目当ては角打ち。IMADEYA千葉エキナカ店へ!
仕事で千葉に行った帰りに千葉駅に立ち寄った。目的はひとつ。駅構内にある「IMADEYA千葉エキナカ店」である。
千葉県千葉市中央区仁戸名町に酒屋として誕生したいまでや。その創業地の仁戸名は「にとな」と読む。千葉は難読地名の宝庫であり東葉高速線の駅名でもある「飯山満」が読めたら千葉県民だと思っていい。正解は「はざま」。ちなみに私の地元は千葉県だ。踊ったなあ、菜の花体操。飲んだなあ、マックスコーヒー。
とはいえ成人男性になった私が飲みたいのはマックスコーヒーではなくワインだ。IMADEYA千葉エキナカ店の、小さいながらに主張の詰まったワイン棚を一通り眺めた後は、17時の開店を待って角打ちコーナーにレッツゴーである。
聞けばワインは「ボトルが空くたびに新しいラインナップを追加する」という一期一会方式。飲んでる間にも黒板に書かれたワインリストは刻一刻と変化していくというから面白い。いまでやには今しかない……!
IMADEYA千葉エキナカ店で飲めるワインは12種類
さて、店舗の片隅の小ぢんまりとした角打ちコーナーで飲めるのはグラスワイン12種で、そのうち10種は1杯500円(100ml)。2種は1杯1000円(100ml/ハーフサイズ可)で飲むことができ、好みのワイン3種の飲み比べセット980円も選べる。一見してわかるのは、日本ワインの多さだ。
どれもおいしそうだが、私のワイン知識ではこのリストの中から何を飲むべきかを正確にジャッジするのは不可能。ひとまず1日歩き回った喉の渇きを癒すべくとりあえず泡、ということで「ボット・ゲイル クレマン・ダルザス エクストラ・ブリュット」をオーダー。ピノ・ブラン、ピノ・ノワール、シャルドネで造られていて、24ヶ月の熟成後瓶詰め。裏に炭酸ガス含有とあり、公式サイトにも記載がないのでいわゆるシャンパン方式とかではなさそうだけれど、あっさりすっきりでおいしい。落ち着く。
一息ついた私はここで一計を案じた。なにを飲めばいいのやら、わからなかったら聞けば良い。不惑を過ぎて恥をかけるのはむしろありがたいことなんだそうなんだというわけでアクリルケースで仕切られたカウンター上にiPhoneを展開し、twitterに向けて救難信号を発射した。
これは是非飲むべき! があったら教えてください😋 pic.twitter.com/OaYlzw9lWU
— ヒマワイン (@hima_wine) 2020年9月29日
これにいち早く反応してくれたのが、ワインブログ界の重鎮・安ワイン道場師範。「世間での人気銘柄だと共栄堂を試してみられては。」とのことで、早速オーダーである。
共栄堂「K19FY DD」を飲んでみた
共栄堂といえば私にとっては本の街・神保町の名店「共栄堂」のスマトラカレーだが、ワイン界で共栄堂といえば山梨でつくるワイン。共栄堂は醸造家・小林剛士さんの実家が営んでいた“よろず屋”の屋号だったのだとか。商品名は風変わりな記号の羅列のようなもので、これは「文字から得られる固定概念を一旦外して、自由にワインを楽しんでほしい」ということなんだとか。なるほど。
オーダーしたのは「K19FY DD」なる巨大な機械の部品かなにかを思わせる名称のワイン。「K(共栄堂の)19FY(19年冬リリースの)DD(ダイダイ、すなわちオレンジワイン)」を意味するそうです。価格は1900円。
とかなんとか調べているとワインが到着。おお、オレンジ。オレンジワインって数えるほどしか飲んだことないから面白い。澄んだオレンジと言うよりは少し濁った色合いで、これはいかにも自然派ワインといった感じ。そしてグラスから立つ香りは……これなんて言うんですかね。感じたままのことを率直に書くならば、木の椅子に腰掛けて「ノンタン」かなんかを読んだ幼き日の小児科の待合室の木の床の軋みが聞こえてくるようなどこか懐かしい香りだ。
この感じはアレ。初めてアードベッグとかボウモアとかのピート香の強いアイラモルトを飲んだときに似てる。最初面食らうけれども、これはこういうものなのだと思って飲めば楽しめる。余談だがノンタンの妹のタータンには耳が聞こえないという設定がある(と言われている)。世の中には様々な人がいる。そして様々なワインがある。
品種は甲州100%。「甲州ってこんな感じにもなるんですね。ラベルに記載されたQRコードを読み込むことで、このワインのために作られた曲を聴くことができるようなのだが残念ながらQRコード部分が破れており聞けなかった。後から調べると、こんな曲でした。打ち込みのエレクトロニカっぽい曲で、好きな感じです。
