689セラーズと「キラードロップ」
昨夜は689セラーズの「キラードロップ」を飲んだ。2014年が初ヴィンテージだそうで、私が飲んだのは2016年ヴィンテージ。
689セラーズのワインはフラッグシップの「シックス・エイト・ナイン」が非常においしくて、その廉価版的立ち位置の「サブミッション カベルネ・ソーヴィニヨン」もすこぶるおいしいのでその最新作だという「キラードロップ」も迷わず買ったという流れ。好きなバンドのニューアルバム出たから即買ったわ、みたいなイメージだ。
私が689セラーズのワインをいいなあと思うのは、味の良さに対して価格がリーズナブルに感じられるところ。リーズナブルとは安いという意味ではなく「理由がある」ということで、プロジェクト全体から無駄なコストを抑えて極力高品質なプロダクトを作ろう、というユニクロ的世界観が伝わってくる点にあり、それがなんだかすごく信頼できる。
「キラードロップ」は、「シックス・エイト・ナイン」3400円、「サブミッション」2300円に対して定価3800円とややお高め。果たしてその味わいやいかにといったところだ。
689セラーズのマーケティング戦略
創設者がマーケターだというだけあって、689セラーズのワインはブランドごとにウェブサイトがあり、
シックス・エイト・ナインはwww.689wine.com、
サブミッションはwww.submissionwine.com、というふうに分かれていて、
キラードロップにはwww.killerdrop.com というウェブサイトが存在する。
どれもワードプレスでサクッと作りました感がありながら、しっかりとブランドの世界観が伝わってくるシンプルで無駄のないサイト構成となっており、カネをかけなくてもブランディングはできんだよ感が伝わってきて、うーん、リーズナブル。それぞれのトップページをご紹介しておこう。まずは「シックス・エイト・ナイン」
洗練されていて、シンプル。無駄がない、機能美、みたいなイメージ。続いて「サブミッション」
こちらは一転、ミステリアス一本勝負。ファム・ファタル感。でもって、最後は本日の主役「キラードロップ」
なんだこりゃ。パタゴニアかよ。リサイクルコットン100%のTシャツ売ってますみたいな印象だがれっきとしたワインの公式サイトだ。
なんでも、友人たちと酒盛りをしていた際に、誰かが「こりゃあ、キラードロップ・ワインだぜ!」と叫んだらしい。キラードロップとは、カリフォルニアで育った若者が、サーフィンやらスノボをする際にアドレナリンが大量放出される瞬間、みたいな意味合いなんだそうな。あれですね、キラーチューン、とかっていうときのキラーに近い意味合い。一発でもってかれるみたいな感じ。
とはいえこのワイン、価格も含めてもちろんまったく若者向けではなく、紳士淑女が若かりし日のブチ上がりデイズを回顧するためのいわば若返りの霊薬的な位置付けのよう。これ飲んであの頃の気持ちを取り戻そうぜ! いいじゃんいいじゃん、飲もうぜ、オールで。みたいな。「オールで」って。平成のどこかに、飲み明かすことを「オールする」という時代があった。オールで飲もうぜ、カラオケボックスで、みたいな。そこから生まれるドラマがあった。あったんだよ(懐古)。
キラードロップはグルナッシュ主体
さて、「シックス・エイト・ナイン」がジンファンデル36%、カベルネ・ソーヴィニヨン29%、メルロー28%にシラー5%とプティ・シラー2%というブレンド(2017)、「サブミッション」がカベルネ・ソーヴィニヨンにメルローを8%ブレンド(2017)なのに対し、「キラードロップ」はグルナッシュ48%、プティシラー26%、シラー18%にジンファンデル8%というブレンド比率のようだ(2016)。なんでしょうか。若干南仏っぽいブレンドの感じなんでしょうか。知ったかぶりするのはよくないので飲んでみることにしようそうしよう。
ブドウは、ナパ、ソノマ、シエラフットヒルズ、ローダイ、レイクカウンティと幅広いエリアから入手。醸造については記載がなく、新樽率25%のフレンチオーク樽で10カ月熟成とある。アルコール度数は14.5%。夏に飲むには重そうだけど、さてどうか。
キラードロップ、飲んでみると……?
抜栓してすぐに料理用の赤ワインたっぷりでソースを作ったハンバーグをつまみに飲んでみたんですけどあれこれもう異様においしいですね。私は689セラーズのファンなのでファンの贔屓目もあるかもしれないけれどもこりゃあうまい。
南仏かどうかはわからないが、浴びてんな、太陽。You、浴びちゃってるね、ソレイユ、っていう味がする(フレッシュかつ果実味が強いの意)。それでいて単調なブドウジュース感はなく、中身はすごく複雑な味と香りが入り混じっている。たとえばサブミッションと比較するとはるかに複雑で、わかりやすさは低いけど旨味的なものは強い。
・チョコがけサクランボのアロマ
・ブルーベリー、ワイルドベリー、スパイスとリコリスのニュアンス
・黒系果実と大地のレイヤー
・ブラックチェリー、スパイシーな赤系果実
・ベルベットのようなテクスチャー
・長く続く余韻
といったことが公式のテイスティングノートには書いてあります。略すと「浴びてんな、太陽」ということになりますね、明らかに(据わった目で)。樽も相当効いてる。
689セラーズにはもうひとつ、「ゴースト・イン・ザ・ナイト」という押井守監督の作品名みたいなピノ・ノワールがあるんだけど、それはどうやら日本未発売。飲みたい。飲みたすぎる。
アメリカで見かけた方、飲んでどんな味だったか教えて!