アリオンとベガ・シシリア
ちょっとしたお祝いごとがあったのでいいワインを開けようとなり、スペインの名門ベガ・シシリアが手がける「アリオン」を飲んだ。市場価格は1万円ちょいで、普段私はだいたい1000円くらいの平民ワインを飲んでるのでいつもの10倍という価格帯のワイン。
なのだが、私はこのワインをセラー専科の1.1万円で3本入りの福袋(2021年9月の楽天スーパーセール)で入手したため購入価格は実質3666円。ポイントを加味すれば3000円前後で飲めてしまったにも関わらず、結論を先に言うとその値段で飲めたのは完全になにかの間違いという味がした。やべえやつだった。
ちなみにもちろんというかなんというか私はベガ・シシリアのフラグシップ「ウニコ」は未飲。余談だがいま「ウニコ」と入力したところ「ウニ子」と変換された。かわいいなウニ子。なんかこう、北のほうの港町のご当地キャラにいそう。で、なんだっけ。そうだウニ子じゃなかったウニコは未飲なので比較はできないが、アリオンがおいしかったのは間違いない。どんなワインか、見ていこう。
アリオンはどんなワインか
アリオンはスペイン北西部のリベラ・デル・ドゥエロでティント・フィノ100%でつくられるワイン。ティント・フィノはテンプラニーリョのリベラ・デル・ドゥエロでの呼び名だ。
Wikipediaによればテンプラニーリョは涼しくないと優雅さと酸が得られず、暖かくないと高い糖度や深い色合いが得られないそうなのだが、アリオンに関しては、リベラ・デル・ドゥエロの高標高と大陸性気候がその二律背反を調和させているんだそうだ。
エノテカによれば、ベガ・シシリアのオーナーが自社畑近くのワイナリーを買い取ったのは1986年。その5年後の1991年にボデガス・イ・ビニェードス・アリオンがオープンしている。ちなみにボデガスはスペイン語で「ワイナリー」。ビニェードスは「ブドウ園」の意。ボデガス・イ・ビニェードスはワイナリー&ヴィンヤードってことなんですね今更ながら。
今回飲んだ2015ヴィンテージのデータを見ると、フレンチオークの樽で12カ月、アメリカンオークで5カ月熟成(うち80%が新樽、残りは中古樽とのこと)。2015年9月末の収穫から18カ月後、2017年6月にボトリング後したとある。
ビルの建設期間はざっくり階数+3カ月なんだそうだ。つまり18カ月っつったら15階建てのビルが建っちゃうくらいの期間なわけなんですよ。それだけの時間をかけてワインを熟成させるわけだから1万円を超えるワインはさすが造りがやっぱり贅沢なわけなんですよ実質の買い値は3000円切るレベルだけど。福袋は良い文化。
アリオンを飲んでみた
その味わいだが、感じるのは総合力の高さだ。私の普段飲む安ワインはだいたい一芸特化。果実味特化とか樽特化、みたいな、「三国志」とか「信長の野望」みたいなシミュレーションゲームの武将パラメータでいうところの武力だけまあまあ高くて知力、政治力はないといった蛮族の荒くれ者みたいなタイプが多い。
なのだが、高級ワインであるところのアリオンはさすがすげえわけです。まず来るのは樽のニュアンスで、バニラのような甘い香り、杉の木のような爽やかな香り、湿った土の感じといったもの。それら複雑な香りとものすごくわかりやすい果実味がしっかり共存している味わいの二大政党制がしっかりと機能している。
酸味は風紀委員長の如くピシーッとボトルを貫き、渋み議長が全体をまとめあげるおいしさの議会制民主主義。複雑さ、渋み、酸味、果実、香り高さ……各パラメータがオール80点↑的な感じで美しい五角形を形成している。
というわけで高いワインはやっぱりうまいというコーラを飲んだらゲップが出る的常識を改めて確認する結果となった。売り手側のどういった事情や営業努力によって実現したのかはわからないが、このワインが1万円そこそこの福袋に入っていたのは本当にありがたい。
開けてみるまでなにが入っているかわからないのが福袋だが、こういう素晴らしいワインが紛れ込んでることがあるからやめられないだよなー。