、シャンパーニュから18歳のフランソワ・バジル・ユベールを招聘。所有していたリュリーの畑で採れたブドウでスパークリングワインを造ったのがはじまり。スペインのカヴァと似たような経緯だったんだね。

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シャンパーニュの歴史」のwikipediaによれば、19世紀初頭ははどれくらい砂糖を添加すれば瓶が爆発しない程度に発泡させられるかが正確にわかるようになり、コルクの改良により発生したガスが漏れなくなったというシャンパーニュというかスパークリングワインの製造における産業革命みたいなのが起こった時期。

ヴーヴ・クリコがルミアージュ(動瓶。澱を瓶口に集める技術)を開発し、デゴルジュマン(澱抜き)によって失われたワインをドサージュ(砂糖およびリキュールの添加)によって補う技術も生まれた。

このような技術革新によって安定的かつ高品質に生産可能になった発泡性ワインが英国、ロシアなどの海外市場で売れる輸出商品として人気を高めるなかで、「俺の土地でも!」という思いでクレマン・ド・ブルゴーニュが生まれてきたようだ。歴史…!

 

クレマン・ド・ブルゴーニュシャンパーニュはなにが違うのか

ここまででわかったことはひとつ。クレマン・ド・ブルゴーニュは「歴史ある地酒」ではなく、はじめからシャンパーニュを目指して開発された郷土料理ではなくご当地グルメ的立ち位置の戦略的商品だということだ。

では、クレマン・ド・ブルゴーニュシャンパーニュはなにが違うのか。調べると、そもそも crémantという言葉の意味は「クリーム」であり、シャンパーニュより低発泡で軽い、ということから名付けられたネーミングなんだそうだ。ガス圧の強さは瓶詰め時に加える砂糖の量によって決まるわけだが、ガス圧がやや弱めなのが「クレマン」。

シャンパーニュの気圧が5〜6気圧に対してクレマン・ド・ブルゴーニュは3〜3.5気圧くらい。それくらいが大体の目安になる。

 

クレマン・ド・ブルゴーニュの造り方

そんなクレマン・ド・ブルゴーニュはどのように造られるのだろうか。規定は意外と厳しくて、AOCクレマン・ド・ブルゴーニュを取得するためにはブドウを手摘みで収穫せねばならず、2008年からはクレマンを造る区画はクレマンだけを生産しなくてはならなくなったりもしてるみたい。今年はブドウがすっぱいから白ワインをつくるつもりだったけどクレマンにしちゃいますか、一発、とかはNG。

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面白いのは、クレマン・ド・ブルゴーニュは「ブレンドワインであり、その年のワインと前の年のワインで構成されている」というwikipediaの記述で、これ初耳だった。シャンパーニュのマルチヴィンテージに対して、クレマン・ド・ブルゴーニュはダブルヴィンテージなんですね。連続するふたつのヴィンテージワインで造られるのも特徴と言えそうで、良い年が2年続いたタイミングはうまい、とかあったりするのかもしれない

 

クレマン・ド・ブルゴーニュの品種

使用していい品種はアリゴテ、シャルドネ、ガメイ、メロン、ピノ・グリ、ピノ・ノワールピノ・ブラン、セイシー。セイシーが初耳。シャルドネ、あるいはピノ・ノワールを30%含まなければならない、という規定もあるのだそうだ。ガメイ100%のブラン・ド・ノワールとかはだからない。

さらに味わいにおいて決定的なのは、「意外と南のほうのブドウが使われている」ということだ。フィラディスによれば、クレマン・ド・ブルゴーニュは「“南部ブルゴーニュ(Bas Bourgogne)”のマコン地区やボージョレ地区中心の黒ブドウを主体に造られ、フルーティーな果実味が豊かながら、ミネラルや酸が弱いため、シャンパーニュのような輪郭を持たぬ、余韻の短いシンプルなものが主流」とある。

 

おすすめクレマン・ド・ブルゴーニュ

さて、なんでこんなことをつらつらと書いてきたかといえば、それは最近クレマン・ド・ブルゴーニュを飲んだからなのだった。「エヴィダンス by LVHB」がそうで、これはシャンパーニュとの境界から600メートルというシャンパーニュ激近のシャティヨネ地区で結成された協同組合が造るクレマン・ド・ブルゴーニュ

購入した東京・恵比寿のワインマーケットパーティの沼田店長によれば、クレマン・ド・ブルゴーニュはそもそも買いブドウで造られるネゴシアンものが多いのだそうだが、これは協同組合の自社畑で造られるというワイン。

さらに土壌はシャンパーニュに特徴的なのと同じキンメリジャン土壌。気候は600メートルしか離れてないっつーんだからそりゃまあ総武線でいうところの市川と小岩、くらいの違いしかないだろう普通に考えて。ほかのクレマン・ド・ブルゴーニュとは違うという矜持から、「クレマン・ド・シャティヨネ」を名乗ろうとしているレベルなんだって多分無理だろうとのことだけど。キュヴェ名「エヴィダンス」も「証明する」みたいな意味。気合い入ってる。

で、飲んでみるとこれがすごくおいしかったのだった。味わいはまんまシャンパーニュ。それも安シャンパーニュじゃなくて大手メゾンのスタンダード的なクセなく優等生的な印象。シャルドネ100%のブラン・ド・ブランでブラン・ド・ブランが2000円台というのがそもそも安い。

