ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

リースリングのカリスマが造るピノ・ノワール! 「ヴィラ ヴォルフ シュペートブルグンダー」はどんな味?

葡萄畑ココスで「ヴィラ ヴォルフ シュペートブルグンダー」を買った

好きなショップのひとつ、葡萄畑ココスの方から「ブログのテーマである3000円以下の美味しいピノでご提案があります」という連絡をいただいたのが先月のこと、わざわざ連絡してくれるんだからおいしいのだろうきっと、ということで少し時間を置いて買ってみたのが今回飲んだヴィラ ヴォルフ シュペートブルグンダーだ。

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ヴィラ ヴォルフ シュペートブルグンダーを飲みました。

お値段は1870円とお手ごろ。葡萄畑ココスはなんでも安売り! 激安! みたいなことがウリではなく、ワインそのもの、あるいは生産者にストーリーがある個性的なワインを売っている印象のあるショップ。果たしてこのワインはどんなワインなのだろうか? ガッツリ調査していこう。
(ここからしばらく調査パートなので、『で、味はどうなの?』だけ教えろ、タコ、という人は飛ばして読んでください)

 

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ヴィラ ヴォルフとリースリングのカリスマ、エルンスト・ローゼン

ヴィラ ヴォルフの公式サイトを訪問して調べてみると、キーマンとなるのはエルンスト・ローゼンなる人物のようだ。

ローゼンさんはモーゼルの生産者ドクター・ローゼンの当主で、リースリングのカリスマと呼ばれているという人物。輸入元のヘレンベルガー・ホーフのサイトに詳しく紹介されているのでそちらをみると、ローゼンさんはもともとは父の後を継ぐために考古学の研究をやめ、ワイン界に身を投じたという長髪をソバージュにした紳士。カリスマ的人物、長髪をソバージュにしがち。

で、ワイナリーを引き継ぐと品質を高めるために収量を半分にし、化学肥料の使用をやめ……みたいな改革を進めた結果どうなったかっていうと「古くからの怠惰なスタッフは全員辞めることに。」って書いてあるな。やってんなローゼンさん。池井戸潤原作でドラマ化しそうだな。主人公は香川照之で。ともかくそういった改革により品質は高まり数々の栄冠に輝いてやがてカリスマと呼ばれるように、みたいなことのようだ。

 

ヴィラ ヴォルフとリースリングのカリスマ、エルンスト・ローゼン

ヴィラ ヴォルフは、モーゼルが本拠地のローゼンさんががやや南のファルツにある「J.L.ヴォルフ醸造所」を買い上げ、そこで造るワイン。ドクター・ローゼンの公式オンラインショップを見てみると、ロゼが1種類あってあとは全部白ワイン。それもほとんどがリースリング

なのだが、ヴィラ ヴォルフのワインはリースリングだけでなく、シュペートブルグンダーもあり、白ではシャルドネソーヴィニヨン・ブランもラインナップされている。ワインの名前もブルゴーニュ方式で、表ラベルには生産者、ヴィンテージ、畑の場所、品種しか書かないなど、ブルゴーニュ的なことをやろうとしているみたいなことが公式サイトには書いてある。

 

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本拠地モーゼルリースリング特化、ファルツで品種いろいろ、みたいにしてドイツワイン補完計画してる感じのようだ。なんか、カリスマワインメーカーでありカリスマ経営者って感じがするなローゼンさん。

もうひとつ興味深い話があったので紹介すると、なんでも1828年当時この地を領有していたバイエルン王国政府は、ブルゴーニュのグルン・クリュ制度のように地税に基づいてブドウ畑を分類したんだそうだ。で、歴史ロマンを感じるのは「その時に最高の評価を受けた畑」はやっぱり今でも素晴らしいんだそう。ヴィラ ヴォルフはその古代の知識を指針にワインを造っているんだそうだ。さ元考古学者。男はみんなロマンチックな愚か者である。

 

ヴィラ・ヴォルフのワイン4つの格付けとシュペートブルグンダー

さて、ヴィラ・ヴォルフのワインは独自に4段階に格付けされていて、ドイツ語なので翻訳してもニュアンスが汲み取れないのだが、たぶん間違ってるウルトラ意訳で強引に腹落ちさせようとすると、その格付けは上から、
・第一級格付け
・第二級格付け
・村名格

・ヴァラエタル
みたいになるようだ。でもって今回飲むのは言うまでもなく一番下のヴァラエタルワインです。

公式ショップをみると、このワインは1本9ユーロだから1163円くらい。飲んだのは2018ヴィンテージででサイトに情報が載ってるのは2017ヴィンテージだけど、50%はスチールタンク、50%は使用済みのフランス製の樽で12〜15カ月熟成させるとある。アルコール度数は12.5%。「一部は小樽での長期熟成により、ブルゴーニュ特有のエレガンスとシルクのような質感を醸し出しています」って書いてあってブルゴーニュめっちゃ意識してるな!

 

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ヴィラ ヴォルフ シュペートブルグンダーを飲んでみた

さて、いざグラスに注いで飲んでみると、まず色がキレイに向こう側が透けるルビー色でとても良い。そして1000円台なのにしっかりと香りがある。なんすかねこれ。スミレの花とか、あと竹みたいなスッキリ系の、青っぽい植物の凛とした香りがする。

時代劇で旅の侍が峠で路傍の岩かなんかに腰掛け、懐から竹の水筒を取り出して喉の渇きを癒すみたいなシーンがよくあるが、その水筒にピノ・ノワールが入っていたらこんな味だろうな、っていう味だ。ミネラリティならぬ竹ニティ的なスッキリ感がある。

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vivinoの点数は3.6点。中庸の良さがある。

「うまい! 死ぬ!」みたいな感じではないんだけど、ちゃんとキチンとおいしい。1000円台でこんなにピノ・ノワールらしさがあっておいしいワインってあったっけっていうくらい。甘さ酸っぱさ渋さがどれも良い意味で中庸なので食卓に乗ってる料理のほぼすべてとなんとなく合ってくれた。なんならポン酢にまで合う万能具合。

私の好きな赤い帽子の野球チーム・広島東洋カープの投手にたとえれば、数年前、中継ぎロングや谷間の先発を務めていたころの九里亜蓮投手的な魅力だ。傑出した決め球はないものの、どんな場面でもマウンドを託すことができる。ヴィラ ヴォルフ シュペートブルグンダーはそんなワインですカープファン以外誰も共感できないと思うけど。

戦場を選ばないワイン。またなにかの機会に味わいたいと思えるワインだった。