ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

ワインの「適量」ってどれくらい? 休肝日は? ワインと健康について調べてみた

残りの人生であと何本ワインを飲めるんだ問題

ふと考えた。私はこれから先の人生で、何本のワインが飲めるのだろうかと。

何歳まで生きられるかがわからないので正確な本数はもちろんわからないが、日本人男性の平均寿命約81歳から現在の年齢を引いて、年間に飲むワインの本数をかければだいたいのところがわかる。

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ワインは週に何本くらい飲むのが適量なのか

ここで問題となるのは、では年間にどれだけのワインを飲めばいいのかだ。願わくば死ぬ直前までワインが飲めるだけの健康を維持していたい。なんならワイングラスを片手にあの世に行けたら最高だ。そのために必要なのは健康で、ワインはアルコールである以上飲み過ぎは良くない。

というわけで、我々は週に何回、どれくらいのワインを飲むのが適量なのか? を調べようというのが本稿の趣旨だ。

 

みんなの休肝日は週何日? 1回にどれくらいワイン飲んでる?

調査に先駆けて、まずはtwitterのワイン好きのみなさんを対象に、アンケートをふたつ実施してみた。そのひとつめがこれだ。

このアンケートの結果は、以下のようなものだった。(回答数=191)

週に1回は休肝日:21.5%
週に2回は休肝日:8.9%
週に3回以上休肝日:22.5%

休肝日は前世に置いてきた:47.1%

というわけでことのほか前世で飲まなかった分、今生(こんじょう)で飲んでるという方が多いという結果となった。

ただ一方で、週に3回以上は休肝日を設けるという健康的な方も2割以上いた。

さて、続いて、ふたつめのアンケートは以下のようなものだ。

このアンケートの結果は、以下のようなものだった。(回答数=165)

1本以上:7.3%

1本:18.8%

1/2〜1本未満:49.1%

グラス1杯〜1/2本未満:24.8%

約半分の方が、「ボトル半分から1本未満」と回答。「1本以上」と回答した方も7.4%いたが、それを除いた92.6%の方の1回の平均的なワイン摂取量は「1本以下」ということになる。

 

ワイン愛好家の平均的ワイン摂取量とは?

以上ふたつのアンケートはそれぞれ別々に実施したものなのだが、両者を重ね合わせると「平均的ワイン愛好家」の飲酒習慣がうっすら浮かび上がってくる。
休肝日は週にだいたい1回で、1日にだいたいボトル半分くらいのワインを飲む
あれおかしいな、これ私だな。
アンケートの結果、私は日本人ワイン愛好家のなかで、飲酒強度的にはほぼド真ん中に位置することがわかった。となると、次に問題となるのは、これは適量なのか? という問題だ。このペースは飲み過ぎなのか、あるいはもっと飲んでもいいのか。ここ大問題ね。さっそく見ていこう。 

 

1日の適正ワイン摂取量と「総アルコール量」

 さて、実際のところ飲酒量はどれくらいが適正で、休肝日はどれくらいのペースで設定すべきなのだろうか。いろいろ調べると、「14万人調査で判明、病気にならないための「飲酒ルール」」(日経Gooday 30+)という記事を見つけた。以下にその概要をまとめてみる。
・日本人の「適量」は1日あたり純アルコール換算23グラム。
・ワインであれば「グラス2杯」240ミリリットルが適量。
・純アルコールの摂取は週換算150グラムはOK。
・多少のリスクを受け入れるとすれば300グラムが上限。
休肝日は週2日以上設ける。
あれ意外と厳しいですねこれ。「ボトル半分」は「グラス3杯強」に相当し、休肝日は週2日以上とあるので早くも限りなく赤信号に近い黄色信号であることが判明してしまった。なんとかなりませんかね、先生……!

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「適量」は意外と少ない……?
ただ、この記事で注目すべきは、アルコール摂取量を150〜300グラムと幅を持たせている点だ。150はOK、300はリスク了承の上ならOK、300以上はNGということだろう雑に理解すると。
 

ワインは週にどれくらい飲めるのか?

