ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

エスプリ・ド・タイユヴァンで「タイユヴァンセレクト」のワインを飲んできた。【Esprit de Taillevent】

丸の内テラスのエスプリ・ド・タイユヴァンに行ってみた

2020年11月5日に東京丸の内にオープンした商業施設、丸の内テラス。そこに、フランスの老舗レストラン・タイユヴァンとエノテカが提携してワインショップ併設のカジュアルダイニング「エスプリ・ド・タイユヴァン」を出店したというのでどんなもんかとオープン当日に散歩がてらに行ってみた。初物は縁起がいいって言うしごめんただワインが飲みたいだけだった。

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丸の内テラスのご様子。この1階にエスプリ・ド・タイユヴァンがあります。

さて、丸の内テラスの立地は地下鉄の大手町駅から直結というアクセスの良さ。東京駅からも徒歩5分だそうで、東京在住・在勤者はもちろん、地方の方も東京出張の際に気楽に寄れるアクセスの良さ。その1階の路面店として、エスプリ・ド・タイユヴァンはある。エスプリはフランス語で「心」であります。

店内はカウンター10席、テーブル席3卓、テラス席4卓とこぢんまりとしたつくり。テーブル席でマダム3人が談笑し、テラスではビジネスウーマンと思しき女性がノートPCを広げている。うーん、丸の内。私はこの空間において明らかに異物だが、気にせず混入レッツゴーである。

タイユヴァンのオリジナルワイン「タイユヴァンセレクト」を飲んでみる

さて、食事が目的ではなく、ワインを味わいつつの偵察・見学・内見みたいなことが目的なのでカウンターに腰を落ち着けてワインメニューを広げてみると、泡白ロゼ赤甘口のラインナップのなかに「タイユヴァン」と書かれたワインが散在していることがわかる。

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ワインリストの造り手の欄に「タイユヴァン」と表記されたものがタイユヴァンセレクトだそうです。

接客してくれたソムリエールの方によれば、タイユヴァンにはタイユヴァンセレクトというオリジナルワインをフランスの各生産地で作っているのだそうだ。そして同時に、たとえばシャンパーニュならレコルタン・マニピュランにこだわったワインを自社で仕入れ、販売もしているのだそうだ。へー。

エノテカの公式サイトには「アンリ・ジャイエルフレーヴ、ラヴノーらも、タイユヴァンに選ばれたことで、スタードメーヌとしての栄光が始まった」って書いてある。すげえ。

【1杯目】タイユヴァンセレクト クレマン・ド・ブルゴーニュ

ともかくせっかくだしオリジナルを飲んでみようそうしよう(脳内会議)ということでまずはクレマン・ド・ブルゴーニュのタイユヴァンセレクトを頼んでみた。価格は90mlで800円。造り手はヴィトー・アルベルティ。後から調べたところによると、コート・シャルネーズのルリーを本拠地とするクレマン・ド・ブルゴーニュ専業の生産者みたい。

聞けば、タイユヴァンセレクトはタイユヴァンのソムリエが直接造り手のもとで試飲などを行って、もう少し熟成させましょうなどと指示を出してつくるオリジナル商品で、生産者の既存商品のラベルだけ貼り替えたとかってものではないのだそうだ。

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タイユヴァンセレクトのクレマン・ド・ブルゴーニュ

さて、目の前で抜栓されたボトルからザルトのシャンパングラスに注いでもらったそれを飲んでみるとこれがとってもおいしい。泡立ちは細かく、酸が強めでいかにも食事合いそうですねこれ、あれね。白身魚カルパッチョかなんかにいいですね。とか考えていると、ソムリエールの方がタイユヴァンのワインは料理と合わせやすいのが特徴なんですよと教えてくれた。さもありなんだなあ。

【2杯目】タイユヴァンセレクト ソーテルヌ

さて、おいしいワインの唯一の難点はおいしいからすぐなくなる点だ。ボトルの場合は問題ないが、グラスの場合は大問題で、次になにを飲むかという新たな問題まで連れてくる。タイユヴァンセレクトのなかにシャサーニュ・モンラッシェがあったのでそれいっちゃおうかなと思っていたが、食事と合わせることを念頭において造られたワインをなにとも合わせずワイン単体でゴクゴク飲んで、ははは、うめえ。みたいになるのもちょっと野暮かもな、さすがに、みたいになり、将棋指しが次の一手に悩むみたいな顔を1分30秒くらいしたあとでソーテルヌを頼んでみた。位置づけはズバリ「飲むおやつ」である。

造り手はシャトー・ル・ジャスティスとあるんだけどこれが探してもシャトーの名前だとヒットせず、あれこれ調べてみると、ソーテルヌが本拠地のメドヴィル家が所有するシャトーのようで、メドヴィル家の娘がシャンパーニュのメニルのゴネ家の息子と結婚してゴネ・メドヴィルとドメーヌとなり、複数の名前でシャンパーニュを含むワインをリリースしているようだ。このあたり雑調べなので正確性は低いけど大筋合ってるはず。ともかくシャトー・ル・ジャスティスのワインは85%セミヨン、10%ソーヴィニヨン、5%ミュスカデルで、2年間オーク樽で熟成させてリリースするそうな。

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タイユヴァンセレクトのソーテルヌ。

「仕事の疲れが癒される味ですよ」と出していただいたそれを飲んでみるとこれが非常に良い。味を称揚する言葉には「おいしい」「うまい」「やばい」「おいしみ」とかいろいろあるんだろうけどその最上級は「つかれがとれる」である。温泉に肩まで浸かる級の疲労回復成分がグラスに溶け込んでる。糖度の高いブドウを握力が200キロくらいある人が一握りに潰したみたいな密度がはんぱない甘さとレモンの皮のトロ部分(そんな部分はない)の苦くない苦味、みたいのでこれ無限に飲めるんじゃないですかね。

このワインのヴィンテージは2011年。タイユヴァンはパリ郊外に巨大なセラーを所有しており、各地から買い付けてきたワインは飲み頃を迎えるまでそこで保管されるんだそうだ。贅沢だなあ。このエスプリ・ド・タイユヴァンにあるワインも、そこから送られてきたものなのだそうな。

さて、会計を済ませたあと、ショップ部分も案内していただいた。セラー内にはタイユヴァンセレクトの40種類を含む460種類のワインがあるんだそう(エノテカのワインはそのうち1割ほどとのこと)で、そのすべてが抜栓料1100円でお店の料理と合わせて楽しめるんだそうだ。価格帯は5000円〜1万円くらいが中心っぽい感じだが、5000円以下のものもあれば、10万円オーバーのものもあった。ショップで売られている価格プラス1100円で飲めるので、レストランで飲むワインとしてはすごくお安いということになる。これはあれですよ。ワイン好きのカップルとかで来店、その日のメニューに合わせてセラーで二人でワインを選び、選んだワインと料理を楽しむ……なにそれ超楽しそうじゃないの。私はライフステージ的にそういう機会が現状絶無なのでウラヤマシス・ロビンソンである。どんどんやったらいいよ、若い人。

というわけで、すっかり角打ち的に利用してしまったがエスプリ・ド・タイユヴァンはカジュアルダイニング。次は料理とワインを一緒に楽しみたいものだなあと考えながら、丸の内を後にしたのだった。