ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

ドメーヌ・タカヒコ「ナナツモリ」も! “北海道ワイン試飲会”に行ってきた。

北海道ワインとナナツモリ試飲会」に参加してきた

少し前の話だが、オリンピック開催に沸く国立競技場すぐそばのワインショップ・ウィルトスで開催された「北海道ワインとナナツモリ試飲会」に参加してきた。

f:id:ichibanboshimomojiro:20210807072933j:plain

ウィルトスで北海道ワインの一般向け試飲会に参加してきました。

この日試飲できたワインは15種類。今回の試飲会を一言でいえば「どれもおいしかったですおわり。」ということになる。15種類もあれば大抵は味が好みに合わないもの、あるいは状態の悪いものなどが紛れていそうなものだが、本当にどれもこれもおいしかった。北海道ワインのクオリティ恐るべしとしか言いようがないので怒涛の15種類全紹介していきたい。

 

リタファーム&ワイナリー「農家のシードル」

まず飲んだのが私の推し自治体・余市にあってスパークリングワインづくりに特化したワイナリーのシードル。

f:id:ichibanboshimomojiro:20210806172123j:plain

リタファーム&ワイナリー「農家のシードル」

正直なところを書くと今まで私はシードルをおいしいと思ったことが一度もなかったのだがこれは非常においしかった。シードルが苦手なのは原料がリンゴのわりにリンゴ感がないというのがその理由だったのだがこれはリンゴ感がちゃんとあってかつジュース感がないのが良かった。これはいいワイン。じゃなかったシードル。

 

オサワイナリー「ヨイヨイアワー」

自社畑のナイアガラを使った白泡で、2018年からはじめたという新しいキュヴェ。ナイアガラ主体にツヴァイゲルトレーベをブレンドしたってだけあって酸味が前に出つつもコクもあっておいしい。ナイアガラならではのゴマみたいな風味もあって。

f:id:ichibanboshimomojiro:20210806172152j:plain

オサワイナリー「ヨイヨイアワー」

ちなみにオサワイナリーも余市町の生産者。余市のワインにはハズレがない。赤泡っぽいボトルだけど白泡だ。

 

タキザワワイナリー「旅路ロゼ サンスーフルアジュテ」

北海道の固有品種である「旅路」を使った北海道三笠市の生産者、タキザワワイナリーのロゼ泡。

f:id:ichibanboshimomojiro:20210806172224j:plain

タキザワワイナリー「旅路ロゼ サンスーフルアジュテ スパークリングロゼ」

味の主体は酸味で、梅みたいな甘酸っぱい感じでこれも非常においしい。以上、この日試飲した泡はすべておいしかった。夏は泡ですね。

 

ドメーヌ・ユイ「T1+4 BLANC PETS NOBLE」

スパークリングワインをリリースしてきたドメーヌ・ユイがはじめてスティルをつくったというのがこのワイン。品種はデラウェア79%、キャンベルアーリー21%。デラウェア感があまりないというか、なんか醸造用ブドウで造ったワインみたいだなーと思ったら、タネをなくすジベレリン処理を行っておらず、皮やタネの比率が高いため「ヴィニフェラ的な味わい」で、さらに「シャルドネを意識して」新樽で醸造しているんだそうだ。なるほどなー。

f:id:ichibanboshimomojiro:20210806172726j:plain

ドメーヌ・ユイ「T1+4 BLANC PETS NOBLE」

コロナ禍の影響で収穫が遅れたことにより貴腐果も多数混じっているとか。いろいろと話題の多い1本だった。

himawine.hatenablog.com

 

ドメーヌ・レゾン「オレンジワイン」

山梨産の甲州90%と自園のピノ・グリを7%、ピノブランを3%ブランドしたというワイン。甲州単独でないだけにサッパリだけじゃない奥行きがあっておいしい。

f:id:ichibanboshimomojiro:20210806172816j:plain

ドメーヌ・レゾン「オレンジワイン」

食卓で食事と一緒に楽しんで真価を発揮するタイプという印象を受けた。税抜き1000円台とコストパフォーマンスが高い1本。 

 

