ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

ファレルニア「ピノ・ノワール グランレセルバ」薄くてうまいチリピノ発見

ヴィーニャ・ファレルニア「ピノ・ノワール グランレセルバ」について

2022年正月にうきうきワインの玉手箱で「1万円deピノ・ノワール3本セット」福袋を買った。そこに入っていたうちの1本がヴィーニャ・ファレルニアのピノ・ノワール グラン・レセルバ。

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ヴィーニャ・ファレルニア「ピノ・ノワール グランレセルバ」を飲みました。

「うきうき」の福袋はセットの中の価格差が大きいことが多い。たとえば1万円福袋に1万5000円分のワインが入っていたとしたら、5000円前後のワインが3本入ってる、ということはまずなく、1万円+3000円+2000円といった松竹梅的に商品が入っていがち。

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ヴィーニャ・ファレルニアはそのうちのわりと明確に「梅」的立ち位置のワインで単品価格は2000円ちょい。なのでさして期待もせずに日常消費用ワインとしてある日開けてみたらおいしかったんですよこれが。というわけで、どんなワインか調べてみた。

 

ヴィーニャ・ファレルニアはどんな生産者か

ヴィーニャ・ファレルニアの歴史はなかなかすごい。イタリア出身の創業者アルド・オリヴィエがこの地に来たのは1951年。イタリア経済が急激に悪化したことを受け、ほかの200家族とともに新天地・チリへと渡ったのだそうだ。

当時12歳だったアルドはのちに一家をなしエルキ・ヴァレーに移住。そこでチリの国酒・ピスコ(ブドウから造る蒸留酒)を製造すべくブドウの木を植え、瞬く間にチリ第3位の生産者となる。

ワイン造りに転ずるのはそれから20年後の1995年、イタリアの大手メーカーでワインメーカーを務めていたアルドのいとこ、ジョルジュ・フレッサーティがこの地を訪れたのがきっかけ。インポーターの株式会社稲葉の資料によれば、観光で訪れたジョルジュは2時間でワイン造りを決意したのだそうだはやっ。

そして3年後の1998年にはピスコ工場の一角にタンクを増設しワイン造りをスタート。それがかなり順調にいったようで、2004年にはピスコ造りをやめてワイナリーを建設。ワイン専業となり今に至る。

 

ヴィーニャ・ファレルニア「ピノ・ノワール グランレセルバ」はどんなワインか

この聞き慣れないエルキ・ヴァレーという土地、チリでも最北端に位置するワイン産地なのだそうで、ヴィーニャ・ファレルニアがパイオニア。年間降水量は驚くなかれ「50ミリ」だそうですよちょっと大雨が降った日の東京の1日の雨量レベル。乾燥した土地×灌漑は安うまワインのレシピのひとつのような気がするけれどもエルキ・ヴァレーの場合灌漑しようにも水そのものがなかなか手に入らないほどの乾燥具合なのだそうだ。

さらに、所有している4つの畑はいずれも標高が高く、なかには標高2000メートルを超える畑もあるそうだ。極度の乾燥+高標高と、ブドウの立場に立って考えると俺らなんでこんなとこに植えられちゃってるんスかね……みたいになりそうな土地だ。ブドウがんばれ。

さらに、今回飲んだピノ・ノワール グラン・レセルバは収量が20hl/haだっていうわけなんですよ。サントリーがやってる「ワイン用語辞典」には「yield 収量」という項があり、そこには、

1haあたりで100hlを超えると収量は多め。50hlを下回ると少なめと言う感じ。

と書いてある。「少なめと言う感じ」である50hlのさらに半分以下。ブルゴーニュワインドットコムによれば法律で定められたブルゴーニュグランクリュの基準収量は赤で35-37hl/haだというから細かいところはわからないがともかく低収量なのは間違いがなさそうだ。

低収量だとなにがいいのか。前掲の「ワイン用語辞典」にはこう書いてある。

1haあたりの土地の養分は決まっており、その養分をぶどう樹が吸い上げて果実に分配するわけなので、収量を下げた方が収穫出来るぶどうの充実度は上がる。

でもって、そんな充実したブドウを収穫してステンレスタンクで発酵させたあと、2、3年使用のフレンチオーク樽で半年熟成させてつくったのが今回飲んだワイン。

 

ヴィーニャ・ファレルニア「ピノ・ノワール グランレセルバ」を飲んでみた

実際に飲んでみての私の感想は、「チリにもあるのだ……薄うまピノ・ノワールが!(倒置法)」である

南アのパーリーゲイツとかキュヴェ・リカ、オーストラリアのデントンシェッドとか、薄くて旨い系ピノ・ノワールはニューワールドにも散見されるがチリワインであまり出会ったことがなく、強いて挙げればコノスルの最安レンジであるビシクレタくらいだったのだがこのファレルニアは完全に薄うま。

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飲むと薄うま、なのにアルコール度数は14.5度もある。

味わいは非常にシンプルで、たとえるならばいちご狩りでふかふかの土を踏みしめながら食べる、まだちょっと青いもぎたてのいちご味。そこにちょっとかつお節で味付けした梅干しのニュアンスが加わる。

これ、一瞬ドメーヌ・タカヒコのナナツモリをうっかり想起しそうになる味なんですよ本当に。全然違うだろ、どあほ、と実際飲み比べたらなるだろうけれども。でも梅感があるのは本当だ松竹梅の梅だけにごめんなさい。現実の世界でイチゴにかつお節をぶっかけたらおいなにやってんだ馬鹿と言われるのは間違いないが、ワインにするとおいしいのだから不思議だ。

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vivinoの評価は3.4と低調。でも私は好き。

なんとなく、Twitterのタイムラインを見ていてもチリワインの話題はコノスルなど一部の例外を除いてほとんど出てこない気がするが、どっこいチリには安くておいしいワインがあるなあと再認識した次第。

こういう、自分では買わないであろうワインとの出会いがあるから、福袋って楽しいですよね。

今月も「福袋」の発売日がやってきた。

 

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