ただ、一方でなるほど発泡は弱い。たしかに弱い。クリーミー。それでいいのだ。それがクレマン・ド・ブルゴーニュのクレマン・ド・ブルゴーニュたるゆえんなのだ。こうなってくるとフランソワ・ミクルスキーとかの有名クレマン・ド・ブルゴーニュも飲みたくなってくるというもの。地理的に北に近いものが豊かな酸を持つとするならば、シャブリの造り手のものなんかも良さそうだ。

というわけでクレマン・ド・ブルゴーニュついて調べてみた。調べる前はすみません正直シャンパーニュの下位互換としか思っていなかったが、発泡が「弱い」という特徴があることが調べることによってわかったのは収穫だ。

ガス圧の強いワインはおいしいが、飲み疲れる部分があると思おうと思えばあると言えないこともない。週末にシャンパーニュを飲むならば、火曜日の夜はクレマン・ド・ブルゴーニュ。そういう使い分けはすごく良いと思う。熱い風呂に浸かりたい夜もあれば、ぬるま湯で己を甘やかしたい夜もまたある。

そんな夜にはクレマン・ド・ブルゴーニュですよ、みなさん。

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荒木町「遊猿」「Chiori」でワインを飲んできた! はしご酒レポート

荒木町「遊猿」「Chiori」に飲みに行ってきた

飲み友達のNO.5さん、とりゅふさん、そしてはじめましてのガーリエンヌさんを交えて東京・四谷三丁目の飲み屋街“荒木町”で飲もうということになった。

NO.5さんとガーリエンヌさんは荒木町にお詳しいということで、おふたりに案内されて向かったのは中華の名店だという「遊猿」。集合は20時と遅め。入店した遊猿は一見して中華とは思えないような無国籍でウッディでオシャレな内装だ。メニューはなく、料理も飲み物も黒板に書いてあるものから選ぶスタイル。まずはなにもなくとも泡で乾杯しましょうという運びになった。

 

【遊猿1本目】ブルエット プレステージ 
ブラン・ド・ブラン ブリュット

乾杯の泡はブルエット プレステージ 
ブラン・ド・ブラン ブリュット。もともとシャンパーニュで暮らしていた一家がボルドーに移住して買いブドウで造るスパークリングワインなのだそうで、母方のひいおばあちゃんがシャンパーニュの生まれでしたくらいのほのかさでシャンパーニュみのある悪くないスパークリングワインだった。厚みのあるブラン・ド・ブランが私は好きなのだが、世の泡を3系統くらいに分類すればその系統だ。

一息ついてまず注文したのは前菜盛り合わせ1人前2240円。「うにゆば」「クリームチーズすじこ」「ホタテの燻製XO醬」といった一癖のあるつまみをちょこちょこと、「クリームチーズすじこ、完全に熟成シャンパーニュの味がしますね…!」とか話しながら食べるのが楽しい。

前菜盛り合わせ。右下の「目光の青のり山椒」もおいしかったなぁ。

それにしても「クリームチーズすじこ」は熟成シャンパーニュと合わせたら新しい素粒子かなんか生まれるんじゃないか、というニュートリノ的味わいがしたので同店を訪ねたら必食かと思う。

右下が「クリームチーズすじこ」。熟成シャンパーニュ味としか言いようがない味。

 

【遊猿2本目】セント・クレア リースリング

つまみが酒が進む系なので1本目は秒で開き、続いてはなんとなく中華に合いそうですよねくらいの理由でセント・クレア リースリングを注文。オーストラリアはマールボロの生産者で、そのリースリングはなんといっても過去一レベルの色の薄さが特徴的。下写真を見ての通りポカリ具合で、ポカリっていうよりむしろアクエリか…? というほどの薄さ。

色の薄さから想起される通り味わいも薄め。ほんの少しガソリンスタンド香と柑橘系の香りはあるものの、あとは極めてフラットで旨みよりもクリアであることを指向しているタイプの純米吟醸みたいなとにかくフラットな味わい。料理の味わいを邪魔せずスイスイ飲める個性がないのが個性みたいなタイプのワインだった。

このワインが各人のグラスから消滅するくらいのタイミングで運ばれてきたのが「鰯の春巻き」でこれが料理の今日イチ。

鰯の春巻き。絶品・オブ・ザ・デイ。

ちょっとした尺八みたいななにかを思わせる巨大な皮に包まれているのは、ふわっふわで生臭さゼロの鰯、そしてカリカリの梅。食べ応えもしっかりあるし、イワシはジューシーで旨みが溢れ、それに梅干しが文章における句点のように全体をシメまくっている。うまやば。

 

【遊猿3本目】ルナリア マルヴァジア・ビアンカ・オレンジ 

ワインは3本目に突き進み、次も魚料理をオーダーしていたのでオレンジワインをオーダーした。ルナリアの「マルヴァジア・ビアンカ・オレンジ 」で、「これ、おうちのカタチの箱に入ってるワインですよね?」とどなたかがおっしゃっていたが、なるほどそれには見覚えがある。箱ワインなのにナチュラルな造り、みたいなことで話題になったのを見た記憶があるというワイン。

色合いはオレンジというよりロゼのような赤みがかった色で、味わいの印象は……これが悲しいことにとくにない。続いてオーダーした「甘鯛のうろこ揚げ」(これも素晴らしい一皿)の味わいを邪魔しない、ワイン単体で突出しない味わいだったような気がする。

甘鯛のうろこ揚げも素晴らしかった。このあんかけ、シャンプー代わりに頭からぶっかけてもらいたいレベル。

このあたりで割とお腹もいい具合だったのだが、「ここに来たらぜひ食べるべき」だという経験者おふたりの声に押されてスペアリブもオーダー。「毛沢東スペアリブ」という中国共産党感あふれる名称の一皿だ。

