ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

カリフォルニアのピノ・ノワールを飲んでワインの嗜好の変化について考えた話。【ボーエン トリ アペレーション ピノノワール】

ボーエン トリ アペレーション ピノノワールを買ってみた

なんだかピノ・ノワールが飲みたいなあという気分になったので「ボーエン トリ アペレーション ピノノワール」というカリフォルニアのピノ・ノワールを買った。日本での売価4290円をセールで買ったのだが、本国サイトを見ると現地価格は24ドル。この造り手、赤はピノ・ノワールのみ4名柄をリリースしていて、今回飲んだのはそのうちもっとも廉価な1本。ソノマ、モントレーサンタバーバラの3地域からのブドウで作っているのでトリ アぺレーションってことみたい。

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ボーエン トリ アペレーション ピノノワールを飲みました。

ピノ・ノワールって、他の品種よりもヴィンテージと産地の特徴がよく出るよね」というワインメーカーのコメントが本国サイトの「OUR WINES」カテゴリ冒頭に記されており、そのラインナップは
ソノマ・モンタレー・サンタバーバラ ピノ・ノワール 24ドル
ロシアンリバーヴァレー ピノ・ノワール 35ドル
サンタルシアハイランズ ピノ・ノワール 35ドル
サンタマリアバレー ピノ・ノワール 35ドル
といったようになっている。ブルゴーニュでいう広域名と村名みたいな感じですかね。で、今回飲んだのは広域名的なもの。52%がモントレーから、25%がソノマ、23%がサンタバーバラから来ているそう。

ボーエン トリ アペレーションとカリフォルニアのピノ・ノワール

「広域名」には情報がほぼないので「村名」のほうの説明を見ると、発酵後、フレンチオーク100%(新樽率60%)で熟成とある。価格帯が違うので同じような造りかどうかはわからないけれども、24ドルとまあまあな値付けなこともあり、割とリッチな造りがされてることを期待しつつ抜栓……というかなんでしょうか、これすごく特殊なやつですね。スクリューキャップとも違う、再栓可能なキャップ風アルミふた、みたいなやつをなんだこれどうやって開けんだよと四苦八苦した挙句に外してグラスに注いでみるとですね。

青い!

紫通り越して青い。赤みがほとんどないレベル。限りなく濃厚に近いブルー。あれピノ・ノワールってこんな感じだっけ。擬音でいえば「とろ〜り」みたいな感じで色だけ見ればピノタージュとかマルベックとかそういう感じに見えて絶対にピノ・ノワールには見えない。面白いなあこういうのもあるんだね。と、飲んでみた。

濃い!

え、これほんとにピノ・ノワールなの。マジで濃い。そして甘い。果実味ボヨヨン。ブルーベリーとかチェリーとかを煮詰めた液的ものをバニラ棒で混ぜた、みたいな味がしておいしさのわかりやすさがすごい。アルコール度数も14.5%と高い。さもありなん。これ、1年前だったらどストライクな味だったろうなあ。

フランスかカリフォルニアか。すねか、ボヨヨンか問題。

話は逸れるが『蜩ノ記』という映画がある。殿様の側室との不義密通を疑われ10年後の切腹を命じられた武士が田舎で隠居生活を送っている。そこに監視役として送り込まれた若い武士が、やがて別の重大な疑惑に辿り着き……というお話。切腹を命じられた武士を役所広司、監視役の若い侍を岡田准一が演じていて、役所広司の娘役として堀北真希がキャスティングされている。

渋い時代劇なので濡れ場等は一切ないのだが、終盤、寺かなんかの階段を登る際に堀北真希の白いすねが一瞬着物の裾を割って見えるというシーンがあってそこになんともいえない色気があるのだがそんな感じで果実味が配置されているピノ・ノワールってあるじゃないスか。ワインにハマってまもなく2年になろうとしているんですが、最近私はこの堀北真希のすね的奥ゆかしさで果実的な要素が設計されているワインっていいよね、と思うようになってきたような気がしている。

それに対してですね、今回飲んだピノ・ノワールはなんつーかフーターズっていうかバドガールっていうかそういう感じのピノ・ノワールなんですよ。ボヨヨン系なんですよ。無論ボヨヨンは尊いんですよ。でも今私の気分はボヨヨンではないのだ。すねなのだ。私はすねに異様な執着を見せる一種の狂人なんですよねっていうカミングアウトとかじゃなくて。

着物の裾から覗くすねをとるかフーターズ的ボヨヨンをとるかは無論好みの分かれるところであろうし、年齢とかなんならその日の体調とかによっても変化するところだろう。男性が好きな方であれば、ピアニストのような繊細な指先に色気を感じる方もおられようし厚い胸板に惚れちゃう、という方もおられよう。みんな違ってみんないいのだが私の現在の気分は『蜩ノ記堀北真希のすね的ピノ・ノワールということになる。

『ワイン一年生』で、ブルゴーニュピノ・ノワールはデレ成分の極めて少ないツンデレ的キャラとして描かれ、それがアメリカにわたると途端にチューインガム膨らませてほっぺに星のペイントしてる陽キャみたいに表現されている。

改めて、あれは的確な表現だったんだなあと痛感した次第。あと『蜩の記』は「たいのき」でも「せみのき」でもなく「ひぐらしのき」と読みます。