ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

ブラインドテイスティング挑戦記【WEEK39】

ブラインドテイスティングWEEK39に臨んで

今週も恵比寿のワインマーケット・パーティでブラインドテイスティングに挑んできた。最近週を追うごとにどんどん盛況の度合いが増してきて、みなさんが一心不乱にグラスと向き合う様子はさながら予備校の自習室の如し。挑むワインは今週は白1、赤2の構成だ。早速いってみよう。



ブラインドテイスティングWEEK39/1杯目

まず1杯目は白ワイン。色は非常に薄く、少し緑がかったような印象がある。見た目的にはかなりフレッシュで、ヴィンテージも若めなんだろうなあと思える。

香りはめっちゃくちゃアロマティックだ。香水の代わりに頭から浴びていいんじゃないかってくらい華やかで甘やかでそれでいて上品な香りがする。方向性としてはバラ、蜜、少しキョウチクトウのような印象の香りだ。

飲むと一転、非常にドライで酸があり、少しの苦味も相まって甘やかな印象は消える。味わいはスッキリだ。

私のなかで香りアロマティック味ドライはゲヴュルツトラミネール。ヴィオニエ、トロンテス、ミュスカ、マルヴァジアといったところが候補になりそうだが、ここはシンプルにゲヴュルツでいってみる。

フランス (アルザス)/ゲヴュルツトラミネール/2022/12.5%


と予想した。

 

ブラインドテイスティングWEEK39/2杯目

2杯目は赤だ。色はやや薄めでグラスの底が透けて見えるガーネット。香りは非常にシンプルなベリー&バニラで、私を飲んでと語りかけてくるような人懐っこい印象を受ける。

飲んでみると意外と酸があり、複雑さもしっかりと感じられてこれは非常においしいワイン。実に好みの味筋だ。

第一印象はカリフォルニアのピノ・ノワール。次いでローヌのシラー、南アのピノタージュといったところ。香りからはカリフォルニアを想起したのだが、飲んだ味わいの複雑さ、酸が意外とある点などから判断が難しい。

のだが、カリフォルニアでもロシアン・リバー・ヴァレーとか、少し涼しい産地ならすごいしっくりくる感じがしたのでこう予想した。

アメリカ(カリフォルニア)/ピノ・ノワール/2020/14% 


 

ブラインドテイスティングWEEK39/3杯目

3杯目は2杯目とは異なりグラスの底が見えないインキーな紫色。香りは道の駅で売ってる農家の手造りブルーベリージャムあるじゃないすか。原材料:ブルーベリー、砂糖、おわり、みたいなやつ。あれ。甘やかで素朴な香りがする。

飲んでみるとこれも意外と酸がある。渋くてギチギチみたいなことはないけれども柔らかい渋みもあり、新世界というよりかは旧世界っぽい印象を受ける。甘みはさほどなく、色の印象の通りまだ固いけれども、いま飲めないことは全然なくておいしい。

飲んだことあるんだよなあ、この味。ド紫なので、マルベックとかタナとか、そういう印象を見た目からは受ける。あとはカルメネールか。スペインのガルナッチャ、テンプラニーリョも候補になりそう。

緑色っぽい要素はないと思うので、カベルネメルローとかではないと思う。シラーにしても紫すぎる気がする。

これは最終的に決め手に欠けたが、
フランス(カオール)/マルベック/2021/14%
と予想した。マルベックは本当はもう少しほっこりした印象があると思うのだがド紫すぎて黒っぽい印象を受けたので、カオールの黒ワインではないかと思った次第です。

 

ブラインドテイスティングWEEK39予想を終えて



というわけで今週も予想が出揃った。ここ数週間の私の予想は総じて不調、不調っていうかそもそも実力がこんなもんという説もあるが、果たして今週私の予想は合っているのだろうか? 解答発表後に追記したいと思うので、お楽しみに。

ブラインドテイスティング挑戦記【WEEK38】

ブラインドテイスティングWEEK38に臨んで

今週も恵比寿のワインマーケット・パーティでブラインドテイスティングに挑んできた。入店するなり沼田店長が、「今、何人来てると思う?(ニヤリ)」と聞いてきた今回、私は88番目の挑戦者。過去最高の挑戦者数になることが確実な今週は、泡1白1赤1の構成だ。

 

 ブラインドテイスティングWEEK38/1杯目

さてまず1杯目は泡だ。グラスの底からたちのぼる泡は非常に細かく非常に豊か。色はやや薄めのゴールド。香りは酸が主体のリンゴ。

泡の細かさ豊かさから、まずは瓶内二次発酵かつそれなりの、24か月以上とかの熟成を経ている気がする。候補は以下のみなさんだ。

南アMCC
カリフォルニア泡
いいカバ
フランチャコルタ
アルタランガ
シャンパーニュ
クレマン・ド・ブルゴーニュ
クレマン・ダルザス
イングリッシュスパークリング

候補多っ。多すぎるんで3択にしよう。

南アMCC
カリフォルニア泡
シャンパーニュ

まず品種はシャルドネに絞りたい。グラスの奥からクリームブリュレのカラメルみたいな香りがするので熟成した姿が美味しいブラン・ド・ブランになりそうなのだ。これはブラン・ド・ブランの赤ちゃん。

悩ましいところだが、この王道のおいしさはさすがにシャンパーニュでしょ。シャンパーニュです! 

フランス (シャンパーニュ)/シャルドネ/NV/12%
/ドザージュ9g/L

と予想した。

 

ブラインドテイスティングWEEK38/2杯目

2杯目はアロマティックな香りがする白ワイン。色合いはやや薄めのグリーンがかったゴールド。草っぽさ、強めの苦味、グレフルの白いとこ感。非常に困る。めちゃくちゃソーヴィニヨン・ブラン感があるのだ。

このブログをいつも見てくださる方はご存知の通り、ソーヴィニヨン・ブランはブラインドテイスティングでもっとも当てやすい品種のうちのひとつであり、私がもっとも当たらない品種のうちのひとつだ。裏の裏を読んでソーヴィニヨン・ブランではないッ!(正解はソーヴィニヨン・ブラン)みたいなことをかれこれ3、4回繰り返している。

「ではない」とすればなんだろう。マルサンヌ&ルーサンヌはありえると思う。ギガルの広域白とかこんな味だ。あとなんだろう。ヴェルデホとか? いやでもヴェルデホ出る? てか本当にヴェルデホだと思ってる(自分への圧)? 

というわけでローヌ白かソーヴィニヨン・ブランしか思い浮かばない。いやあとはソアヴェはあるか。ソアヴェあるな。そしてマジでわからんなこれ。

悩んでいるうちに少し温度が上がってきて、俄然ソアヴェ感(アロマティック草蜜レモンハーブ)出てきたんだよな。もうわかんないからソアヴェ!