毛沢東スペアリブ。食べるタイプの文化大革命

これ、もともとは青山シャンウェイのスペシャリテなのだそうで、遊猿の大内誠也シェフが青山シャンウェイの料理長を務めていた経緯から、遊猿でも人気の裏メニューとして定着しているのだそうだ。ちなみに「毛沢東スペアリブ」は寺門ジモン氏が命名したそうです。トーキョーYOASOBIみが深い。

毛沢東スペアリブの揚げたスペアリブの周りに大量の香辛料がまぶされたド迫力のビジュアルはまさしく食べる文化大革命の感があり、油断していると紅衛兵から自己批判を促されそうな非常にスパイシーな味わい。食べきれずに持ち帰らせてもらったが、翌日に食べてもとてもおいしかった。

そんなわけで遊猿では3本のワインと料理を楽しんだのだが、料理の素晴らしさに対してワインはちょっと負けてる印象が正直したのだった。ワインがどうというより、料理が強い。次回お邪魔する際はビールからの紹興酒&ドラゴンハイボール紹興酒ソーダ割り)がいいかもしれない。

 

【Chiori(チオリ)1本目】クロ・アンリ プティ・クロ・ピノ・ノワール 2019

さて、哺乳瓶で老酒かなんか飲んでませんでしたかあなたがた、という今日のメンバー、もちろん2軒目に突入していく。向かったのはニュージーランドワインが中心だというワインバー・Chiori(チオリ)だ。遊猿からは徒歩5秒。幅跳びを専門に訓練した人なら一歩でつくんじゃないかという道を挟んだ向かい側具合の近さだ。

頼んだのは赤ワイン。ピノ・ノワールをオーダーしたようなしないような曖昧な感じだが、提案されたのはお値段お手頃なハウスワインピノ・ノワールと、それよりややお高いピノ・ノワール(だった気がする)。こういうときは、尊敬する安ワイン道場師範のメソッドを適用するのがマイルール。悠揚・悠然みたいな態度でもって「安いほうをいただきましょう」というのが吉だ4本目だし。

以上のような経緯を経て出していただいたのがクロ・アンリのクロ・アンリ・プティ・クロ・ピノ・ノワール 2019で。フランス・サンセールのトップ生産者だというアンリ・ブルジョワニュージーランドで造っているというワイン。

このワインが果実味がしっかりあって酸味渋みもおだやかながらきちんと効いてていい感じにシンプルうまい。なんというか、ラーメン屋でいうところのチャーシューメンでも全部乗せラーメンでもない無印「ラーメン」の良さみたいなのがあって、お店の名刺がわり的なワインがこんな感じだとお店の印象がグッと良くなるというものだ。適温、適グラス、適サーブのいわゆる「三適(そんな言葉はない)」は専門店ならではだなあ。

 

【Chiori(チオリ)2本目】ドメーヌ・ソガ プティ・マンサン2016

つまみは「お腹いっぱいなのでチーズとかドライフルーツとかを適当にお願いします」とオーダーしたところ、誰かがその日最後のワインを飲み干したタイミングで誰かが最後のチーズのかけらを口に運ぶような、3点差の9回裏に放った逆転サヨナラ満塁ホームラン的適量具合。一見の客に対して引き算の接客していただいた感じで、それもよかった好き。

さて、シメにもう1本ということになった。重めの赤か、シメ泡か、はたまた……と悩ましいところだが、入店時に「日本ワインもありますよ」と言われたことを思い出してなにか面白いのありますかと尋ねたところ、ドメーヌ・ソガのプティ・マンサンのバックヴィンテージが出てきた。あらいいじゃない。私はドメーヌ・ソガが好き。とりゅふさんも同じく、ということでそれを頼もうということになったのだがこれがよかった。

iPhoneのテクノロジーを持ってしてもピントを合わせられない泥酔具合

プティ・マンサン単独のワインを飲んだのは初めてだったが、昨年一世を風靡したアプリ・Clubhouseで「Clubhouseワイン会」を主催した際、ゲストの方々が揃って「日本での注目品種」と挙げていた品種。遅摘みして甘口ワインを仕込むのに使われるというだけに香り甘やか、味わいドライ、全体の印象は華やかで、そこにドメーヌ・ソガのワインに私が勝手に思っている印象としての土っぽさが加わってしみじみうまい。「液」というより「つゆ」と呼びたい滋味がある。ぶどうでつくったおいしいおつゆみたいな。

というわけでうまいうまいとこれを飲み干すと、20時からはじめた会はほぼ終電の時間を迎え、各人の酔いもいい具合に頂上付近にまで高まって(ましたよね、みなさん?)、店を出てなぜかすぐに駅には向かわずに荒木町をグルグル歩き回るというプチ奇行の後、荒木町の外に出ると魔法が解けてしまうガラスのグラス(普通)を手にした飲酒シンデレラ一同は家路に着いたのだった。その設定で私はなに役だろうか。馬かなんかですかね。まあいいか。みなさん、また飲みましょう!

