ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

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「パーリーゲーツ」と「コノスル 20バレル」。南アとチリの2000円台ピノ・ノワールを飲み比べてみた。

「パーリーゲーツ」と「20バレル」。南アとチリのピノ・ノワールを飲み比べ

南アフリカはクルーガー・ファミリー・ワインズの「パーリーゲーツ ピノ・ノワール(以下、パーリーゲーツ)」が2000円台のピノ・ノワールとして前評判通りの高いクオリティだったことを受け、私は思った。

ここは2000円台ピノ最強位決定戦を開催すべきではないのか、と。というわけで近所の酒屋に直行、コノスルの「20バレルズ リミテッド ピノ・ノワール(以下、20バレル)」を2610円コストを支払って召喚。映画『シン・ゴジラ』における対ゴジラ決戦兵器であるところの在来線爆弾的期待感をもって自宅へと移送した。

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パーリーゲーツ ピノ・ノワール(左)と、コノスル 20バレル・リミテッド・エディション、南アとチリのピノ・ノワールを飲み比べてみました。

抜栓直後のコノスルと開栓3日目でグラスの底に100ml程度残ってるだけのパーリーゲーツを比べるもなにもあったもんじゃなくない? 温度も揃ってないし。馬鹿なのかな。とかいう心の声が聞こえる気がするが無視し、「いよいよこのときが来てしまったか……」と、なんかの司令官、みたいな気分を高めていく。人生は自分の気分を高めていくゲーム。

コノスル=ピノ・ノワール

ではなぜコノスルか。安ウマ、でおなじみのチリのコノスルだが、実はピノ・ノワールカンパニーでもある。その公式サイトを訪問してカテゴリを開くと、このような順序でリスト化されている。

・HOME
・WINE&SPARKLING
・PINOT NOIR
……etc

ピノ・ノワールは、その他品種と一線を画し、それだけで1カテゴリを形成しているのだ。公式サイトによれば、ピノ・ノワールはコノスルにとって最重要品種であり、会社としての目標も「最高のチリのピノ・ノワールを生産する」こと。そのため「あえてフルーティなビシクレタ」から「エレガントなオシオまで、ピノ・ノワールワインの多様性」を追求していると宣言してもいる。コノスルにとっての品種とは、ピノ・ノワールとそれ以外というふうに識別されていると言っていいと思う。

himawine.hatenablog.com

 オシオはコノスルのピノ・ノワールの最上級キュヴェで価格は6000〜7000円台。20バレルはそれに次ぐ価格帯なのだが(知らなかったのだが)、20バレルはオシオのセカンドワイン的位置付けなんだそうだ。

オシオと20バレルの差分はどこにあるかを検討すると鬼のように長くなるので割愛して、安くておいしいと評判のコノスルにあって、コストをしっかりかけて造られたワインが20バレルであり、そのことからピノ・ノワールカンパニーであるコノスルの看板商品とも言える。だからこれはもうチリ代表でいいでしょう。でもってチリ代表ということは南米代表と言っていいでしょうきっと。

というわけで、太平洋を越え、南アフリカピノ・ノワールといざ勝負、という図式が成立するっぽい雰囲気になってくるわけですよ。子供のころ、動物図鑑を眺めてライオンとインドゾウとホッキョクグマ、もし戦わば……!? みたいな妄想を楽しむのが私は好きだったがそれから数十年。やってることはほぼ同じである。

チリの20バレルと南アフリカのパーリーゲーツの奇妙な一致

しかも南アフリカのステレンボッシュとチリのカサブランカヴァレー、両ワインの産地の緯度はピッタリ同じ南緯33度。パーリーゲーツ農園は海抜500メートル、20バレルのエル・トリアングロブドウ園は同300メートルといずれも高地で冷涼な気候。土壌はパーリーゲーツが「分解された花崗岩と粘土」、20バレルが「赤い粘土と花崗岩」。パーリーゲーツはオーク樽で11ヶ月熟成、20バレルはオーク樽と大樽で12ヶ月熟成というシンクロ具合。同じ商品を説明している文章なのでは? っていうレベルですよこれ。オラ、ワクワクしてきたぞと言わざるを得ないぞ。

パーリーゲーツは売価2000円台後半から3000円台前半。20バレルズ ピノ・ノワールは私は2610円で買ったが3000円を超えることはまずないといった価格帯で、基本コノスルのほうが安い。そのあたりがどう出るか。というわけで機は熟した。いざ開戦、じゃなかった開栓である。

パーリーゲーツと20バレル、飲み比べてみた

さて、地理や気候の条件、熟成の仕方などが妙に似てるふたつのワインだが、グラスに注ぐと違いは一目瞭然。パーリゲーツは薄いルビー。20バレルはほんのり紫がかった赤みたいな色だ。パーリーちゃんは高原育ちの美白女子、20バレルは褐色白ワンピース女子、みたいな感じですかね妄想全開で語っていくとするならば。

WINE FOLLYの記事によれば、ワインの色は酸性度の判断基準となり、薄いレッドはPHが低く(酸性度が高く)、ルビーからバイオレット、パープル、ブルーへと色が濃くなるほどPHが高く(酸性度が低く)なっていく。色が薄いほど酸っぱくて、濃いほど果実感が強まるってことですね。そして、両者の味わいはまさにそのセオリーに当てはまる。

淡い色合いのパーリーゲーツの味わいの主体が酸味で、果実味はそれを補う感じだとすれば、ちょうど中間的色合いの20バレルはその逆までいかない、酸味と果実味の二刀流というイメージ。さっきまでの地理や気候やらの奇妙なまでの一致感はなんだったんだよ君たち。これはまさしくあれですよ。『タッチ』ですよ。達也と和也は双子だが性格が全く異なるもののどちらも野球が上手い。パーリーと20バレルは品種は同じで素性も重なるところが多いが味わいは大きく異なるもののどちらもうまい。みんな違ってみんなピノ上杉達也浅倉南を愛しています。世界中の誰よりも。

さて飲み比べてみると、どちらも価格に対してすっごくおいしいことが再確認できた。ではどちらがよりおいしいのか? 1年前ならノータイムで20バレルを推していたが、ここ最近の私は雑に言えば酸っぱいワインが好み。現時点での好みはパーリーゲーツとなるが、これは好みの問題なので忖度抜きで引き分けでいいと思う。

いやはや、飲み比べって楽しいですね。あと、2000円台のピノ・ノワールはひとつのテーマだなこれ。追求していきたいテーマがまた見つかったかもしれない。