ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

渋谷ワイナリー東京の試飲会に行ってきた! おいしかったワインは?

渋谷ワイナリー東京で試飲会に参加した

渋谷ワイナリー東京で開催された渋谷ワイナリー東京と深川ワイナリー東京の合同試飲会に参加してきた。渋谷ワイナリー東京は、東京・渋谷の商業施設MIYASHITA PARKI内にある都市型ワイナリーでありレストランでもあるという場所だ。

飲んだのは渋谷ワイナリー東京のワイン5種類と、深川ワイナリー東京のワイン9種類の計14種類+α。インポーターが主催する試飲会には、いつの間にか家のなかにいる妖怪・ぬらりひょんかの如くにド素人の身で幾度か参加させてもらっているが、生産者の試飲会に参加するのははじめて(ちなみに取引先以外の参加費は1000円)。本稿では最初に飲んだ渋谷ワイナリーの5種類について書きたいと思う。

 

渋谷ワイナリー東京で飲んだ5種類のワイン

さてこの日飲んだのは以下。

渋谷ワイナリー東京のワイン5種が試飲できました

P015
品種:ピノ・ノワール
産地:ニュージーランド ホークスベイ
収穫年:2019
アルコール度数:13%
価格:3300円

R019
品種:リースリング
産地:オーストラリア 南オーストラリア州
収穫年:2022
アルコール度数:11%
価格:2640円

CM020
品種:カベルネ・ソーヴィニヨン50%、メルロー50%
産地:オーストラリア 南オーストラリア州
収穫年:2022
アルコール度数:13%
価格:2640円

K021
品種:甲州
産地:山梨県山梨市
収穫年:2022
アルコール度数:10%
価格:3300円

M022
品種:メルロー
産地:長野県安曇野市
収穫年:2022
アルコール度数:11%
価格:3300円

北は長野から、南は南オーストラリア州までというここでしか見られないラインナップがなんとも個性的だ。渋谷ワイナリー東京は自社畑を持たない都市型ワイナリーであり、ワインはすべて買いブドウから造るフランス風に言うところのネゴシアン的業態。

そのため、様々な場所からブドウを調達し、それをワインに仕立てているのが特徴で、訪れるたびに違うワインが飲めるのが面白い。

 

渋谷ワイナリー東京で飲んだワイン1:「R019」

さて、まず飲んだのはオーストラリアのリースリング。名称は「R019」で、Rはリースリングの頭文字。019は渋谷ワイナリー東京で造った19番目のワインであることを意味する。そして面白いのはラベルだ。なんていうか、思いっきりオーストラリア大陸ですね…!

なんでもこのワインは酒税法の関係で原料がオーストラリア産であることを謳えず、ならばラベルでオーストラリアを(直球で)表現したらどうか……と確認したら大丈夫だったんだとか。その発想なかった。

ちなみに「渋谷」「東京」という土地を表す言葉もラベルには書けないため、「S WINERY T」というH JUNGLE with T感のある表記となっている(なにを言っているかわからない方はその辺にいるアラフォーに聞いてください)。

このあたりいろいろ大変だなあと思うわけだが、このような規則あらばこそ原産地呼称は守られるのだろう。あとこういう裏話大好き。

飲んでみるとかなりしっかり酸があり、レモン味のスポーツドリンク的な旨味があって好みの味。とはいえ昨年仕込んで6か月ほどタンクに入れてレストランでも出していたものを先週濾過して瓶詰めしたばかりとあって、「まだちょっと荒々しい」状態なのだそうだ。

この日は醸造長の村上さん、ソムリエの宮田貴子さんに解説してもらいながら試飲させてもらったのだが、やはりステンレスタンクのなかでワインは日々変化していくのだそうだ。

醸造から1年経ってからの3か月の変化はそう大きくないが、醸造この3か月の変化はすごく大きい」とのことで、発酵が終わってからの1年間くらいは日々状態が変わり続けていくという。

タンクで発酵中のソーヴィニヨン・ブランも特別に飲ませてもらいました。ぴちぴちフレッシュでうまい!

