シャブリ1級畑セットを買ってみた
きっかけはルイ・ジャドだ。
ほんの1、2年前、ブルゴーニュワインが今ほど高騰していないころ、Amazonのセールでルイ・ジャドの白ワインセットを格安で入手した際、抜群に美味しいと感じたのが「シャブリ シャペル・オー・ルー」だった。
シャブリはさわやかすっきりミネラル、みたいなイメージを覆す厚みがあってふくよかなシャルドネ。これがとっても気に入ったのだった。
コート・ドールのワインが高騰するなか、シャブリはブルゴーニュのワインのなかで謎の格安感がある。しかも気候変動の影響で北の産地が総じて注目されるなか、シャブリはブルゴーニュ最北の産地だ。個人的には「今こそシャブリだぜ」みたいな機運が高まっている。
そんななか、ヴェリタスでシャブリ1級畑4本セットが1万円ちょっとで売っていたので渡りに船とばかりに買ったのだがこれが素晴らしかったのでレビューしたい。
シャブリ1級畑4本セットの中身
セットに入っていたのは以下の4本。
・ドメーヌ・デ・キャトルシュマン シャブリ1級畑 フルショーム(単品価格:3880円)
・ドメーヌ・ティエリー・モット シャブリ1級畑 ヴォークパン(単品価格:3240円)
・ドメーヌ・デ・ラ・トゥール シャブリ1級畑 コート・ド・ジュアン(参考価格:2990円)
・ダンプ・フレール シャブリ1級畑 フルショーム(単品価格:3280円)
結果的に、どれも果実味たっぷりかつエレガントな酸も兼ね備えたおいしいシャルドネだったのだが、このように果実のボリュームがあるスタイルは最近のトレンドのようだ。
麻井宇介の『ワインづくりの思想』を参考に歴史的経緯を記すと、シャブリはフィロキセラ禍だのなんだので400ヘクタールまで畑を減らす。それが70年代に1000ヘクタール、90年に3440ヘクタールと増反していく。20世紀に急激に畑を増やしたことで、フランス国内でもっとも早くステンレスタンクが普及していった。結果、それが樽の影響のないピュアでクリーンなシャルドネのスタイルを生み、それがシャブリのスタイルとして世界的に認知されていったのだ
そして20世紀後半からはふたたび樽を使う生産者(前掲書によれば『酒質の複雑さを重く見る立場の生産者』)が増え始める。
wikiによれば、それに対し「『伝統主義』のワインメーカーは、オークの使用を『シャブリ・スタイル』やテロワールに反するものとして否定」するとあるが、そもそもステンレスタンクって伝統的なんだっけ? って気もする不思議な状況が生まれたようだ。
「シャブリのアイデンティティよりも、つくり手のアイデンティティが濃厚になりつつある」と2001年の時点で麻井宇介は指摘している。
近年では気候変動の影響もあり、シャブリは総じて果実味豊かで丸みを帯びたスタイルに、つまりコート・ドール的なスタイルに近づいているみたい。私はおいしいワインが飲めればなんでもいいという日和見主義的おいしさ第一主義者なので味が良ければあとはなんでも良い。生産者のみなさんがそれぞれの思想に基づいて造ったものを我は飲むのみ。
シャブリ1級畑4本セットの味わい
ドメーヌ・デ・キャトルシュマンの「シャブリ1級畑 フルショーム」
それでは一本ずつ飲んでいこう。一番最初に飲んだドメーヌ・デ・キャトルシュマンの「シャブリ1級畑 フルショーム」。これは公式サイトに「醸造のすべてをステンレスタンクで行う」と明記してある生産者。
なのだが、飲んでみると思わず言いたくなるはずだ。「ほんとかよ」と。蜜のニュアンスがたっぷりとあってトロピカル感もある。バタークリームのような濃厚さまで感じられてしまうのだ。これは私の大好物の濃エレガント。
樽発酵ではないけれども樽熟成だったりはするのだろうか……? もし樽を使っていなくてこれだとするならば、1級畑・フルショームおそるべしだ。
ドメーヌ・ティエリー・モットの「シャブリ1級畑 ヴォークパン」
その感覚は2本目、ドメーヌ・ティエリー・モットの「シャブリ1級畑 ヴォークパン」で補強される。これはトロピカル感はさほどないが蜜感は一本目以上にあり、樽感っていうかもうカヌレ感まで行ってると思ったのだがなんと樽の使用はなし。マジかっ。
商品説明には「典型的なシャブリのスタイル」って書いてあるマジか。1級畑・ヴォークパンおそるべ(略)。
ドメーヌ・デ・ラ・トゥール「シャブリ1級畑 コート・ド・ジュアン」
3本目、ドメーヌ・デ・ラ・トゥールの「シャブリ1級畑 コート・ド・ジュアン」にもハチミツを温めたような果実の厚みがある。残念ながら日本語販売ページにも、生産者公式サイトにも情報はない。樽なのか、樽じゃないのか。もうどっちでもいいかおいしかったから。
ダンプ・フレール「シャブリ1級畑 フルショーム」
4本目のダンプ・フレール シャブリ1級畑 フルショームは唯一樽熟成であることが確認できたワインだが、なるほど、樽がかかるとバニラ感が増し、トロピカル感が下がる。トースト感が上がり、蜜感はほんの少し下がる。
同一地域のワインを飲み比べることで樽のありなしがワインにどう影響するのかもより理解できるような気がする。私が「樽」だと思っていたの、「果実」ですね。どうやら。
にしてもおそるべきはシャブリ一級畑だ。なに飲んでもうまい。
というわけでこのシャブリ4本セットは2023年に買ったなかでベストセットだったのだった。シャブリ熱、まだしばらく続きそうな気配する。
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