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キスヴィンワイナリーはどんな生産者? 醸造家・斎藤まゆさんが造るワインを飲んでみた【Kisvin Winery】

斎藤まゆさんが醸造責任者を務めるキスヴィン(Kisvin)ワイナリーはどんな生産者か?

2021年4月20日放映のNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に取り上げられると聞いて興味を覚え、改めてキスヴィンワイナリーのワインを飲んでみることにした。番組のサブタイトルは「笑顔をうつす、ひとしずく~ワイン醸造家・斎藤まゆ」。キスヴィンワイナリーは、斎藤まゆさんという女性が醸造家を務めている生産者だ。

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キスヴィン(Kisvin)ワイナリーについて調べたことをまとめました

キスヴィンワイナリーの歴史は、2001年、山梨県甲州市塩山のブドウ農家の3代目である荻原康弘さんが家業を引き継いたどことに端を発する。荻原さんは2002年頃にはワイン用ブドウ栽培を将来的な事業の重点項目に位置付けた、と公式サイトにある。

その後、2005年にブドウ栽培者の池川仁さん、東京大学大学院の西岡一洋さんらと醸造用ブドウの勉強会グループ「Team Kisvin チームキスヴィン」を立ち上げる。

2008年、シャトー酒折にワイン用ブドウの販売を開始してシャトー酒折よりKisvin Koshu 2008を発売すると、2009年株式会社Kisvinを設立。2013年、自社醸造施設のキスヴィンワイナリーを設立し、ワイン醸造を開始する。

 

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 この「Kisvin Koshu2008」発売の経緯は興味深い。エノテカのワイナリー紹介ページによれば、荻原さん、池川さんから届くブドウの品質が「あまりにも高い」ことに気がついたシャトー酒折が、「別にブドウを仕込ませてほしい」とオファーし、専用タンクを新たに購入してリリーすることになったのだとか。

「栽培するブドウの質の高さから特別なキュヴェが仕込まれるほど、荻原氏はブドウ栽培のスペシャリストとしてその実力を認められるようになりました。」とエノテカのサイトは荻原氏について記している。

実際、キスヴィンワイナリーの畑では、シャルドネの畑に雨除けの屋根を張り、甲州にはひと房づつ傘をかけるなど、非常に手間をかけて栽培をしているようで、それがワインのクオリティに直結しているようだ。

 

キスヴィンワイナリーの醸造責任者・斎藤まゆさんのキャリア

そして、醸造責任者を務める斎藤まゆさんは、その2013年からキスヴィンワイナリーの醸造責任者を務めているのだそうだ。

クラシコムジャーナル」の記事によれば、斎藤さんは語学に興味を覚えて15歳でアメリカ・テネシー州に留学、そこでお笑いに目覚め、芸人になろう! と演劇が盛んな早稲田大学の第二文学部に進学したのだそうだ。

 

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そして、大学2年時にボルドーを旅した際に出会った、自分たちのブドウ畑で自分たちのワインを造るおばあちゃんを見て、「あのおばあちゃんのようになりたい」と早稲田大学を中退、カリフォルニア州立大学フレズノ農学部醸造学科で学ぶ道を選択する。

そして、その在学中に書いたブログにキスヴィン・ワイナリー代表の萩原さんが注目。チームの仲間を伴ってカリフォルニアに渡り、直接斎藤さんを口説いたのだそうだ。

そしてその後、シャブリのドメーヌ・ジャン・コレ、イランシーのドメーヌ・ティエリ・リシューで研鑽を積み、晴れて斎藤さんはキスヴィンにジョインすることになる。

 

世界最優秀ソムリエ、ジェラール・バッセがキスヴィン ピノ・ノワールを絶賛

そして2017年。世界最優秀ソムリエでマスター・オブ・ワインのジェラール・バッセ(2019年没)との会食の機会を得、「キスヴィン ピノ・ノワール」を「才能豊かな醸造家が造ったこのワインは、ユニークでセンセーショナル」と称賛されたことでキスヴィンの名は世界に知れ渡ることになる。

そして、ブドウ栽培家の荻原康弘さんとの二人三脚の元、「高品質のブドウができさえすれば、醸造とはシンプルかつ平易なものである」をモットーに、ブドウ造り、ワイン造りを行なっているというのがキスヴィンワイナリーの概要。2019年には「キスヴィンシャルドネ」がANAのファーストクラスにも採用されているなど、まさに快進撃といったところだろうか。