普通の醸造所であれば、その状態を日々モニタし、飲み頃と判断されたタイミングで瓶詰め・出荷となるのだろうが、ここ渋谷ワイナリー東京はタンクの中のワインをその場で飲めるのがウリ。それが面白い点であり、常連の方はタンク内のワインの時間経過による変化を楽しみに来店されるのだそうだ。いいなそれ。

楽しい反面「ソムリエとしては困るんですけどね(笑)」という宮田ソムリエの言葉も印象的だった。

日々変化するワイン、それに合わせて宮田さんは客への提案を変え、シェフの方は料理の味付けも工夫するというから面白い。主客一体となってのインプロヴィゼーション的な楽しみが渋谷ワイナリー東京の正しい楽しみ方なのかもしれない。

 

渋谷ワイナリー東京で飲んだワイン2:「K021」

さて、続いては甲州の「K021」を飲んだ。山梨の白百合醸造から分けてもらっているというブドウを使っているというこのワイン、昨年も同じものを醸造し、今年はさらに色を濃く出そうと収穫を少し遅らせたところ、オレンジを通り越してロゼっぽくなったのだそうだが、私はこのワインが5種のなかで一番好きだった。

色はオレンジピンクだが味わいはスッキリ。すっぱすぎず、とろとろしすぎない、ちょうどいい甲州という印象だ。

教えてもらった果汁糖度に対してアルコール度数が高めに出ていると感じたので質問してみたところ、このワインは多少の補糖を行うことでアルコール度数を10%まで高めているとのこと。

村上醸造長はもともとワイン愛好家。愛好家時代は「補糖なんて!」と思っていたそうだが、醸造の現場で補糖を行うことでワインがおいしくなる、さらには香りも豊かになることがわかって補糖のイメージが大きく変わったという。

私は前世は原生生物だったんじゃないかと思われるほど単純な人間なので、こういったお話を聞いただけで「オッケーわかった! 補糖、どんどんやっちゃってください!」みたいになる。シャンパーニュだって補糖してるじゃないですか! ドン(テーブルを叩く音)!

法律の許す範囲のなかで、おいしくなる工夫をやったりやらなかったりしていただけたら幸甚だというのが私の立場だ。

 

渋谷ワイナリー東京で飲んだワイン3:「M022」

とはいえ次に飲んだ長野の「ぼーのふぁーむ明科 天王原圃場」産のブドウを使ったメルロー(M022)はアルコール度数11度ながら補糖なし。瓶詰めからひと月が経過しており、だいぶ味わいがなめらかになってきたそうだ。

村上さんはそもそも熟成を経てまろやか&エレガントになったワインが好みなのだそうで、そんな村上さんが「造ってすぐ出す」が特徴のワイナリーでワインを造ることになるのだから人生は面白い。

このワインは、やっぱり長野のメルローは安定しておいしいんだなということが確認できる、果実と渋みと酸味のバランスの良いワインという印象。体に沁みるような味わいのこのワインを飲みながら、気候変動に伴ってワインのアルコール度数が高まる傾向にあるなか、度数10度、11度のワインが楽しめるのは日本ワインの個性なのかもな、みたいなことを思ったりもしたのだった。

 

渋谷ワイナリー東京で飲んだワイン4/5:「P015」「CM020」

今回がラストヴィンテージだというニュージーランドピノ・ノワール(P015)と南オーストラリアのカベルネメルローブレンド(CM020)もそれぞれ面白いワインだった。

ピノ・ノワールは前ヴィンテージに少し渋み・タンニンが足りないと感じたことから少し抽出を強めにかけたというワイン。

カベルネ/メルローのほうは、これを仕入れたタイミングで長野のカベルネ・ソーヴィニヨン100%のワインがタンクに入っていたことから、それとの「カブり」を避け、かつ「よりストーリーがある」という理由から混醸を選んだというワイン。

村上さんはもともと一般企業で営業職をされていた方だけに、こういったマーケティング的視点も醸造に取り入れているのも面白い。たとえばスペイン産のアイレン仕入れられるチャンスがあった際、ワインを知っている人には『安ワインの品種』と思われてしまうし、知らない人には『なにそれ』と思われてしまうという懸念から仕入れを見送ったこともあったそうだ。