イタリア(ヴェネト)/ガルガーネガ/2022/13% 


と予想した。

 

ブラインドテイスティングWEEK38/3杯目

3杯目はすごく素直なガーネット。香りはブルーベリーとかブラックチェリー。そして少しのグリーンノート。後味にヴァニラ。果実は豊かだが、それ以上に渋みが強く、酸もしっかり。こんな教科書的なワインが出ることがあっただろうかこのブラインドテイスティングいやない。

つまりめっちゃくちゃカベルネ・ソーヴィニヨンなのだ。あるいはメルローだが、こりゃカベルネでしょうどこからなにをどっからどう考えても。ワンチャンあるとしたらテンプラニーリョか。

問題はほぼ産地のみと言っていいんじゃないでしょうか。わかりやすい濃さ甘さがないのでカリフォルニアではないと思う。南アでもない。オーストラリアでもないような気がする。となると答えは消去法でチリだ。

チリの海に近い畑の少し標高の高い畑のカベルネ・ソーヴィニヨンでいってみよう。頼むぞ、フンボルト海流!

というわけで

チリ(セントラルヴァレー)/カベルネ・ソーヴィニヨン/2022/13.5%
と予想した。

 

ブラインドテイスティングWEEK38予想を終えて

というわけで今週も予想が出揃った。果たして私の予想は合っているのだろうか? 解答発表後に追記したいと思うので、お楽しみに。

 

【追記】

さて今週もワインマーケット・パーティ公式SNSで正解が発表された。以下、結果を見ていこう。結局95名が参加したそうです。


ブラインドテイスティングWEEK / 正解発表:1杯目

予想:
フランス (シャンパーニュ)/シャルドネ/NV/12%
/ドザージュ9g/L
正解:イタリア(ロンバルディア)/シャルドネ/2016/12.5%
 

/ドザージュ6g/L

というわけでブラン・ド・ブランは正解だったが、フランスではなくお隣イタリア、フランチャコルタが正しい答えだった。悔しいのはヴィンテージ。「ちょい熟してるし、2016〜2018くらいかな」と思ったのだが、「ヴィンテージシャンパーニュは高いし、ブラインドには出ないだろう」みたいなグラスの外側のことを考えてノンヴィンと判断してしまったのだった自分のばかっ。

というわけで、わりと納得のいく回答ができたのだがあと一歩が及ばなかった。シャンパーニュっぽいけどほんのちょっとだけプロセッコっぽい青リンゴ感があったら、今後はフランチャコルタを疑おう。

 

ブラインドテイスティングWEEK38 / 正解発表:2杯目

予想:
イタリア(ヴェネト)/ガルガーネガ/2022/13% 

正解:スペイン(リアス・バイシャス)/アルバリーニョ/2022/13%
 

いっやーーーーーアルバリーニョか。屈辱のソーヴィニヨン・ブランは回避できたが、過去に一度も正答できていない品種・アルバリーニョで仕留められてしまった。

ソーヴィニヨン・ブラン的な草っぽさとヴィオニエみたいな花蜜っぽさが共存していて、北国の岩清水感はないのがアルバリーニョ。「最近ソアヴェ飲んだから」みたいな雑な理由で回答した己を恥じたい。

 

ブラインドテイスティングWEEK38 / 正解発表:3杯目

予想:
チリ(セントラルヴァレー)/カベルネ・ソーヴィニヨン/2022/13.5%
正解:フランス(ボルドー)/メルロー主体、カベルネ・フランカベルネ・ソーヴィニヨン/2016/14.5%
 

沼田店長の名言に「カベルネ・ソーヴィニヨンメルローの当たる確率は半々」というものがあるが、丁半博打に見事に負けて正解はメルロー。青草感を強く感じ、輪郭に丸みを感じなかったのでメルローではないと判断したが無念だ。熟成が進んでいる感じもまったく感知できなかった。

そしてなにより、「ブレンドが主流のボルドーはブラインドで出にくい」というこれまたグラス外の情報を判断材料にしてしまったのが致命的だ。いいかい坊や、グラスの外側に正解はないんだよっ!

というわけで今週は3問正解に3問目が1点加点で3.1問正解みたいな雰囲気になった。先週に引き続き、非常に不甲斐ない結果に終わってしまったので、来週こそ上位目指して頑張りたい次第です。

セドリック・ブシャールとかクリュッグのロゼとかクリスタルが当たるくじ↓

a.r10.to

中川ワインの試飲会すごいよかったのでぜひ↓

himawine.hatenablog.com

 

1980円から20万円まで!93種類飲んで発見「最強ワイン」3選

「中川ワイン」の試飲会に参加した

カリフォルニアワインのインポーターとして名高い「中川ワイン」の試飲会に参加してきた。

希望小売価格(税別)1980円のワインから200000円のワインまで、全93種類を試飲したうち、とくにこれはすごいぞと思ったワインをご紹介したい。キーワードはみっつ。

・デコイ

・グロウワー

・トーマス・リヴァース・ブラウン

のみっつだ。早速いってみよう。

 

個人的キーワード1:「デコイ」

まず声を大にして言いたいのが、「デコイはヤバい」ということだ。チリの「コノスル」が1000円前後のレンジで圧倒的においしいように、デコイは実勢価格3000円前後のレンジで特筆すべき品質だと思う。3000円以下の安ワイン大好き勢にとっては、デコイ買っとけば間違いないっすと断言できるレベル。

とくに、
【世界異様コスパ泡大賞有力候補】ブリュット・キュヴェ スパークリングワイン 3300円


【93種類のうち飲みやすかった赤NO.1】ジンファンデル カリフォルニア 2900円


【実勢3000円台世界最強メルローの可能性】デコイ・リミテッド メルロ アレキサンダー・ヴァレー 4400円


あたりはコスパが完全にぶっ壊れている。(ちなみに【 】内はヒマワインが勝手につけたキャッチコピーです)

 

デコイ ブリュット・キュヴェ スパークリングワイン

これめっちゃおいしくて、最後ちょっとだけ「念のためもう一度味わいを確認しておきたい」かなんか言っておかわりいただいてしまいましたことを告白しますすみませんすみません。

ブリュット・キュヴェ スパークリングはピノ・ノワール49%、シャルドネ47%、ムニエ4%とシャンパーニュと同じ品種を使って瓶内二次発酵させたワイン。ブドウのソースはノース・コースト&セントラル・コーストと広域なのだがもうこれほぼシャンパーニュなんじゃないか、シャンパーニュを名乗っちゃっていいんじゃないか(だめ)という味がする。

希望小売価格は3300円で、ネットで調べると2700円とかで売られているのだが、昨今の円安に伴いほぼこの値段で買えるシャンパーニュはなく、結果的にこれは価格に対して世界最強級においしい泡ということになる。なんならそもそも安いシャンパンよりうまい。南アのMCCとコスパでいえば双璧みたいなことになるだろうか。南ア好き勢に試してもらいたい。

 

デコイ ピノ・ノワール カリフォルニア2021&ジンファンデル カリフォルニア 2021

白も高コスパなのだがデコイはとくに赤がヤバい。希望小売価格2900円のピノ・ノワール カリフォルニア2021とジンファンデル カリフォルニア 2021はともに2000円台のBEST BUY。とくにジンファンデルは嫌いな人いないでしょこれ・オブ・ザ・イヤー。カリフォルニア特有の果実味はありながら甘すぎず、酸もある。

