ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

キュヴェ セクレテ オーガニック シラー。1000円前後の自然派(?)シラーがすごかった

キュヴェ セクレテ オーガニック シラーを買ってみた

安くておいしいシラーをいつでも探しているので、d.A.ワイナリー(ドメーヌ・アストラック)の「キュヴェ セクレテ オーガニック シラー」を買ってみた。リアルワインガイドで旨安大賞を2020年に受賞し、同誌の表紙を飾ったというワイン。購入価格は1177円。安い。

さて、我が家のワインセラーは24本入りだったか32本入りだったか、ともかく小型だ。もう24本でも32本でもどちらでもいいんですよどうせ入んないんだから。どう考えても248本入りとかじゃないと根本的かつ永続的な問題解決には至らず、セラーからワインがはみだした状態がすっかり常態化している。私は、はみだしたワインと生きていく。

himawine.hatenablog.com

そんなはみだしたワインたちは冷蔵庫に送られ、冷蔵庫もはみだすとその辺に置かれるということになる。すると、自ずとどこが置き場所となるかによって所有しているワインにはヒエラルキーが生じる。
そこそこ高いワイン>セラー
ちょっといいやつ>冷蔵庫
安いやつ>そのへん
こんな感じだ。高いワイン(つっても5000円とかだけど)が我が家に来ると、お前は温泉旅館のスタッフの方かという勢いでセラーにご案内、ささっどうぞどうぞ奥の座敷へ……みたいになる一方、たまたまセラーに空きがあって1000円くらいの安いやつが暫定的に入ってたりしようものならどこから紛れ込んできたんだお前はッみたいな勢いでセラー外に追放されることになる。失・セラーだ。

キュヴェ セクレテ シラーを飲みました。

「キュヴェ セクレテ オーガニック シラー」もそんな感じでパラダイスロストの憂き目にあったワインなのだが、このワインは「SO2無添加」をかなり大々的に謳っていてボトルにも「No Sulphur」とシールが貼られているわけなんですよやべえ。SO2無添加のワインは冷温貯蔵しないとなんかとにかくいろいろやばい、みたいなことを見聞きするけれどもこの夏の暑さのなかで放置して大丈夫だったのだろうか。

 

キュヴェ セクレテ オーガニック シラーとジャン・クロード・マス

気になる中身の状態は後半で発表するとして、まずはワインについて調べていこう。生産者はd.A.ワイナリー&エステート。1862年に設立され400ヘクタールの規模を誇り、現在のオーナーは“南仏の安旨王”ジャン・クロード・マス。

ジャン・クロード・マスはドメーヌ・ポール・マスの現当主。ポールはジャン・クロードの父親で、ジャン・クロードの曽祖父であるオーギュスト・マスが1892年に9ヘクタールのブドウ畑を購入したのが歴史のはじまり。

ジャン・クロード・マスの領地(公式サイトより)

その後1934年にジャン・クロードの祖父であるレイモンが15ヘクタールを取得。54年ポールが120ヘクタールを取得……といったように畑を広げていき、現在は850ヘクタールもの畑を所有しているそうだ。さらにパートナー企業の畑が1500ヘクタールあるそうで、合計2300ヘクタール。東京ドーム500個弱分ですね全然ピンとこないけど。

ジャン・クロード・マスは「3歳の時、収穫の時期に母親から逃げ出し、2.5キロ走ってセラーにいる祖父に会いに行きました。この時、ワインへの興味と情熱が生まれた」というよくわかんないけどなんかすごい逸話を持つ人物大学では経済と広告を勉強していたそうで、イメージ的には父祖が築いた土地をベースにビジネスセンスを活かして事業を一気にスケールさせたみたいな感じのようだ。

 

キュヴェ セクレテ オーガニック シラーはどんなワインか?

キュヴェ・セクレテ シラーの公式ページは見つけられなかったのだが、どうやら品種はシラー100%のようだ。Amazonの商品ページによれば「樽熟成からくるバニラの芳醇な香り」がするとあるので樽熟成しているんだろうきっと。そしてSO2は無添加。ユーロリーフがラベルに見えるので有機栽培のブドウで造られていることもわかる。

「果実酒」ではなく「有機農産物加工酒類」表記

パッケージは“自然派”だが、情報が少ないのでこれを自然派と呼ぶべきかどうかはさっぱりわからない。一体どんな味なのか、いざ飲んでみよう。

 

キュヴェ セクレテ オーガニック シラーを飲んでみた

抜栓してみて驚いた。香りがすごい。お相撲さんが両手いっぱいにミックスベリー的なものを乗せ、気合い一閃握り潰したらこんな香りがするんじゃないかというくらいの果実の香りがグラスから立ち上る1000円台前半としては破格の香り量。SO2無添加ならではなのかどうなのか、かすかに自然派感のあるワイルド系の香りもする。

vivinoの評価は3.6。価格に対して高評価。



飲んでみても印象は変わらない。香りは豪華だが中身は空洞感のあるワインもあるなかで、液体の密度もきっちり高い。100%ブドウジュース感のある果実味があり、酸味は果実に土俵際まで追い込まれてはいるけれども徳俵に足をかけてなんとかしのぐのこったのこった状態。酸味、果実味にギリ負けてない。シラーならではのスパイス感もある。

 

キュヴェ セクレテ オーガニック シラー抜栓翌日の出来事

いや、これはすごいわ破格だわ、と思って半分ほどうまいうまいと飲んで、翌日さらに驚いた。初日の良さが消え失せた、とはいわないまでも、どうすかね、2割減くらいにはなっていたと思う。香りは弱まり、味わいの骨格は細くなっている。お相撲さんひと晩で激痩せ。え、なにがあった!?

なんていうか、「固いワインの逆」という印象だ。時間が経つほどに花開くというのではなく抜栓した瞬間がピーク。高校の10キロマラソン大会でスタートと同時に全力疾走して案の定2キロ地点くらいで陸上部にトップをゆずる野球部、みたいな絶対に爪痕を残すんだという刹那的なエネルギーを感じる。翌日パワーが落ちるといってもおいしくないことは全然ないのだが、やはりこれはプールサイドかなんかで開けて仲間と一緒にガブガブ飲みきっちゃうのが最適解なのだろう。

そうだ忘れてた。SO2無添加のこのワイン、私は思い切り夏の室温(物陰)で放置してしまったが、少なくとも変な味はしなかった。もしかしたらこの抜栓直後の全力疾走感には多少影響しているかもしれない。してないかもしれないけど。全体的には自然派感、あんまない。

というわけで意外とはじめてのクロード・マス体験だったのだった。南仏の安うま王、おそるべしである。