ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

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シャブリの老舗ドメーヌ・セギノ・ボルデの「シャブリ」を飲んで、シャブリの歴史について考えた。【chablis domaine seguinot-bordet】

創業1590年! シャブリの老舗ドメーヌ・セギノ・ボルデ

時は天正十八年(1590年)。20万の大軍を従えた時の関白・豊臣秀吉北条氏直率いる北条氏が籠城する小田原城を攻囲していた。

同じ1590年、フランス・シャブリ地方でワイン造りをはじめたのが昨夜飲んだワインの造り手、ドメーヌ・セギノ・ボルデだ。元亀天正の荒武者たちが槍をしごいてこれマジ下克上ワンチャンあるぞとか言ってた時代にシャブリでワイン造りしてるとかトレビアン過ぎる。

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ドメーヌ・セギノ・ボルデのシャブリを飲みました。

16世紀、ワイン目当てにシャブリが襲撃された!?

では16世紀の終わりのシャブリはどんな時代だったのだろうか。chablis.jpで調べてみると、シトー会によって発展したシャブリは、1537年には人口4000人(現在は2500人)を誇り、そのワインの名声はすでにフランス中に広まっていた。

しかし時は宗教戦争ただなかの1568年、ユグノーに襲撃され、城壁に囲まれたシャブリの街は3日間の攻囲の末、略奪の憂き目にあう。図らずも冒頭の小田原攻めが伏線みたいになった……!

ともあれこのときシャブリを攻撃したユグノーはやがてフランスから南アフリカの地に渡り、かの地でワイン造りをはじめるわけだから歴史のつながってる具合半端ない。あとワインを飲むと世界史の勉強ができるのお得感すごい。

ユグノーに関してはこちらで触れています↓

himawine.hatenablog.com

シャブリといえば品種はシャルドネだが、この地にシャルドネを初めて植えたのは当時ブルゴーニュを中心に隆盛を誇ったシトー会のポンティニー修道院だったようだ。

でもって、ポンティニー修道院wikiを見ると、前述のユグノーによる襲撃は、「間違いなくシャブリ(のワイン)目当て」だったと考えられるそうな。

ルーマニアの地を治めた王が自国のワインの評判が良すぎるから国を守るためにブドウ畑を焼いたっていうルーマニアワインのヴァイン・イン・フレイムス的な逸話のガチバージョン。

シャブリ飲ませろ! 誰が飲ませるか! 飲ませろ! 断る! よろしい、ならば戦争だ。ってなったんでしょうか。これも1本の映画になりそう。

himawine.hatenablog.com

シャブリとキンメリジャンとヨウ素の関係

ともかく今回の主役であるセギノ・ボルデの歴史がはじまる16世紀後半のフランスはそのような時代だった。それから400年、さまざまな困難を乗り越えて、シャブリは世界でもっとも有名な白ワイン産地として繁栄の時を迎えているということのようだ。

そんなシャブリの北の玄関口・マリニー村に拠点を構え、16ヘクタールの畑を所有するセギノ・ボルデの当代は当時から数えて13代目。2002年に近代的な醸造設備を建設し、アンモナイトの化石がモチーフのワインを生み出している。13代目ってすごいな。将軍家かよ。J SOUL BROTHERSも13代目まで続いたら能とか日本舞踊みたいな立ち位置になってるんでしょうかワインの話だった。

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丸で囲んだのがマリニー村。画像はchablis.jpでダウンロードしたもの

さて、シャブリの土壌といえばキンメリジャン。書籍『土とワイン』によれば、キンメリジャンの岩に由来する土壌は「シャンパーニュ地方からシャブリ、ロワールにわたって見られ、さらに英仏海峡を潜り抜けてイングランドの地で顔を出す」とある。

最近イングランドでスパークリングワイン造りが盛んだっていうのも、土壌に共通点があるからってことなんすね。

でもってこれはワインにハマる前から知ってた超有名情報だと思うけど土壌にはカキやらアンモナイトやらの化石が含まれてミネラリーでフレッシュでフィネスがヤバい(後半よくわかってない)。

 キンメリジャン土壌についてはこちら↓

himawine.hatenablog.com

土壌つながりで造り手の公式サイトを見ると「キンメリジャン土壌は私たちのワインに特異性と、海に由来する独特の“ヨウ素”の個性をもたらします」という一文がある。ワインを語るうえでヨウ素っていうワードを使うの知らなかったわーと「ヨウ素 風味」で検索するとなぜか札幌の病院のサイトがヒットし、そこには市販の食品のなかでヨウ素を多く含むもののリストが掲載されていた。それによれば、「リケン無添加こんぶだし」「ミツカン酢のもの酢昆布だし」といった食品にヨウ素は多く含まれるという。コンブ! 鍋のなかでばっかり会ってたコンブとまさかシャブリの地で再会するとは……!

で、ヨウ素由来の香りがヨード香。ヨード香なら聞いたことがあるぞ。ヨード香はヨウ素由来でありヨウ素は海に由来するってことか。なるほど。

ワインはシャルドネ100%。圧搾後10日間にわたりデブルパージュ(沈殿)し、より多くワインがオリに触れる横型タンクでシュール・リーを行うことで複雑味や丸みをワインに与えているそうです。いざ、飲んでみよう。

ドメーヌ・セギノ・ボルデ「シャブリ」を飲んでみた

日中の気温が30度を超えた真夏日の夕方に抜栓、グラスに注いでみると、うーん、いい香り。冬場に好んで飲んでたカリフォルニアの安樽ドネと同じシャルドネでも大違いすぎて本当に面白い。

なんですかねこれ。こう、サマーキャンプで訪れた渓流の湧き水のところに咲いてる山百合の香り、みたいな感じがする。ナチュラルでずっと嗅いでられる系。

飲んでみてもあらやだおいしいですねこれ。フレッシュなんだけど角が立っていなくてまろやかなのはわざわざ横型タンクを導入してまでオリにより多く触れさせている効果なんだろうか。ドレッシングはすっぱい系、葉っぱは苦い系の柑橘類が散りばめられたサラダ感ある。これは飲むサラダ。健康にいいシャブリ。ヨード香は……したのかな。私には正直わからなかったです。

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vivinoの点数も3.9点と高め。

とにもかくにも満足だ。キンメリジャン土壌はいいものだ。白身魚カルパッチョとかと合わせたら最高だろうなー。昼流しそうめんしながら飲んだりするのも良さそう。やりたい。