ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

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バルベーラはどんな品種!? イタリア・ピエモンテを代表するブドウについて調べてみた

バルベーラはどんなブドウか

イタリアには土着品種が数多くあるが、バルベーラもそのひとつ。リーズナブルでおいしいワインが多いブドウ品種なので、一体どんな品種なのかを把握しておくと、よりおいしく飲むことができるに違いない。早速、調べてみよう。

さて、ブドウの品種について調べる際は英語のwikipediaを参考にすることが多いのだがバルベーラに関しては日本語wikiの充実度がすごいので、以下日本語のwikipediaの記述を参照しつつ、バルベーラについてまとめていきたい。

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バルベーラの歴史

バルベーラの主要産地はイタリアのピエモンテ州で、同地では栽培されるブドウの30%がバルベーラ。その名前が歴史上に登場するのもやはりピエモンテで、ピエモンテ中部のモンフェッラート大聖堂に残る13世紀の土地貸与記録にこのブドウの名前があるのだそうだ。当時は「バルベクシヌスの良いブドウ樹」という名前で呼ばれていたんだって名前長っ。

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18世紀に描かれたというカザーレ・モンフェッラート市街の図。(画像はwikipediaより)

ピエモンテに限らず、その収量の高さからバルベーラはイタリア国内で3番目に栽培面積の多い黒ブドウなのだそうだが、実は元々は2番目だった。

 

バルベーラが黒ブドウの栽培面積2位→3位になった理由

それがなんで3番になっちゃったのかといえば1986年にバルベーラの複数の生産者がワインにメタノールを添加するという事件が発生したことに端を発する。この件は全然シャレになっておらず、19人が亡くなり、15人が失明したのだそうだ。なんでそんなことしたの……。

この事件はWEBサイト「ザ・ドリンク・ビジネス」の記事「TOP10ワインスキャンダル」の6位にランクインしているのだが、この記事によるとどうやらアルコール度数を補うためにメタノールを添加したっぽく、その記事によれば死亡したのは23人、入院90人。12人の生産者が過失致死などの罪で逮捕されている。

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当然の如く国際的な問題になったようで、1986年のNYタイムズアーカイブによれば、ヨーロッパ各国の政府が「イタリア産ワインの飲用を控えるように」警告を発する事態にまで発展。イタリアワインの販売が禁止されかねないみたいなところまでいったようだ。そりゃそうなるよ。

この件でバルベーラの悪評が広まり、1990年代にイタリアで2番目に栽培されている黒ブドウの座をモンテプルチアーノにゆずることになったのだそうだ(1位は貫禄のサンジョヴェーゼ先輩)。

 

バルベーラと名産地ピエモンテ

そんなバルベーラの名産地が、先にも述べたピエモンテブルゴーニュといえばピノ・ノワールであるように、ピエモンテといえばそりゃもうなんつったってネッビオーロなわけなので、バルベーラはネッビオーロに対して栽培が容易で収量が高く2週間早く成熟するため、もっとも良い区画はネッビオーロに割き、標高が低かったり気温が低い斜面などの2軍感のある区画で栽培されてるんだそうだ(ネッビオーロのほうが収益性が2倍近くあるとのこと)。

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ピエモンテ州アスティ県はバルベーラの名産地

少数精鋭のネッビオーロと数で勝負のバルベーラみたいな感じですかね。ますますガメイっぽくなってきたな。バローロ品種であるネッビオーロよりも早く成熟する&バローロより早飲みタイプに造られることが多いことから「バローロの出来上がりを待つ間に飲むもの」とか呼ばれてたらしいですよ。気の毒。

ピエモンテの黒ブドウに関しては書籍『土とワイン』(X-Knowledge)にむちゃくちゃ簡潔にまとめられている箇所があるのでまるっと引用してみたい。以下だ。

「ドルチェットは日常生活で気楽に飲むワイン、バルベーラは日曜日の少し気取ったディナー用、ネッビオーロはもう少し特別な場合のワイン、そしてバローロバルバレスコは、華やかで晴れがましい機会に飲むワインとされてきた」

うーん超わかりやすい。著者によれば、バローロバルバレスコの偉大な生産者も少量のバルベーラを造っているため「入手する価値がある」そうだ。いいこと聞いた。

 

バルベーラの名産地、アスティ、モンフェッラート、そしてニッツァ

さて、ピエモンテのなかでもバルベーラの産地として有名なのがアスティ県。バルベーラ・ダスティ、よく耳にするわたしかに。で、アスティのなかでも有名なのが品種に関する最古の記録が残る聖堂があるモンフェッラートの丘近くにある「ニッツァ」という土地だ。

