「よしや」で売ってた「ホワイトボックス ヤラヴァレー シャルドネ」の謎
「よしや」というスーパーがある。本社は東京都板橋区中板橋で、板橋を中心に12店舗を出店している東京ローカルのスーパーなのだがこのスーパー、ワイン(日本酒も)の品揃えがちょっと異様に充実している。
普通のスーパーならば棚の一部にワインが並んでいる程度が当たり前だと思うが、私がよく行く店舗の場合、なんならセラー的な特殊な一角がワインに割り当てられている。公式サイトを見ると、本部に二人、店舗に一人、ソムリエ資格を持つスタッフもおられるようだ。傘下には有限会社大雅というワイン輸入専門商社まで抱えている。「よしや(正確にはSainE よしや)」という素朴な屋号から想像できないレベルでワインにガチ。それがよしやだ。
さて、そんなよしやで面白いワインが売られていたので買った。オーストラリアはスチュアート・ワインズの「ホワイトボックス ヤラヴァレー シャルドネ」だ。お値段1000円台後半。で、これなぜか2004年ヴィンテージなんです。
生産者のサイトに掲載されているのは2017ヴィンテージ。その価格は24.5オーストラリアドルで、日本円換算約2062円。「よしや」で売られていた2004ヴィンテージは現行品の現地価格より安いことになる。ワイナリーに大量にあまってたヴィンテージをまとめて安く仕入れた、みたいなことですかねこれ。話のネタに良さそうだわいと買ってみた。
2004年に起きたことと「ホワイトボックス シャルドネ」
2004年。日本では中越地震が起き、アメリカではイチローが262安打を放ち、アテネオリンピックで北島康介が「趙気持ちいい!」と叫び、マーク・ザッカーバーグがフェイスブックを開設した年だ。
私は社会人になったばかりで毎日ヘロヘロになっていた頃。その頃に採れたブドウで造られたワインかよこれ、と思うとヴィンテージワイン経験ほぼ皆無の私は一瞬で感慨深くなる。あれから私はいろいろあって結婚して子供が生まれワインにハマり、そして今日の良きに日にその間ひたすら瓶の中で熟成していたワインと「よしや」で出会ったことになる。ヤダこれひょっとして運命……? 人間交差点とは「よしや」のことだった……!?
スチュワートワインズはちょっと面白い会社で、インドネシアはジャカルタに住んでいたヘンドラ・ウィジャジャという人物が、1998年のジャカルタの暴動を機にオーストラリアに移住しワイン畑を取得したことに端を発するようだ。
オーナーのヘンドラはヴィンヤードの管理も担い、警備体制への不安から機械小屋の床にマットを敷いて寝泊りして自宅警備員的任務にも従事、「ニューミレニアムをネズミと一緒に祝った」とある。なんだよそれ笑。
ワイナリーの初ヴィンテージは2002年。そして、私が手にしたヴィンテージの2004年は「ホワイトボックス」と名付けられたワイナリーがはじめてワインを造った年なんだそうだ。流通にうまく乗らなかったとかだったのかな。いずれにせよ、ワイナリーにとっては記念碑的ヴィンテージと言えそうだ。投げ売りされてたけど。
ホワイトボックス シャルドネを飲んでみた
さて、その味わいやいかにとグラスに注いでみたらすごいなこれ。色合いはこれは完全にアレですね。リアルゴールドですよ。元気になりそう。
香りもしっかりとあって、なんですかねこれ。胡蝶蘭みたいな、花粉がバサッと飛びそうな花びらのデカい花みたいな香り。花屋の店先に並んだ胡蝶蘭や南国の花々、その隣にガソリンスタンドがある、みたいな香りがする。
これはペトロール香っていうのかな。リースリングでよくある香りだけど熟成したシャルドネからも香ることがあるんですかね。ともあれ全然嫌な香りではない。
味わいは色の印象ほどは濃くなくて、17年も瓶の中にいたとは思えない元気な感じ。酸味と果実味がほどよく残って普通にうまい樽の効いたシャルドネ。色、香り、味わいとすごくはっきりした個性があって、これ1000円台は破格だなー。
さてこのワイン、調べてみたのだがネットで買えない。もしかしたら「よしや」でしか買えないのかもしれない。買えないワインをブログで取り上げる意味があるのか問題があるのだが、リアルでは購入可能なので、近所に「よしや」があるという方はぜひ探してみてください。
葡萄畑ココスで2004年のシャブリ売ってた。気になる。
「樽ドネ」のまとめ記事みたいなの作る必要がありそうだなー。