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アスリナ カベルネ・ソーヴィニヨン。南アフリカ初の黒人女性醸造家が造るワインとその物語について。【ASLINA】

アスリナ カベルネ・ソーヴィニヨンとヌツィキ・ビエラ

「アスリナ」という名前の南アフリカのワインを買った。商品ページに、「南アフリカの黒人女性初の醸造家」という文言を見つけたからだ。そんなもん買う一択だわと買って飲んで調べてみたことを以下に記す。ヌツィキ・ビエラという南アフリカに生まれた黒人女性の物語だ。

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南アフリカ初の黒人女性醸造家が造るワイン「アスリナ」のご様子。

さて、貧しい家庭に生まれたヌツィキさんに転機が訪れたのは高校卒業後。大学進学を夢見てメイドとして働らくかたわら大学のスカラシップに応募し続けた彼女は、醸造学を学ぶことが条件の南アフリカ航空奨学金に合格。それまでヌツィキさんはワインを飲んだこともなく、ワイン造りを学ぶことが条件の奨学金に受かったのはただの偶然。

「私がワインを選んだんじゃない。ワインが私を選んだの」

とは本人の弁。カッコいいぜヌツィキさん。

しかし、大学に入学したのはいいものの、自分以外は全員白人、ほぼ男性という環境かつ授業はアフリカーンス語、つまり白人の言語で行われ、ズールー語しか話せなかったヌツィキさんには意味がわからない。それでもズールー語がわかる教授に授業の後に内容を教えてもらうといった努力を重ね、2003年に無事大学を卒業。

アスリナが世に出るまで

ワイナリーに就職したヌツィキさんはみるみる頭角を現し、2009年には南アの女性ワインメーカー・オブ・ザ・イヤーを受賞するまでになる。ただ、そこに至るまでの道のりはもちろん平坦ではなく、ワイナリーを訪ねる客に醸造家はどこにいるかと尋ねられ、私ですと答えても信じてもらえないなんてこともあったようだ。なんで黒人がワイナリーにいるんだと暴言を吐き捨てられたこともあったという。

それでもヌツィキさんはワイン造りに情熱を燃やし続け、2014年にはついに尊敬する祖母の名前を冠したワイン「アスリナ」を世に送り出す。自社ブドウはなく、醸造設備も間借りしての生産量1800本のスタート。しかし、初の黒人女性醸造家の作るワインは南ア国内でも、そして世界的にも話題となり、以降年々生産本数を増しているというからまさに現代のシンデレラストーリーだ。これ映画化決定ですよ。むしろ映画化すべきですよ。言ってくれれば脚本は私が書きますよ。21世紀のシンデレラは魔法じゃなくて努力で夢をつかみとるんですよ。ガラスの靴じゃワインは造れないんですよ!(熱弁)

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ちなみにこれは余談だがヌツィキさんと私はいわゆるひとつのタメ。同じ年に生まれた女性が南アフリカで作ったワインを、彼女が過ごした濃厚な半生に想いを馳せながら飲む。時間と空間を超えて、1本のボトルに人生が詰まっていることが感じられて、飲む前から胸がいっぱい。なのだが、それでもボトルに詰められるまでのストーリーと詰められた液体はまた別の問題だ。どんな味わいか、虚心坦懐味わってみたい。

アスリナ カベルネ・ソーヴィニヨンを飲んでみた

さて、アスリナ カベルネ・ソーヴィニヨンはステレンボッシュ地区で採れたブドウを使い16カ月樽熟成している、くらいしか公式サイトには情報がない。購入サイト(アフリカー)の商品ページを見ると、カベルネソーヴィニヨン91%、プティ・ヴェルド9%とのことで、手に入る情報は以上で終わり。ちなみに価格は3850円とややお高めだが、精神的には3750円分くらいヌツィキさんに対するリスペクトをYouTubeにおけるスパチャ的な気分で支払っているので実質ワンコインである。いざ飲んでみよう。

グラスに注いでみると、うーん、濃い。アルコール度数14%も納得の黒っぽい赤といった色味。ジャムみたいな甘い香りと、焼け野原みたいな焦げ臭さ。飲んでみるとうーんパワフル。なんでしょうかこの大地味(だいちあじ)感。渋みも酸味もしっかりとあって、それでも果実味も負けずにある。獲れたばかりのジビエを食べたときみたいな気分。獲れたばかりのジビエ料理と合わせたら最高でしょうなあ。

女性が作るんだから女性的なワインなんだろう、優美、繊細とかだろうという先入観を、だからそういうステレオタイプな女性像を一方的になすり付けてくること自体がそもそも男性中心主義的価値観なんだボケと粉砕するかの如くに力強く、ハードで、ガッとした味わいである。す、好きっす!

いわゆる飲み頃は数年後、とかそういう感じなのかもしれないし飲む際はデキャンタージュしたりしたほうがいいのかも。もしかしたらこのワインを存分に楽しむためには、私の飲み手としてのリテラシーは足りていないかったかも知れないが、なにもせずに今グラスに注いでも十分においしかった。この味わいを忘れずに、数年後にもう一度飲んでみよう。

人類が等しく手をつなぐ未来を妄想する場合に大切なのは多様性であり多様性を尊重するマインドであるはずだ。それを象徴するかのようなアスリナのワインは、21世期のいまこそ飲むべきワインだと思う。

これも気になる。「ウムササネ」はおばあちゃんのニックネームなんだとか。ボルドーブレンド

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