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【ふるさと納税】余市町感謝祭2022限定ワインセットをまとめてみた。【ドメーヌ・タカヒコ】

余市町感謝祭2022。ふるさと納税余市のワインをもらおう

2022年11月3日15:00〜11月10日23:59の日程で開催される「余市町感謝祭2022」。要は地方自治体のふるさと納税キャンペーンなのだが、北海道余市町は日本でもっともアツいといってもいいワイン産地。

入手困難なドメーヌ・タカヒコを筆頭に、ドメーヌ・アツシスズキ、ドメーヌ・モンといったドメーヌ・タカヒコ門下生のワインを入手することができることから例年大人気となり、あっという間に完売、みたいなことが続いている。

私は北海道余市町のファン。この日のために今年度のふるさと納税の枠を守り抜いてきた感があり、もちろん寄付予定なのだが、一覧ページでは寄付金額が確認できず、内容を確認するにはブラウザの戻るボタンをいちいち押す必要があるなど、ちょっぴり面倒。

というわけでワイン愛好家は楽天ユーザが多いことから、「楽天ふるさと納税」で取扱のあるセットだけをまとめてみた。寄付の参考に、ぜひご覧ください。

 

■まるごとドメーヌ一門21本フルセット【余市町感謝祭2022限定】希少・3セット限定

寄付金額:48万円

ドメーヌ・タカヒコ


「ロゼドノワール 2020」750ml/ロゼ※ふるさと納税限定キュベ


「ナカイブラン 2020」750ml/白※ふるさと納税限定


「ヨイチ・ブラン トオルシャルドネ 2021」750ml/白


「ナナツモリ 2021」750ml/赤


「ヨイチ・ノボリ ナカイブラン ミズキのケルナー 2022」750ml/白 王冠キャップ使用 ※ふるさと納税限定キュベ


「ナナツモリブランドノワール 2021」750ml/白


「ヨイチノボリパストゥグラン 2021」750ml/赤

ドメーヌ・アツシスズキ


「トモ・ルージュ 2021」750ml/赤

ドメーヌ・モン


「モンケル 2020」750ml/白


「モンケルAK 2021」750ml/白


モンブランAK 2020」750ml/白


「ハセドン(長谷川ヴィンヤード)2021」750ml/白※ふるさと納税限定キュベ


「ドングリ 2021」750ml/白
「モンロゼAK 2021」750ml/ロゼ
ランセッカ


「早花咲月 2021」750ml/泡白


「蛙鳴千草Garoma Karoma 2021」750ml/白


「カンブラン 2022」750ml/泡白
山田堂


「ナイアガラスパークリング 2021」750ml/泡白


「ナイアガラスパークリング 2022」750ml/泡白


「Yamada-Dō Cuvée Yoichi 2022」 750ml/種類未定 
LOW BROW CRAFT



ふるさと納税限定キュベ 2022」750ml/種類未定 



余市を醸す12人の造り手たち【余市町感謝祭2022限定】 希少・ワイン12本セット

寄付金額:18万3000円

ドメーヌ・タカヒコ


「ヨイチ・ブラン トオルシャルドネ 2021」750ml/白
ドメーヌ・モン


「モンケルAK 2021」750ml/白
ランセッカ


「蛙鳴千草Garoma Karoma 2021」750ml/白
山田堂


「ナイアガラスパークリング 2021」750ml/泡白

平川ワイナリー


「LʼEMBRUN 2019」750ml/泡ロゼ※ふるさと納税限定キュベ
モンガク谷ワイナリー


「薄紅桧2021」750ml/ロゼ※ふるさと納税限定キュベ
リタファーム&ワイナリー


「キュベリタ・ソーヴィニヨン・ノンデゴルジュマン 2020」750ml/泡白
キャメルファームワイナリー


「ピノノワール プライベートリザーブ 2019」750ml/赤
ワイナリー夢の森


ピノノワール 2021」750ml/赤
エコヴィレッジ


「スパークリングワイン 2021」375ml/泡ロゼ
10Rワイナリー


「木村農園ピノノワール 2019」750ml/赤
LOW BROW CRAFT


「ふるさと納税限定キュベ 2022」750ml/種類未定 



余市を醸す11人の造り手と生産者たち[2]【余市町感謝祭2022限定】希少・ワイン12本セット

寄付金額:16万5000円

ドメーヌ・タカヒコ


「ヨイチ・ブラン トオルシャルドネ 2021」750ml/白


「ヨイチ・ノボリ ナカイブラン ミズキのケルナー 2022」750ml/白 王冠キャップ使用 ※ふるさと納税限定キュベ
ドメーヌ・モン


「モンブランAK 2020」750ml/白
ランセッカ


「蛙鳴千草Garoma Karoma 2021」750ml/白
山田堂


「ナイアガラスパークリング 2022」750ml/泡白
平川ワイナリー


「フィデリテ 2016」750ml/赤
モンガク谷ワイナリー


「薄紅桧2021」750ml/ロゼ※ふるさと納税限定キュベ
リタファーム&ワイナリー


「キュベリタ・ソーヴィニヨン・ノンデゴルジュマン 2020」750ml/泡白
キャメルファームワイナリー


「レガミ プライベートリザーブ NV」750ml/赤
ワイナリー夢の森

ピノノワール 2021」750ml/赤
エコヴィレッジ

「スパークリングワイン 2021」375ml/泡ロゼ
LOW BROW CRAFT


ふるさと納税限定キュベ 2022」750ml/種類未定 

 

■生産者が集まる登地区[1]【余市町感謝祭2022限定】希少・ワイン4本セット

寄付金額:5万9000円

ドメーヌ・タカヒコ


「ヨイチ・ブラン トオルシャルドネ 2021」750ml/白
山田堂


「ナイアガラスパークリング 2022」750ml/泡白
リタファーム&ワイナリー


「風のヴィンヤード シャルドネ 2021」750ml/白
LOW BROW CRAFT


ふるさと納税限定キュベ 2022」750ml/種類未定

 

