「おれたちのプルミエ・クリュ」を探して。
本ブログでは「おれたちのプルミエ・クリュ」という企画を勝手にやっている。意味するところは簡単だ。3000円台かそれ以下の価格で買える財布にやさしいブルゴーニュのプルミエ・クリュ、それが「おれたちのプルミエ・クリュ」である。ちなみに「おれたち」の定義はないが、地球上に住んでいる庭から原油が湧いていないタイプのワイン好きの人類の総称だと思っていただければ良い。
ためしに「ブルゴーニュ プルミエ・クリュ」と検索クエリに入力し、ショッピング検索を行ってみていただきたい。赤ワインでいえば5000〜10000円くらいがボリュームゾーンであることがなんとなくわかるはずだ。高い。気軽に飲めない。
しかしながらできることならたまにはブルゴーニュのそれも一級畑のワインを味わってみたいと思うのが人情だ。なんとかなんないかなあ、マジで、と調べたところ、ジヴリ、メルキュレ、マランジュといった相対的マイナー産地であれば、3000円台、下手すると2000円台で一級畑のブドウで造られたワインを味わうことができることがわかった。普段飲んでる2000円台から1000円札1枚足して手に入るならそんなもん飲むしかないじゃない。YouがCanできるならDoしちゃいなよの精神である。手が届くのであれば、手を伸ばすべきだ。
マランジェのプルミエ・クリュとは?
というわけで何本か買ったうちの1本が、ヴァンサン・エ・ソフィー・モレ マランジュ プルミエ・クリュ ラ・フュシエール ルージュ2017という長い名前のワインだ。マランジュのラ ・フュシエールっていう畑のブドウを使ってるわけですね。
では、マランジュってのはどんな場所なのか。「Maranges wine」のwikipediaを調べてみた。
【1】コート・ド ・ボーヌの3つの村で造られる。
【2】畑は170.82ヘクタール。
【3】生産量は赤95%、白5%。
【4】グラン・クリュの畑はない
【5】プルミエ ・クリュは7つある
なるほど。地理的にはコート・ド ・ボーヌの中心地、ボーヌの南。ムルソーがあって、ピュリニー・モンラッシェがあって、シャサーニュ・モンラッシェがあって、サントネイがあって、そのお隣がマランジュだ。
マランジュに行ってみよう(Googleマップで)!
百聞は一見にしかずなので、現地に行ってみることにしよう。maranges la fussiereとAOC名+畑名で地図を検索してみると、おお、デーズ・レ・マランジュ村にフュシエール通りってのがある。てことはこの辺りがフュシエールの畑ってことになるんじゃないですかね常識的に考えて。
というわけでストリートビューに切り替えてみる。いけっ、ペグマン(人型アイコン)!
おおっ、ここが……まさしくフュシエール・プルミエ・クリュ!(違う可能性があります)
素人目にはただのブドウ畑にしか見えないけど、逆サイドから畑を眺めるとなるほど傾斜地の中腹でいかにもいい感じ。
うーん、いいな。まさしくプルミエ違う可能性があります。
今日おれは、この畑で採れたブドウで造ったワインを飲むのか……! 違う可能性があるけどいいのだ。信じる心が一級畑。なにを言っているか自分でもわかんないけど。
ヴァンサン・エ・ソフィー・モレイはどんな生産者か?
生産者の情報は(公式サイトが貧弱なので)輸入元のラック・コーポレーションに頼ってしまおう。ヴァンサン・モレイはシャサーニュ・モンラッシェで名醸造家として知られたベルナール・モレイの息子。そのヴァンサンがサントネイ出身の妻・ソフィーと結婚して運営するドメーヌがヴァンサン・エ・ソフィー・モレイだ。
住所を入力してみると、なるほどシャサーニュ・モンラッシェ村がヒットした。ここからマランジュは土地勘ないけど「クルマですぐ」っぽい感じがする。
製法は輸入元の説明文をコピペ。
赤ワインは無除梗の全房醸造。50%新樽を用いて14ヶ月熟成させるが、たっぷりした果実味が前面に押し出され、タンニンも十分に溶け込み柔らかい。
だそうだ。たっぷりした果実味が前面に押し出されてるのいいな。ヴィンテージは2017。ヴィンテージチャートを調べると92とか93とかって点数が並び、これは「まずまず」みたいな評価であってんのかな。わからないからもう飲んでしまおう。
ヴァンサン・エ・ソフィー・モレ マランジェ プルミエ・クリュ ラ・フュシエール ルージュ2017を飲んでみた
というわけで、プルミエ・クリュをお迎えするしってことで近所のイタリアンで羊の赤ワインヴィネガー煮をテイクアウト。体勢を整えて飲んでみることとした。色はわりと濃い目の赤紫色。意外と濃い。でもって、飲んでみるとこれが非常にわかりやすくおいしい。果実味がかなりはっきり感じられて、なんていうか攻略難易度がすごく低い味がする。紛れもなくたっぷりとした果実味が前面に押し出されている。こういうブルゴーニュワインもあるんだなー。
とはいえ香りは複雑で、ブドウの木を燃やしたあとの消し炭みたいな、ブドウの木を燃やしたあとの消し炭の香りを私はかいがことがないけれども、そんな温かみのある香りがする。
これが羊の赤ワインヴィネガー煮と思わずテーブルを立ってこの料理を作ったシェフのいる方角、次いでフランス・ブルゴーニュ地方の方角を向いてスタンディングオベーションし、その後ブルゴーニュを向いたままワインを飲み干す恵方飲みしたくなるほど合う。ヴィネガーの酸味と羊のワイルドな香り、煮詰まった玉ねぎの甘味でワイン自体の味のボリュームが巨大化したような印象を受ける。うはー、おいしい。
いいワインの常なのか、時間が経つにつれてどんどんワインが元気になっていく感じで、酸味も、渋みも、果実味もさらにパワーアップしてくる。これはプルミエ・クリュだからおいしいのか、造り手が上手なのか、両方なのか、たまたまなのか、私の経験値ではわからない。ただともかく、「この1本」はおいしかった。
これで「おれたちのプルミエ・クリュ」は今のところ2打数2安打。次なる1本も非常に楽しみになってきたぞー!