Tasting SOUTH AUSTRALIA2022に参加した
Tasting SOUTH AUSTRALIA2022、なるイベントに参加した。オーストラリア大使館商務部などが主催するイベントで、「魅力あふれる南オーストラリア州の魅力を丸ごとご体験いただける」イベントなのだそうだ。
ツイッターで情報が流れてきて即登録、行った。という流れなのだが、情報源がどなただったかを失念してしまった。素晴らしい情報を感謝したい。というのもこのイベント、端的に神イベみたいに言っていいやつだったと思う。
会場はアンダーズ東京52階のルーフトップテラス&スタジオとかいう、バルコニーに出れば東京タワーを含む東京の街並みを眼下に見下ろせるこの季節に最高のロケーション。にも関わらず入場料はなんとここだけの話無料だっていうわけなんですよ奥様。しかもグラスワイン1杯250円からだっていうわけなんですよ。アンダーズ東京で1杯250円以下で口にできる飲料、水道水以外ないんじゃない? ってレベル。
しかもこう、なんてういうかどこか商工会議所主催イベントみがあり、ガワはラグジュアリーなのだが、中に入ってしまうとすごく気軽に楽しめるイベントなのだった。最高すぎるんだよね。
会場内では入り口で購入可能な4枚綴1000円のチケットを使って飲食ができるという仕組み。仕事帰りに軽く3、4杯飲んで帰ろう一人だし、ということで2000円分のチケットを購入。いざ虎ノ門に出現した南オーストラリア州に分け入ってみた。
Tasting SOUTH AUSTRALIAでオーストラリアのプロセッコを飲む
雨上がりで蒸し暑い5月下旬のこの日、19時のタイミングでまず飲みたいのはやっぱり泡だ。私の少ない経験ではオーストラリアの人はビールが大好きという印象があり、ビールを出展しているブースもあるのだが、私はワインに肝臓を捧げた者。狙うはひとつ、スパークリングワイン。
と、見つけたのが「プロセッコ」と書かれたワイン。オーストラリアなのにプロセッコ!? という意外性に惹かれてまずはこれを頼んでみた。
ヒザー・アンド・ヨン(H&Y)という生産者のワインで、調べたところオーストラリアでは品種名としての「プロセッコ」を使用したスパークリングワインのラベルに「プロセッコ」という“品種”を表記して売ることがあるんだそうだ。うーん、したたか。
ただ、飲んでみるとこれがすごくスッキリした酸味があっておいしいワインだった。圧の強い人にこれはレモンが原料のお酒ですと力説されたらうっかり信じちゃいそうなほど酸味が主体のスパークリングワインでおいしい。
Tasting SOUTH AUSTRALIAでジム・バリー「ザ・フロリタ リースリング」を飲む
東京タワーを眺めつつ、夜風に吹かれてさっぱりした泡を飲み、早くも非常に気分がいい。次は白なんかいただきたいですね、と向かったのはジェロボームのブース。存じ上げなかったのだが話題のショップ、セラードア青山はジェロボームの直営ショップ&レストランなのだそうで、ブースにはセラードア青山のソムリエの方が立って説明をしてくれた。
オススメしていただいたのはジム・バリーという造り手のリースリング。産地はクレアヴァレーで、南オーストラリアのなかでも冷涼な産地のひとつなのだそうだ。3000円(ロッジ・ヒル/グラス1杯250円)のものと6000円(ザ・フロリタ/グラス1杯500円)のものがあり、頼んだのはシングルヴィンヤードだという6000円のほう。
「ブラインドだと、ドイツのいいやつ…? みたに思われる方が多いと思います」とのことだったが飲んでみるとピッシー! とした酸味がグラス全体を突き刺していて、たしかにこれをオーストラリアだと思うことはできないと思う。