ここは渋谷のMIYASHITA PARK。ワイン愛好家だけが来るわけではないし、デートで来る方も多いはず。わからない、聞いたことのない品種のワインは注文しにくいはず。やはり、カベルネピノ! といった有名品種のほうが「これ、おいしいんだよね!」と注文しやすいというものだ。土地に根ざした売りやすさまで考える。これぞ渋谷のテロワールを反映したワイン造りだと思う。

スパークリングワイン(ペットナット)の醸造もスタートしているという。

コロナ禍がひと段落したことで外飲みの需要は急拡大期にあり、国内でのワイナリー数が右肩上がりとなっていることもあって、原料ブドウは奪い合いの状況になっているという。そんななか、流通の中心地である東京でワイナリーをやる意味を感じられたというのが、今回の試飲会の最大の学びだったかもしれない。

誘っていただいた宮田ソムリエ、そして村上醸造長に感謝である。またお邪魔します!

ふるさと納税で渋谷ワイナリー東京の返礼品いろいろありますよ!↓

 

 

イタリアでワイナリーを訪問したらいろいろあって最高の一日になった話。

カーサ・ディヴィーナ・プロヴィデンツァを訪ねて

イタリアはローマ近郊に住む友人宅に滞在した際に、カーサ・ディヴィーナ・プロヴィデンツァ、という名前のワイナリーを訪問してきた。

入口からカーサ・ディヴィーナ・プロヴィデンツァを臨むの図。

友人は現地の歴史あるレストランに長年勤めており、「ワイナリーに行きたい。どうしても」という私のリクエストを受けて、勤務先との取引があるワイナリーと交渉、訪問のアポを取り付けてくれたのだった。持つべきものは友だちだ。

というわけで友人の運転するクルマに揺られ、高速道路から見えるキウイ畑を眺めながらカーサ・ディヴィーナ・プロヴィデンツァへと向かった。ちなみにキウイの収穫量世界一はニュージーランド。2位はイタリア・ラツィオ州である。世界は知らないことで満ちている。

 

カーサ・ディヴィーナ・プロヴィデンツァとラツィオ州ネットゥーナ

さて、カーサ・ディヴィーナ・プロヴィデンツァはそんなラツィオ州のネットゥーナという街にある。ネットゥーナはギリシャ神話のポセイドン、ローマ神話でネプトゥヌス(英名ネプチューン)と同一視される神様の名前だそうで、街にもワイナリーの正面玄関にもネットゥーナ像が飾られている。水の神が守護神であることからもわかるように、港町だ。

ワイナリー前に設置されたネットゥーナ像。(クリスマス電飾ver.)

余談だがこの街は第二次世界大戦時に米軍が上陸した街であり、その際に持ち込まれた大量のベーコンからカルボナーラが生まれたのだと友人が教えてくれた(※諸説あり)。

ちなみにローマっ子である友人はカルボナーラにはパンチェッタ(豚塩漬け)かグアンチャーレ(豚頬肉の塩漬け)を使い、ベーコンは絶対に使わない(チーズもペコリーノ・ロマーノしか使わない)のだが話を戻そう。

 

カーサ・ディヴィーナ・プロヴィデンツァと「神の家」の歴史

ともかくそんなネットゥーナの街にあるカーサ・ディヴィーナ・プロヴィデンツァは歴史あるワイナリーで、その創業は1821年まで遡るそうだ。

ただ、この土地が面白いのはむしろ「それ以前」の歴史。かつてこの地はバチカン領で、教会と病院があった。司祭たちはここで暮らしてワインを造り、それを売ることで無料で医療を提供していた。ブルゴーニュにおけるオスピス・ド・ボーヌみたいなものがここネットゥーナにもあったわけですね。

敷地内にあるかつて司祭たちが暮らし、礼拝堂でもあったという小さな家。現在はワインの熟成庫兼資料室となっている。

敷地内にはワインを熟成させるための建物があるのだが、そこはもともと礼拝堂だったのだそうで、案内してもらった建物の2階にはキリスト教をモチーフとした絵画などが多数飾られていた。キリスト教とワインの切っても切れない関係性を目視できたのは非常にいい経験だったのだった。

