ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

キャサリン・マーシャル ソーヴィニヨン・ブラン2019を牡蠣に合わせて飲んでみた。【 Catherine Marshall Sauvignon Blanc】

牡蠣が手に入ったので白ワインを開けることにした

休肝日にするつもりでいたら殻付きのいい感じの牡蠣をもらってしまった。牡蠣は殻を開けてグリルで焼いてレモンを絞っていただく。これに合わせるのが水ってわけにはいかないですよどう考えても。ってことで白ワインを開けることにした。食べた牡蠣の量は幸せの量。ワインがあれば5割増し。

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キャサリン・マーシャルのソーヴィニヨン・ブラン2019を飲みました。

とはいえ、ついつい赤と泡ばかり買ってしまうので手持ちに白が少ない中から選んだのは、南アフリカの生産者、キャサリン・マーシャルのソーヴィニヨン・ブランだ。いやはやこれ、結果的には超絶ド正解だった。後述するが完全に口内二次調理が起き、別の一皿が発生した。

という話はさておいて、まずはワインについて調べたみた。

キャサリン・マーシャルと生産地エルギンの名前の由来

キャサリン・マーシャルは1991年に南アフリカのエルセンブルク農業研修所を卒業後、フランス、アメリカ、オーストラリアのセラーで経験を積み、南アフリカでも4つのワイナリーでワイン造りに従事、1996年からマイクロワイナリーをはじめ、2007年に正式に(?)ワイナリー経営をスタートした、といったようなキャリアのようだ。

さて、そのウェブサイトを見てみよう。ウェブサイトには生産者がもっとも大切にしているものが表れる、が本ブログの持論だが、キャサリン・マーシャルのサイトを見ると、キャサリン・マーシャルとそのチームの紹介があって、ワインの紹介があって、おお、生産地「エルギン」に関する記述が異様に多い!

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というわけでエルギンという産地について調べてみると、時は19世紀後半、この地でエルギンという少女が蛇に噛まれて死んだ。エルギンの名はその少女の名を偲んでつけられたのだそうだすげえ話だないきなり。民話かよ。

少女は気の毒だったが、その名は100年以上の時を超え、彼女がもしかしたらイメージしたことすらなかったかもしれない日本という国の一部でもワイン産地として名高くなっている。人生は恐ろしい冗談の連続である。

キャサリン・マーシャルとエルギンの気候と地球温暖化

そのエルギンは西ケープ州のケープサウスコースト地域に位置する。キャサリン・マーシャルのサイトに貼ってあった画像をお借りするとその特異な地形は一目瞭然で、阿蘇山カルデラかよといわんばかりのド盆地。標高は350〜500メートルと高く、冷たい海上の空気が流れ込み、「ほぼ永久的な雲に覆われている」ため平均気温が低い。「ほぼ永久的な雲」ってすごいな。ゲームで後半に空飛ぶガジェットを手に入れてからでないと足を踏み入れられない地域感がある。急に敵が強くなるみたいな。

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ともあれ、エルギンはとくに寒い土地を好むブドウの生育には理想的な環境なのだそうだ。地図上はすぐお隣に見える名産地ステレンボッシュより収穫が3週間から1カ月遅くなるっていうから、どれくらい涼しいかがなんとなくイメージできる感じがする。

土壌は砂岩、頁岩、花崗岩で、キャサリン・マーシャルは2007年以降100%エルギン産ブドウを使うことを決定しているのだとか。
地球温暖化が私たちの技術に与える脅威を考えると、フィネス、純粋さ、活力のあるワインを生産するためには、冷涼な気候が必要である可能性が高くなってきたように思います。」と公式サイトにある。なるほどなー。

キャサリン・マーシャル ソーヴィニヨン・ブランはどんなワインか

さて、ソーヴィニヨン・ブランだが、テクニカルシートが2020のものしか見つけられなかったので、それを見ると、フランスのサンセールとボルドー由来のクローン3種と、南アフリカオリジナルのクローンを組み合わせることで複雑味を出しているとのこと。発酵後、6カ月間澱に触れさせた後、樽発酵させたセミヨンを5%加え、軽く清澄、濾過してできあがり。

2019ヴィンテージもおそらく同じ造り方なのでは……という気がするが、はっきりしない。はっきりしないので、もう飲んじゃう。

キャサリン・マーシャル ソーヴィニヨン・ブランを飲んでみた

ということで、魚焼きグリルに突っ込んだ牡蠣が香ばしく焼き上がったタイミングでスクリューキャップをくるくる回してグラスに注いで飲んでみると。これが非常においしい。とてもいい。購入価格は2068円税込と決して高いワインではないけれど、草原とグレープフルーツとトロピカルフルーツが同時に脳裏に浮かぶ味と香りだ。ほんのちょっとのトロピカル感があることでさわやか一辺倒じゃないのがいいわ。こりゃおいしい。

さて、これを牡蠣を食べた直後に口内に注入してみるとさらに凄まじく世界が変わる。牡蠣のエキスとワインが一体化&調和して牡蠣とワインが結合したなにか新しい液体、牡蠣ン(仮)みたいな旨み汁にメタモルフォーゼしてくれた。焼き牡蠣とソーヴィニヨンブランが合うのか、このワインだからこそのマッチング具合なのかは不明だが、料理とワインの両者揃っての一座建立具合でいえば2020年屈指の感があった。うーん幸せ。

なるべくワインに介入しない不干渉主義者だというキャサリン。しかし、できあがったワインの完成度は見事なもの。それにしても南アフリカワインは次から次へとビビるようなワインが出てくるな。すごい。