すっぱさの裏側にしっかりとした果実味があり、隠し味レベルでのトロピカルさもあったりしてこれはかなりおいしい。中華とかエスニックとかと合わせてみたいイメージだ。カニとか。カニ食べたい。
ちなみにチケット1枚で飲めた3000円のほうも飲んでみたのだが、こちらは酸味が突出しておらず、味わいが整った優等生的リースリングだった気がした。セラードア青山、なんだかんだで行ったことないので早く行きたい。
Tasting SOUTH AUSTRALIAでフォースウェイブワイン「ワイルドフォーク・シラーズ亜硫酸無添加」を飲む
泡白と飲んできたので次は赤でしょうということでいい具合に酔いが回った状態で会場を徘徊、Vai&company Ltdのブースにたどりついた。そこで頼んだのはフォースウェイブワインの「ワイルドフォーク・シラーズ亜硫酸無添加」。
産地は南オーストラリアのっていうかオーストラリアの代表産地のひとつと言ってよさそうなバロッサヴァレー。ここまで飲んできたのとは一転、これは暖かい産地の感じがするアルコール度数14%、果実味たっぷりのワイン。
SO2無添加で野生酵母発酵、無濾過無清澄のいかにも自然派という造りながら、味わいはクリアでキレイな感じ。もう気持ち酸があると私の好みのど真ん中なのだが十分以上においしい。友だちとの飲み会のテーブルの真ん中にドシンと置いておきたい素晴らしいワインだ。これも買いたい。
いやなんかこう、各社エース級を投入してる感じがあってなにを飲んでもおいしいな。いいイベントだ。すでに来年もまた行きたい。来年になんねえかなもう。
Tasting SOUTH AUSTRALIAでペンフォールズ「BIN128/28」を飲む
さらに、続いて向かったペンフォールズ(日本リカー)のブースに至っては驚異の無料テイスティングなわけですよ。小さいプラカップにたぶん10ccとかではあるけれど。しかも6000円と6500円のワインを飲み比べさせてくれたはい神。
飲んだのはペンフォールズのBIN128クナワラシラーズとBIN28シラーズ。BINは「Budge Identification Number」の略称なのだそうで、セラーの区画番号を表すとのこと。
品種は両方ともシラーズ。「ペンフォールズの特徴は、複数の地域のブドウをブレンドして造ること」だと教えてもらったが、BIN128は単一産地で、冷涼産地だというクナワラ産のブドウが原料。28はヴァロッサヴァレーを中心に複数リージョンのブドウがブレンドされているそうだ。
ザックリ128が冷涼、28が温暖な地域のブドウで造られたワインで私の好みは強いていえば28。冷涼産地のエレガントなシラーもおいしいが、温暖な産地の果実味ボヨヨンなシラーズもおいしい。おかしいな、だんだん南オーストラリア州が大好きになってきたぞ……(主催者の術中に自らハマりにいくスタイル)。
いよいよ手持ちのチケットも残りわずかになってきた。シメの1杯を飲んでラーメンでも食べて帰ろ。と思いつつ歩いていると、まだ見ていないブースがあった。
DAOSA ブラン・ド・ブラン2016の衝撃
コロニアルトレード、というインポーターのブースで、なんでも泡がイチオシなのだそうで、ワインクーラーにマグナムボトルが冷えている。シメが泡も一興、ということでこれをオーダーしたところこれがやべえやつだった。
とにかくちょっと異常にうまい。この日のワインはすべて小さめのプラカップで供されていたため、正直香りをとるとかそういうのは全然できない感じだったのだがこのワインは小さなプラカップの液面から香りがガツンとやってくる。くだものが詰まった段ボールの箱を開けたときみたいな感じ。
そして異様にうまい。こんな味わいが濃厚なブラン・ド・ブランを飲んだのは初めてなんじゃないかレベルで、うまみの絶対量がとにかく多い。これ年間ベストを争うレベルじゃないの……?