 

デコイ・リミテッド メルロ アレキサンダー・ヴァレー2021

そしてこの日の超驚愕ワインが上級レンジであるデコイ・リミテッドのメルロ アレキサンダー・ヴァレー2021だった。

コスパという概念ごとぶっ壊しにきてる

私がワインを評価する独自基準に「やわらかさ」があり、100%主観の完全定性評価ではあるのだが、このワインはやわらかさにおいては5桁円クラスのワインに一歩も引けを取っていなかったと思う。

デコイはダックホーンの廉価レンジであり、ダックホーンはメルローの名手。ハイコスパワインを造る手腕とメルローを造る手腕が正面衝突して生まれた新たな素粒子が、このデコイ・リミテッドのメルロ アレキサンダー・ヴァレー2021だ。断言する。このワインは素粒子だ(自分でもなにを言っているかわからない)。

このワインなんと3000円台で買えちゃうんですよ実勢価格だと(定価4400円)。友だちへのプレゼントや手土産にもちょうどいい価格帯。ホムパお呼ばれで褒められ続出間違いなしですよこれは。「おいしい〜」とか「ワイン苦手だけどこれなら飲める〜」とかじゃなく、「これ楽天で買える!?」って聞かれると思う(真顔で)。

というわけでデコイはヤバい。デコイ・イズ・ヤバい。

 

中川ワインの試飲会でおいしかった白ワイン

デコイの話に終始してしまうので、次なるテーマに行く前に白ワインで印象に残ったのをいくつか記録しておきたい。

ベッドロック ソーヴィニヨン・ブラン ソノマ・ヴァレー2022

ベッドロックのソーヴィニヨン・ブラン ソノマ・ヴァレー2022は樽をしっかり効かせたソーヴィニヨン・ブラン。まるでボルドー・ブランとカリフォルニアのシャルドネの中間地点みたいな独特の味筋でとてもおいしかった。5500円。

 

マックマニス ヴィオニエ2022

マックマニスのヴィオニエ2022は1980円とこの試飲会の最安値だが、これは超ハイコスパ。酸がしっかりあって白桃感たっぷりで実に美味。

 

リンカーン・セラーズ シャルドネ ナパ・ヴァレー2018

そして5000円以下のシャルドネBEST BUYがリンカーン・セラーズのシャルドネ ナパ・ヴァレー2018。飲み頃のど真ん中、スイートスポットに今突入している印象で、樽に頼りすぎず果実に頼りすぎずバランスで勝負していておいしい。ネットだと4000円をギリ超える価格なので、ちょっと贅沢したい日の候補に。

 

個人的キーワード2:ハドソンとピゾーニ。栽培家(=グロウワー)が造るワイン

そして、次のキーワードは「グロウワー」だ。シャンパーニュで新世代のRMをグロウワーと呼んだりするみたいだけど、カリフォルニアにもグロウワー系生産者はいて、中川ワインでいえばハドソンとピゾーニが双璧みたいに言っちゃっていい気がする。

 

ハドソン・ヴィンヤード シャルドネ カーネロス ナパ・ヴァレー2021

ハドソン・ヴィンヤードもピゾーニ・ヴィンヤードもいずれもカリフォルニアの有名畑。どちらも自社ワインを造っているのだが、まずはハドソンのシャルドネ カーネロス ナパ・ヴァレー2021(13000円)が素晴らしかった。

カリフォルニアワインは以前よりエレガントな路線になっていると耳にするけれど、それでもやっぱり濃くて強いものが多いと思うのだがハドソンはエレガント。

この日来日したラ・ペレのワインメーカー、マーヤン・コシツキさんが「樽はあくまでもワインのサポーター」と良いことをおっしゃっていたが、このハドソンのワインにも同じことを感じた。

マーヤンさん。シャルドネではなくソーヴィニヨン・ブランを造るのは「カリフォルニアはシャルドネには暑すぎる。だから僕はサンセールスタイルのソーヴィニヨン・ブランを造るんだ」とのこと

栽培家=グロウワーだからこそ、果実の良さを活かす造りになるのだろうか。以前、ウエストソノマコーストの造り手「フリーマン」のアキコ・フリーマンさんが「シャルドネにとっての樽は女性にとってのお化粧」とおっしゃっていたが、ハドソンのワインには素材の良さを活かした薄化粧の美があると思う。

 

 ルチアbyピゾーニ ピノ・ノワール エステート・キュヴェ 2022

そして、もうひとつのグロウワー、ピゾーニが手がけるルチアbyピゾーニのピノ・ノワールがこの日の私のMVPワインとなった。なんだこりゃうますぎる。

デコイのメルロー同様に、まず非常にやわらかい。それでいて酸がしっかりとある。やわらかさと酸は相反する要素な気がするのだがグラスの中で共存しており、そこに果実が主張しすぎず通奏低音のように流れている。

価格は1万円と高級なのだが、今回のベストコスパワインはこれだ! みたいな気分になる。高名なピゾーニ・ヴィンヤードに加えて、ゲイリーズ、ソベラネスという3つの畑から造られるワイン。単一畑より複数畑のブレンドのほうが味わいのバランスが取れる説、正しいような気がする。

 

キーワード3:醸造家トーマス・リヴァース・ブラウン

でもって最後、個人的キーワードの3つ目はトーマス・リヴァース・ブラウンだ。いや今回「うわこれうまっ!」となったワインの多くが、TRBの手がけたワインだったわけなんですよ。

 

すごいシャルドネ4選

シャルドネでは4種類「これはすごい」と思うワインがあって、そのひとつが前述したハドソン。残りは、
【バランス最強の濃い系】センシーズ シャルドネ ラシアン・リヴァー ソノマ・コースト2019(14000円)

【南国フルーツと北国フルーツの激突】リリックス シャルドネ ブラウン・ランチ・ヴィンヤード 2020(20000円)


【今回ベストシャルドネこれ疑惑】シブミ・ノール シャルドネ ブエナ・ティエラ。ヴィンヤード2020(24000円)


この3つなのだがこれがすべてTRB印。カリフォルニアらしく味わいは濃いのだが、あと一歩、そこから先に足を踏み入れたらクドくなるというラインの手前でピタリと止まり、そのラインの内側で完璧なバランスを組み上げるような造り。

白でいえば果実と酸と樽、赤でいえば果実と酸と渋みがすべてバチバチに強いのに、飲んだ印象はバランスが取れてエレガント。イヴ・サン・ローランじゃなくてラルフ・ローレンのスーツのイメージだ。

 

すごい赤ワイン4選

単純に私の好みとTRBスタイルが合うだけなのかもしれないが、今回は本当においしいと思ったワインのTRB率が異常だった。赤も列挙すると以下になる。

【すっぱいのに超うまい希少種】センシーズ ピノ・ノワール デイ・ワン ヒルクレスト・ヴィンヤード2021 (28000円)


【バランス最高峰。飲むマイク・トラウト】ダブル・ダイヤモンド カベルネ オークヴィル ナパ・ヴァレー 2021(14800円)

ダブル・ダイヤモンド。飲むキャプテン・アメリカ


【TRB所有ワイナリー。そりゃうまいよ!】リヴァース・マリー カベルネ・ソーヴィニヨン2021(18000円)


【パーカー100点の20万円ワイン】シュレイダー オールド・スパーキー・カベルネ・ソーヴィニヨン マグナム2021

今回最高額のオールド・スパーキー。もうおいしい!

