ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

シーグラス ピノ・ノワール。2000円台でおいしいとウワサのピノ・ノワールを飲んでみた。【SEAGLASS PINOT NOIR】

安くておいしいピノ・ノワールを探して

ピノ・ノワールっておいしいなあ、でもおいしいピノ・ノワールのは高いなあ、困るなあ、というワイン好きが100人いたら83人くらいは思いそう(あとの17人はお金持ちか金銭感覚がワイン愛に破壊された人)、なことを私は日々思っているので、つねにおいしくて値段が手頃なピノ・ノワールを探している。しかしまあそんなもんは美人で家庭的でやさしい女性を求めてます。結婚相手として。と言ってるみたいなもんでそれが簡単に見つかれば世の中に婚活サイトは存在しない。それに比べれば安うまピノ・ノワール探しのハードルは低いけれども簡単ではない。

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「シーグラス ピノ・ノワール」を飲みました。

わからないことは専門家に訊くのが一番なので、ツイッターで専門家の方に「3000円以下で買えるおいしいピノ・ノワールを教えてください」と尋ねたところご教示いただいたのが、先週飲んだシーグラス ピノ・ノワールである。かつて人類が魚と木の実を交換したように、2020年の我々は情報とお金を交換する。情報にワインがついてくるのでずいぶんお得だ。

シーグラス ピノ・ノワールとはどんなワインか?

シーグラスという音のイメージから「海藻かな? 土壌からコンブの化石が出たとか?」と思ったりしたのだがこれが大きな間違いで、シーグラスはSEAGLASS。海辺にある波で磨かれて丸みを帯びたガラスのことなんだそうだ。全然コンブじゃなかった。逆になんでコンブだと思ったのお前みたいになった。まさにOH! MYコンブだよ。やかましいよ。そもそも海藻を英語でいうとシーウィードだからな! ともかくシーグラス、子どもの頃に海で拾って宝箱に巻貝なんかと一緒にしまった類のやつだった。すごくいいブランド名で、この時点でもうなんか好きみたいになる。

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海辺で仲間と過ごす自分だけの時間。そのおともに、シーグラス。雑にいえばそんな感じの世界観が公式サイトでは提案されている。モノ消費からコト消費へみたいなことですねこれ。シーグラスが好きっていうか、シーグラスを飲んでる時間や場所、ともに飲む仲間が好きって感じですかね、俺の場合は。俺時間っていうか。みたいなことを言ってもらいたそうな感じがする。アメリカのワイン業界のブランディングマーケティングへの努力はいつも立派。

ブランドの正式名称はSEAGLASS&COなのだが、もちろんシーグラス株式会社みたいなものは存在せず、1948年の創業のトリンチェッロ・ファミリー・エステートが所有する50のグローバルブランドのうちのひとつなのだそうだ。スリーシーヴズとかジョエル・ゴットとかと同系列。大企業所有ブランドのコスパは総じて高い(代わりに個性が薄まりがちリスクがあるけど)ので、安心して飲めそうな気配。

シーグラス ピノ・ノワールとロスアラモス葡萄園

ワインの説明を見ると、ロスアラモス葡萄園で収穫したブドウをステンレスタンクで発酵後、小さなオーク樽で熟成させたとのこと。ブドウはもちろん100%ピノ・ノワール。Los alamos vinyardで検索すると、トップ表示されるのがオーボンクリマの公式サイト内のヴィンヤードカテゴリで、それによれば、オーボンクリマは最初同ヴィンヤード敷地内の小さな納屋だったんだとか。この畑のブドウは品質が良く、今はさらに改良が進んでいるそうな。つまりいい畑ってことですね。

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ワイン評価サイトのvivinoを見ると、このワインには5000件を超えるレビューがついていて、ざっとみたところそのほとんどが英語で書かれているから、アメリカでの人気具合がわかる。現地だとかなり安価に売られているようで、いい畑のブドウを使っているのに安いというところがシーグラスの良いところのようだ。いいじゃないの。期待が高まってきたのでいざ抜栓である。

シーグラス ピノ・ノワールを飲んでみた。

グラスに注ぐと竹とか青畳とかの青系植物(そんな言葉はない)の香りがフワリと漂っていい感じ。非常に落ち着く。4畳半の畳を張り替えたばかりの小部屋に光り取りの窓から差し込んだ光線が床の間の一輪挿しを照らしてるみたいな茶室系アロマ(そんな言葉はない)である。果実風呂のふたを開けました感じはあまりなく、カリフォルニアのピノ・ノワールって感じが意外としない。

どのサイトを見てもこのワインの特徴は果実味だと書いてあるけれど、飲んでみると意外とそんなド果実な感じじゃない気がする。高校通算50本塁打の10年に一人の強打者っていう選手がプロ入り後気がつけば中距離バッターに落ち着いてるみたいな、果実味を長打力に置き換えた場合にさほどマン振りしていない感じがこのワインからはするけどどうなんでしょうか。走攻守こと酸味、果実味、渋みのバランスが良い感じがするけれども。私のポンコツ舌で「これはフランス、アメリカ、どちらのピノ・ノワールでしょう」と問われたら悩んだ挙句に「一周回ってフランスッッ!」と回答して恥をさらしそうな気配が濃厚だ。

カリフォルニアのピノ・ノワールにはこういうタイプがあるんだな、とすごく興味深い思い。とはいえ「果実味が強い」とどの商品ページにも書いてあるため、マトモな舌の持ち主が飲めば「果実味の強い、典型的なカリフォルニアのピノ・ノワールですね」ってなるのかもしれない。まだまだ修行が足りませんなあ。