2017年 ボルドーワイン 5種スペシャルテイスティングはどんなイベント?
エノテカ銀座店で2021年4月9日〜11日の日程で開催の「2017年 ボルドーワイン 5種スペシャルテイスティング」に行ってきた。
最初に結論を述べるとこのイベントがすごかった。
論より証拠で、今回テイスティングしたワインの名前と、その(主に)エノテカでの販売価格をご覧いただきたい。以下の通りだ。
シャトー・モンローズ 2万8600円
シャトー・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド 2万5300円(2012ヴィンテージ )
シャトー・タルボ 1万1000円
シャトー・ローゼン・セグラ 1万1880円(他ショップでの価格)
シャトー・ラ・フルール・ペトリュス 3万6300円
というわけで平均価格2万2616円の高級ワインばかり。それが50ミリリットルずつ計250ml飲める。つまり750mlボトルの1/3量を飲めるのにもかかわらず、参加費なんと3300円税込なんですよ。え、なんで。2万2616円を3で割ると7538円なんですよ。算数がおかしいんですよ。お得を超えてもはや施しレベルだ。
先日同じエノテカ銀座店で体験したワイン診断テイスティングもお得感が異常なイベントだったが、今回はさらにすごい。50mlずつとはいえ1杯660円って。なんかこう、恵比寿あたりの店内の照明が間接照明で店員さんが上下黒の制服を着てる系の飲み屋で中ジョッキ飲むくらいの価格でボルドーの格付けワインが飲めるわけですよ。この地球にエノテカがあってよかった。
というわけで私の目の前には5杯のボトルがドドンとある。私が訪問した日にはじまったイベントなのですべて開けたてだというボトルはシャトー・ラ ・フルール・ペトリュス以外の4本がマグナムボトルなのですごく壮観だ。
さて、先に結論めいたことを書くと今回飲んだ5本はどれも強烈においしかった。40〜50分くらいかけてゆっくり飲んだのだが、どれも時間が経過するほどどんどんおいしくなっていくという困った仕様で、結果飲み進むほどに飲み干すのがもったいなくなり、一度に飲む量が最初10mlだったのが次は5ml、次は2.5ml、1.25ml、0.625ml……と永遠に飲み終わりたくないアキレスと亀状態になった。
さっそく、それぞれの味わいを振り返っていきたい。
飲んだワインその1:シャトー・モンローズ
まずはサン・テステフの格付け2級、シャトー・モンローズ。異名は「サン・テステフのラトゥール」だそうですよなんかすごい。下町のナポレオンはいいちこだが、サンテステフのラトゥールはシャトー・モンローズだ。カベルネ・ソーヴィニヨン76%、メルロ20%、カベルネ・フラン3%、プティ・ベルド1%のブレンドでWA98点だそうだけどすごいですねこれは。
まず香りがすげえんですよ。スタッフの方に「あれ? 裏でジャムかなんか煮てました?」と質問したくなるような濃い香りがグラスから立ち上がって鼻っつらをぶん殴ってくる。ジャブにしては強烈だ。
でもって飲むとこう、熟した果実がたわわに実る秋の森を散策した子どものころの思い出がよみがえってくるんだけどよくよく考えると私は地方の都市育ちでそんな思い出はない。ない思い出が現実として再生されるという意味で『映画 鬼滅の刃 無限列車編』に出てくる鬼かよっていうワインだった。
飲んだワインその2:シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド
続いてがポイヤックの格付け2級、シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド。名前が長いんですよなんつったって。磯野藻屑源素太皆(注:いそのもくずみなもとのすたみな。サザエさんの御先祖)かよ。元オーナーのレディ・メイが南アでやってるワイナリーが「グレネリー」ですね。異名はスーパーセカンド。
シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド。これ好き。