 

10000円を超える高級ワインはそりゃもうどれもおいしくないはずないのだが、さすがに20種類も続けてテイスティングすると、私レベルの低テイスティング能力では差分がわからなくなってくる。

なのだがやっぱり何種類かにひとつ「おっ」というワインがあって、それが大概TRBものなのだ。スーパーワインメーカーの名にガチで全然恥じてないと思う。造るワインに個性があって、とてもおいしい。

じゃあその個性ってなんだ言え、となると思うので私が思うところを以下に列挙する。
・濃いけどエレガント
・酸がしっかりとある
・樽の使い方が穏やか
・全体にとても柔らか
・とにかく飲みやすい

こんな感じだ。印象としてはカリフォルニアとフランスの汽水域という感じで、旧世界と新大陸を結ぶ大西洋上に浮かぶトーマス・リヴァース・ブラウン島で造られるワイン、みたいなフランスとカリフォルニア両方の良さを併せ持つ感じがする。

シャルドネピノ・ノワールカベルネ・ソーヴィニヨンもおいしいが、以上の傾向が一番強く味わえるのはダブル・ダイヤモンド。ダブル・ダイヤモンドはやべえ。濃いのにエレガントなキャプテン・アメリカみたいなワインだ。

そして最後、93番目に飲んだのがシュレーダーのオールド・スパーキー2019。20万円するパーカー100点のマグナムで品種はカベルネ・ソーヴィニヨンとなると、印象としては今飲むには全然早くてガチガチ、20年後に会おうみたいな感じかと思いきや全然で、今飲んで普通にウルトラうまい。

このアクセスしやすさ、飲みやすさもTRBの造るワインすべてに感じた。リリース後、すぐにおいしいワインは正義。

とにかくトーマス・リヴァース・ブラウンはガチ。TRBが醸造家としてクレジットされていたら一定の品質をクリアしていると思って間違いがないと思う。

 

おいしかったワイン:その他

最後にほかにおいしかったものをまとめよう。

パトリモニー カーヴ・デ・ライオンズ パソ・ロブレス2020

パトリモニーのカーヴ・デ・ライオンズ パソ・ロブレス2020(6万円)がとんでもないワインだった。カベルネ・ソーヴィニヨン65%カベルネ・フラン35%を新樽率100%のフレンチオークで30か月熟成させたというワインで、「山カベ」の最高峰的ワインのひとつなのだそう。

山カベに関してはまったく知見がないので今後の課題とするが、このワインはカベルネながら酸が残って極エレガント。こんなの飲んだことないな、という感じがして衝撃的だった。すごいぞ、パソ・ロブレス。

 

ノリア ピノ・ノワール ウミノ・ヴィンヤード2021

日本人醸造家の中村倫久さんが造るピノ・ノワールも素晴らしかった。日本食に合うワインを追求しておられるのだそうで、たしかにマグロやカツオの刺身とか、なんなら肉じゃがとか焼き鳥(タレ)とかにも合いそうな涼しさのなかに親しみのある味わいで大変素晴らしかった。価格は9000円。

 

印象に残ったワインBEST3

というわけで今回も素晴らしいワインにたくさん出会えた中川ワインの試飲会だった。最後に印象に残ったワインを3つ厳選して稿を閉じたい。(シュレーダーのオールドスパーキーは別格として除外)

それが以下。

デコイ・リミテッド メルロ アレキサンダー・ヴァレー2021

ルチアbyピゾーニ ピノ・ノワール エステート・キュヴェ 2022

ダブル・ダイヤモンド カベルネ オークヴィル ナパ・ヴァレー 2021

ズラリ並んだ中川ワインの93種類のなかで、私には以上3種類のワインが特別光り輝いて感じられた。みなさんもよかったらぜひ、お試しあれ。

なぜかトスカニーでぜんぶ買える↓



ブラインドテイスティング挑戦記【WEEK37】

ブラインドテイスティングWEEK37に臨んで

今週も恵比寿のワインマーケット・パーティでブラインドテイスティングに挑んできた。今週は薄い白1、黄色っぽい白1、やや濃いめの赤1の構成だ。早速味わっていこう。

ブラインドテイスティングWEEK/1杯目

まず1杯目だが甲州だ。いや薄いんですよ、色が。これだけ色が薄い品種、世界中で甲州しかない説。色の印象として透明とかじゃなくて「白」が浮かぶ品種は甲州しかないと思うんすよ自分。

という大いなる予断とともにまずは香りをとっていこう。香りは弱めだ。甲州度ワンポイントアップ。甲州、良くも悪くも香りが弱めだ。もうこれほぼ甲州で決まりだが一応飲んでみるとごめんこれ甲州じゃなかった。

あれおかしいな。ことのほかフルーツたっぷりだな。ヴィオニエとかゲヴュルツとかがありえる感じ。かなり桃の要素が強く、前述したように香りが強くないのでヴィオニエが最有力候補となる。

さすがにソーヴィニヨン・ブランじゃないし色的にピノグリじゃないしリースリングでもない。ヴィオニエでファイナルアンサーしたいけどヴィオニエ→ローヌ→マルサンヌ、という連想ゲームも脳内ではじまってしまった。だがここは初志貫徹でいこう。

フランス (ローヌ)/ヴィオニエ/2021/12/5%
と予想した。


ブラインドテイスティングWEEK/2杯目

2杯目は1杯目と打って変わってムンムンに蜜っぽさが香るワイン。なんだか貴腐ワインみたいな複雑さがある……と思って飲んだらあにはからんや、ハルプトロッケン感のある甘め(そしてちょっぴり後味苦め)のワインだった。

分類としては「やや甘口」だと思う。ドイツのリースリングか、ボルドーか。あとわかりやすく甘いワインで出題される可能性があるのってどこの何だろう。

しっかり黄色くて、酸はさほどじゃなくて旨みがしっかり乗ったやつ。飲んだことあるんだよなこれ。

……これプティ・マンサンじゃない? カリンとか黄金糖みたいな感じがあって。ソーテルヌにしては甘くないしドイツにしては酸が弱めだし。ジュランソンみありませんかこれ。いやこれジュランソンみしかない。ジュラみしか! ない!