そこで、飲んでも大丈夫な(もっとも健康にいいのは“飲まないこと”だろうが)純アルコールの週150グラムがどれくらいかを調べてみた。参考にしたのは、アルコール健康医学協会の「お酒と健康 飲酒の基礎知識」に掲載されたデータだ。
まず、アルコール量の計算式は、
お酒の量(ml)×[アルコール度数(%)÷100]×0.8
この式に当てはめると、アルコール度数14度のワインのボトル1本の純アルコール量は約80グラムということになる。その1/3量に相当するグラス2杯(純アルコール26.6グラム)を週に5日飲んだ場合、26.6×5=133グラムとなり、OKラインである150グラムを下回る。これが健康的な飲酒ライフである。
 

ワインの「ギリギリ適量」を考える

ここで私が、本稿を読んでくださる読者のみなさんが思っているであろうことを端的に代弁しよう。
え……もっと飲みたいんだけど。
これだ。医者に聞けば、1日グラス2杯、休肝日週2がベストです。それと健康的な食事に、適度な運動、これですよヒマワインさん! と言うだろう。いやまあそりゃそうでしょうよ。わかるんですよ。でも1日グラス2杯はなー、いっやー、どうかなー、先生、なんとかなりませんかねえ?(2回目) となる。

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もうちょい飲みたい
ここで思い出したいのは「リスク了承で300グラムまでが上限」というワードである。カンダタがつかんだ蜘蛛の糸のようなそれに頼って、普段の私の飲酒量をシミュレートしてみよう。私は週にどれくらいの純アルコールを摂取しているのか?
月曜日:休肝
火曜日:ボトル半分飲む(40グラム)
水曜日:ボトル半分飲む(40グラム)
木曜日:ボトル半分飲む(40グラム)
金曜日:ボトル半分飲む(40グラム)
土曜日:ボトル半分飲む(40グラム)
日曜日:ボトル半分飲む(40グラム)
240グラム……!週の総摂取量はボトル3本、純アルコール摂取量は240グラムとなった。OKラインの150グラムは超えるが、上限ラインの300グラムは下回るので、なんとか許してもらえるんじゃないか、という印象だ(実際に許してもらえるかは不明)。これで1日休肝日を増やして200グラムまで下げられたら悪くない感じになりそうだ(できるかどうかは別)。
いずれにしても、純アルコール量という観点から見た場合、週に飲めるのは3〜3.5本くらいになるようだ。
 

アルコール度数と総アルコール量

こう考えていくと、地味にポイントとなるのがワインのアルコール度数だ。以上はすべてアルコール度数14度で計算しているが、言わずもがな、ワインのアルコール度数にはもっと幅がある。そこでワインの度数として一般的と思われる11〜15度を前出のアルコール量換算式に当てはめてみた。【アルコール度数別総アルコール量】※750ml11度:6612度:7213度:7814度:8415度:90総アルコール量は11度と15度では24グラムも違う。え、そんなに違うの。では、それを2本/3本/4本飲んだ場合ではどうか。
11度:132/198/264
12度:144/216/288
13度:156/234/312
14度:168/252/336
15度:180/270/360
アルコール度数15度のワインでは、週に2本で180グラムとOKラインを超えてくるが、12度ならば2本飲んでも144グラムと許容範囲となる。上限の300グラムを基準にした場合、12度のワインなら4本でも収まる。こうなると求められるのは“軽いワイン”ではないのか。
たとえば最近飲んだワインに、ヒトミワイナリーの「ソワフ ルージュ(2020)」がある。マスカットベーリーAを使った飲みやすいワインで大変おいしかったのだがこのワインのアルコール度数は10度だ。720ミリリットル入りのボトルで、総アルコール量は1本あたり57.6グラムとなる。つまり週に3本飲んでもほぼOK圏内なのだ! ハレルヤ!
……とまあそんな単純な話ではもちろんないのだろうが、アルコール度数が低いワインに注目するのもひとつの方法かもいしれない。ワインショップの方、アルコール度数12度未満のワイン特集をお願いします買います。

 

休肝日はなんのためにある?

