ヴァルヴァリオーネの「ドーディチ エ メッツォ プリミティーヴォ デル サレント ファッション エディション」を買ったが……
イタリアはマンドゥリアの生産者、ヴァルヴァリオーネの「ドーディチ エ メッツォ プリミティーヴォ デル サレント ファッション エディション」という長い名前のワインを買った。
サクラアワード2021Wゴールド受賞きっかけで存在を知ってvivinoで検索してみると評価も「4.0」と高く、1760円とお値段は安い。マンドゥリアはブーツのカカトの付け根部分。サレントはローキックを放った場合にヒットする箇所。どちらも南のほう。イタリアの南のプリミティーヴォは雑なことを言うと100%おいしいのでこのワインもおいしいに違いない。
ということで購入し、早速どんな生産者か調べてみよう、ワクワク、と公式サイトを訪問するとwordpressのデバッグ作業中だかなんだかで、要するに工事中のようだ。インポーターとかショップ情報じゃなくて一次情報にあたるのが私の趣味なので困った。
安定剤(アカシア)とはなにか
なにかブログの切り口ないかなと裏ラベルを見てみると、原材料名のところに「酸化防止剤」とならんで「安定剤(アカシア)」の文字。
せっかくなので、ワインの添加物として代表的なもののひとつである「安定剤(アカシア)」について調べてみることとした。
私の立場を最初に述べると、添加物が入っていてもとくに気にならないがもちろん無添加ならばそれはそれで良いとはいえそれでおいしくなかったら意味がないみたいな、要するにニッポンの意識の低い最終消費者のそれだ。以上をふまえて、「安定剤(アカシア)」とはなにかを調べてみよう。
そもそも安定剤とは
まずは、安定剤とはなにかから調べてみた。寒天などの食品原料を扱う株式会社朝日のサイトによれば、食用安定剤とは「食品成分を安定させ均一にする目的で使用」するものだと定義してある。
では「安定剤(アカシア)」とはなにかといえば、これはいろんなところで書かれているのでご存知かと思うけれどもアラビアガムと呼ばれるものだ。
ガムシロップとアラビアガム
アラビアゴム、あるいはアカシア樹脂とも呼ばれ、アカシア属のアラビアゴムの木の樹皮の傷口からの分泌物を乾燥させたものがその正体だ以上wikipediaより。
水に溶けやすく、水溶液が強い粘性を示すことで、乳化剤、安定剤として用いられる。代表的な食品はズバリ、ガムシロップだ。
ガムシロップってなんでガムシロップっていうかみなさん知ってますか? 「砂糖と水、アラビアガムを煮て作った甘味料」だったからだそうですよ現在は製造技術の向上によってアラビアガムは使われなくなっているそうだけど。
ガムシロップ、フランス語だとsirop de gomme。またひとつ賢くなってしまった……。
アラビアガムは安全か?
添加物っていうと安全性云々の議論になると思うのだが、アラビアガムは薬品にも使用される。株式会社ウチダ和漢薬のサイトによれば、アラビアガムは「丸剤や錠剤の結合剤」が主たる用途で、「皮膚の軟化薬や皮膚や粘膜の保護など,また皮膚感染症に用いられることもある」とある。
添加物と聞くとなんか嫌な感じがするけど薬にも使われているんですよと言われれば「じゃあ安心ですね」ってなる。情報は綱渡りみたいなものだ。手に持った棒が右に振れることもあれば左に振れることもあるけれど、右左バランスをとってこの細い人生という名の綱を渡っていきたいと私は思うものである。
アラビアガムの働きは?