カベルネ・ソーヴィニヨン70%、メルロ23%、カベルネ・フラン3%、プティ・ベルド1%でWA96点とプロフィールはシャトー・モンローズにそっくりだけど、やっぱり飲むと個性が違う。モンローズがパワフルだとしたらこちらは優雅。なんかこう、金持ちの女の子の家のピアノ室みたいな部屋に敷いてある絨毯みたいな滑らかな口当たり。
時間が経つにつれての変化量がもっとも大きいと感じたのがこれで、どんどん親しみやすくなってくる。もっとも私の好きな甘酸っぱ味だったのがこのワインだった。
飲んだワインその3:シャトー・タルボ
サン・ジュリアンの格付け4級、シャトー・タルボはメルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、プティ・ヴェルドで造られたWA91点というワイン。酸味が強めで渋味もしっかりある、「ボルドーのワインってこういう感じですよね」って私みたいな素人が思うタイプのワインだと思った。すみません、鹿肉持ってきてください、血が滴るようなやつ! とオーダーしたくなるような感じ。
とっつきにくさがないことはないと思うが、そのとっつきにくさも含めて好ましい、やたら律儀な学級委員長みたいなワインだった。
飲んだワインその4:シャトー・ローザン・セグラ
続いてはマルゴーの格付け2級、シャトー・ローザン・セグラだ。これおいしかったなあ……。カベルネ・ソーヴィニヨン62%、メルロ36%,、プティ・ヴェルド2%、WA93〜95%というワインで、所有者はシャネル。
さすがシャネルなのかどうなのか、とにかく香りが素晴らしい。薔薇ですなこれは。薔薇風呂。そんな風呂には浸かったことがないけれどもこんな香りがするに違いない。
果実味と酸味のバランスがよく、香りの良さも相まってリラックス効果がすごい。個人的に一番好きだったのがこのワイン。小学校の6年間を通じてもっとも美しいと感じた同級生みたいなワインだった。ワインを飲むと幼少期の思い出が(偽りの記憶も含めて)妙によみがえるの私だけでしょうか。
飲んだワインその5:シャトー・ラ・フルール・ペトリュス
でもって最後がポムロルのシャトー・ラ・フルール・ペトリュスだ。メルロ93%、カベルネ・フラン5%、プティ・ヴェルド2%でWA94点。シャトー・ラ・フルールとシャトー・ペトリュスの間にあるからシャトー・ラ・フルール・ペトリュスだっていう三井住友銀行みたいな名称のワインだ。
で、これがすごかった。渋みと果実味がしっかりあって、そこに無機物・有機物、鉱物、植物、動物などなどの香りが次から次へとあふれてきてなんだこりゃ。
今回飲んだワインはどれも私の理解を超える複雑な味わいを持つワインだったが、これはなかでもとりわけ複雑であるように感じた。超絶技巧のジャズバンドのインプロヴィゼーションみたいなもんで、なにをやってるかさっぱりわかんないけどとにかくすごい! みたいな迫力。今回飲んだなかでもっとも高価なワインのようだけど、ぜひまた何年か後に飲みたい。
まとめ
というわけで、駆け足で5杯の印象を振り返ってみたが、たかだか50ml飲んだ程度で本来こんな素晴らしいワインたちを語れるわけもないのは百も承知である一方、たった50mlでもしっかり語れる素晴らしいワインたちでもあったなあと思った次第なのであった。
ボルドーの格付けワイン、それも2017と比較的新しいヴィンテージ。こんなもん私みたいなもんにはまだまだ早いんじゃないか、おいしいと感じられないんじゃないか。そうビクビクしながら飲んだがそんなこと全然なかった。
一番好みの味だったのがシャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド。だけど、一番好きだなあと感じたのはシャトー・ローザン・セグラ。香り良すぎ。でもって一番すげえと思ったのはシャトー・ラ・フルール・ペトリュスだったが、もちろんシャトー・モンローズもシャトー・タルボも素晴らしかった。おいしかったなあ。
というわけで大満足のテイスティングだったのだった。エノテカ銀座店のみなさん、またお邪魔します。