オサワイナリー「TABI」

TABIという名前のとおりこれまた「旅路」で造られたワイン。旅路が当たり前のように登場するのが北海道ワイン試飲会のすさまじいところである。参加されている方々も猛者揃いなので「うん、旅路らしいね」みたいな会話をされているのすごい。「ポカリうまいよね」みたいなノリで「旅路うまいよね」みたいな会話が繰り広げられる、ここがTOKYO2021である。

f:id:ichibanboshimomojiro:20210806172959j:plain

オサワイナリー「TABI」

このワイン、酸味、甘みにほんの少しのスパイシーさや苦味が加わる味の方向性が「ガリ(寿司屋の)っぽいな」というのが第一印象だったのだが、なんと寿司との相性を追求した白ワインなのだそうだ。こりゃ合いそう。 

 

タキザワワイナリー「旅路サンスーフルアジュテ」

またしても旅路だが、こちらは酸がスッキリしたナチュラルワイン感のある味わい。

f:id:ichibanboshimomojiro:20210807071743j:plain

タキザワワイナリー「旅路サンスーフルアジュテ」

旅路の品種特徴がまだ全然つかめていないのだが、共通しているのはさわやかな酸味だろうか。リースリングとかにも通じるスッキリした酸で、貝料理とかと合わせたらおいしそうだなーという味わいだった。

himawine.hatenablog.com

 

さっぽろ藤野ワイナリー「ナカイブラン」

今年別キュヴェを飲んでめちゃくちゃおいしかった(今年ベスト級)さっぽろ藤野ワイナリーの「ナカイブラン」は北海道余市町のドメーヌ・タカヒコやドメーヌ・モンがある登町の中井観光農園のケルナーをつかったワイン。良年だったという2019年ヴィンテージだ。

f:id:ichibanboshimomojiro:20210807072200j:plain

さっぽろ藤野ワイナリー「ナカイブラン」

非常に香りが良く、味わいはすっぱ甘おいしい。ケルナーっていう品種はこんなにおいしいのか! という驚きがあったのだった。大変にお勧め。

 

平川ワイナリー「ブラン・ド・ヨイチ」

生産者がアルザスでソムリエをしていた頃、肉にも白ワインを合わせることに感銘を受け、そのようなワインを余市で追求したというワイン。これはもう完全に「アルザスあたりのいいワインですよね」としか言いようがないクオリティ。平川ワイナリーすごい。

f:id:ichibanboshimomojiro:20210807072312j:plain

平川ワイナリー「ブラン・ド・ヨイチ」

このワインを試飲したところ、「まだちょっと固いですね」とスタッフの方が謎のつぼ(Birdy『デキャンターDC700』)でデキャンタージュしてくれた。

 

f:id:ichibanboshimomojiro:20210807081909j:plain

謎のつぼでデキャンタージュするの図。短時間で効果を発揮するのがウリの商品らしくほんとに短時間で味わいがガラッと変わっていた。

それを会の後半に再度飲んだのだが、なるほど香りのボリュームが増し、味わいも広がって別物とは言わないまでも、全然違う印象を受けた。基本はデキャンタージュしたほうがおいしいと思うけど、最初の少し冷たい印象の味わいも好きだったのだった。

 

あいざわ農園相澤ワイナリー「龍之介」

珍しいヤマブドウ系の品種「山幸(やまさち)」を使ったワイン。品種は山幸、名前は龍之介、そしてスティルのロゼという印象の強いワインだがなるほど野趣あふれる味、という印象を受けた。

f:id:ichibanboshimomojiro:20210807072408j:plain

あいざわ農園相澤ワイナリー「龍之介」

この「山幸」、今年国際品種として認定されたそうなので、参加者のみなさんいわく「(ソムリエ等の)試験に出そう」とのこと。みなさん、ここ試験に出るとこですよ!