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モンフェッラートの丘がこちら。(画像はwikipediaより)

ここはバルベーラ・ダスティの下位区分として単独でDOCG(原産地呼称)に登録されていて、バルベーラのベスト・オブ・ベスト的な土地のようだ。「最高峰」みたいに書かれるワインでも1万円切るしお得感あるな。「高収量ワインのハイエンド」狙い目感ありますねこれは。

余談だが「ニッツァ・モンフェッラートとバルベーラ」は世界遺産ピエモンテのブドウ畑の景観」を構成する一部となっている。行ってみたい。あと信じられないくらいどうでもいい情報なのだがピエモンテ州から名付けられたピエモンテ」という名の小惑星がこの宇宙のどこかに浮かんでいるそうです。

 

バルベーラはどんな味?

さて、バルベーラの特徴は深い色味に強い酸味&ほどほどの渋み。前述のニッツァはアスティでもっとも温暖な土地なのだそうで、それだけにブドウの糖度が上がりやすく、酸味との調和がとれるのだそうだ。

全体にアスティのバルベーラはエレガント、同じピエモンテ州でもクーネオ県に位置するアルバのバルベーラは果実味がパワフルになる傾向があるんだって。

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ピエモンテ州の図。アルバとアスティ、近い。

そしてアルバはバローロバルバレスコで有名なランゲ地方の中心都市なんだそうです。なるほどなー。アルバ、アスティ、ランゲとかよく聞くけどよくわかってなかったから助かる(自分に対して)。

ピエモンテ=州
ランゲ=地方(行政区分ではない)
アスティ=県
アルバ=クーネオ県の都市

ということですね。以上自分用メモ。

ふたたびブドウに話を戻すと、このブドウの特徴はとにかく「酸」にあるようだ。酸味が強いしか書いてないってレベル。箇条書きだとこんな感じ。
・基本的に酸味が強い
・収量を増やしすぎるとより酸味がキツくなる
・酸味を穏やかにするため収穫を遅らせる生産者も
・酸味が強いので酸味がほしい地方(カリフォルニア、アルゼンチン、オーストラリアなど)で重宝されている

とにかく酸味、酸味、酸味だ。それを和らげるためにフランス製のバリック(樽)を使うなど醸造技術が発展し、それによりデイリーワイン用と目されていたバルベーラ自体の地位も向上している、というのが今日のバルベーラをめぐる状況のようだ。

南北アメリカには第二次大戦後にイタリア移民の伝播とともに広まっていったそうで、とくにカリフォルニアでは広く栽培されており、大量生産ワイン(ジャグワイン)のブレンド材となっているようだが、一方でナパやソノマ、シエラフットヒルズAVAなどで高評価のものも生産されているとのこと。南米はアルゼンチンのほか、ブラジル、ウルグアイでも栽培されているそうだ。

つっても、書籍『The WINE マグナムエディション』のバルベーラの項を見ると産地はほぼイタリア、次いでカリフォルニアで、残りは本当に端数といった印象だ。

 

バルベーラのおすすめワイン

さて、最後にオススメのバルベーラは……みたいに紹介できたらカッコいいのだがごめん正直ひとつもわからない。

 

そこで調べてみたのだが、飲んでみたいなと思ったのはピエモンテの生産者・ブライダのブリッコ デル ウッチェッローネ バルベーラ ダスティ。「酸味が強い」と敬遠されていたバルベーラの可能性を信じ、1978年にフランスからバリック(樽)を取り寄せ、初めてバルベーラを樽熟成させた造り手なんだそうな。「vivinoが選ぶイタリアのバルベーラBEST25」第3位にランクインしてし飲んでみたい。

あと、私でも知ってる超有名生産者、ブルーノ・ジャコーザが買いブドウでバルベーラをリリースしてるのも今知った。ブルーノ・ジャコーザ自体も飲んでみたいしこれも魅力的だ。まさに「偉大な生産者が造るバルベーラ」枠。

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といいつついま飲んでるのはAmazonで飲んでる安バルベーラ。このセット、バルベーラが3種類、ドルチェットが1種類入っていてピエモンテの非・ネッビオーロの味わいを知るにはとてもいい。

というわけでバルベーラについてつらつら調べてみた。面白いなイタリア品種。まだまだ詳しく知りたい品種はたくさんあるので、ご期待を乞う次第だ。次はドルチェットか、はたまたネッビオーロか……!?