 さて、最後に「休肝日」について別の側面から考えてみたい。そもそも「休肝日」とはなにで、なんのために設ける必要があるのだろうか?
そんなもん肝臓を休ませるために決まってんじゃんと思われるだろうが、厚生労働省が運営する「e-ヘルスネット」の「健康用語辞典」の「休肝日」の項目を見ると、少し違うニュアンスで語られている。

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そもそも休肝日とは?
少し長いがそのまま引用してみる。読み飛ばしていただいても大丈夫だ。
休肝日(きゅうかんび)肝臓を休めるために週に1日以上飲酒しない日を設けることを推奨する目的で作られた造語。習慣的な飲酒を継続しているとアルコールは依存性薬物のため耐性が発生し、徐々に飲酒量が増加する危険性があります。
休肝日を設けると飲酒総量が減るので肝障害が予防できる可能性があります。しかし、反動で飲酒する日の飲酒量が増えるかもしれません。休肝日を設けられるか否かで、肝障害の進展を予防するという科学的根拠はありませんが、アルコール依存症のような問題飲酒の顕在化には役立ちます。アルコール依存症や予備群であれば、休肝日にはイライラしたり寝付きが悪かったりするため休肝日を継続することに失敗するからです。
 ポイント(要約)は以下だ。
休肝日を設けると肝障害が予防できる「可能性がある」
・ただし、反動で飲酒日の飲酒量が増える「可能性もある」
休肝日を設けることで肝障害を予防できるという科学的根拠はない
アルコール依存症の顕在化には役立つ
つまり、「肝臓の病気の予防になるかはさておいて、自分がアルコール依存症かどうかはわかる」ということになる。休肝日にイライラしたり、寝つきが悪くなるならば、それはアルコール依存症、あるいは予備軍とのことだ。ギク。
休肝日と習慣飲酒同じサイトには、「習慣飲酒」という言葉も解説されている。これは、週に3日以上、1日1合(筆写注:グラスワイン2杯換算)以上の飲酒のことをいうのだそうで、私はもちろんこれに該当する。
おそらくこの記事を読んでくれている方の多くはこれに当てはまるのではないかと思うが、そこにはこう書いてある。

アルコールには耐性(長期間摂取すると薬物の効果が減少すること)という性質があるため、結果として飲酒量が増大し、アルコール関連問題を引き起こすことがあります。そのため休肝日を設けることも、節酒指導のひとつとして行われています。

 

休肝日はアルコール依存のリトマス試験紙であり、同時に対策でもあるということになる。休肝日は肝臓のためだけにあるのではなく、総アルコール量を減らし、依存症リスクを可視化・低減するためにあるわけだ。
 

休肝日と『アル中病棟』

アルコール依存症といって思い出されるのは、吾妻ひでおの『アル中病棟』。著者が実際にアルコール依存症となり、隔離施設に収容されたルポルタージュ漫画で、アルコール依存症になると人はこうなる、ということが非常によくわかるので、ぜひご一読いただきたい。

私はこれを枕頭の書とし、己を戒めるために定期的に読むようにしている。漫画として抜群に面白いし。気に入ったら『失踪日記』に『カオスノート』もぜひ読んでいただきたい休肝日の話だった。

 

また、注意したいのが「酒を飲むことで栄養を摂らなくなる」ことが健康リスクにつながるということだ。

しょっぱいつまみばかりを食べて塩分過多にもなりやすいという。気づけば生ハムとなんかのパテ、チーズとクラッカーでお腹いっぱいみたいなの良くない。

ワインは食事と合わせてこそ楽しめるもの。飲むときは食べる。それも、バランス良く。これも忘れずにおきたい。

 

himawine.hatenablog.com

 長々と書いてきたが、アルコール度数が何%で何グラム飲めるか、なんてことを過度に気にするよりも、上のスケジュールを守り、しっかりと食事を摂りながら、適量を楽しむことが大事だと私は思う。

今回の調査でだいたい生きてるうちに飲めるワインの本数はざっくり把握できた。多いような少ないようなその数を全力で楽しんでいきたいと思う次第である。

 

最後に。当たり前の話ですが、アルコール分解能は個人によって異なります。上に挙げた「適量」は万人には当てはまらないはず。また、本ブログ記事は下記のサイトを参考に執筆してます。あくまで健康に関する情報なので鵜呑みにはせず、必要に応じて元サイトにあたるなどしていただければと思います。間違いがあればご連絡ください。

 

<参考サイト>

日経Gooday 30+「14万人調査で判明、病気にならないための「飲酒ルール」」

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO91343060U5A900C1000000/

アルコール健康医学協会「お酒と健康 飲酒の基礎知識」

http://www.arukenkyo.or.jp/health/base/index.html

厚生労働省 e-ヘルスネット

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-015.html