ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

南アフリカワイン試飲会潜入レポート! おいしかった「12本」

株式会社マスダの試飲会に参加した

昨年に引き続き、バイヤーの三宅司さんにご招待いただいて「なんちゃってメディア枠」で株式会社マスダの試飲会に参加してきた。

前回の模様↓

himawine.hatenablog.com

 

ズラリと並べられたワインは49種類。今回はそのすべてをごく少量ずつだがテイスティングしたので、そのなかからとくに好きだったものを12種類ピックアップ。さらに、赤白それぞれの「マイベスト」を選んでいく。

これがおいしい(と思った)よ! というのを読者のみなさまにご紹介したいという意図もあるのだが、2回続けて参加させていただいてみて、自分はこの生産者の味が好きなのかも、みたいなのがなんとなく見えてきた気がしており、自分のなかでそれをたしかめたいという意図もある。まずは15種が出品されていた白ワインから見ていこう。

 

コンスタンシア グレン ソーヴィニヨン・ブラン2021

まず良かったのがこのワイン。ソーヴィニヨン・ブランといってもニュージーランド的な大草原のさわやかハウス的味わいではなくて、2%のセミヨンがブレンドされていることもあってかボルドー・ブラン的な華やかで少し蜜っぽい感じのもの。

たっぷりした量感があって税抜き価格2700円はお値打ち。クリーム系のソースにディルを使った白身魚の料理なんかに合いそう。

 

ステレンラスト バレルファーメンテッド シャルドネ2021

前回「マザーシップ シュナン・ブラン」を素晴らしいと感じたステレンラストだが、今回は樽発酵・樽熟成を経たこのシャルドネがド素晴らしいと感じた。

白ワインわかりやすさオリンピックがあったら間違いなくメダルに絡むという樽&フルーツの甘やかなおいしさ。同じステレンラストの「シャルドネ」もおいしかったが、どちらかと言われたら圧倒的にこちらを推したい。税抜き3000円? 嘘だろ、という味がした。実勢価格は2000円台。

 

アタラクシア シャルドネ2021

税抜き5500円とやや高めの価格帯となるがアタラクシアのシャルドネも素晴らしいオブ素晴らしさだった。産地がヘメルアンアード・リッジなので冷涼だと思うんだけれども味わいはめっちゃ蜜。蜜にして密な目の詰まった味わいで、前のステレンラストが樽と果実の二重奏だとしたら、こちらは果実と酸の大相撲。

2013VTが2015年にデカンター誌で「ブルゴーニュ以外の世界のベストシャルドネ」に選出されたというけどこの2021ヴィンテージも相当なもんなんじゃないかと思った次第。

 

サワーヴァイン チ リースリング2022

「チ」という不思議な名前はアフリカの雨の神を表す言葉なのだそうで、これもめっちゃくちゃおいしいワインだった。リースリングならではの柄の長い槍のような酸味、その槍の穂先にちょこんとハチミツの小瓶が添えてありますといった印象。

ハーブっぽいニュアンスもあり、わずかな量しか試飲していないにもかかわらず午前中の柔らかな光が差し込むガーデンテラスみたいな情景が目に浮かぶワインだった。生産地は南アで冷涼産地といえばのエルギン。3800円と購入可能な価格なのもありがたい。

 

グレネリー ロゼ・ド・メイ2021

ロゼは2種類が出品されていたが、このグレネリーがシラーで造るロゼが非常に良かった。

ピュアで甘酸っぱくて香りがチャーミング。シラーってこんなにかわいい味わいになるんだ、という驚きがあった。税抜き2200円という価格はお値打ちだ。

 

ステレンラスト シュナンブラン スパークリングNV

続いて5種類が出品されていたスパークリングワイン部門。まずこのステレンラストのシュナンブランは、スティルのシュナンブランの味わいそのままにとてもフレッシュでリンゴを丸かじりしたような味。

マスカット・オブ・アレキサンドリアも使われていて、瓶内二次発酵ではなくタンク内二次発酵のシャルマ方式。それもあってかプロセッコ的なシャンパーニュ方面を目指していない印象の泡としてとてもよかった(と思ったらラベルに『スプマンテ』って書いてあった)。税抜き2400円はこれまたお値打ち。南アのワイン、だいたいお値打ち。

 

クローヌ ロゼ・キュベ・ブリュット2019

私が心ひそかに南ア最強泡はこれなんじゃないかと思っているのがこのクローヌで、やっぱりうまい。とてもうまい。

過去に飲んだ南ア泡のなかでもっともシャンパーニュ的な複雑さを感じるのがこのクローヌのロゼだ。すべてヴィンテージワインなので、2019を買ってあと5年くらい熟成させてなめらかな熟成香が加わったら本当にヤバいことになりそうな気がする。税抜き4200円と高すぎないのもいい。

さて、続いては26種が出品された赤部門。私の好みは7種類あった。

 

サワーヴァイン ノム ピノ・ノワール2020

ピノ・ノワールは「チ」も素晴らしかったサワーヴァインが前回も良かったが今回飲んでもやっぱり良かった。バラ園を思わせる香りにチャーミングで品の良い果実。出品されていたピノ・ノワールのなかで、個人的にはちょっと抜けてこれが好みだった。

このワインは税抜き7100円とお値段もお高め。総じて他国比でコスパに優れる南アフリカワインでこの値段を出すと、さすがにすさまじいものが飲める。

 

