シャンパーニュ パルメを飲んでみた
SNSでワイン情報を収集している方ならば、近年「パルメ」というシャンパーニュの名前を多く目にしているかと思われる。
「世界一獲得!」といった、「世界チャンピオンのいる店」的な華やかなキャッチコピーとともに紹介されることもあってずっと気になっていたこのシャンパンを飲む機会があったので、知られざる巨人・パルメについて調べたことをここに発表したいと思う次第。ぜひお付き合いいただければ幸甚だ。
シャンパーニュ パルメを飲んでみた
パルメの歴史がスタートしたのは1947年。プルミエ・クリュとグラン・クリュを所有していた7人のワインぶどう栽培家(グロウワー)が集って結成された。 ぶどう栽培から醸造まで一貫して行うのがRM(レコルタン・マニピュラン)。それが集まった協同組合的な組織なのでCM(コーポラティブ・マニピュラン)という分類になる。
結成から80年近くが経った現在の所有畑はなんと415ヘクタール。415ヘクタールと言われてもどれくらいの大きさかピンとこないが、シャンパーニュ委員会によればシャンパーニュ地方の生産地はおよそ34,300ヘクタールなので、シャンパーニュの全生産地およそ1.2%がパルメの畑、ということになるすげえ。面積でいうと、東京の山手線内の6.5%がぶどう畑になったらそれがパルメの畑のイメージ。西日暮里〜日暮里間だいたいパルメ、とかそんな感じだろうか雰囲気的には。ともかく巨大な栽培面積を誇り、そのうちの200ヘクタールが約40村のグラン・クリュとプルミエ・クリュに分類されるそうだ。
シャンパーニュ パルメのワイン造り
ではワイン造りはどう行っているかというと、ポイントはふたつある。ひとつめのポイントはソレラシステムを導入している点。ソレラシステムとは、リザーヴワインを使用した分だけその年に造られたワインを追加して補っていく、老舗うなぎ屋のタレ的方式。
パルメの場合、新しいヴィンテージのワインをオーク樽で熟成して大型ステンレスタンクで保存しているソレラ式リザーヴワイン(パーペチュアル・リザーヴ)に加えるやり方を、かれこれ40年以上続けているそうだ。 これを書いている私は40代男性なわけだが、私がオギャアと生まれた頃から継ぎ足されたワインが使われていると考えるとなんとも感慨深い。
そしてパルメについて調べて改めて驚かされたのは、ガチで世界でめちゃくちゃ評価されているという点だ。シャンパーニュ専門誌の「100BESTシャンパーニュ」で「ヴィンテージ」が10位、「ブラン・ド・ブラン」が15位に入っていたり、ブランドとしては専門誌の「世界で最も称賛されるシャンパーニュ・ブランド」23位にランクインしたりしてる。30位までズラリと綺羅星のようなメゾンが名を連ねる中で、日本での知名度は下手するとパルメが一番低い可能性がある。パルメ、それは僕らが知らない有名メゾン。
さて、いろいろ調べていたらもう飲まずにはいられない。 今回飲んだのは「パルメ クラシック3本セット」に含まれる3本のシャンパーニュ。すなわち「ブラン・ド・ブラン」「ブラン・ド・ノワール」「ロゼ ソレラ」を、ワイン仲間を誘ってみんなで飲んでみた。
ちなみに「ブラン・ド・ブラン」「ブラン・ド・ノワール」は2022年のシャンパーニュ&スパークリング世界選手権でワールドチャンピオンを同時に獲得したすごいキュヴェ。「ロゼ ソレラ」も同じ品評会で金賞に輝いている。
パルメ「ブラン・ド・ブラン」はどんな味?
