ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

「高畠醗泡 プリデムースデラウェア」壜内醗酵とはなにか? 山形県産スパークリングワインを飲んでみた

プロ野球の開幕を日本産スパークリングワインで祝いたい。選ぶべきは!?

2020年6月19日にプロ野球が3カ月遅れで開幕を迎えた。そして、広島カープファンである私の脳裏に開幕をワインでことほいだらどれだけ素晴らしいだろうかというアイデアがよぎったのは、まさにその日の午後のことだった。

しかし、一体プロ野球の開幕にふさわしいワインとはなんなのか。野球とワインのマリーアジュとはいかなるものなのか。パッと思いつくのはやはりシャンパーニュ。まっさらなマウンドから投手が投じる1球目、それに合わせてスポンと抜栓っていうのは6-4-3のダブルプレーばりにいい流れだがいかんせん芸がない。

リーガ・エスパニョーラの開幕でも美術展のオープニングでもマンションの竣工式でもなんなら大相撲の初日でも、ほぼすべてにシャンパーニュは合う。もっとこうなんつーんですかね、ニッポンのプロ野球ならでは感がほしいところ。となると日本ワインでしょう先日飲んだドメーヌ モンの「モンペ」がおいしかったこともあるしと、土砂降りの雨の中を近所のワインショップへと走った。狙うは日本ワイン、それもスパークリングワインだ。

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というわけで二店舗ほど周回。日本ワインで、かつやっぱりなんか国際品種でないもののほうが気分が出る気がするのでナイヤガラとかデラウェアとかで、食事をしながらだらだらナイターを見たいので甘口でなくて、先日の「モンペ」の余韻をもう一度味わいたいからできれば「濁り」が好ましい……とフィルターをかけていったら残ったのは1本しかなかった。高畠ワイナリーの「高畠醗泡 プリデムースデラウェア」がそれだ。価格は1834円。

「高畠醗泡 プリデムースデラウェア」はどんなワインか?

高畠ワイナリーは山形県に1990年に設立されたワイナリー。山形県といえばかつて私の好きな赤い帽子の野球チームの主砲を担った栗原健太中日ドラゴンズ一軍打撃コーチの出身県だし開幕戦を祝うのにピッタリだな! というほぼ言いがかりのようなロジックで自宅に連れ帰り、開幕までの数時間を利用してワインについて調べることとした。

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まず名称だ。「醗泡」という言葉がまず聞き覚えがなく、専門用語なのかなと検索窓にブチ混むと、結果はすべて高畠ワイナリー関連のものが表示される。どうやら、独自用語のようだ。では、prise de mousseとはなにか。これまた検索すると、フランス語のwikiにあたった。そこにはこう書いてある。

「発泡は、まだワインがスパークリングになるようにする段階です。泡を作るためのいくつかの方法があります。」うん、なに言ってるか全然わかんない。これはフランス語をグーグル翻訳したものだが、やはりここは山形のワイン。ニュアンスを山形ナイズすればわかるやもしれぬと「恋する方言変換」なるジェネレータに蹴り込んでみた。その結果がこれだ。
「発泡は、まだワインスパークリングになるようにする段階だ。泡作るだめのいぐづがの方法があります」うん、やっぱりわからない。

仏英辞典とかいろいろ駆使して残りは妄想で補填するとmousseは泡なので、prise de mousseはつまり発酵により泡を発生させることといった意味合いのようだ。つまり、醗泡=prise de mousseということっぽい。ボトルには「壜内発酵」とあるが、公式サイトによれば泡作るだめのいぐづがの方法のうちの瓶内二次発酵、つまりシャンパーニュ製法が採用されており、そのうえで、「滓(おり)を除く工程は行わず、酵母のにごりを残」すことで、“にごり”があるとしている。

高畠醗泡 プリデムースデラウェアを飲んでみた。

購入したショップの方いわく、そのような造りの結果「味わいは辛口なんですが、デラウェアだけに香りは甘口っていう感じです」とのこと。わかるようなわからないようなことが多いワインだが、まさにこれはペナントレースの先の読めない展開を思わせてプロ野球の開幕をセレブレートするのにふさわしいんだそうなんだと思い込むことにする。ちなみに上記店員さんのコメントを山形ナイズすると「味わいは辛口なんだげんと、デラウェアだげに香りは甘口っていう感ずだ」となるそうだ。山形弁コメントのほうがおいしそうに聞こえるから言葉って不思議ですよね。

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「高畠醗泡 プリデムースデラウェア」を飲んでみました。

さて、そんな感じでキャッキャと一人で楽しんでいると、そのときが訪れる。横浜DeNAベイスターズの先発はセ・リーグ最強左腕・今永昇太投手。迎え撃つ我らがカープの一番打者は新外国人として60年ぶりに開幕リードオフマンの重責を担うホセ・ピレラ外野手。左腕から放たれる投球とタイミングを揃えてプレイボール! とばかりに抜栓。毎年この瞬間は特別だが今年はワインもあってなお最高の気分。野球とワインがあればあとはなにが必要だろう? 強いていえば酸素? とかそれくらいの心境に余裕でなれる。

この気分をさらに高めるために必要なのは贔屓チームの勝利、そしてワインの味わいであろう。今永投手との対戦は昨シーズン0勝5敗で「ギャフン」以外に言葉がなく、勝利への道のりは険しいものの、ワインの味わいはすぐにたしかめることができるのでグラスに注いでみると、オレンジとまではいかないまでもかなり濃い色で、なるほど向こうが透けないくらいの濁り具合。

「グラスに注いだ瞬時から甘い蜜のような香りが立ってきます。口に含むと優しく、クリーミーな泡が口いっぱいに広がり、酵母由来のトーストしたパンのような香りと味わい、柑橘系の果物やシソの葉のような様々な味わいが交差します。」

と公式サイトにあるが、実際に嗅ぐと書いてある通りの甘い蜜のような香りに桃やラ・フランスとかの香りも混じっている気がしたんだけどおそらくそれは山形県のイメージ由来。香りから立ち上がるまさかの“県”要素。さまざまな果実の香りが交錯する様はさながら果実の芋煮……と寝言をいいつつ飲んでみると、なるほど香りは甘いが味は辛口っていう言葉がまさにその通りの味がする。すごく変則的なフォームだけれども投げる球はオーソドックスな中継ぎ四番手投手的味わい。日本ワイン、濁り、デラウェア、とか私にとっては目新しい要素だらけだけど、ふつうに普段飲みに良さそうな感じだった。

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vivinoの点数は3.4点。「デラウェアらしい」というコメント多数。

ところで開幕戦は先発・大瀬良大地投手が9回1失点の好投を見せ、打っては3打数2安打1本塁打3打点と高校野球のエースで4番かよアンタ、っていう活躍を見せてカープが見事に緒戦を勝利で飾った。めでたい。宮島さんの神主が、おみくじひいて申すには、今日もカープの勝ちであります。というわけで「高畠醗泡 プリデムースデラウェア」は私にとって文字通りの勝利の美酒となったのであった。

最後に、「おいしいワイン」を山形弁でいうと「んまぇワイン」ってなるそうです。発音ができない。