というわけで

フランス(ジュランソン)/プティ・マンサン/2019/13%
と予想した。 


 


ブラインドテイスティングWEEK/3杯目

3杯目は紫感の強い色合いで香りは割と素直にベリー。あと皮。少し陰気で、イタリアの風がグラスの底から吹いてくる感じがする。

第一印象はサンジョヴェーゼ。サンジョヴェーゼは私の中で両性具有品種。赤ワインの性別は赤いか紫(黒)かだと思うわけだがサンジョヴェーゼはその両方の特徴を兼ね備えてる印象がある。そしてこのワインは紫寄りの印象だ。

次なる候補はバルベーラ。バルベーラはド紫品種という印象で、両者の共通点は果実と酸がしっかりしているところだと思う。あと可能性としてあるのはシラー、テンプラニーリョ、グルナッシュとかか。薄い確率でアルゼンチンのマルベック。緑の感じがないのでカベルネ系、メルローではない。

いやでもやっぱこれサンジョヴェーゼじゃないな。赤い要素がないもんな。てことはバルベーラなんすよ。バルベーラ・ダスティ一択なんすよ。

というわけで、
イタリア(ピエモンテ)/バルベーラ/2020/13.5%
と予想した。

よーし今週はしっかり自分軸で予想できたぞ、と思ったのだが回答用紙に並んだのは「ヴィオニエ/プティ・マンサン/バルベーラ」という答え。え、こんなブラインドテイスティングありえる?(難易度的な意味で)

というわけで今週は1個でも引っかかっていたら嬉しいみたいなことに結果的になった感がある。ブラインドは難しいなあ。みなさんもぜひ予想してみてください。

 

ブラインドテイスティングWEEK予想を終えて

というわけで今週も予想が出揃った。果たして私の予想は合っているのだろうか? 解答発表後に追記したいと思うので、お楽しみに。

ブラインドテイスティング挑戦記【WEEK36】

ブラインドテイスティングWEEK36に臨んで

今週も恵比寿のワインマーケット・パーティでブラインドテイスティングに挑んできた。今週は白1、赤2の構成だ。ちなみに今回19時過ぎに挑戦したので時間がまったくないなかでの執筆。乱文・乱筆ご容赦いただきたい。

 

ブラインドテイスティングWEEK36/1杯目

色は薄め、少し緑がかったように見えるイエローで、香りはかなりさわやか。

飲んだ印象は非常に高い酸。果実味もたっぷりあって、あとあじに少しの苦味がある。

いやこれ第一印象はソーヴィニヨン・ブランだな。あとはグリューナー・フェルトリーナーか。シュナン・ブランもありそうだ。ヴィオニエもありそう。

で、私は過去2回連続でもっとも当てやすいと言われるソーヴィニヨン・ブランを外している者なんですよ。もう外せないんですよ。だからこそ怖いんだよソーヴィニヨン・ブランと書くのが!

というわけで(怖いので)ロワール行ってきます。

フランス(ロワール)/シュナン・ブラン/2022/12%

 

ブラインドテイスティングWEEK36/2杯目

2杯目は一転、明るめ紫に甘めの味わい。あとあじに少しタバコ。でもって私は先週カリフォルニアのピノ・ノワールをプリミティーヴォと断言した者なんですよ。

2週連続でプリミティーヴォと回答し切ることが私にできるだろうか。それともチリのカベルネ・ソーヴィニヨン、オーストラリアのシラーズ、南アのピノタージュあたりと答えるべきか。

野菜っぽさがないのでカベソーでなく、スパイスがいないように感じるのでシラーズではなく、なんとなくピノタージュでない!

というわけでこれだ!

アメリカ(カリフォルニア)/ジンファンデル/2020/14%

と予想した。

 

ブラインドテイスティングWEEK36/3杯目

3杯目はブドウを絞ってそのまま置いておきましたといった印象の暗い紫色の液体。香りが弱いというよりもなんていうんですかね、全体的に寝てるというか、シーンとしてる。

味わいもすごくなんというか、垂直の壁のように足掛かりがない。おしいくないわけではなく、ちゃんとおいしいワインなのだが、なんというか凹凸がない。

いやこれなんだろう。ほんとにさっぱりわからない。新世界ではないだろう。カベルネ・ソーヴィニヨンメルロー、といったなんだかんだで根は陽気みたいやつらじゃない気がする。

テンプラ…? テンプラってこんなに紫だっけ。でもイタリアではないと思うんすよ。フランスだとするとマルベックとかタナとかなんだけど先週私はウルグアイのタナと回答してド外ししている者。先週の自分が! 今週の自分を苦しめる!

これテンプラじゃないよ、どう考えても。と私の中の良識が言うので、
フランス(カオール)/マルベック/2018/14.5%
と、ひとまず予想しておこう。

 

ブラインドテイスティングWEEK36の予想を終えて

というわけで今週も予想が出揃った。果たして私の予想は合っているのだろうか? 解答発表後に追記したいと思うので、お楽しみに。

 

【追記】

さて今週もワインマーケット・パーティ公式SNSで正解が発表された。以下、結果を見ていこう。


ブラインドテイスティングWEEK36 / 正解発表:1杯目

予想:
フランス(ロワール)/シュナン・ブラン/2022/12%

正解:フランス(ロワール)/ソーヴィニヨン・ブラン/2022/12.5%

はい、というわけで3回連続ソーヴィニヨン・ブランを外すという結果になった。品種以外ほぼパーフェクトなのは喜ばしいことなのだが、

>いやこれ第一印象はソーヴィニヨン・ブランだな。

って書いてるわけなんですよ自分の馬鹿っ。もっとも当てやすい品種であるソーヴィニヨン・ブランを3回連続で外した男のブラインドテイスティング挑戦記、引き続き楽しんでいただければ幸甚である。


ブラインドテイスティングWEEK / 正解発表:2杯目

予想:
アメリカ(カリフォルニア)/ジンファンデル/2020/14%
正解:アメリカ(カリフォルニア)/ジンファンデル/2022/14%

2杯目はしっかり正解。先週ピノ・ノワールをプリミティーヴォと書いて外したのと同じ味筋のワイン。今度はしっかり仕留めることができて、簡単な問題ではあったと思うけどそれでも会心の回答ができた。やったぜ。

ここまでで5項目的中。ソーヴィニヨン・ブランは外したけれど、意外と上位進出も可能性としてはある感じだ。しかしこのあと悲劇が訪れる。

 

ブラインドテイスティングWEEK / 正解発表:3杯目

予想:
フランス(カオール)/マルベック/2018/14.5%
正解:ウルグアイモンテビデオ)/タナ/2021/14%

ここで先週の私の3問目の回答を見てみよう。

予想:ウルグアイ(カネロネス)/タナ/2022/14%

はい正解! 先週の自分、お見事、大正解!そして今週の自分はかすりもしてません、ざまあ!

