- クレマン・ド・ブルゴーニュについて調べてみた
- クレマン・ド・ブルゴーニュの歴史
- クレマン・ド・ブルゴーニュとシャンパーニュはなにが違うのか
- クレマン・ド・ブルゴーニュの造り方
- クレマン・ド・ブルゴーニュの品種
- おすすめクレマン・ド・ブルゴーニュ
クレマン・ド・ブルゴーニュについて調べてみた
クレマン・ド・ブルゴーニュについて調べると、「品質においてはシャンパーニュに匹敵し、価格においてはシャンパーニュよりずっと安いスパークリングワイン」みたいな文言が出てくる。
ほんとかなあ、と私はつねづね思ってきた。シャンパーニュとはやっぱりぜんぜん違うし、価格もわりとするカヴァ飲も。
こんな感じが今までの私のクレマン・ド・ブルゴーニュとの関係性だった。
なんでなのか、と私は考えていた。シャンパーニュとクレマン・ド・ブルゴーニュ、製法においては熟成期間くらいしか規定においては違いがない(シャンパーニュはNVで15か月、クレマン・ド・ブルゴーニュは9か月)みたいな印象があるし。
ではなんで味が違うのか。そもそもクレマン・ド・ブルゴーニュってなんなのか。クレマン・ド・ブルゴーニュならではの良さってなんなのか。よくわからないので一度がっつり調べてみることにした。
クレマン・ド・ブルゴーニュの歴史
最初に、クレマン・ド・ブルゴーニュはそもそもどのような経緯で生まれたのだろうかと調べると、話は1822年にさかのぼる。
当時シャロン・シュル・ソーヌの市長だったフォルトゥネ・ジョセフ・プティオ・グロフィエなる人物がスパークリングワイン市場の可能性に気づき、シャンパーニュから18歳のフランソワ・バジル・ユベールを招聘。所有していたリュリーの畑で採れたブドウでスパークリングワインを造ったのがはじまり。スペインのカヴァと似たような経緯だったんだね。
「シャンパーニュの歴史」のwikipediaによれば、19世紀初頭ははどれくらい砂糖を添加すれば瓶が爆発しない程度に発泡させられるかが正確にわかるようになり、コルクの改良により発生したガスが漏れなくなったというシャンパーニュというかスパークリングワインの製造における産業革命みたいなのが起こった時期。
ヴーヴ・クリコがルミアージュ(動瓶。澱を瓶口に集める技術)を開発し、デゴルジュマン(澱抜き)によって失われたワインをドサージュ(砂糖およびリキュールの添加)によって補う技術も生まれた。
このような技術革新によって安定的かつ高品質に生産可能になった発泡性ワインが英国、ロシアなどの海外市場で売れる輸出商品として人気を高めるなかで、「俺の土地でも!」という思いでクレマン・ド・ブルゴーニュが生まれてきたようだ。歴史…!
クレマン・ド・ブルゴーニュとシャンパーニュはなにが違うのか
ここまででわかったことはひとつ。クレマン・ド・ブルゴーニュは「歴史ある地酒」ではなく、はじめからシャンパーニュを目指して開発された郷土料理ではなくご当地グルメ的立ち位置の戦略的商品だということだ。
では、クレマン・ド・ブルゴーニュとシャンパーニュはなにが違うのか。調べると、そもそも crémantという言葉の意味は「クリーム」であり、シャンパーニュより低発泡で軽い、ということから名付けられたネーミングなんだそうだ。ガス圧の強さは瓶詰め時に加える砂糖の量によって決まるわけだが、ガス圧がやや弱めなのが「クレマン」。
シャンパーニュの気圧が5〜6気圧に対してクレマン・ド・ブルゴーニュは3〜3.5気圧くらい。それくらいが大体の目安になる。
クレマン・ド・ブルゴーニュの造り方
そんなクレマン・ド・ブルゴーニュはどのように造られるのだろうか。規定は意外と厳しくて、AOCクレマン・ド・ブルゴーニュを取得するためにはブドウを手摘みで収穫せねばならず、2008年からはクレマンを造る区画はクレマンだけを生産しなくてはならなくなったりもしてるみたい。今年はブドウがすっぱいから白ワインをつくるつもりだったけどクレマンにしちゃいますか、一発、とかはNG。
