イタリア移民史とカリフォルニアワイン
在宅で仕事をしていたはずが、気がついたらアメリカにおけるイタリア移民史を調べていた。まるで山奥の一軒家で美女の饗応を受けていたはずが朝起きたら馬の糞を枕に寝ていた、みたいな話だが事実だ。おそらく昨夜飲んだワイン「カモミ・ディ・ロッソ」のせいである。
話は19世紀にさかのぼる。北部サルデーニャ王国を中心に、オーストリア・ハプスブルク君主国に対するイタリア独立戦争が勃発。1861年、イタリア王国が建国される。
ただ、サルーデニャ王国中心の統治体制だったため、イタリア南部や島嶼部の住民は冷遇される日々を送ることに。うーん、統一あるある。
日本では四民平等となり食い詰めた武士たちの不平不満が西南戦争を引き起こしたけれども困窮した南イタリアの人々は新天地・アメリカへ向かった。けっこうたくさん向かった。
結果、現在は人口全体の5.9%にあたる1780万人ほどのイタリア系移民が合衆国に暮らしており、新型コロナウイルス関連のニュースで目にする機会の多いニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモもイタリア系移民の子孫なんだとか。へー。
エンタメ業界に目をやれば、フランシス・フォード・コッポラにアル・パチーノにロバート・デ・ニーロにレオナルド・ディカプリオにフランク・シナトラに、と枚挙にいとまがない。イタリアの種馬こと映画『ロッキー』の主人公、ロッキー・バルボアもイタリア系移民の子孫。主演のシルヴェスター・スタローンも同じくで、子供の頃は虚弱体質で悩んでいたそうです。へ〜。
そしてなんといってもワイン界におけるイタリア系アメリカ人にはカリフォルニアワインの巨星ロバート・モンダヴィがいる。19世紀にイタリアが独立したことで、21世紀の僕はおいしいカリフォルニアワインが飲めている。ワインの味は歴史の味。
カモミ・ディ・ロッソはどんなワインか
さて、昨夜飲んだ「カモミ・ディ・ロッソ」は3人の現代イタリア人が夢を抱いてカリフォルニアにわたり、そして造り出したワイン。
CA’MOMIはモミの家って意味で、モミっていうのはもともとあったワイナリーの所有者の名前なんだとか。CA(カ)はCASA(家)のCA、なんですかね。
公式サイトによれば、ロッソ・ディ・カモミはカベルネ・ソーヴィニヨン、ジンファンデル、メルロー、プチシラーを使用。フレンチオーク樽で6カ月熟成しているのだとか。
プチシラー、あるいはプティ・シラーはカリフォルニアの特徴的な品種のひとつで、シラーとプールサンなる品種の交配種であるデュリフという品種と同一品種なんだとか。単一のワインもあるようなので、今度飲んでみる。
イタリア人が作るワインらしく、合う料理としてスパゲティカルボナーラ、マルゲリータピッツァなどが挙げられている。とはいえ、合わせたのは焼き鳥。スクーザ(イタリア語でサーセン)!
カモミ・ディ・ロッソはどんな味か
飲んでみるとこれがまあ本当にこんなおいしいものが税込1500円を切る値段(買い値は1298円!)で飲めていいのかよっていう味わい。新鮮な果実というよりも、フレッシュなレーズンっていう感じの甘苦い味。天気のいい日曜日の朝、木陰のテーブルでトーストにたっぷりのバターとロッソ・ディ・カモミを塗って食べたい。それでついでにロッソ・ディ・カモミを飲みたい。朝から。朝から飲んでいいのは正月だけであります。
これはカルボナーラに合う。ベーコンじゃなくてパンチェッタ、生クリームじゃなくて卵とチーズと黒胡椒だけで作るやつ。
カルボナーラはイタリア独立の前、自由と憲法制定を求めて結成された秘密結社・カルボナリに由来するとか。カルボナリが活動していた時代から200年。自由の国アメリカでイタリア人が作ったワインが目の前のグラスに入ってる液体なのかと考えると味わいもひとしお。つまみは焼き鳥だけど。