1問目は「いくらなんでも最近ソーヴィニヨン・ブラン出すぎでしょ」という理由で外し、3問目は「いくらなんでも先週書いて外したタナは書けないよな」という理由で外した。

ここで、発売直後から早くも名著という評価が広がっているブラインド王・鈴木明人さんの『WINE ブラインドテイスティングの教科書』から一節を引用することをお許し願おう。

(前略)なぜなら何としても正答したいという思いが強くなればなるほどバイアスが生じやすいからです。バイアスに苛まれるとワインに目が向かなくなり、ワインの出題者のほうに目が行ったり過去の出題を考えたりします。ワインから目を背けた瞬間勝負は終わっています(太字は引用者)

戦場で目の前に迫り来る弾丸を前に、「あれ、この弾丸って先週見たやつと同じじゃね?」とか言ってたら待っているのは死である。目の前にあるグラス、そこに虚心坦懐向き合わなければ勝負にならないんだよっ!

ただ、実は今週は読みの方向性としては個人的にはかなり良かったという実感がある。文脈負けはしたけれども、ブラインドテイスティングに通うこと36週、自分なりの判断基準みたいなのはできてきた気がする。闘志が湧いてきたぞ。そんなわけでみんなで行こうよ、#パーティブラインド 。

そしてみんなで買おう、鈴木明人さんの本。ブラインドやらない人にもめちゃくちゃオススメできる、ワインのことを網羅的に知ることができるガチ良著だと思います。

 

 

 

アキコ・フリーマンさんにリリース前の「最新キュヴェ」について聞いてきた

アキコ・フリーマンさんとの再会

アキコ・フリーマンさんは、米国留学時に夫であるケンさんと運命的に出会い、現在はカリフォルニアでワインメーカーとして大活躍している女性だ。

エスト・ソノマ・コーストという冷涼な地域の気候をうまく活かしたそのワインはバラク・オバマ大統領と安倍晋三首相の公式晩餐会でも使われている。すごい人なのだ。

このアキコさん、最近なんと叙勲までされている(令和5年度農事功労者として緑白綬有功章を授与)。勲章ですよ勲章。米国在住のため現地領事館で受け取ったらしいのだが、もし日本にいたら秋篠宮から勲章を授与されるとかそういうレベルだったのだそうだ。小学校時代「歯が丈夫だ」という理由で表彰されて以来表彰された記憶がない私には想像もつかない世界である。

ともかく、そんなすごいアキコさんと昨年知遇を得、ワインは素晴らしいしお話は面白いしお人柄は最高に魅力的だしですっかりファンになってしまったのだった。

そのときの話がこちら↓

himawine.hatenablog.com

それから1年弱。ふたたび来日されたアキコさんにまた会える機会をいただいたのでお前は忠犬かなにかか、という勢いで馳せ参じてきたのでレポートしたい。

 

フリーマン ユーキエステート ロゼ ブリュット 2021

さて、この日の会食のテーマは近況報告と、新しいワインのお披露目。マンダリンオリエンタル37階の中華料理「センス」を会場に、5名という少人数での会となった。お招きいただき光栄にもほどがある。

「センス」のお料理も紹介しながらいこう。まずは蒸し点心。エビの甘みがロゼによく合った

乾杯は昨年2020ヴィンテージをいただいたフリーマン ユーキエステート ロゼ ブリュットの2021ヴィンテージだ。

ユーキエステート ロゼ ブリュット2020は、カリフォルニアで発生した大規模な山火事の影響で生まれたキュヴェ。虎の子のブドウが煙に巻かれるのは必定という状況でやむをえず早摘みし、仕方なくロゼ泡として仕込んだというエピソードがある。

ところが瓢箪から駒とはまさにこのこと、造ってみたらこれが好評。アキコさんいわく火事もなく「平和な年」だった2021年も引き続き造ることになった。今目の前に置かれているのが、その2021ヴィンテージだ。

最初私は、「2020ヴィンテージの熟成が1年進んだものかな?」と感じた。味わいにまとまりがあり、液体のエッジに丸みがあり、それでいて中心に味わいの核のようなものがある。親しみやすいが複雑で、果実と酸が背中合わせに同居している。

スルスル入ってくる、アペリティフに最高の味

なんでも20ヴィンテージでは、醸造の過程でワインから色がなくなってしまい(酒石に色がくっついて、落ちてしまったそうだ)、スティルのピノ・ノワールを足しているのだそう。その反省から21ヴィンテージは絞ってすぐにジュースをとらず3時間くらいプレス機のなかに置いておき、色味を出している。

余談だが、アキコさんいわくシャンパーニュの造り手のなかには「玉ねぎの皮色が一番美しい」という人もいるのだそうだ。玉ねぎの皮色ってとてもいい表現だと思うが、アキコさんが求めているのはオレンジ感がない桜の花のような薄いピンク。

京鴨と芽ねぎのダックロール。ロゼは野菜にも、甲殻類にも、お肉にも合う万能選手だと思わされる。キュウリや揚げパンのクリスピーな食感が楽しい素晴らしい味

二次発酵時の砂糖添加は、アキコさん自らお菓子作りのときに使うステンレスの「ふるい(握ると砂糖が落ちるやつ)」を使い、手作業でシャカシャカとふるって入れるのだという。東京の高級ホテルでお会いするエレガントモードのアキコさんが現地ではタンクの上でシャカシャカ砂糖をふるっているの、想像できないようでなぜかできるから不思議だ。

こういうのかな…?

2020と2021の造りの違いをヒアリングしたなかでまとめると以下のようになると思う。

【2020】
シャルドネの熟成に使った樽を使用
・山火事の煙が来ていたのでBrix16.5で収穫
・絞ってすぐにジュースに
・赤ワインで色味調整

【2021】
ピノ・ノワールの熟成に使った樽を使用
・余裕を持ってBrix17で収穫
・絞って3時間醸し
・色味調整なし

ざっとこのような違いがもたらした味の違い、個人的にとても興味深かった。

現行VTは2020↓

 

フリーマン 光風(KO-FU)リースリング 2022

続く2杯目だが、なんと本邦未公開・アメリカでも発売前のキュヴェを飲ませていただくことができた。それが「光風(KO-FU) リースリング 2022」。

光風リースリング。保管場所の都合もあってボトルはブルゴーニュ型を流用とのこと

Weblio辞書によれば、光風とは「晴れあがった春の日にさわやかに吹く風。また、雨あがりに、草木の間を吹き渡る風。」とある。ウエストソノマコーストは風が強く吹く場所。その土地の木々の間を吹く風をイメージし、そう名づけられたのだそうだ。

ちなみに、オバマ大統領と安倍首相の晩餐会で供されたのは「涼風(RYO-FU) シャルドネ」。涼風は日本の四季を72に分けた「七十二候」の37番目「涼風至(すずかぜいたる)」から名付けたのだそうだ。アキコさん、造るワインはエレガントだがセンスはみやびで風流だ。

このワインは「ロス・コブさんの畑からもらったブドウ」なのだそう。コブといえばフリーマンと同じウエストソノマコーストを代表する生産者の一人で、造るワインは極エレガント。めちゃくちゃうまい。その自社畑・アビゲルはフリーマンの「お向かいの畑」なのだそう。

このワインには誕生秘話がある。アキコさんはスパイシーなものが好きで、フリーマン家の食卓にはナンプラーやチリペッパーを使ったエスニック料理がよく並ぶのだそう。ところがこれが自社醸造ピノ・ノワールに合わない。しかたなく、アルザスなどのリースリングを買って飲んでいた。

お坊さんが塀を跳躍してまで飲みに来たことで命名されたという「仏跳牆(ぶっちょうしょう、フォーティャオチァン)」。たらばがに、あわび、すっぽん、きぬがさだけ、貝柱、つぶ貝などが入った凄まじいスープ。調味料は塩すら使っていない!