ラーマン フォーカルポイント サンソー2021

「ノム」が冷涼なオーバーバーグだったのに対して温暖なパール地区で造られるラーマンのフォーカルポイント サンソーは飲んだ印象もひだまりのような暖かさを想起させる。

なんですかねこれは。ポカポカと陽の当たる縁側でおばあちゃんの作ってくれたおはぎを食べてるみたいな、ワインと二万光年くらい離れた情景が思い浮かぶ。

これだけ瓶内の温度が高くないか? と思ってしまうような味わいだった。価格は高くも安くもない3400円。不思議なワインだったなあ。

 

カノンコップ ピノタージュ2019

2022年の元日に豪徳寺のワインステーションプラスでたしか2015ヴィンテージを飲み、新年早々今年のBEST5級なんじゃないのこれ、と思ったワインの2019ヴィンテージだがやはりすっごくおいしい。カノンコップのピノタージュはおいしいですなぁ。

甘味酸味渋みのバランスが絶妙で、味わいはなにがしかベリーの丸齧りといった印象。新樽75%のフレンチオーク樽で16か月熟成させるという贅沢な造り、ピノタージュ世界一5回受賞という肩書きも納得だ。お値段5600円は内容を考えると良コスパと言っていいレベル。

 

ラスカリオン パンディキュレーション2020

樽を使わないグルナッシュと樽を使ったシラーのブレンドというワインで今回のNO.1甘ずっぱワインがこれ。飲みやすさお化け。

純粋な味のパワーでいえば他においしいものがいくつもあったけど、2200円という価格を考えるとコスパはこれが最強だと感じた。

 

ブラハム シラーズ2020

税抜き定価3250円で、ぎりっぎり2000円台入手できる。というわけでアンダー3000円の安うまシラーズ世界最強の座を狙っていける可能性があると感じたのがブラハムのシラーズ。

生産地は温暖なパールで、どちらかというとたっぷりした味わい。南アフリカにはシラー表記とシラーズ表記が混在しており、以前ステレンラストのウェビナーで「シラーと思って造ったのならシラー。シラーズと思って造ったのならシラーズ」という名言を聞いた覚えがあるが、これはまさに果実味豊かな“シラーズ”のスタイル。

買って1本楽しみたいワイン。

 

ブーケンハーツクルーフ チョコレートブロック2020

超有名ワインながら未飲だったので飲めて嬉しかったのがこれ。でもって期待を裏切らないどころか期待通りのさらに上を映画『時をかける少女』(細田守監督バージョン)のポスタービジュアルの少女の跳躍を思わせる身軽さで飛び越えて行った。甘くてうまい。

甘くておいしい、みたいなワインを南アフリカの5000円台ワインで表現するとこんなとんでもないレベルの突入してしまうんだねと震えるようなイメージ。つまみはガトーショコラでお願いしたい。

 

カルメンティーブンス メルロ 2020

南アフリカメルローのイメージがあまりなかったのだが驚いた。これはいい。メルローはおだやかで丸みを帯びた味わいみたいに説明されることが多いと思うがこれはメルローのスタイルとしては珍しいんじゃないかなと感じる甘ずっぱスタイル。

ストレートの球速は140キロそこそこだが抜群のキレでもって空振りを量産する左投手の4シーム、といった切れ味するどい味わい。ラーマンのフォーカルポイント サンソーとは真逆で、液体の温度を低く感じるようなワインだった。メルローってこういう味にもなるんだなぁ。

 

49本中の12本からBESTを選ぶ

以上、かなり厳しい基準で選抜したつもりだが、気がつけばとくにお気に入りだと感じたのが49本中12本という数になったのはさすが南アのクオリティ。もちろんただの私の好みなので、他の方が飲めばまったく違う結果となるだろう。

誘ってくださったバイヤーの三宅さんいわく、南アフリカは2021年ヴィンテージの出来が良く、続く2022年ヴィンテージはさらに良い年になったのだそうだ。白は2021、2022ヴィンテージが多く出品されていたが、私が良いと感じたのはこのふたつのヴィンテージに限定されており、ほかのも非常に楽しみになる。

あとこれはウルトラ余談なのだが南アといえばの評論家、ティム・アトキンが高く評価したワインが私は比較的好みでないものが多かった。私とティム・アトキンは好みが合わないようだ。一緒に飲む日がもしきたらそのときは日本酒を飲もう、ティム。

という与太話はさておいて白赤のベストを発表したい。以下だ。

【白ベスト】
サワーヴァイン「チ リースリング2022」

【白次点】
ステレンラスト「バレルファーメンティド シャルドネ2021」

【赤ベスト ※同率】
カノンコップ「ピノタージュ 2019」

サワーヴァイン「ノム ピノ・ノワール2020」

以上のように要するに私はサワーヴァインが好きなのだ、ということがよくわかる結果となった。最近というか寒い季節に私は樽の効いたワインを飲みたくなり、すっきり系のワインに手が伸びなくなるのだが、その傾向を破壊して赤白両方好みだった。

でもってラスカリオンの「パンディキュレーション」がベストコスパ賞。次点でグレネリーの『ロゼ・ド・メイ』だ。どちらも税抜き2200円は素晴らしい。下手すりゃ1000円台で買えちゃうわけですよねこの子たち…! あとラスカリオンのパンディキュレーションは名前がいい。なんでしょうかこのロボットアニメ(ラスカリオン)の必殺技(パンディキュレーション)感。パンディキュレーション、実際は「心地よい目覚め」の意らしいけどな…!

それにしても南アフリカワインのすごさは毎回驚かされるばかりだ。ヴィンテージが切り替わったことがどう影響するかなども注視していきたい次第なので三宅さん良かったらまた呼んでください!

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