■生産者が集まる登地区[2]【余市町感謝祭2022限定】希少・ワイン7本セット

寄付金額:10万円

ドメーヌ・タカヒコ

「ヨイチ・ノボリ ナカイブラン ミズキのケルナー 2022」 750ml/白 王冠キャップ使用 ※ふるさと納税限定キュベ
ドメーヌ・モン


「ハセドン(長谷川ヴィンヤード)2021」750ml/白※ふるさと納税限定キュベ
ランセッカ


「カンブラン 2022」750ml/泡白
山田堂


「Yamada-Dō Cuvée Yoichi 2022」 750ml/種類未定
モンガク谷ワイナリー


「薄紅桧2021」750ml/ロゼ※ふるさと納税限定キュベ
リタファーム&ワイナリー


「キュベリタ・ソーヴィニヨン・ノンデゴルジュマン 2020」750ml/泡白
LOW BROW CRAFT


ふるさと納税限定キュベ 2022」750ml/種類未定 

 

■生産者が集まる登地区[3]【余市町感謝祭2022限定】希少・ワイン6本セット

寄付金額:8万6000円

ドメーヌ・タカヒコ


「ヨイチ・ノボリ ナカイブラン ミズキのケルナー 2022」 750ml/白 王冠キャップ使用 ※ふるさと納税限定キュベ
ドメーヌ・モン

「ハセドン(長谷川ヴィンヤード)2021」750ml/白※ふるさと納税限定キュベ
ランセッカ

「ノボリコノボリロゼ 2020」750ml/泡ロゼ
山田堂


「ナイアガラスパークリング 2022」750ml/泡白
モンガク谷ワイナリー

「薄紅桧2021」750ml/ロゼ※ふるさと納税限定キュベ
LOW BROW CRAFT


ふるさと納税限定キュベ 2022」750ml/種類未定 

 

余市町を代表する白ワイン【余市町感謝祭2022限定】希少・ワイン5本セット

寄付金額:8万円

ドメーヌ・タカヒコ


「ヨイチ・ブラン トオルシャルドネ 2021」750ml/白


「ヨイチ・ノボリ ナカイブラン ミズキのケルナー 2022」 750ml/白 王冠キャップ使用 ※ふるさと納税限定キュベ
ドメーヌ・モン


「モンケルAK2021」750ml/白
ランセッカ


「蛙鳴千草Garoma Karoma 2021」750ml/白
平川ワイナリー


「ノートル 2020」750ml/白

 

■ドメーヌ一門[1]【余市町感謝祭2022限定】2023年春発送・希少・ワイン5本セット

寄付金額:7万円

ドメーヌ・タカヒコ

「ヨイチ・ブラン トオルシャルドネ 2021」750ml/白
ドメーヌ・モン


「ハセドン(長谷川ヴィンヤード)2021」750ml/白※ふるさと納税限定キュベ
ランセッカ


「早花咲月 2021」750ml/泡白
山田堂


「ナイアガラスパークリング 2022」750ml/泡白
LOW BROW CRAFT


ふるさと納税限定キュベ 2022」750ml/種類未定 


■日本ワイナリーアワード2022[2]【余市町感謝祭2022限定】希少・ワイン6本セット

寄付金額:11万2000円

ドメーヌ・タカヒコ


「ヨイチ・ノボリ ナカイブラン ミズキのケルナー 2022」 750ml/白 王冠キャップ使用 ※ふるさと納税限定キュベ
平川ワイナリー


「LʼEMBRUN 2019」750ml/泡白※ふるさと納税限定キュベ


「ローズドヴァンテールドヨイチ2020」750ml/
ロゼモンガク谷ワイナリー


「薄紅桧 2021」750ml/ロゼ※ふるさと納税限定キュベ
リタファーム&ワイナリー


「キュベリタ・ソーヴィニヨン・ノンデゴルジュマン 2020」750ml/泡白
キャメルファーム


ピノノワール プライベートリザーブ 2019」750ml/赤

 

■日本ワイナリーアワード2022[6]【余市町感謝祭2022限定】希少・ワイン7本セット

寄付金額:13万4000円

ドメーヌ・タカヒコ

「ヨイチ・ノボリ ナカイブラン ミズキのケルナー 2022」 750ml/白 王冠キャップ使用 ※ふるさと納税限定キュベ
ドメーヌ・モン


「モンケルAK2021」750ml/白
平川ワイナリー


「LʼEMBRUN 2019」750ml/泡白※ふるさと納税限定キュベ


「LʼEMBRUN 2019」750ml/泡ロゼ※ふるさと納税限定キュベ
モンガク谷ワイナリー


「薄紅桧 2021」750ml/ロゼ※ふるさと納税限定キュベ
リタファーム&ワイナリー

「風のヴィンヤード ピノノワール 2019」750ml/赤
キャメルファーム


ピノノワール プライベートリザーブ 2019」750ml/赤



■まるごとドメーヌ・モン[1]【余市町感謝祭2022限定】希少・ワイン5本セット

寄付金額:8万2000円

ドメーヌ・モン
「モンケルAK 2021」750ml/白
モンブランAK 2020」750ml/白
「ハセドン(長谷川ヴィンヤード)2021」750ml/白※ふるさと納税限定キュベ
「ドングリ 2021」750ml/白
「モンロゼAK 2021」750ml/ロゼ 