そんなキスヴィンワイナリーのサイトには、赤ちゃんをおんぶしてブドウの世話をする斎藤さんの写真が掲載されている。シングルマザーとして一人息子を育てながら、ワインも育てているのだそうで、個人的にすごくいい写真だと思うのでぜひ公式サイトを訪問してご覧いただきたい。

 

キスヴィンワイナリーのワイン一覧

では、キスヴィンワイナリーにはどんなワインがあるのだろうか。まずはそのラインナップを見てみよう。

《白》


Kisvin Koshu(甲州)


Kisvin Koshu Réserve(甲州レゼルヴ)


Kisvin Chardonnay(シャルドネ)


Kisvin Chardonnay Nude(シャルドネ ヌード)


Kisvin Chardonnay Réserve(シャルドネ レゼルヴ)


Kisvin Blanc(ブラン)

《赤》


Kisvin Rubis(ルビー)


Kisvin Syrah(シラー)


Kisvin Pinot Noirピノノワール

《ロゼ》


Kisvin Rose(ロゼ)


Kisvin Pinot Noir Rose(ピノノワール ロゼ)


Kisvin Syrah Rose(シラーロゼ)


Kisvin Zinfandel Rose(ジンファンデルロゼ)

《スパークリング》


Kisvin Koshu Sparkling(甲州スパークリング)

白が6種、赤3種、ロゼ2種、スパークリング1種が公式サイトには掲載されている。品種を見ると、山梨県のワイナリーらしく地品種の甲州があり、白はほかにシャルドネ。赤用品種として、シラー、ピノ・ノワール、ジンファンデルなどを栽培していることがわかる。

このうち、まず注目したいのは、ジェラール・バッセが絶賛した「キスヴィンワイナリー ピノ・ノワール」だろう。エノテカの商品ページによれば「淡いルビーの色合い。チェリーやイチゴの果実香に重なるシナモンやキャラメルのニュアンスが柔らかい印象を与え」るとある。

 

もうひとつ「シャルドネ・レゼルブ」もスペシャルキュヴェ的立ち位置であるようだ。同じくエノテカの説明によれば、「今飲んでも美味しく、またしっかりとした骨格を備えているため、熟成させても楽しめる最高級の日本ワイン」とある。生産量は僅か1230本と非常に希少なようだが、一度飲んでみたいワインだ。

 

個人的には、スパークリングの「甲州スパークリング」を飲んだことがある。非常に爽やかな酸味と、甘くならない果実味が魅力のスパークリングワインで、夏に飲むのにピッタリという印象を受けた。

山梨といえば甲州。この夏には、キスヴィンワイナリーが甲州で造るワインも飲んでみたいと思う。

 

キスヴィンワイナリー「Rubis(ルビー)」を飲んでみた

さて、今回飲んだのは「Rubis(ルビー)」という赤ワインなのだが、これは一体どのようなワインなのだろうか。「e-wine」の商品ページによれば、山梨県甲州市産のピノ・ノワール48%とシラー52%のブレンド

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キスヴィンワイナリー「Rubis(ルビー)」を飲みました。

グラスに注いでみるとやや薄めの明るいルビー色で、鉛筆とか墨のような落ち着いた香りと、ベリー系の果実香が非常に心地よい。飲んでみると、かなりくっきりとした酸味が特徴的。それを渋みが支え、奥から果実の旨み、甘やかさが漂ってくる。シラーならではのスパイシーさも感じられる。

印象としては「滋味深い」という言葉になる。ガツンとステーキ! とか、バターたっぷり濃厚フレンチ! とかではなくて、焼き鳥とか山椒を効かせたうなぎの蒲焼とかすきやきとか、やや味付けの強めの和食メニューに合いそうだな、と感じた。

繊細なのに芯のところに力強さを感じ、竹のようなしなやかな弾性を感じさせる味わいは、このワインをつくる斎藤まゆさんのパーソナルもこんな感じなのだろうか、といった妄想を捗らせてくれるものだ。価格は少々高いが、日本の、山梨の赤ワインの現在地点を知る意味で飲んで損のないワインだと思う。もちろん、セラー等で寝かせて飲んだらまた違う味わいを感じられるはずだ。