そして、アキコさんが出張で留守をしている間に事件は起こる。夫・ケンさんがロス・コブさんと話をつけ、リースリングを1トン分けてもらうことを決めてしまったのだ。

話の行間から察するに、おそらくこれ、ケンさんからアキコさんへのプレゼントみたいな意味合いなんだと思われる。アキコさんの好きなエスニックに合うワインになるブドウを、夫が妻に送った構図だ。造るのはアキコさんだが……!

妻が飲みたいといったから、プレゼントはリースリング(1トン)。聞けば「ハッピーワイフ、ハッピーライフ」が夫・ケンさんの口癖なのだそうだ。妻の夫であるみなさん、友よ、心のメモ帳に彫刻刀で刻んでおいてくださいね。

全日本最優秀ソムリエの野坂昭彦さんにサーヴィスしていただいた。「酸が貴重の味わいなので、少し冷やしめで」とサーヴしてくれた

ステンレス発酵ではなくシャルドネを熟成させていた60ガロン(225リットル)の樽を使用して発酵・熟成を行うことで過度に還元的にならないようしているという薄い金色の液体からはレモンのような蜜のような華やかな香りが漂い、石油的な香りことペトロール香はほとんどゼロ。

トロールは「ありかなきか」のところを狙ったのだそうで、リースリングは好きだけど、「石油を飲んでみるみたいな気分になる」リースリングはちょっとね、というアキコさん好みの香りのようだ。

蝦夷鮑のオイスターソース煮込み。ものすごい柔らかさと味の深さ。リースリングに甘みを足して、見事なペアリングだった

そして飲むと酸がピシーッとシャープな厳格な造り。突然ポエムを繰り出すと、冬の朝、天窓から差し込む光に照らされながら石造りの床に跪いて祈りを捧げる修道士、みたいなイメージが湧く。冷たく、真摯で、どこか人間味に溢れている。

アキコさんは「酸フェチ」なのだそうで、地元のリースリング仲間(がいるらしい)からは「そうそうこれこれ!」的な歓迎のされ方をしているという。酸フェチのみなさん、まもなくアメリカから嗜好にブッ刺さるリースリングがやってきますよ…!

 

フリーマン アキコズ・キュヴェ ウエストソノマコースト 2021

さて、いよいよ最後のキュヴェが登場している。「アキコズ・キュヴェ ウエストソノマコースト 2021」で、これがちょっと圧巻のピノ・ノワールだった。

アキコズ・キュヴェ。バレルセレクションのためAVAは年によって変わるそう。2021はウエストソノマコーストAVA。アキコさんいわく「まだ若い」そうで、「人もワインも枯れはじめてから」とのことだった

フリーマンでは、1回の収穫で200樽分くらいのピノ・ノワールができる。それらを全部試飲して、まず15樽を選抜。

その15樽のワインを用い、アキコさん、ケンさん、アキコさんの師匠であるエド・カーツマンさん、そしてワイナリーのスタッフらがそれぞれ独自にブレンドを行い、ブラインドで飲み比べ、一等賞に選ばれたワインに、ブレンダーの名が冠される。

皮付き豚ばら肉と花彫紹興酒の角煮。日本さんは皮下にすぐ脂があるため、あえてメキシコ産チルド豚を使用。ピノ・ノワールとは完璧なマリアージュ

「どういうわけか、いつも私が選ばれるんです」とアキコさん。ケンさんが勝てば「ケンズ・スペシャル」、エドさんが勝てば「エッズ・オーサム」という名前になるらしいのだがブラインドが示す答えは毎年「アキコズ・キュヴェ」なのだそうだ。アキコさん、シンプルに味覚がすごい。

ではアキコさんはどのようにブレンドを行なっているのだろうか? それは「口のなかの(味を感じる)すべてのスポットをヒットするように造る」ということなのだそうだ。味蕾というのだろうか、口中には様々な味を知覚するためのセンサが内蔵されている。それらすべてをフルに使えるような味設計をアキコさんは行なっている。

途中シェフによる「中国醤油」に関するレクチャーがひょんなことから発生。中国料理には中国醤油を使わないと「空気感」が出ないとのこと

「香りがいいこと、スパイス感があること、いい感じのミントパレットがあって、フィニッシュがいいもの」とアキコさんは表現しておられたような味筋。結果、顧客から「パーティインザマウス」と形容される味わいが実現する。パーティインザマウスはいい表現。

樽と区画の組み合わせ

ポイントは、樽と区画の組み合わせだ。ブドウを畑の区画ごとに収穫し、区画ごとに醸造するのだが、その際、フランスの5社から入れているという樽を、区画ごとのクローンの個性に合わせて選ぶことで、200樽のワインはそれぞれまったく異なる個性を持つことになる。

つまり、「この区画のブドウはあそこの森の木を36ヶ月エイジングさせて、あれくらい焼いた樽に合う」といった情報がアキコさんの脳内には格納されている。アキコさん自身何度もフランスの樽メーカーを訪ね、樽が生まれる森に踏み入ることでできる業。樽メーカーの当主も毎年フリーマンに来てはテイスティングを行い、さらなる改善案を提案してくれるのだという。

コースの最後は「ずわい蟹と天使海老の雲呑麺」。やさしい味わいがすべてを包み込む

ワイナリーで試飲をして「この樽だけでボトリングして!」とリクエストするお客さんに対し、アキコさんは「樽ごとお売りしますよ(ニッコリ)」と返されるそうだ。これは、広義の「売り物ではない」の意だと思う。アキコさんにとって樽に詰められたワインは「原材料」に近いんじゃないのかなと思ったりした。

このワインは香りも素晴らしい。野いちごのようなハーブっぽさを伴う果実、森にそびえる老木、適温で煮出された紅茶、半生タイプのドライフラワーといった、非常に多様で、多面的な香り。光が差し込む角度によって異なる色彩を出力するプリズムのような液体だ。

果実・酸・渋のどれもが突出しないバランス型で、非常にやわらかい。口の中にある味覚センサーフル稼働、脳が喜ぶ味わい。おいしいなあ。

2019はソノマコーストAVA↓

 

会食を終えて

どれも素晴らしいワインだったが、アキコズ・キュヴェは圧巻だった

フリーマンではいま、新たなワインメーカーを育成中(という言い方でいいのだろうか)。来年はその方も一緒に来日されるそうで、フリーマンの味の作り方の伝授を終えたあとは、アキコさんはディレクター・オブ・ワイン的な立ち位置に変わられるとのこと。この方の話もめっちゃ面白かったのだが、それはまた別の機会に。

というわけで尊敬するアキコさんにまた会えて、素晴らしいワインをテイスティングさせていただき、忘れちゃいけない料理も極めて非常に素晴らしく、身に余る贅沢な時間を過ごさせていただいたのだった。お招きいただきありがとうございました。

フリーマンヴィンヤード&ワイナリー、いつか必ず訪問したい…!

