ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

菊鹿シャルドネの味わい「まるでムルソー」は本当か? 飲んでみた!

熊本ワインの菊鹿シャルドネを買ってみた

以前、ふと思いついてこんなことをツイートしたことがある。

これ夏の甲子園シーズンとかに状況が許せばホントにやりたいのだが、このツイートには反響を多くいただき、それぞれの出身県ごとに「ウチの県ならこれ!」的なご意見が寄せられて大変興味深かった。

f:id:ichibanboshimomojiro:20210515102115j:plain

熊本ワインの菊鹿シャルドネを飲みました。

そんななか、熊本ならこれ一択といった感じで名前が挙がったのが菊鹿シャルドネだ。「きくしかしゃるどね」って読んでたんだけどこのときに「きくかしゃるどね」と読むことを知った次第だが、日本のおいしいシャルドネとしてしばしば名前の挙がるこのワインの存在は知っていた。その菊鹿シャルドネが手に入ったので飲んでみたよというのが本稿の趣旨である。

 

熊本ワインの歴史と菊鹿町のワイン造りの発展と課題

菊鹿シャルドネを生産する熊本ワインの設立は1999年。本坊酒造南九州コカ・コーラボトリングの共同出資で設立されたんだそうで、知らなかったのだが、山梨県マルスワインも山形県の高畠ワイナリーも本坊酒造の系列なんだそうだ。マルスワインが成功したことで、高畠、そして熊本と設立していったそうな。へー。

さて、それから20年余を経てブランドとして成長した菊鹿シャルドネだが、熊本日日新聞の記事によれば、1999年当時菊鹿町でたった3軒からブドウ栽培がスタートしたんだそうだ。

(参考/ワインで地域づくり、熟成への道 山鹿市・菊鹿ワイナリー開業2年 | 熊本日日新聞社

菊鹿シャルドネは、2009年に「ジャパン・ワイン・チャレンジ」で「最優秀新世界白ワイン」を獲得したことなどで評判を上げていく。

その一方、人気に応えるべく2013年に4.5ヘクタール、2015年に9.5ヘクタールと栽培面積を拡大しているものの、地元農家の高齢化や、ワイン用ブドウ栽培だけでは生計を立てるのが難しいといった問題にも直面しているんだそうだ。人気に対し供給は追いついておらず、さりとてブドウの栽培面積は以上のような理由で簡単には増やせないどころか高齢化はこれからさらに進んでいく。難しいなあ。

himawine.hatenablog.com

そんななか、2018年には「菊鹿ワイナリー」が完成。今までは菊鹿でとれたブドウを30キロ離れた場所に運んで醸造していたが、これにより新鮮な状態で醸造することが可能になったのだそうだ。さらに、以前よりも小型のタンクを備えたことで、「品種や畑の個性を持ったワイン造りが可能に」なったという。「日本ワインの品質がここ数年で急激に高まっている」みたいな文章をよく目にするけど、こういう設備投資が進んでいることがその背景にあることがわかって面白い。

それにしてもワイン用ブドウが生食用ブドウに比べて「儲からない」という問題、農家の高齢化の問題は根が深いよなぁ。と、日本ワインの今後に思いを馳せつつその健全な発展を願いつつ、スポンと開けて飲んでみることにした。

 

菊鹿シャルドネを飲んでみた。

で、あとから気が付いたんだけど菊鹿シャルドネってノンヴィンテージなんすね。公式サイトの商品紹介ページには「ステンレスタンクのワインと樽熟成のワインをブレンドする」と書いてある。菊鹿シャルドネには「アンウッデッド」という商品もあり、こちらはヴィンテージ表記があるので、樽熟成けっこう長いことさせてるのかもしれない。

さて、飲んでみるとこれが評判通りにおいしい。ブルゴーニュシャルドネと言われれば「なるほど」と言うだろうし、カリフォルニアのシャルドネと言われても「なるほど」と私レベルの舌ならば言うであろう味だ。しかし、熊本のシャルドネと言われたならば「マジかよ!」となる。

f:id:ichibanboshimomojiro:20210515102528p:plain

日本ワインの評価が総じて低いvivinoで3.8点と高得点。納得。

ほどよく樽の効いた普通においしいシャルドネなのだが、ステンレスタンクと樽熟成のワインをブレンドしているからなのか、まろやか一辺倒じゃなくてスッキリ感もある。後味にはほんのりあるかないかの和柑橘的な苦味があって、後付け感100%でいうとそこに日本らしさがあるような気がしなくもない。よくムルソーを引き合いに出されるようだが私はムルソーを飲んだことがないのでわからない。無念すぎる。

いやでもうまいわ菊鹿シャルドネ。実際に「ワイン甲子園」を開催する場合、おそらく参加条件として3000円以下とかそれくらいのレギュレーションを設ける必要があると思うのだが、仮にそのレギュレーションを採用した場合2913円のこのワインは優勝候補の一角になるのは間違いなさそう。熊本は野球も強いもんなあ。私の好きな赤い帽子の野球チームのレジェンド選手・前田智徳さんは熊本工業高校出身だし(なんの関係もない)。

おいしいと評判の菊鹿シャルドネ。一度飲む価値は十分にあると思います。あと、ムルソーはなにを飲めばいいんでしょうか。教えて詳しい方。