ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

「ドイツのシラー」の味わいは? 醸造家・Nagiさんを囲む会参加レポート!

醸造家・Nagiさんを囲んで

ドイツで醸造家として活躍するNagiさんという方がいる。昨年帰国された際に酒席をともにさせていただき、Clubhouseでワインについて話を聞かせてもらったりもした。年齢が近いこともあって誠に勝手ながら一方的に心の友認定(無許可)をさせていただいている。そんなNagiさんが年末に帰国、14日間の隔離期間もあけたタイミングでお会いできることになった。やったぜ。

集まったメンバーは、Nagiさん、昨年のNagiさんワイン会に誘ってくれた心の師・安ワイン道場師範、恵比寿の名店・ワインマーケットパーティの沼田店長、そしてワインフィッターとしてご活躍のYUKARIさんご夫妻+ヒマワインである。ヒマワイン以外のメンバーの豪華さがヤバい。

f:id:ichibanboshimomojiro:20220115190301j:plain

見てくださいよこのオシャレさ

集合はYUKARIさんの「秘密基地」だという東京・中目黒の羊料理店・LambCHAN(ラムチャン)の、普段は使っていない店舗2階のバースペース。オシャレなんですよこれが。まさに隠れ家。思う存分密談できそうなロケーションだ。

 

【1杯目】ボランジェ グラン・ダネ ロゼ2002

さて、持ち寄りワイン会形式のこの日、最初の一杯は沼田店長が持参されたシャンパーニュ、ボランジェ グランダネ ロゼ 2002。待っていきなり凄まじいワイン出てきちゃった。ワインもすごいが沼田さんの解説もすごい。こんな感じだ。

f:id:ichibanboshimomojiro:20220115185359j:plain

「瓶口を見ると、これ王冠がつけられないんですよ。これは瓶内二次発酵をコルク栓でしているということ。これにより、発酵と同時に熟成も進むんです。その代わり、動瓶やデゴルジュマンも手作業で行うなど手間がかかる。一部の生産者や、ボランジェでもこのクラスでないと行わない手法です」

なにこれド初耳。なんでも、生産者によっては暑い年はあえて酸化を促すためコルク栓で二次発酵させ、そうでない年は王冠を使うというケースもあるんだそうだ。つまり瓶内二次発酵には王冠を使うパターン、コルクを使うパターン、年によって使い分けるパターンと3パターンあるんだそうですよ勉強になりすぎる。

色はややオレンジがかったピンク色に見える。泡立ちは弱く、グラスからはリンゴやパンといった香りがしっかり。酒蔵に足を踏み入れたときみたいな香りもちょっとして、飲んでみると20年も眠っていたとは思えないほど軽やかでフレッシュ。それでいて熟成香(Nagiさんいわくアセトアルデヒド香)も香るという良すぎるバランス。

このワイン、一杯目を飲み干したNagiさんが「ボトルの真ん中らへん、飲ませてもらってもいいですか?」と言い、その理由をこう語ってくれた。

「ビンテージが古いワインほどボトルのなかの濃度が変わるんです。上は薄く、底はフ渋くなります。なので、真ん中あたりがちょうどいいんです。よくお店などで古くて良いワインを居合わせた人に振る舞う方がいますよね。そのとき、振る舞う側は抜栓したてのボトルの上のほうを飲んで、真ん中部分を振る舞うケースが多いんですよ。あれを見ると『もったいない!』って思います(笑)」

古酒の「真ん中らへん」はいわばワインのトロ。味わいの不均衡を是正しようと思うならデキャンタージュするのがベターなのだそうだ。デキャンタがない場合、「抜栓後にコルクを差し戻して、瓶をガシャガシャ振るしかない」とのことであった。多少上下を入れ替える程度ではダメなんだって。へー。

というわけでここまでですでに1500ワードくらい使ってしまったがまだ乾杯の段階なんですよこの会。やべえ。

 

【2杯目】NIKI Hills ワイナリー「HATSUYUKI2020」

さて、気を取り直して2杯目はYUKARIさんご提供のNIKI HillsワイナリーのHATSUYUKI2020。これ飲みたかったやつ! 「品種はなんでしょう?」とYUKARIさんが謎かけをしたのだが、みなさんの「甲州かな?」という回答とは裏腹に正解はケルナー。

f:id:ichibanboshimomojiro:20220115185410j:plain

やや独特な香りがあるものの、北海道のワインらしいピシッとした酸味に加えて味わいに華やかさもあってこれもおいしい。もう少し甘やかな感じかと思いきやドライで、「HATSUYUKI」という名が体を表している感じがした。

 

【3杯目】フェルミエ「ピノ・ノワール 早摘み 2019」

ここでYUKARIさんのご夫君である裏ぷるーるさんが合流。その手にあるのは……おお、新潟の生産者、フェルミエのピノ・ノワール! 飲んでみたかったやつ(5分ぶり2度目)!

f:id:ichibanboshimomojiro:20220115185421j:plain

日本のピノ・ノワールらしい、夜と夕方の境目みたいなやや薄めの赤紫色で、さくらんぼのような香りがスーンと漂ってくる。これはまさに私の大好きな薄うま系のピノ・ノワール! 後から調べると、商品名は「ピノ・ノワール 早摘み 2019」というらしいのだがこれまた名が体を表すキレイでフレッシュな大変おいしいワインだったのだった。

 

