シャトー・モンペラとは?
ボルドーの有名ワインといえばなんと言っても五大シャトー……だが、こと日本においては下手すると五大シャトーと同じかそれ以上に名前が知られていると言っても過言ではないかもみたいなワインがある。そう、「シャトー・モンペラ」だ。
シャトー・モンペラを日本において一躍有名にしたのが漫画『神の雫』。その第一巻に2001年ヴィンテージが登場し、
(オーパス・ワンと比較して)「俺はこの『モン・ペラ』とかって方が全然美味く思えたぜ」
(モン・ペラ2001を)「実際あるソムリエに黙って出したら5大シャトーと間違えてたよ」
と、オーパス・ワンを凌駕し五大シャトーと肩を並べるくらいの、さすがにちょっと盛りすぎなんじゃないかくらいに絶賛。それでいて2000円台と買いやすい価格であったこともあり、大ヒットとなった。
『神の雫』ではその後多数の高コスパワインが紹介されていくが、その元祖にして頂点、それがシャトー・モンペラなのだ。私も何度か飲んでおり、オーパス・ワンや五大シャトーよりおいしいかはともかくとして、お値段以上においしい、すごくよくできたボルドーワインだと思っている。
シャトー・モンペラが「神の雫」とコラボ。それが「モンペラ キュヴェ 神の雫」
さて、そんな「シャトー・モンペラ」から『神の雫』連載開始20周年の2024年に特別なコラボ商品として「モンペラ キュヴェ 神の雫」が発売された。今回は、それが一体どんな味わいなのかレポートせよという指令が下ったので、レポートしていきたい。
さて、『神の雫』第一巻の表紙を特別デザインとしてあしらった「モンペラ キュヴェ 神の雫」だが、実はあまり聞いたことのない「ある仕掛け」がラベル以外にも施されている。私は飲む前に知ってしまったのだが、これをブラインドで出したら絶対面白そうだと考えて、ついでにみんな絶対わからないだろうから正解発表でドヤ顔できるに違いないというドス黒い欲望も交えつつワイン仲間を招集、ブラインドで飲んでもらうことにした。
この記事を読んでくださっている皆様も、ぜひ「モンペラ キュヴェ 神の雫」の“謎”について考えていただけたら幸甚だ。
「モンペラ キュヴェ 神の雫」の謎に迫る
そんなわけで集まったのは私を含めて6名の飲み仲間。私ともう1名は正解を知っていたので、残りの4名の参加者にその“謎”がなにかを考えながら飲んでもらった。
私もこのとき初めて味わったのだが、改めて感じたのは「やっぱりうまいわ、モンペラは」ということ。産地はボルドーを流れるガロンヌ川とドルドーニュ川が合流する手前の三角州「アントル・ドゥ・メール」。安うまバリュー・ボルドーの産地という印象の土地にあって、このワインには安っぽさ・薄っぺらさみたいなものがとにかく皆無と言っていい。
Mr.メルローことミシェル・ロラン指導のもと、さまざまな改革を行なったことが評価を高めるきっかけとなったモンペラだけに、このキュヴェにおいてもメルローの魅力が全開。やわらかく、滑らかで、果実味に溢れていて、それでいて複雑。「モンペラってこんなにおいしかったっけ?」と参加者のうちの一人が思わず口走るような味わいだったのだった。
謎の答えは…!?
そしていよいよ本題、「『キュヴェ 神の雫』の謎」へと話は移っていく。
「樽を使ってる・使ってないの違いかな?」
「通常のモンペラと使っている区画が違うとか? 樹齢が違うとか!」
「セパージュが異なるんじゃないかな? たとえば原作者がブレンドしているとか」
「てかそれ全部、ふつうのと飲み比べないとわかんなくない?」
といった、最後それを言ったらおしまい的なものを含めて鋭いコメントが並んだ。たしかにどれもありそうだが、以上はすべて不正解。
ここでちょっとヒントを言うと、「『キュヴェ 神の雫』の謎」は、実際に飲まなくても正解に辿り着くことがおそらく可能だ。連載20周年を記念して販売されたキュヴェである点を考慮し、あとはラベルをよく観察すればワンチャン正解に至れる。
読者の方向けにさらにヒントを出すと、このワイン、通常のモンペラと異なり収穫年が記載されない「ノンヴィンテージ」なんです。では、どんなヴィンテージを混ぜている……?
勘のいい方ならこれくらいのヒントで正解に至れたのではないだろうか。この日の会にも勘の異様に鋭い方がいた。
「あ、わかった。漫画に載ってた2001ヴィンテージが混ざってるんじゃないかな。これでファイナルアンサー!」
え、それ正解なんだけど。「実は漫画に載ってた2001ヴィンテージが混ざってるが正解でした! ドヤっ」と、思い切り他人の褌でドヤりたかったんですが!
「モンペラ キュヴェ 神の雫」で、“モンペラ”と再会しよう!
というわけで、さすがは選りすぐりのワイン飲み軍団、見事正解に辿り着いてしまったのだった悔しい。なんでもシャトーで大切に保管されていたバックヴィンテージを、生産者であるデスパーニュ家のオーナー協力のもと、このキュヴェのために特別にブレンドしたのだそうだ。
おそらく使っている量はわずかだと思われるし、それを聞いてから飲んだからかもしれないけれど、たしかにどこか熟成感があり、複雑みもあるように感じられる。少なくともスイカに塩を振ったりカレーにチョコレートを入れるような、少量でもしっかりと効く“隠し味”としては機能しているように感じる深みがちゃんとある。
「モンペラといえば『クイーンが聞こえる』ってやつだよね、懐かしいなあ」
「一時期みんなすごい飲んでたよね。改めて飲むとうまい」
「今でも2500円(+税)なんだね。高くなってないの偉い」
と、みんなで『モンペラ』や、『神の雫』に関する思い出を語りながら飲むのがまた楽しい。参加者のある方が指摘していたように、『神の雫』連載開始当時の20年前に「2000円台」だと作中で紹介されていたシャトー・モンペラは、現在も(探せば)2000円台で買えるし、この「キュヴェ 神の雫」は調べたところ税込み2420円といったリーズナブルな価格で購入可能だ(価格はヒマワイン調べ)。コストパフォーマンスの高さはブームから20年経った今も健在と言っていいし、円安・物価高の今むしろそのコスパ度は高まっていると言えるかもしれない。
「モンペラ キュヴェ 神の雫ブラン」もおいしい!
そして、ついでみたいになってしまうが、シャトー・モンペラ・ブランのファーストヴィンテージである2005を少量ブレンドした「モンペラ キュヴェ 神の雫 ブラン」も出色の出来だった。そうそう、モンペラは「白」もおいしいんですよ。こちらは赤ほどの熟成感は感じなかったが、分厚い果実味があって教科書に載りそうなおいしいボルドー・ブランという印象だったことを記しておきたい。
「そういや最近モンペラ飲んでないな」という方は、『神の雫』の主人公である神咲雫が「もちろんモン・ペラ!」とワインバーでオーダーしたときのような勢いで、「キュヴェ 神の雫」を手に取ってみてはいかがだろうか。懐かしくて新しい、改めてすげえなモンペラ、という体験ができると思いますよ!