ドメーヌ・モン「モンペ」とぼく。
2020年を締めくくるワインをなににしようかと考えていた2020年の12月某日、ドメーヌ・モンの「モンペ2020」が発売になったというニュースを耳にしたその足で東京メトロ副都心線にまたがって神宮前のワインショップ・ウィルトスに馳せ参じて3本購入。大晦日に開栓することとした。
ドメーヌモンのモンペ2020が買えたので今日はすさまじくいい日。贈答用、年末年始用、保存用と3本捕獲。早く飲みたい! pic.twitter.com/1v5dt9i6EF
— ヒマワイン (@hima_wine) 2020年12月22日
ドメーヌ・モンとの出会いは2020年の6月に遡る。知人に連れて行ってもらった東京・渋谷の居酒屋で出されて飲み、その味わいに衝撃を受けたのだった。ちなみに私はそれがいわゆるひとつのナチュラルワイン初体験。濁ったワインも、オレンジがかった色も、ペティアンという造りそのものも初体験で、「居酒屋」という人生で1万回くらい行ったんじゃないかって場所が急に見知らぬ場所に感じられるような心持ちになったのだった。
帰宅して即、撮影したラベルを頼りに検索。わかったのは、そのワインは「買えない」ということだった。生産量が少ないため、発売されてすぐに売り切れる。次に買うチャンスがあるのは新しいヴィンテージが出荷される12月になるだろうということだった。飲みたい、でも買えない、と会いたくて会いたくて震えるみたいな気分で以来、「モンペ2020」の発売を私は待ち続けていたのだった。震えついでにすっかり北海道余市町が気になってしまった私はふるさと納税の寄付先も余市町にしてしまったのだった。1本のワインが納税先まで左右するんだから人生は恐ろしい冗談の連続である。
とはいえ。初めてモンペを飲んでからナチュラルワインもいろいろ飲んで、「ナチュラルワインってこういう感じなんだね」っていうのもちょっとわかってきた。そのため、あの日の衝撃は青春時代の瑞々しい体験に似た経験ないが故に味わえる新鮮な感動であった可能性がゼロではないことを私は知っている。もし今夜飲んでイマイチだったらそれはまさに知る悲しみだなと思いながら、紅白歌合戦を横目にスポンと王冠を外し、グラスに注いでみたというのが「モンペ2020」を飲むに至ることの次第だ。
ドメーヌ・モン「モンペ2020」はどんなワインか?
モンペはドメーヌ・モンが造るペティアンだからモン・ぺでモンペというワイン。2020ヴィンテージは主要品種のナイアガラの作柄が良かったことから、ナイアガラ100%で造られているそうだ(ケルナーとかバッカスと混醸されている年もあるみたい)。ブドウは北海道余市町登地区のビオロジックの畑で収穫されたもの。無濾過、無清澄で亜硫酸不添加。これは毎回書くことだが、私はナチュラルワインサイコー! 自然な造りが一番! みたいな思想を持たないおいしければなんでもオッケーという立場。無思想・無批判・無節操が本ブログのポリシーだ。
さて、ドメーヌ・モンはドメーヌ・タカヒコの曽我貴彦さんの元で修行した山中敦生さんが北海道余市町の登地区で2016年に開業したワイナリー。同地区の耕作放棄地を自ら開拓した自社畑ではピノ・グリのみを栽培していて、「ドン・グリ」という名前で2020年に初リリース。その自社畑のブドウが育つのを待つ間に同じ余市町登地区の買いブドウで造ったワインが「モンペ」だ。価格は税込2090円。
ドメーヌ・モン「モンペ2020」を飲んでみた。
さて、時は2020年末に戻り、私は紅白歌合戦を横目にモンペ2020を飲もうとしている。栓抜きで王冠を外してグラスに注いでみると、記憶のなかのモンペ2019よりもさらにもう一段階濃い色。リゾートホテルの朝食ブッフェで出るフレッシュオレンジジュースってこういう色だよね、っていう濁り透明オレンジみたいな色をしている。王冠を開けた感じ、グラスに注いだ感じからは泡はあんまり感じられない。さてどうか。果たしてあの衝撃は再現性のない一度限りの魔法だったのか、否か。
まず香りだが、嗅覚の記憶って他の記憶より長持ちするって話に納得がいくそうそうこれこれ感がある。南国の爛熟した花と果実の匂いなんだけど、それを花屋で嗅いでいるんじゃなくて現地で嗅いでるみたいな気分。脳裏に浮かぶのはやっぱりアンリ・ルソーの絵画「夢」だ。描かれているのは幻想的なジャングルの風景。なのだが、画家はジャングルに行ったことはなく、パリの植物園でのスケッチをもとにそのイメージを創造したのだそうだ。私もルソー同様にジャングルに足を踏みれたことはない。でも、ワインを飲めば脳内はウェルカム・トゥ・ザ・ジャングルである。ワインもすごいし人間の脳もすごいわ。
飲んでみると、はっはっはっは、超うまい。超トロピカル。「ピーチやパイナップル、 バナナやメロンといった」香りであると公式サイトにあるが、まさにそれ。なんで冬は畑が雪に覆われる北緯43度の北海道余市町のブドウとワインから、こんなに亜熱帯な感じのワインができるのか。どうなってんだこれ。ちなみに私はトロピカル系のジュースが苦手。なのにこれは好き好き大好き。どうなってんだこれ(2回目)。プチプチと弱めの泡も口のなかで楽しく、アルコール度数8%の軽やかさもあいまってあっさり飲み終えてしまった。
モンペ2020をこうして私は飲み、1本はそもそもの最初にドメーヌ・モンのワインを飲むきっかけをくれた知人に進呈し、もう1本はナチュラルワインに興味があるという友人のために保存しておくこととした。取り扱いのある酒販店等のブログを見ると、ドメーヌ・モンの本丸とも言える「ドン・グリ」の出荷は3月頃のようだ。次はその日を楽しみに待っている。
ドメーヌ・モンと青春時代
高校生の頃、私は当時ブリットポップという名前で呼ばれていたイギリスの音楽と、グランジとかオルタナティブとかメロコアとか呼ばれたアメリカの音楽が好きでバイト代の100%を輸入盤CDを買うことに費やしていた。地元の小さな輸入盤専門ショップは入荷量が少なく、ヤフオクもメルカリもない時代、それらのCDが買えるか買えないかは一期一会、つねに一発勝負だった。目の前にあるこのCDを買えば今月のバイト代は消滅する。腹が減っても売店でツイストドーナツを買うカネはなく、水でごまかすよりほかはなくなる。でも買う。買ったCDがどハズレで泣くことも多々あった。でもまた買う。棚に飾られたCDは輝いていて、それを手にすることには17歳の私にとって無上の価値があったからだ。
ドメーヌ・モンのワインを楽しみに待つとき、私は17歳のあの頃と同じ気分になれる。今年で高校26年生になる私だが、ワインはようやく2年生の青春真っ只中。楽しんでいきたいと思う次第だ。
ドメーヌ・モンのアイテムはシードル「モンシー」がネットで売られてました。
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2021年の「初買い」はワインくじでした。
2021年最初の運試し、ということで5500円税込のエノテカのトレージャーハンティング「赤」を購入してみました。特賞は通常価格11万円税抜きのシャトー・オー・ブリオン。ちなみに当選確率は1/3000! オスの三毛猫が生まれる確率が1/30000! 関係ないけど!https://t.co/eY3Lr8lDUU
— ヒマワイン (@hima_wine) 2021年1月1日