 

■まるごとドメーヌ・モン[2]【余市町感謝祭2022限定】希少・ワイン5本セット

寄付金額:7万8000円

ドメーヌ・モン
「モンケル 2020」750ml/白
「モンケルAK2021」750ml/白
「ハセドン(長谷川ヴィンヤード)2021」750ml/白※ふるさと納税限定キュベ
モンブランAK 2020」750ml/白
「モンロゼAK 2021」750ml/ロゼ

 

■ドメーヌ・タカヒコ×山田堂×LOW BROW CRAFT【余市町感謝祭2022限定】希少・ワイン3本セット

寄付金額:4万8000円

ドメーヌ・タカヒコ


「ヨイチ・ブラン トオルシャルドネ 2021」750ml/白
山田堂


「Yamada-Dō Cuvée Yoichi 2022」 750ml/種類未定
LOW BROW CRAFT


ふるさと納税限定キュベ 2022」750ml/種類未定 

 

■ドメーヌ・タカヒコ×山田堂【余市町感謝祭2022限定】希少・ワイン2本セット

寄付金額:3万5000円

ドメーヌ・タカヒコ


「ヨイチ・ノボリ ナカイブラン ミズキのケルナー 2022」750ml/白 王冠キャップ使用 ※ふるさと納税限定キュベ
山田堂


「Yamada-Dō Cuvée Yoichi 2022」 750ml/種類未定


■ドメーヌ・タカヒコ×LOW BROW CRAFT【余市町感謝祭2022限定】希少・ワイン2本セット

寄付金額:3万3000円

ドメーヌ・タカヒコ


「ヨイチ・ノボリ ナカイブラン ミズキのケルナー 2022」 750ml/白 王冠キャップ使用 ※ふるさと納税限定キュベ
LOW BROW CRAFT


ふるさと納税限定キュベ2022」750ml/種類未定 

 

■平川ワイナリー ふるさと納税限定スパークリングワイン【余市町感謝祭2022限定】希少・ワイン2本セット

寄付金額:5万5000円

平川ワイナリー
「LʼEMBRUN 2019」750ml/泡白※ふるさと納税限定キュベ
「LʼEMBRUN 2019」750ml/泡ロゼ※ふるさと納税限定キュベ 

 

■山田堂「ナイアガラスパークリング」垂直セット【余市町感謝祭2022限定】希少・ワイン2本セット

寄付金額:3万2000円

山田堂
「ナイアガラスパークリング 2021」750ml/泡白
「ナイアガラスパークリング 2022」750ml/泡白

 

■山田堂 2022年醸造ワイン2種【余市町感謝祭2022限定】希少・ワイン2本セット

寄付金額:3万4000円

山田堂
「ナイアガラスパークリング2022」750ml/泡白
「Yamada-Dō Cuvée Yoichi 2022」 750ml/種類未定 

 

■ランセッカのスパークリングワイン2本【余市町感謝祭2022限定】希少・ワインセット

寄付金額:3万円

ランセッカ
「早花咲月 2021」750ml/泡白
「カンブラン2022」750ml/泡白

 

■ドメーヌ・タカヒコ ケルナー2種【余市町感謝祭2022限定】希少・ワイン2本セット

寄付金額:3万6000円

ドメーヌ・タカヒコ

「ナカイブラン2020」750ml/白※ふるさと納税限定キュベ
「ヨイチ・ノボリ ナカイブラン ミズキのケルナー 2022」750ml/白 王冠キャップ使用 ※ふるさと納税限定キュベ

 

■ドメーヌ・タカヒコ ふるさと納税限定キュベ「ミズキのケルナー2022」【余市町感謝祭2022限定】希少・ワイン

寄付金額:2万2000円

ドメーヌ・タカヒコ
「ヨイチ・ノボリ ナカイブラン ミズキのケルナー 2022」 750ml/白 王冠キャップ使用 ※ふるさと納税限定キュベ …1本

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■ドメーヌ・モン 北海道限定「モンロゼAK 2021」【余市町感謝祭2022限定】希少・ワイン1本

寄付金額:2万3000円

ドメーヌ・モン
「モンロゼAK 2021」750ml/ロゼ …1本

[rakuten:f014087-yoichi:10001499:detail]

南アフリカワインを楽しむ方法。産地、ヴィンテージに注目!

南アワインの伝道師・三宅司さんにインタビュー

20年以上にわたり、南アフリカワインを日本に紹介する仕事をし続けてきた株式会社マスダのバイヤー・三宅司さん。前回、なぜ三宅さんが南アのワインと出会ったのかを聞いたのに引き続き、今回は三宅さんに「南アフリカワインの楽しみ方」を聞かせていただいた。

himawine.hatenablog.com南アフリカってワイン造っているんですか!?」と驚かれてばかりだったという時代から20数年。日本でも南アワインは少しずつ広がりを見せてきている。では南アフリカワインの楽しさをもっと深堀りするには? 三宅さんが持ち歩いていた7本のワインを試飲させていただきながら、ヒントを教えてもらった。

(※三宅さんは関西弁でお話ししてくれていますが、私は関西弁話者でなく、正確にニュアンスが出せないので標準語ナイズドしています)

 

南アフリカワインっておいしいよね」の、その先へ

三宅:ありがたいことに、ここ最近は「南アフリカのワインっておいしいよね」とは言っていただけるようになりました。でも、それって「フランスのワインっておいしいよね」と言っているのと同じですよね。