面白いのは、クレマン・ド・ブルゴーニュは「ブレンドワインであり、その年のワインと前の年のワインで構成されている」というwikipediaの記述で、これ初耳だった。シャンパーニュのマルチヴィンテージに対して、クレマン・ド・ブルゴーニュはダブルヴィンテージなんですね。連続するふたつのヴィンテージワインで造られるのも特徴と言えそうで、良い年が2年続いたタイミングはうまい、とかあったりするのかもしれない
クレマン・ド・ブルゴーニュの品種
使用していい品種はアリゴテ、シャルドネ、ガメイ、メロン、ピノ・グリ、ピノ・ノワール、ピノ・ブラン、セイシー。セイシーが初耳。シャルドネ、あるいはピノ・ノワールを30%含まなければならない、という規定もあるのだそうだ。ガメイ100%のブラン・ド・ノワールとかはだからない。
さらに味わいにおいて決定的なのは、「意外と南のほうのブドウが使われている」ということだ。フィラディスによれば、クレマン・ド・ブルゴーニュは「“南部ブルゴーニュ(Bas Bourgogne)”のマコン地区やボージョレ地区中心の黒ブドウを主体に造られ、フルーティーな果実味が豊かながら、ミネラルや酸が弱いため、シャンパーニュのような輪郭を持たぬ、余韻の短いシンプルなものが主流」とある。
おすすめクレマン・ド・ブルゴーニュ
さて、なんでこんなことをつらつらと書いてきたかといえば、それは最近クレマン・ド・ブルゴーニュを飲んだからなのだった。「エヴィダンス by LVHB」がそうで、これはシャンパーニュとの境界から600メートルというシャンパーニュ激近のシャティヨネ地区で結成された協同組合が造るクレマン・ド・ブルゴーニュ。
購入した東京・恵比寿のワインマーケットパーティの沼田店長によれば、クレマン・ド・ブルゴーニュはそもそも買いブドウで造られるネゴシアンものが多いのだそうだが、これは協同組合の自社畑で造られるというワイン。
さらに土壌はシャンパーニュに特徴的なのと同じキンメリジャン土壌。気候は600メートルしか離れてないっつーんだからそりゃまあ総武線でいうところの市川と小岩、くらいの違いしかないだろう普通に考えて。ほかのクレマン・ド・ブルゴーニュとは違うという矜持から、「クレマン・ド・シャティヨネ」を名乗ろうとしているレベルなんだって多分無理だろうとのことだけど。キュヴェ名「エヴィダンス」も「証明する」みたいな意味。気合い入ってる。
で、飲んでみるとこれがすごくおいしかったのだった。味わいはまんまシャンパーニュ。それも安シャンパーニュじゃなくて大手メゾンのスタンダード的なクセなく優等生的な印象。シャルドネ100%のブラン・ド・ブランでブラン・ド・ブランが2000円台というのがそもそも安い。
ただ、一方でなるほど発泡は弱い。たしかに弱い。クリーミー。それでいいのだ。それがクレマン・ド・ブルゴーニュのクレマン・ド・ブルゴーニュたるゆえんなのだ。こうなってくるとフランソワ・ミクルスキーとかの有名クレマン・ド・ブルゴーニュも飲みたくなってくるというもの。地理的に北に近いものが豊かな酸を持つとするならば、シャブリの造り手のものなんかも良さそうだ。
というわけでクレマン・ド・ブルゴーニュついて調べてみた。調べる前はすみません正直シャンパーニュの下位互換としか思っていなかったが、発泡が「弱い」という特徴があることが調べることによってわかったのは収穫だ。
ガス圧の強いワインはおいしいが、飲み疲れる部分があると思おうと思えばあると言えないこともない。週末にシャンパーニュを飲むならば、火曜日の夜はクレマン・ド・ブルゴーニュ。そういう使い分けはすごく良いと思う。熱い風呂に浸かりたい夜もあれば、ぬるま湯で己を甘やかしたい夜もまたある。
そんな夜にはクレマン・ド・ブルゴーニュですよ、みなさん。