期待度MAXでまずは熟成期間60ヵ月(!)、ドサージュ7g/Lというブラン・ド・ブランを注いでみたのだが、これがなかなか、否、いきなりとんでもないモンスターだった。
「これ、XXX・X・XXXXXXX(某高級ブラン・ド・ブラン)っぽくないですか?」 と参加者のある方が言っていたが私もまったく同じ印象を受けた。熟成したシャルドネ100%ならではの焼き栗のような甘やかさがあり、香ばしく焼いたパイのようなニュアンスも豊かに香る。それでいて液体は冷たく、透明で、鋼のように引き締まった酸を湛えてもいる。
いやこれすごいな。参加者の方が「っぽい」と挙げた某高級ブラン・ド・ブランは私が一番好きなシャンパーニュっていうか下手すると私がこの世で一番好きなワイン銘柄のひとつだが、そのニュアンスがたしかにある。3本24,200円のセットに入ってていいのかね、キミは。
パルメ 「ブラン・ド・ノワール」はどんな味?
というわけでいきなり真正面から顔面にストレートを叩き込まれたような衝撃を受けたわけなのだが、続くブラン・ド・ノワールもとんでもなかった。
ブラン・ド・ブランも厚みある味わいだったが、ピノ・ノワールとムニエを50%ずつブレンドし、48ヵ月熟成させてドサージュ6g/Lで仕上げたこのキュヴェはさらに厚みを増したような印象。 6g/Lとドサージュ量は決して多くはないけれど、参加者の方が「ドサージュ3gくらい?」というほどのドライな味筋。それでいてサクランボのような甘酸っぱい果実感も感じられ、熟成感も楽しめてしまう。
カニ料理を食べにいくとカニの脚から身を出すのに没頭するあまり会話が消滅することがよくあるが、このワインを提供したタイミングでも似た現象が起きた。全員無言。 そして、その沈黙を切り裂くように「ムニエならではのこっくりとした深みがありますね。スッキリさわやかというよりも、重心の低さ、果実の重さを感じます」と急に真顔でコメントしてくる参加者もいた。「雑に飲んでいいワインじゃないな」というオーラがグラスから漂ってくるのだ。
ブラン・ド・ブランとブラン・ド・ノワール、どちらもこりゃワールドチャンピオンだわという堂々の味わいだが、となると気になるのは「どちらが上か」ということ。そこで参加者6名でどちらが好きか投票したのだが、結果はブラン・ド・ブランが1票、ブラン・ド・ノワールが5票でブラン・ド・ノワールの圧勝という結果となった。ちなみにただ一人ブラン・ド・ブランに投票したのは私だ。 いや、めっちゃおいしかったんですよブラン・ド・ブラン!!
パルメ 「ロゼ ソレラ」はどんな味?
味わいで金額感を予想するならばこの2本だけで24,200円と言われてもまったくおかしくないレベル。だが、このパルメ クラシック3本セットには「ロゼ ソレラ」も含まれ、これがまた非常においしいロゼだったのだった。
ブラン・ド・ブランやブラン・ド・ノワールの衝撃にはさすがに及ばないものの、ロゼシャンパーニュとしてきっちりおいしい。「果皮の要素が入ってくる分、ブラン・ド・ノワールにはなかったベリー感を感じられる」という意見があるなど、味わいの濃さ・深さが印象的だった。
このロゼは、シャルドネ45%、ピノ・ノワール45%、ムニエ10%したキュヴェで、リザーヴワイン比率は30〜35%。そのうち8%にソレラ原酒を使用している。たしかに感じる熟成感と複雑性は、ソレラ原酒がもたらすものなのだろう。ちなみに影が薄いっぽく書いてしまったが2023年のシャンパーニュ&スパークリング世界選手権で、その年に1本しか選ばれない「チェアマンズトロフィ」を獲得している凄まじいof凄まじいキュヴェであったことを追記しておきたい。そんなすごい方だったとは……!
シャンパーニュ パルメを楽しもう!
というわけで、パルメのシャンパーニュ、一言でいって予想よりだいぶおいしかったのだった。
今回飲んだクラシック3本セットの24,200円は額面上は決して安くはないものの、飲み終えた今となってはむしろコスパの高さすら感じる、高級感あふれる味だった。 年末年始や記念日に特別なシャンパーニュを探している方は、選択肢に加える価値があると思います。
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