意外とあるぞ! 食べ物の名前のワイン
先日、東京・水天宮のショップ「アフリカー」でチャカラカという名前のワインを試飲した。チャカラカは南アフリカの郷土料理だそうで、豆をトマトとスパイスで煮込んだ料理。それをイメージして、多様な品種をブレンドして造られたワインがスパイスルートの「チャカラカ」で、なるほど重層的な味わいがして大変おいしかった。
そこで私は思った。料理の名前のワインって、ほかにもありそうだよな。と。私はワインブロガー、さっそく調査を開始してみたら意外とたくさんあったのでご紹介したい。世界にはいろいろなワインがあるよね、つくづく。
名前が寿司! 「オロヤ寿司ワイン 白」
まずはそのものズバリのものからいってみよう。「オロヤ 寿司ワイン 白」だ。ラベルに思いっきり漢字で「寿司」って書いてあるんだけどなんとスペインワインなんですよこれ。アイレン、ムスカデル、ヴェルデホが使われているアロマティック寄りのワインみたい。
日本酒にスペイン語で「パエリヤ」って書いてある的な大胆さが素敵だ。
寿司に合うアルザスワイン! 「キュヴェ ギョタク」
「寿司に合うワイン」がコンセプトのものは他にもある。アルザスの生産者ドメーヌ・ミットナット・フレールの「キュヴェ・ギョタク」という凄まじい名前のワインがそれ。
当主の奥様が日本人女性なのだそうで、長年寿司に合うワインを考え抜いた結果リースリング、ゲヴュルツトラミネール、ミュスカ、ピノ・グリ、ピノ・ブランのブレンドにたどり着き、毎年ブレンドを変えてキュヴェ・ギョタクをリリースしているそうな。海のないアルザスで造られた寿司に合うワインっていうのが面白い。
使用品種を見るにこれもアロマティックな印象だ。酢飯の甘さと香りに合わせるには、アロマ系品種がいい感じなのかな。ゆずの香りをつけた白身なんかと合わせたら良さそうだなあと思うんだけど冷静に考えるとこれ「料理の名前のワイン」じゃなかった。まあいいか。
マグロ養殖業者が造るマグロのためのワイン! 「サシミ」
寿司関係をさらに進めるならばズバリ「サシミ」という名前のオーストラリアワインも存在する。品種はソーヴィニヨン・ブラン100%。マグロの養殖業を行う一家が南オーストラリアのポート・リンカーンに設立したというワイナリーのプロダクト。
マグロ養殖が盛んな地でマグロ養殖業を営んでいた生産者が海洋性気候の影響を受けた土地で造ったマグロのラベルのマグロに合うワイン。サシミ、寿司、ワサビに合うのだそうだ。待ってワサビにも合うのすごい。
以上3本の“寿司ワイン”を眺めると、品種がムスカデルにゲヴュルツ、リースリングにソーヴィニヨン・ブランにピノ・グリと一脈通づるものがある、寿司にはさっぱり+甘やかな香りのワインが合うんだろうか。考えてみると日本酒もスッキリしたなかに果実感とか、甘やかな香りが魅力。やはり寿司にワインを合わせようとすると、どこか日本酒チックなブレンドになるのかな。おもしろいなあ。
個人的にはとくに「キュヴェ・ギョタク」が気になる。生産者はマルセル・ダイスの友達だっていうし。
たこ焼きに合う泡! 「たこシャン」
魚介類つながりで忘れちゃいけないのが大阪はカタシモワイナリーの「たこシャン」。国産デラウェア100%で造られる瓶内発酵のスパークリングワイン。実はデラウェアの一大産地である大阪で、ソウルフード・たこ焼きに合うスパークリングワインを造るというコンセプトのワイン。
たこやきと爪楊枝がセンス良くデザインされたラベルには面白い裏話もあるので興味のある方はぜひ。
お好み焼きに合うスペインワイン! 「お好み焼きワイン」
たこ焼きとくればお好み焼きで、冒頭に挙げた寿司ワインと同じスペインのウニオ セラーズ デル ノヤが造るこれまたそのものズバリの「お好み焼きワイン」というものもある。なんでもあるな、この世。
テンプラニーリョ60%、メルロー30%、カベルネ・ソーヴィニヨン10%を用いて「ソースに合う」をコンセプトに造られたんだそうで、なんでそんなコンセプトで造ったんだよスペインで、という疑問はともかく、スペインでこの品種で造ったワインって普通においしそう。たこシャンで乾杯してお好み焼きワインにつなぐ粉物ワイン会もありえるのか……。
パン! バター! 「ブレッド&バター」「バター」「トースト」
粉物つながりでどんどん行くと「ブレッド&バター」の名前も超有名ワインだからアレだけども挙げたい。おいしいですよね、ブレッド&バター。
個人的にはブレッド&バターはブレッドよりもバターの印象が強く、バターということでいえばジャム・セラーズの「バター シャルドネ」というワインもある。
ちなみにこのジャム・セラーズ「トースト」という名のスパークリングワインも造ってる。こうなってくるとジャム・セラーズはジャムおじさんの直喩なんじゃないかと疑うレベルだ。
肉! 「ステーキハウス」
パンとくればメインがほしくなるわけだが、そこにはザ・マグニフィセント・ワインの「ステーキハウス」がある。「食べ物の名前」ではないのでギリギリな感じでなおかつ現在は名前が変わって「ハウスワイン」となっているそうなのだが、もともとはワシントンの有名生産者、チャールズ・スミスが設立したブランドなんだそうだ。
カベルネ・ソーヴィニヨン主体で強い果実味に樽のニュアンス加わった系だそうで、いかにもお肉に合いそう。
チョコもあるよ! 「ザ・チョコレート・チューブ プリミティーヴォ」
さて、お腹がいっぱいになったら必要なのはデザート。ワインに合うデザートといえばチョコレートは候補のひとつで、それだけにチョコレートの名前を冠したワインも存在する。
チョコ系ワインといえば南アフリカはブーケンハーツクルーフの「ザ・チョコレート・ブロック」が有名だがイタリア・プーリア州が本拠地で面白い名前とラベルのワインでおなじみのマーレ・マンニュムからも「ザ・チョコレート・チューブ プリミティーヴォ」なるワインがリリースされている。プーリア州のプリミティーヴォならではの濃い果実味にオーク樽のロースト感が加わって飲むチョコ感があるようだ。これも飲んでみたい。マーレ・マンニュムのワインおいしいんだよなあ。
そしてチョコといえばコーヒー。食後には南アフリカワイン「コーヒー ピノタージュ」で決まりだ。
というわけで駆け足でみてきたが、感想としては意外とあるぞ、食べ物の名前のワイン。という印象で、上記をうまく選別し、それぞれの名前の由来となったワインと組み合わせると、以下のようなペアリングメニューが可能となる。
1皿目:刺身と「サシミ」
2皿目:寿司と「キュヴェ・ギョタク」
3皿目:たこ焼きと「たこシャン」
5皿目:ステーキと「ステーキハウス」
6皿目:パンと「トースト」
7皿目:チョコレートと「ザ・チョコレート チューブ」
食後に:コーヒーと「コーヒー ピノタージュ」
意外と試してみたい感じになったけど……なんか炭水化物ばっかだな!