ヒマ:たしかに。フランスの場合だったら、「ブルゴーニュっておいしいよね」「ボルドーおいしいよね」となりますね。

三宅:たとえば僕はコーヒーが好きですが、産地がどうとか気にしていません(笑)。ワインも一緒で、知らん人から見ればどれも「赤ワイン」。でもコーヒー屋さんはちょっとの違いが大事。

ヒマ:たしかに。「知ってるか、知らないか」もっといえば「気にしてるか、してないか」って大きいですよね。嗜好品を楽しむ上で。

三宅さんの「営業ツール」を試飲させていただきながらのインタビューとなりました。

三宅:美術館に行ってピカソの抽象画を観ても全然わからないですけど、解説を読むとこれは戦争に反対して描いた絵なんやねとか、ちょっとわかる。それと同じで、生産者がどう、産地がどうと知って飲むとワインはおいしい。だから僕は“学芸員”として解説して回っているんです。

ヒマ:ワインの学芸員ってすごくいいですね。今回はぜひ南アワインの“オーディオガイド”をお願いしたいです(笑)。

 

南アフリカワインの「地区」と「小地区」に注目してみよう

三宅:たとえば南アでいえば、エルギンやウォーカーベイ、コンスタンシアっていう土地は冷涼。ステレンボッシュは暑すぎず寒すぎず。パール、スワートランドは温暖な土地です。ステレンボッシュでいえばさらに7とか8つの小地区に分かれます。

ヒマ:フランスにはブルゴーニュボルドーといった産地があり、ブルゴーニュはさらにいくつもの村に分かれ……みたいな話ですね。なんとなくエルギン=標高が高くて冷涼。ウォーカーベイ=海の近くで冷涼、みたいなイメージはありますが、他の地域は正直わからないかも……(無知)。

三宅さんにいただいた資料。本記事の内容と連動しているので、ご興味ある方はぜひじっくりご覧ください

三宅:さらに、たとえばステレンボッシュならそこから7つか8つの小地区に分かれるんですよ。たとえば「シモンズバーグ」っていう小地区はカノンコップ、グレネリーといった生産者が有名ですが、これはタンニンがしっかりした赤の産地。ちなみにバーグは「山」っていう意味です。バーグとついたら斜面で標高が高いと思って間違いない。

ヒマ:ほほぅ……。いきなりディープな話になってきましたが、たしかにグレネリーもカノンコップもしっかりした赤のイメージがあります。

三宅:でしょ? 一方、「ボタラリー」「ポカドライヒルズ」っていう地区は酸やミネラルが豊富。ポカドライでいうとライナカっていう生産者が有名です。この「リザーブ・ホワイト(2016)」なんかおいしいですよ。

ヒマ:うまっ。これはソーヴィニヨン・ブランですよね。むちゃくちゃキレイな酸がありながら樽の厚みも感じてとてもおいしいソーヴィニヨン・ブランって感じがします。

三宅:ポカドライに特徴的なミネラルと酸ですね。南アフリカソーヴィニヨン・ブランはおいしいのがたくさんあるから、もっともっと広げていきたいんです。

ヒマ:シュナン・ブランが有名だけどソーヴィニヨン・ブランも負けてないっすねこれは。

三宅:ボタラリーだとハーテンバーグっていう生産者がいます。この「エレノア シャルドネ(2018)」も飲んでみてください。

ヒマ:おいしすぎる……。めっちゃくちゃリッチで果実たっぷり、なのにキレイな酸があってエレガントさも残っています。いきなりすごいなこりゃあ……。

 

乾燥地帯「スワートランド」でデヴィッド&ナディアが自然派ワインを造れる理由

三宅:ポカドライやボタラリーはステレンボッシュの西側でしたが、東側の「ヘルダーバーグ」っていう地区はさらに冷涼で酸がしっかりとある。生産者でいえば柔らかい印象の赤がおいしいロングリッジとか、キアモントも半分そうなのかな。

ヒマ:ステレンボッシュの中でも小地区によって個性が異なるわけですね。

三宅:そうなんです。小地区によっても個性が異なるので、ましてや地区が異なれば品種から変わってきます。たとえばステレンボッシュの北のスワートランドという地区は乾燥地帯。デヴィッド&ナディアなんかが有名です。

ヒマ:おお、自然派で有名な“デヴィナディ”ですね。そんなにたくさん飲んでるわけじゃないですが、味筋(あじすじ)的には温暖な乾燥地帯の生産者っていうのがなんか意外な気がします。

三宅:乾燥しているからカビが発生しにくくて、農薬を使わない栽培と相性がいいみたいですね。ただ、灌漑もしないでほったらかしだから、ブドウの成長は完全にお天道様まかせ。ようやるなって思います(笑)。このエルピディオス(2019)は僕の大好きなワイン。ぜひ飲んでみてください。

ヒマ:いやー、しみじみおいしいですね。ハーブの感じがあるかと思えばちょっとキャンディみたいな甘やかな香りもして、いろんな味わいが重なり合っている。ちょっとピノ・ノワールっぽいけど、品種はなんですか?