 

ドメーヌ・ユイ「T3+5」ロゼ

キャンベルアーリーのブランドノワールと、同じキャンベルアーリーの赤ワインの、yろい味や香りが濃いタンクの下半分部分をブレンドさせたという珍しい造り方な感じがするロゼ。

f:id:ichibanboshimomojiro:20210807072504j:plain

ドメーヌ・ユイ「T3+5」ロゼ

 甘くないファンタグレープみたいな印象で、甘酸っぱい印象の香りにドライな味わいで美味い。ドメーヌ・ユイのワインは味の方向性が好きな感じがします。

 

多田農園「ピノ・ノワール」(左)と「田園ルージュES」(右)

元々はニンジン農家だったという上富良野の多田農園。2016年に本格的にワイン事業に乗り出したのだそうだ。そのピノ・ノワールは以前試飲会で飲んだことがあったのだが、今回そのときよりおいしく感じた。

himawine.hatenablog.com

本当に短期間だけど熟成が進んだのか、気候と合っていたのか、他のワインとの組み合わせの妙なのかなんなのか、ワインはこういうところも面白い。 

f:id:ichibanboshimomojiro:20210807072616j:plain

多田農園「ピノ・ノワール」(左)と「田園ルージュES」(右)

田園ルージュのほうはピノ・ノワール55%、メルロー43%、カベルネソーヴィニヨン2%のブレンド。スッキリとしたシソみたいなニュアンスがあって暑い日にもスイスイ飲めそうなおいしい赤ワインだった。

 

ドメーヌ・タカヒコ「ナナツモリ ピノ・ノワール

さて、ここまでで通常の試飲は終了。最後に2杯1000円で試飲したのが、ドメーヌ・タカヒコの「ナナツモリ」とさっぽろ藤野ワイナリーの「バッカス」だ。

f:id:ichibanboshimomojiro:20210807072747j:plain

ドメーヌ・タカヒコ「ナナツモリ ピノ・ノワール

ちなみに「ナナツモリ」は基本SO2無添加らしいのだが、一部SO2を添加したものもあるのだそうだ。参加者の方曰く、その見分けからは「裏ラベルに家紋の透かしがあればSO2無添加」とのこと。マジで1名(私)を除いて猛者しか集ってないなこの会。なのにフレンドリーな雰囲気なんです。

f:id:ichibanboshimomojiro:20210807110748j:plain

裏ラベルに家紋の「透かし」があるのがSO2無添加のキュヴェだそうです。

さてナナツモリはやはりさすがのおいしさ。飲んだのは前日に抜栓し、すぐにコルクを差し直したという状態の2019ヴィンテージだったが、ピノ・ノワールらしい甘酸っぱさのなかに土っぽさ、そしてはっきりとした松茸の土瓶蒸しのような旨味があった。生産者コメントには「是非、抜栓は2022年1月まで待って頂きたい」と書いてあるけれど、十分においしい。

贅沢にも、この前日抜栓のボトルとその日その場で開けたボトルの中身を(ごく少量だが)飲み比べることもできたのだが、開けた瞬間のやつは松茸感↓フレッシュ感↑でおいしかったのだった。 

himawine.hatenablog.com 

さっぽろ藤野ワイナリー「バッカス(2017)」

最後は今回の試飲会を経てすっかり私の推し生産者となったさっぽろ藤野ワイナリーの「バッカス」だ。ヴィンテージは2017で、一部貴腐化したブドウを使っているというだけあってほんのり甘い。

f:id:ichibanboshimomojiro:20210807072856j:plain

さっぽろ藤野ワイナリー「バッカス(2017)」

最後の最後でこれが私の今日イチだった。甘爽やかで、これを甘露というんじゃないかという味。子供のころ絵本で読んだ『養老の滝』に出てくる酒、これはこの酒なんじゃないかというナチュラルな甘味があって無限に飲んでいられる気がする。しかしながらこれ残念ながら完売だったのだった。無念。試飲だけでもできてよかった。

himawine.hatenablog.com

ワインオリンピックの金メダル筆頭候補はそりゃまあフランスか、あるいはイタリアか。メダル争いはスペイン、ドイツ、アメリカあたりが有力選手として、次いでオーストラリアにチリ……ダークホースに南アフリカといったところだろうか。しかし、今日飲んだワインのクオリティを考えるに、私が死ぬまでの間に日本ワインもメダル争いに加わることができるのでは……?

帰り道、国立競技場の偉容を眺めながら、そんなことを思ったのだった。そもそもワインオリンピックがなかった。

himawine.hatenablog.com