カーブドッチワイナリーの赤ワイン2種「ファンピー」と「あなぐま」を
さて、次はなにを飲もうかなと思っていると、今度はYouTubeでワイン動画を配信されている才女、TOKYO WINE GIRLさんから反応をいただく。安ワイン道場師範同様共栄堂が気になるとしつつ「私がチャレンジするならあなぐまとカーヴドッチです」とのことでこうなれば頼む一択ですよこんなもんは。
カーブドッチワイナリーといえば新潟の泊まれるワイナリー。一度行ってみたいと思っていたのだった。DJヒマワインとしましては大胆なカーブドッチ二枚使いでフロアを沸かせるしかないぞと2杯同時にオーダー。
しかしながら気になるのは「あなぐま」なる名称だ。私が知っている「あなぐま」は里山に棲む野獣、あるいは将棋の戦法だけなので、スタッフの女性をつかまえて「なんですか? あなぐまって」と質問してみた。すると「どうぶつシリーズは、醸造家さんが好きなように作ったワインなんです。うみがめ、とかもあるんですよ。あなぐまは、サンジョヴェーゼっていう品種で造られたワインです!」とのことでなるほどそういうことか。
これが私一人であれば、なぜあなぐまかを無駄に深堀りし、気がつけばあなぐまの生態とかに関する資料を熟読している、みたいになりがち。詳しいスタッフの方に話を聞きながら飲める環境って最高ですね。ちなみにもう1本の「ファンピー(赤)」は食用ブドウ中心に作ったワインだそうで、主な品種はキャンベル。オーストラリアの首都はシドニーではなくキャンベラである。
さて、まずはファンピーからいってみる。これ香りすごいな。これも一切の配慮なしで思ったままを述べるならばブルーベリーガムの香りがする。それとかキャンディとか。ともかくスウィーツな匂いがしますねこれ。と先刻のスタッフの女性の方に話を聞くと、「そうですね、キャンベルはキャンディ香といって、飴のような甘い匂いが特徴の品種なんです。宮崎の都農ワインさんがよくこの品種でワインを造っていますよ」というこちらの意図を踏まえつつ付帯情報まで手短に伝えてくれる素晴らしい回答をしてくれた。いまでやいいぞ。店員さんは親切だしつまみ(ポークジャーキー)もうまいし。
ではもう一方のあなぐまはどうか。サンジョヴェーゼっていうと最近飲んだな。あれですね、イタリアのブルネッロ・ディ・モンタルチーノがサンジョヴェーゼだったはず。あれをベンチマークにしつつクンクン香りを嗅いでみるとこれまた独特。一切の配慮(略)で言うと、オーガニックな石鹸や洗剤などを販売している植物園併設のショップ、みたいな香りがする。匂い袋とかアロマキャンドルとか売ってるとこ。
では両者の味わいはどうか。ファンピーは、キャンベルを中心にワイン品種をブレンドしたというだけに、甘い香りだがジュースみたいな味わいというわけではなく、適度な渋みや酸味もあって楽しめる。ちなみに飲みながらの携帯メモには「ブドウ風呂」と書いてありました。
あなぐまは、これはなんですかね。色の薄さの印象そのままに果実感は少なく、透明な味わいがする。こちらも携帯メモを参照するならば「スパイシーなお花畑」である。価格はファンピー1800円、あなぐま3200円。
「K19FY DD」「ファンピー」「あなぐま」の3種は、どれも個性的で、また気になっていたワイナリーのワインであり大満足。なのだが、なんですかね。シメにブルゴーニュのピノ・ノワールとかボルドーの赤的なオーソドックスなワインを飲みたいな、ともちょっぴり思った。
足が速い、バントが巧い、左打者に異様に強いといった個性際立つ選手は1軍の中に欠かせない戦力だが、一方でレギュラーを張る選手に求められる要素はまた別のもの。漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』でオリンピックイヤーのみ登場する日暮巡査は人気キャラでその登場回には特別感があるが、それが3回続くと大原部長に麗子に中川といった派出所レギュラーメンバーが恋しくなる、みたいな気分。
とはいえ次の予定に向かうため、このあたりで電車に乗らなければならない時間がやってきたのだった。シメにはブルゴーニュでもボルドーでもなく同じく駅構内の蕎麦屋でかき揚げそばをズバババとすすり、総武線快速に飛び乗ったのだった。
その後も、Twitterで尊敬すべき諸兄姉から飲むべきワイン、また日本酒に関して大変貴重なアドバイスを頂いた。この場を借りて、改めて感謝申し上げる。みなさん、ありがとうございました! 今回飲めなかったお酒はまたいつか飲みます。
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