 

 



 

ブラインドテイスティング挑戦記【WEEK35】

ブラインドテイスティングWEEK35に臨んで

今週も恵比寿のワインマーケット・パーティでブラインドテイスティングに挑んできた。今週は白1、赤2の構成だ。さっそくいってみよう。

 

ブラインドテイスティングWEEK35/1杯目

まず一杯目だが色合いは薄め。香りはなんだろうこれ。子どものころに嗅いだことある系の香りなのだが思い出せない。

少しハッと目が覚めるような柑橘の香り。母が使ってた香水的ななにか? あるいはいただきもののちょっと良いお茶だっただろうか? 

飲んだみた印象も極めて曖昧だ。どこかで飲んだことがある。でもどこで飲んだかは思い出せない。酸はおだやか。苦味がけっこう強くある。

まずソーヴィニヨン・ブランリースリング甲州ではないと言いたいところだが甲州、キミはちょっと残りなさい。樽の効いたシャルドネ、キミ帰ってよし。ゲヴュルトラミネール、ヴィオニエ、キミたちも大丈夫。おつかれ。

候補はふたつ。中庸界のツートップ、ミュスカデとシュナン・ブランだ。あと甲州が居残り。イタリア品種だったら敗北だ。

どれにするかだが今回はミュスカデにした。中庸・オブ・ザ・中庸。シュナン・ブランなら蜜があるはずだし甲州なら酸があるはず。そしてそこはかとないシュール・リー感があったような(ないような)!

フランス (ロワール)/ミュスカデ/2022/13%
と予想した。


 

 

ブラインドテイスティングWEEK35/2杯目

さて2杯目行ってみよう。色はわずかに退色した赤紫。香りは非常に厚みがあり、かなり甘やかだ。バニラと焼き芋。焼き芋バニラソフト、みたいな香りだ。

飲んでみてもブドウ自体の甘みと樽由来っぽい甘み、両方がくる。飲んだ印象は干し芋。香りの印象が焼き芋で、飲んだ印象が干し芋。スタッフが熟成中の樽に誤って芋を落とした……?

わずかな苦味はあるが、スパイシーさはないように感じる。青っぽさ、野菜っぽさも感じない。マロン感はある。マロン&ポテトだ。おいしそう。秋の味覚ですね(もうすぐ春ですね)。

これだけの甘さがあるワイン、選択肢は極めて限られる。ここはジンファンデルorプリミティーヴォの事実上の一点予想で行ってみよう。

色が濃くなく、味わいも必ずしも濃いわけでないのが気になるが、香りに素粒子レベルのイタリア感を覚えたので、こう予想した。

イタリア(プーリア)/プリミティーヴォ/2018/14.5% 


 

 

ブラインドテイスティングWEEK35/3杯目

最後は一転、インキーでグラスの底が見えないベルベットな色合いのワイン。インクとか墨汁を落としたような、黒っぽい外観だ。

で、香りがしない。まだ閉じてるんですかねこの方。2022ヴィンテージくらいの若めの感じだろうか。どうせ出番は後半だからと前半の間はロッカーで寝てる破天荒なサッカー選手みたいな印象だ。

飲んでみても印象は変わらない。タンニンが極めて強く、酸もあって果実は留守。留守っていうか長い旅に出ている、といった印象。数年は帰って来ないんじゃないでしょうか。

というわけでさっぱりわからないというのが回答となる。タウラージとか、ゴリゴリテンプラニーリョとか、ボルドー左岸の超保守的シャトーとか? あと色だけでいえば黒いから黒ワインことマルベック…渋みでいったらタンニンの語源でお馴染みのタナ、アメリカ方面だったらプティ・シラーとか? 

置きにいくならカオールのマルベック。いや、ここはフルスイングでいきたい! というわけでウルタナことウルグアイのタナと予想してみよう。産地はググッたら出てきた土地です! ワインマーケット・パーティにウルグアイのタナが売ってるのかって? 知らないよ!

ウルグアイ(カネロネス)/タナ/2022/14%

 

ブラインドテイスティングWEEK35予想を終えて

というわけで今週も予想が出揃ったが、見返すとかなりやっちまってる感じがする。果たして私の予想は合っているのだろうか? 解答発表後に追記したいと思うので、お楽しみに。

 

【追記】
さて今週もワインマーケット・パーティ公式SNSで正解が発表された。花粉症が悪化したかなんかで体調を激崩ししてしまい遅くなってしまったが、以下、結果を見ていこう。


ブラインドテイスティングWEEK / 正解発表:1杯目

予想:
フランス (ロワール)/ミュスカデ/2022/13%

正解:フランス(ロワール)/ミュスカデ/2020/12.5%


というわけで幸先よく1杯目は正解。なのだが、これは私の実力ではない。先日、ブラインドテイスティングの泰斗である鈴木明人さんとお話しした際「特徴がないのがミュスカデの特徴」的なアドバイスをいただき、それを思い出したのだった。特徴ないな〜これ。うーん、ミュスカデ!w くらいのレベルの回答だが、それが見事にハマった次第だ。鈴木さんありがとうございます。

 

鈴木さんが最近出された本。これ必読ですよ!

 

 

ブラインドテイスティングWEEK / 正解発表:2杯目

予想:
イタリア(プーリア)/プリミティーヴォ/2018/14.5% 


正解:アメリカ(カリフォルニア)/ピノ・ノワール/2022/13.5%
 

はいこれが今回の完敗案件。ピノ・ノワールをプリミティーヴォって言うのって鳩を見てカラスというようなもんなんすよ。読売タイガース、みたいに言っちゃうレベルなんですよ野球で言うならば。つまり間違えちゃいけないやつ

銘柄はブレッド&バターシャルドネは何度も飲んだことがあるが、実はピノ・ノワールは初めて。沼田店長いわく「典型的なカリピノ」だというこの味、脳に刻み込まねばなるまい。

 

ブラインドテイスティングWEEK / 正解発表:3杯目

予想:ウルグアイ(カネロネス)/タナ/2022/14%


正解:イタリア(バジリカータ)/アリアニコ/2019/14%
 

これは選びミス。最初はアリアニコ(タウラージ)が脳裏をよぎり、よぎりというか回答用紙に書き込むまで居座り続けていたのだが、以前アリアニコと書いて外したのがこれまた脳裏をよぎり、そちらを優先してしまったのだったチッキショー!

アリアニコは2019ヴィンテージでもまだかなり堅牢なのかもしれない。数年後、熟成を経た姿も見たくなるワインだったのだった。

というわけで今週は3問正解というやや残念な結果に終わったが、まあこういうこともあるわけなんですよ。まったく懲りずに来週も頑張りたいので、みなさんも #パーティブラインド ぜひ挑戦してみてはいかがか。