担当者の方(外国の方と思しき方)にこれは一体なんなんすかと興奮気味に尋ねると、このワインは「ボランジェがオーストラリアで造るワイン」なのだそうで、シャンパーニュと同じ規定で造られており、ヴィンテージワインだから5年熟成を経ているとのこと。品種も尋ねてみたところ「ブラン・ド・ブラン。」という回答。シャンパーニュと同じに造っていて、ブランドブランだっつんってんだからシャルドネ一択でしょうが、ってことだと思う己の不明を恥じたい。
DAOSAとボランジェ、クリスチャン・ビゾーとグザヴィエ・ビゾーの物語
ここからちょっと長くなるので興味のない方は次の小見出しまで読み飛ばしていただきたいのだが、後日調べたところこのワインは、ボランジェのオーナー一族のひとりで5代目当主であるクリスチャン・ビゾーの息子のグザヴィエ・ビゾーが手がけるブランド。
ザ・ドリンクビジネスドットコムの記事によれば、そのアプローチは単独ヴィンテージ、単独畑、ブラン・ド・ブランにこだわった、「シャンパーニュにおけるサロンに相当するブランド」なんだそうだ。オーストラリアのサロン(的なものを目指しているブランド)だった。
https://www.thedrinksbusiness.com/2012/12/bollingers-bizot-produces-salon-equivalent-in-australia/
畑はアデレード・ヒルズのピカデリー・ヴァレーにある「ビゾー・ヴィンヤード」。グザヴィエの父、クリスチャンが自分のファミリーネームを冠した畑であることからも、気合の入り具合がわかる。シングルヴィンヤードなので、生産量は年間わずか2500本だそうだ。
この地にはもともとスパークリングワイン用のシャルドネが植わっていて、その土地をクリスチャンが取得。元の持ち主の娘と結婚したグザヴィエが、2002年にクリスチャンが亡くなったあとで引き継いだのだそうだ。なんかこう、血縁の因果が詰まりに詰まったような感じがするなビゾー・ヴィンヤード。
「○○○○(有名ブランド)が××××(新大陸の国名)で手がけるワイン」って無数にある感じがするけど、そのなかでも現地への根ざし方のレベルが違う感じがする。グザヴィエ自身は現地でテッレ ア テッレというワイナリーを営んでスティルワインもリリースする一方、メソッド・トラディショナル製法をメソッド・クラシックとして商標登録し、オーストラリアに普及させる旗振り役もしているようだ。すごい開拓者感あるなグザヴィエさん。いつかお会いしたい。
さて、今回飲んだキュヴェ名のダオサはグザヴィエの父クリスチャンがシャンパーニュ以外への投資用に設立した会社の名前で、インドの都市の名前に由来するそうだ。ファミリーネームを畑につけて、自分の会社の名前をキュヴェ名にすることからもなんか思い入れを感じるわけなんですよ。
ボランジェ同様樽発酵、マロラクティック発酵を経て樽とタンクで熟成。残糖が5g/Lのようだ。味わいは複雑そのもの。多様な香りと多様な味がして、少なくともシャンパーニュ地方以外の瓶内二次発酵のスパークリングワインとしては圧倒的に過去ベストだった。
長々と書いてきたが、みなさん「DAOSA(ダオサ)」って知ってましたか? 「えっ、まさかガチで知らなかったとかじゃないよな?」みたいにみなさんが思う有名ワインだったら恥ずかしいのだが正直に申し上げて私は知らなかった。世界にはすげえワインがあるもんだ。
Tasting SOUTH AUSTRALIA2022を終えて
というわけで話はアンダーズ東京52階に戻る。DAOSA ブラン・ド・ブラン2016を飲んでチケットは尽きた。
さて帰るかと52階から51階に降り、さらに1階へと降りて私は思った。「飲み足りん」と。それくらいおいしかったんですよDAOSA ブラン・ド・ブラン2016。というわけで1階から51階、51階から52階へと舞い戻りチケットを再び購入、再度同ワインを味わって帰路に着いたのだった。
音楽フェスに足を運んでとくにお目当てを定めずにダラダラしていると、思いがけずお気に入りのバンドに出会えたりするものだが、これほんとそれだった。来てよかった。(楽天やAmazonでは取り扱いがないので気になる方はコロニアルトレードのショップをチェックしてください。ただしVTは2015。私が飲んだのはマグナム2016)
ダオサの衝撃がすごすぎてしまってあれなのだが、オーストラリアのプロセッコも良かったし、その後飲んだジム・バリーのシングルヴィンヤードのリースリングも素晴らしかったし、フォースウェイブワインの自然派シラーズも、ペンフォールズのBIN128/28もいずれもとってもおいしいワインだったのだった。
来年も絶対行きたいなこれ。改めて、素晴らしい情報に感謝オブザ感謝である。