さて、アラビアガムの働きについて調査を続けよう。『「健康食品」の素材情報データベース』によれば、アラビアガムの水溶液には「強い乳化安定性と保護コロイド性をもつ」とある。ではコロイドとは一体なんだろうか。わからないのでwikipediaで調べてみると、このように説明されていた。
一方が微小な液滴あるいは微粒子を形成し(分散相)、他方に分散した1組の相から構成された物質状態である。
ハイ1mlもわからない。マジでなにを言っているのかわからない。生まれ変わったら理系になりたい。
ところがこのページには非常にわかりやすい例が載っている。牛乳だ。牛乳とは、「水溶液の中に脂肪が分散したコロイド」なのだそうだ。その他の例として挙げられているのが、バター、インク、塗料や糊などがコロイド。専門的なことはさっぱりわからないのでトロッとした感じの液体がコロイド、と理解しておく。水みたいな液体を牛乳みたいにする素材がアラビアガムってことですねめちゃくちゃ雑に理解すると。間違っていたらご指摘ください。
アラビアガムをワインに使うメリット
それをワインに使うとどうなるか。家庭でのワイン造りのための情報を発信する雑誌WineMaker Magazineのウェブサイトの記事を見てみよう。タイトルは「Gum Arabic: Winemaking’s Secret Weapon」だ。タイトルすごいな。ワイン造りの秘密兵器。それがアラビアガムだ。
記事によれば、アラビアガムを用いるメリットは、
・深みのある赤の色合いを保つ
・タンニンを和らげ、ワインの渋みを抑える
・微生物的安定性を高める
・寒冷な環境下で結晶の発生を防ぐ
・スパークリングワインのパルラージュ(泡立ち)を改善する
といったことだそうだ。
いい色にして渋みを抑え、オリなどの沈殿物を防いで品質を安定させる。といったことが書いてある。これはシークレットウェポン。
高級ワインにはなぜアラビアガムが使われないのか
と、以上は「使う理由」なのだが、じゃあ「使わない理由」はなんだろう。高いワインにはアラビアガムが使われていないことがほとんど。その理由が知りたいのだが、わざわざ「使わない理由」を書いている資料が見当たらない。
なのでこれは資料なしすなわち根拠なしで書くことだけど、よく言われるように「それなりにおいしくなっちゃう」ことが問題なのだと思う。私は料理が趣味なのだが「創味のつゆ」はおいしいが、入れるとすべてが「創味の味」になってしまう問題と同じではないかと考えている。最高の鰹節、最高の昆布……と最高の素材からとった出汁に市販のめんつゆを入れないように、高級ワインにはアラビアガムが必要ないのだろうきっと。
「ドーディチ エ メッツォ プリミティーヴォ デル サレント ファッション エディション」を飲んでみた
いろいろ調べて勉強になったようなならないような感じだが、そんな感じで安定剤(アカシア)が添加された「ドーディチ エ メッツォ プリミティーヴォ デル サレント ファッション エディション」を味わってみたいと思う。ちなみに、vivinoでの販売価格は9.30ユーロ約1215円。
輸入元の株式会社メモスの商品ページによれば、ワインは少し早めに収穫し、MLF後、アメリカ産バリックで最低でも6か月間熟成。アルコール度数は12.5度で、「ウーディネとボローニャの大学と産学研究し、しっかりとしたボディを保ちながら、ライトな味わいとアルコール度数を実現」したとある。
でもって飲んでみるとこれが非常においしい。とにかく舌触りが非常に良くてアカシアガム仕事してる感ある。そして果実味がしっかりとあり、酸味も適度、渋みはおだやかでうーんこれぞイタリアの南のほうのプリミティーヴォ。1000円台としては破格のおいしさだったのだった。しかもアルコール度数が12.5%と軽いのがいい。
この味わいだと14%を超えてるのは間違いなさそう……っていう濃厚さでありながら軽やかに飲めちゃうというのは大きなメリットだ。
というわけで、なにがアラビアガムの要素かは実のところさっぱりわからないけれど、とにもかくにもおいしいワインが1760円で買えて大変満足だったのだった。
※健康に関する情報も含まれるので、詳しくは参照元をご覧ください。
<主な参考サイト>
https://asahi-aaa.co.jp/site/anteizai.html
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail712lite.html
https://www.uchidawakanyaku.co.jp/tamatebako/shoyaku_s.html?page=274
https://winemakermag.com/technique/gum-arabic-winemaking-secret-weapon
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail712lite.html