【4杯目】シャトー・メルシャン「椀子シラー」

続いては私が持ち込んだシャトー・メルシャン 椀子シラー。というのも、この会はそもそも昨年私が「3000円以下の安うまシラーを教えてください」とtwitterでおねだりしたところ、「『ベッカーのシラー』という珍しいワインが手元にあるから次に帰国した際に飲みましょう」とリアクションしてくれたのがきっかけ。

このツイートのリプライ欄めちゃくちゃ有益です↓

ドイツのシラーを飲む会なので、じゃあこちらは日本のシラーで迎え撃とうという趣旨でのチョイスだ。頼んだぞ、大手企業!

f:id:ichibanboshimomojiro:20220115185433j:plain

飲んでみると、色、香り、味わい、すべてバランスが良くおいしいワイン。なのだが、優等生的ではあるものの、突出した個性がない感じでもあったのだった。いや、もちろん全然悪くないんだけれども。

Nagiさんいわく、「シラーの香りは気温が低いほうがキレイに出る」とのこと。気温が高くなりすぎると糖度が高くなりすぎてしまい、ブドウが十分に熟す前に収穫を迎えてしまうことになってしまうんだそうだ。ワイン造りって本当に難しいですね。

f:id:ichibanboshimomojiro:20220115185448j:plain

この「ラムのたたき」めちゃくちゃおいしかった。

【5杯目】フリードリッヒ・ベッカー「シラー 2012」

続いて登場したのが本日の主役、キツネのマークでおなじみのフリードリッヒ・ベッカーのシラー2012だ。

f:id:ichibanboshimomojiro:20220115185515j:plain

「2、3年前にベッカーを訪ねたときに、ピノよりいいなと思って買ったんです。やっぱり人気はピノだからシラーは売れなかったみたいで、『売れ残り熟成』したワインです(笑)」とNagiさん。売れなかったからなのか、なんなのか、ベッカーはもうシラーの木を引っこ抜いてしまったそうなので、おそらくこれが最初で最後の飲む機会。

Nagiさんいわく熟成のピークをすでに過ぎているそうなのだが私的にはめちゃくちゃおいしいと感じた。甘酸っぱさに加えてほのかなスパイシーさがあり、冷涼シラーのいいとこ全部乗せ感がある。Nagiさんがドイツからハンドキャリーしてくれた、その手の温もりも加わって忘れられない味になりそう。ありがとうございました。

 

【6杯目】Weingut Keringer「100DAYS」

Nagiさんはもう1本持ち込んでくれていて、なんとオーストリアのシラーズ。キュヴェ名は100DAYSでなんと醸し期間が最低100日間であることから名付けられたワインだそう。オーストリアの中でも温かい産地のワインとのことで、アルコール度数も14.5%とガッツリ高い。

f:id:ichibanboshimomojiro:20220115185533j:plain

飲んでみると果実味しっかり、香り豊かで骨格しっかりというアンタはニューワールドのシラーズかっていう味で、これもとてもおいしかった。ヨーロッパには日本に入ってきてないこういうワインが山ほどあるんだよなあ。移住したい。

 

 

【7杯目】ボッシュクルーフ 「シラー2016」

次に飲んだのが、師範持ち込みのボッシュクルーフ エピローグ シラーでヴィンテージは2016。

f:id:ichibanboshimomojiro:20220115185543j:plain

これは飲んだ中でもっともシラーらしいシラーと言っていいような味わいだった。果実味酸味渋みのバランスが良く、コショウのようなスパイシーさがある。ティム・アトキンMW98点は伊達じゃない系の味わいだ。沼田さんいわく「黒胡椒ではなく、白胡椒の香り」とのこと。関係ないけどYouTubeで三国シェフが「赤いお肉は黒胡椒、白いお肉は白胡椒です」って言ってたのでなにかの折に思い出してください。

 

【8杯目】ディディエ・ダグノー・エ・ギィ・ポトラ「ジュランソン "レ・ジャルダン・ド・バビロン" 2004」

日本、ドイツ、オーストリア、そして南アフリカ。4地域のシラー飲み比べはこれにて終了。シメにいただいたのが沼田さん持ち込み2本目のディディエ・ダグノー・エ・ギィ・ポトラの甘口ワイン「ジュランソン "レ・ジャルダン・ド・バビロン" 2004」。品種はプティ・マンサン100%というワインだったのだがこれがやべえやつだった。

f:id:ichibanboshimomojiro:20220115190648j:plain

このワインだけ写真撮り忘れたので師範からお写真借りております。(トリミングしてます)

赤はガメイ、白はプティ・マンサンが好きだという沼田さんが推すだけあって、パイナップルみたいなトロピカルな感じ、花の蜜を2年間くらいかけて集めて煮詰めました、弱火で、みたいなさわやかで濃厚な甘さ、スッキリとした酸味もあってデザートで出していただいたフェタチーズで作ったチーズケーキとちょっとどうかと思うほど合った。シメの甘口ワインって本当にいいですよね。

楽しい会の時間が経つスピードは本当に異常で、6人で以上8本を飲む間に時計の針は超高速で進みあっという間に終電間際となっていた。ワインも料理もどれもおいしく、いやー楽しかった。そしてNagiさん、沼田さん、YUKARIさんたちワイン界の最前線で活躍する方々の話はどれも面白く、めちゃくちゃ勉強になったのだった。楽しくて、学びにもつながるこういう会は最高だ。みなさん、また飲みましょう!

現在開催中のカーヴ・ド・エル・ナオタカのセールで気になるワインたち↓