 

キスヴィンワイナリーと斎藤まゆさんのこれから

WEBメディア「アクティオノート」のインタビューで、斎藤まゆさんは「いま抱いている夢」を問われてこう答えている。少し長くなるが、全文を引用する。

いまはコロナの影響で閉めていますが、私たちはワイナリーに小さな直売所を併設しています。コロナの前は、最寄りのJR中央本線塩山駅から、徒歩15分くらいの道のりを歩いて、ワインを買いに来てくださるお客さんもいらっしゃいました。私たちのワインがどうしても飲みたいというファンがもっと増えて、塩山駅の改札から直売所の入り口まで途切れることなく延びる長い行列を見るのが夢。近いうちに必ず実現させたいと思っています。

現在のコロナ禍がかえすがえすもうらめしいが、現在の状況が落ち着き、ふたたびワイナリーの直売所がオープンした折には、駅からの道のりを歩いてぜひ訪問してみたいものである。ちなみに、中央本線塩山駅はJR新宿駅から特急列車で1時間半。ちょうど良い小旅行になりそうだ。

 

キスヴィンワイナリーのワインを手に入れるには? ふるさと納税も!

では、キスヴィンワイナリーのワインを飲みたくなったらどうすれば良いか。下に販売店をまとめたが、キスヴィンワイナリーはネットショップでも比較的容易に手が入る。また、キスヴィンワイナリーではなく、チームキスヴィン名義では、チームキスヴィンがつくったブドウを使い、酒折ワイナリーが造ったワインをふるさと納税で手に入れることもできるようだから、ふるさと納税の寄付先に迷った際の選択肢にしても面白いかもしれない。

  

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<キスヴィンワイナリー・ワイナリー概要>

Kisvin Winery
 

山梨県甲州市塩山千野474

TEL:
0553-32-0003

<斎藤まゆさんプロフィール ※キスヴィンワイナリー公式サイトより>

昭和55年生まれ 早稲田大学在学中に日本でのワイン造りを目指し、同大学を中退。カリフォルニア州立大学でワイン醸造学科卒業後、成績優秀により同校ワイナリーの醸造アシスタントに抜擢。現地学生の指導にあたる。その後はドメーヌ・ジャン・コレ、ドメーヌ・ティエリ・リシュー(いずれも仏ブルゴーニュ)などで研鑽を積み、平成25年よりKisvinワイナリー醸造責任者。近年では『ワインの真実』(ジョナサン・ノシター著)「訳者あとがきにかえて」執筆など。

 

<キスヴィンワイナリー・取扱店舗>

山梨:新田商店
http://www14.plala.or.jp/nittawine/

千葉:株式会社いまでや


http://www.imaday.jp/

東京:株式会社カーヴ ド リラックス

http://www.cavederelax.com/index.html

東京:矢澤味噌醸造株式会社 
03-3973-4501


新潟:有限会社 寿酒店


https://www.kotobukisaketen.com

大阪:タカムラ ワイン&コーヒーロースターズ


https://takamuranet.com/

大阪:白菊屋


http://shiragikuya.com/

滋賀:加藤酒店


http://katosaketen.kera.jp/

福岡:尾池酒店


http://www.oikesaketen.com/

兵庫:松岡商店
 078-611-0388

キスヴィンワイナリーとANAの期間限定オリジナルワインが発売中

4月13日(火)~5月17日(月)の期間限定で、ANAオリジナルブレンドのワイン<キスヴィン>ANAオリジナルブレンド甲州【2020】が発売中。価格は3960円税込。

ANAオリジナルブレンド<キスヴィン甲州>特集| ANAショッピング A-style

 


<参考記事/サイト>

キスヴィンワイナリー
http://www.kisvin.co.jp/

クラシコムジャーナル 「「ワイン界の神様」を唸らせた女性醸造家 斎藤まゆ。ガレージで歌い踊る、その理由。」
https://kurashicom.jp/3679

アクティオノート「キスヴィンワイナリー醸造責任者、斎藤まゆ氏の挑戦。日本のガレージから、世界を驚かせるワインを造りたい」
https://note.aktio.co.jp/food/20201022-1000.html

エノテカ

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