ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

ボジョレー・ヌーヴォー2020の味わいは? 解禁日に飲んでみた!

ボジョレー・ヌーヴォーを解禁日に飲むことにした

2020年11月19日はボジョレー・ヌーヴォーの解禁日であった。私にとっては、ワインに本格的にハマり、ワインブログを開設してはじめて迎える解禁日。踊るか踊らなかいと問われれば踊る人生を私は選んでいきたいので解禁日に飲むことにした。

向かったのはSNSでたまたま見かけたショップ「愛宕小西」。解禁日にグラスでボジョレー・ヌーヴォーが飲めるとなれば私のヌーヴォー欲と角打ち欲を同時に満たすのはここしかない。

地下鉄日比谷線虎ノ門ヒルズ駅っていうJR山手線の高輪ゲートウェイ駅、東京モノレール天王洲アイル駅と並んで怪しい名前の駅で降り、徒歩数分。慈恵医大病院のほど近くに愛宕小西はある。

2020年のボジョレー・ヌーヴォーその1「ルイ・ジャド」

店内に入ると、おお、ズラリ並んだボジョレー・ヌーヴォー。店主と思しき紳士に「あの〜、これってグラスで飲めたり……しますか?」と「飲める」という情報を仕入れた上で妙に下から聞く、という一見さんムーブで尋ねると、「今はこれしか開いてないけど、これで良かったら飲めますよ」と丁寧に教えてくれたのが、おお、すごいなこれ。ルイ・ジャドの3リットル入りボトルだ。

これがグラスで800円。小ぶりなグラスにご主人が注いでくれたのだが3リットル、かなり重そう。なんでも、例年は樽で入れるのだが今年はコロナもあって需要が少ないことを見越して、例年は販売する3リットルボトルをグラス提供用にしているのだそうだ。商店街の振る舞い酒需要があったりするとか。そんなオシャレ商店街のある街に住みたい。

で、注いでもらったルイ・ジャドがすごかった。まず濃い。ど紫。あれおかしいな。ボジョレー・ヌーヴォーって色も薄くて味も薄い、みたいなイメージがあったけど違うんですかね。と、聞くと「年によるんですよ」とのこと。「今年はフランスも天気が良かったみたいでね。20年くらいヌーヴォーを売っていると、今年のブルゴーニュのできがなんとなくわかるんですよ。今年は良さそうですね」と教えてくれた。「去年よりいいですよ」とのことだ。いいっすね。

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ルイ・ジャド 「ボジョレー・ヴィラージュ プリムール2020」でかっ!

それじゃあいただきますと飲んでみると色の印象そのままにまったく薄くない! ヌーヴォーだって言われなかったら絶対わかんないってレベル。渋みが強くて、それを酸味と果実味がフォローしているような印象。これ全然ふつうにおいしいじゃないっすか。延長戦にもつれこんだ結果打席が回ってきた代走の選手がホームラン打ったみたいな予想外のなうれしさがある。

飲みながら店内に目をやると、ワインを中心に洋酒から日本酒までが揃い、奥にはセラーも見える。ワインのセレクトにはこだわりが滲んで、いい雰囲気だなあ、愛宕小西。すごくいい時間が流れてる。

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2020年のボジョレー・ヌーヴォーその2「ジョセフ・ドルーアン ボジョレー・ヴィラージュ ヌーヴォー」

いやー、おいしいっすねえと飲んでいると、「ほかにも飲みたいのがあれば開けますよ」と嬉しい申し出。せっかくなのでなにか開けてもらおう、と選んだのがジョセフ・ドルーアンボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー。ドルーアンボジョレー・ヴィラージュは飲んだことがあるので、比較できたら面白いなあと思った次第だ。「ヴィラージュはおいしいですよ」とお店のご主人も教えてくれたし。

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ジョセフ・ドルーアンボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー 2020」

目の前で抜栓してもらい、600円を支払って注いでもらうとこれまた濃いな! ここで奥から登場したマダムいわく「こんな年でも、農家の人は粛々とお仕事されてたのよねえ」とのこと。うーん、含蓄がある。コロナに世界が覆われようとも人は目の前の仕事をするしか基本的にやることがない。そして、コロナに翻弄される人類など関係なしにボジョレーには太陽が降り注ぎ、ブドウは豊かに実ったのだろう。そして収穫され、ワインとなり、飛行機に揺られて日本にやってきたのか君は、と思うとグラスのなかの液体が外国からやってきた友達みたいに感じられるから不思議だ。よく来たなあ。

ルーアンもルイ・ジャドと味の傾向は同じで、事前に想像していた甘酸っぱい系の味ではなく、渋みがまず強く、酸味、果実味がそれを補うような方向性だった。いやこれ前に飲んだボジョレー・ヴィラージュよりおいしいまであるぞ。好みでいえばややルイ・ジャドかなあといったところだが、せっかく開けてもらったのでドルーアンを購入することとした。値札は3300円。

聞けばこの愛宕小西、創業は明治5年なのだそうだ。「昔は木造建築でしょ、だから赤坂の火事でここらへんも焼けちゃったみたい。そのあと震災で焼けて、次は戦争で焼けて……何度も焼けてるのよ」とマダム。歴史がヤバい。震災って関東大震災(1923年)のことですよね……?

愛宕小西が創業した明治5年といえば1873年。イマハナミダノ徴兵令。それから150年弱つづくお店で、2020年の新酒を飲む。なんだか急に歴史の舞台の中に自分が迷い込んでしまったような感覚を私は覚えた。酔っ払っただけかもしれないけど。

今日買ったドルーアンは、すぐに開けずに来年か、それよりさらに先に飲もう。そしてまた来年もボジョレー・ヌーヴォーを飲もう。そう考えながらの帰り道、2020年のジョセフ・ドルーアンのボトルの重さがなんだか妙に心地よかったのだった。ごちそうさまでした。またお邪魔します。