三宅:グルナッシュ、シラー、カリニャン、サンソー、それにピノタージュかな。スペインや南仏にもよく使われる、暑さに強い品種ですよね。ワイン造りは年間降水量が600〜800mlが理想といわれていて、ステレンボッシュはまさにそれくらいなんですが、スワートランドは400mlくらいなんです。

ヒマ:400mlっていうと、最近の東京だと大雨が続くとほんの数日でそれくらいの降雨量だったりしますから、どれくらい乾燥しているかわかりますね。

三宅:枯れた葉っぱが地面の上にマットみたいに敷いて、それによって根を保水したりといった工夫をしていますね。

ヒマ:にしても、このエルピディオスは「暑い土地のワイン」って感じがしませんね。

三宅:暖かい土地で育ったブドウを早めに収穫してるんです。このクローヌのロゼも飲んでみてください。同じく暖かい土地で育ったブドウを早摘みしています。

これ驚異的においしかった

ヒマ:めっっちゃくちゃおいしいですねこれ。なんですかこれは。どうなってるんですか。税抜き価格4200円と価格も安くはありませんが、それにしたってうまい。ちょっと熟成感を感じて、果実と酸が両方豊かなめちゃくちゃいいロゼスパークリングです。

三宅:シャンパンのなかにこのワインを1本混ぜてもみんなわからないですよ。ピノ・ノワールがメインのワインなので、白の役割も赤の役割も果たせる優れものです。

ヒマ:酸が豊かなワイン=冷涼な産地と思っていましたが、暖かい産地で早摘みするという手法もあるんですね。勉強になります。

 

南アフリカワイン屈指の“わかりやすさ”? ヴィラフォンテ シリーズCの衝撃

三宅:デヴィッド&ナディアやクローヌが暖かい土地で早摘みしているとしたら、暖かい土地で普通に収穫しているのがヴィラフォンテです。

ヒマ:出た! 以前試飲会で別のキュヴェを飲ませていただいて異様においしいと感じたやつ。オーパス・ワンの元栽培責任者が育てたブドウで造ってて、南アのオーパスワンと呼ばれてるんですよね。

三宅:前に飲んでもらったのはメルローやマルベックが主体の「シリーズM」でしたが、今日はカベルネ・ソーヴィニヨン主体の「シリーズC」です。

これはすごいワインだと思います

ヒマ:なんですかねこれは。「わかりやすいワイン」の究極って印象があるっていうかうますぎますねこれは。2020ヴィンテージと若いのに今飲んで全然うまい。まったくもっておいしいです。とにかく果実がすごく、甘いだけでない酸とタンニンもあって。「おいしさ」レベルが突き抜けてます。

三宅:シリーズC、おいしいですよね。もうひとつのシリーズMはヴィンテージが古い分、今出回っている分は値段が手頃ですから、そちらもオススメです。ヴィラフォンテはカノンコップやグレネリーがあるシモンズバーグの東側、温暖なパール地区の「シモンズバーグパール」というエリアに属しています。

ヒマ:グレネリーは元々ボルドーの格付け2級、シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランドの元オーナーがやってるだけにボルドー感がある印象ですが、そこと隣接する温暖な地区で南アのオーパス・ワンが造られるのはむちゃくちゃ納得です。小地区の違いによって味わいの個性が思いっきり出るの面白すぎますね。

 

南アフリカワインのヴィンテージや「TAポイント」に注目してみよう!

三宅:ヴィンテージにも注目すると面白いですよ。南アの赤だと2015と2017はグレートヴィンテージなのは覚えておくといいと思います。2020、2021もいい感じ。2022もいいみたい。2016からの3年間は乾燥が続いた年で、果実味が強いヴィンテージです。

ヒマ:南アのヴィンテージ、全然気にしてなかった……! 価格帯はどうですか? おすすめの価格帯とかあったりしますでしょうか。

三宅:本数としてよく売れるのは1000円台、2000円台ですが、南アフリカは2000円を超えるとかなりいいものが揃うので、できれば2000円以上を出してもらえるとありがたいですね。そうするとおいしいものに当たる確率がグッと高くなります。

ヒマ:ほかに南アフリカのおいしいワインを探す指標はありますか?

三宅:ティム・アトキン(※マスター・オブ・ワイン。毎年南アフリカワインのレポートを発表している)の点数はアテになります。ティム・アトキン95点を超えてくるワイン相当うまいと思っていいと思います。このボッシュクルーフの「エピローグ シラー(2020)」は2017年から3年連続で98点以上(99/98/98)を獲得しています。

ヒマ:うまいしか言ってないですけどこれもうっま。南アフリカのシラーっていうと7つの椅子のラベルのブーケンハーツクルーフが有名ですけど、これはそれに匹敵っていうか超えていってない? っていう印象です。税抜き1万円するから当たり前かもしれませんが……。

三宅:ラベルに「不可能に挑戦する」って小さく書いてあるんですが、その通りのシラーの芸術品だと思います。ボッシュクルーフはステレンボッシュのボタラリーというやや冷涼な小地区の生産者。こっちのキアモントの「スティープサイド・シラー」もおいしいですよ。

ヒマ:うーん、ほんとだ。まだちょっと開ききってない感がありますが、すごくポテンシャルを感じます。

三宅:これは2015ヴィンテージ。2015はグレートヴィンテージなのでとくに赤は長期熟成に向きます。火曜日に抜栓して、数日経過してようやく開いてきました。これはティム・アトキン95点です。

ヒマ:いやしかし、今日飲ませていただいた7本のワインを通じて、地区やヴィンテージに注目すると南アフリカワインの解像度がグッと高まってさらに楽しめるのがなんとなくわかった気がします。

三宅:10年後、20年後、フランスワインはワインのピラミッドの頂点にい続けると思うんです。では2番手はどこか。フランスはひっくり返せないけど、南アフリカは2番手の候補だと思っています。

ヒマ:南アフリカワインの未来に、ますます期待ですね!

(おわり)