教会があればミサがある。ミサにはぶどう酒が必要だ。教会は信徒から土地を寄進されるケースがあり、寄進された土地でせっかくなんでブドウを育てる。できたブドウはワインになって、教会の現金収入となっていく。なんとなく読んで知っていたような話だが、その“現場”に立っている面白さはまた格別だ。

オーナー家はそんな土地をバチカンから譲り受け、ブドウ畑はそのままにワイナリーとしての近代化を行い、規模を広げていったのだそう。カーサ・ディヴィーナ・プロヴィデンツァは、なんとなく「神の家」みたいな意味。ワインにはその土地をうつす鑑としての側面がたしかにあるよなあとこういう話を聞くと思う。

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カーサ・ディヴィーナ・プロヴィデンツァの近代化と発展

カーサ・ディヴィーナ・プロヴィデンツァを訪ねたのは年末も押し迫った12月末のことだったが、直売所は多くの(おそらくは地元の)お客さんで賑わい、とくにボトルから持参の容器に注げるタンクの周辺は大いに賑わっていた。

量り売りタンク。クリスマスに家族で飲むワインを求める多くの人で賑わっていた。

日本ではスーパーでミネラルウォーターをタンクに汲めるサービスがあったりするが、あんな感じのポリタンクを持った周辺住民が、好みのワインをタンクから移してその分だけお金を払って帰っていく。最高。

友人にアポをとってもらったおかげで、オーナー(創業家・コスミ家当代の姉妹)の夫であるマッシミリアーノさんに畑からボトリング設備までをガッツリ案内してもらえたのだが、そのような歴史と周辺住民からの愛され感とはある種裏腹に、内部は非常に近代化された巨大ワイナリーとなっている。

ワイナリー内部は近代的設備がドドンと並ぶ。

案内された工場内には大型のステンレスタンクが立ち並び、それがコンピュータで温度管理されている。ボトリングからラベル貼りまで、すべてが行われる巨大工場は、今後数百万ユーロ単位の投資を行って拡張する計画もあるのだそうだ。

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カーサ・ディヴィーナ・プロヴィデンツァと土着品種「カッキョーネ」

さてじゃあどんなワインを造っているのかなのだが、カーサ・ディヴィーナ・プロヴィデンツァを、というかこのネットゥーナという土地を代表するのがカッキョーネという白ブドウ。

ネットゥーナのカッキョーネは、土地が砂質であったことでフィロキセラ禍を免れた欧州では珍しい自根ブドウなのだそうで、そのため、ヴィンヤードに植えられたカッキョーネも、マッシミリアーノさんいわく「一番長く働いている人が子どもの頃にはすでに植わっていた」というレベルの情報しかなく、どれくらい樹齢が古いかは正直わからないのだそうだ。すげえ。

カッキョーネの畑。

カッキョーネに関してはマイナー品種すぎて入手できる情報が本当に少ないのだが、italyabroad.comというサイトによれば古代ローマ時代に広く栽培されていた品種なのだそうで、「黄金色に輝く強い黄色」「強いアロマ、柑橘類と軽いミネラル」が特徴なのだそうだ。樹勢は強く、生産量も豊富。

またも余談だが第二次大戦時に米軍がこの地に上陸した際、このカッキョーネのワインをヘルメットに注いで飲んでる動画があるんだとマッシミリアーノさんがちょっと自慢げに語っていてなんか面白かったりもした。海神の街ネットゥーノは、カルボナーラ発祥の地でありホーム・オブ・カッキョーネでもある。物語にあふれてるなこの街。

上陸したネットゥーノでカッキョーネを楽しむ米兵。実際の映像とのこと。

カーサ・ディヴィーナ・プロヴィデンツァのフラグシップワインの白もカッキョーネ100%。私はこのフラグシップとそのひとつ下のレンジのカッキョーネを買ってみたのでこのブログを読んでくださる方ももしかしたらいつかどこかのワイン会で私が持参したカッキョーネを飲んでいただけるかもしれない。

 

カーサ・ディヴィーナ・プロヴィデンツァとレストランと地下貯蔵庫

さて、そんなこんなでみっちりと案内してもらい、買い物もたっぷりして大満足。さて帰ろうとなったのがちょうどお昼時。「よかったらアペロでもどうか?」とワイナリー側からお誘いいただいた。

丁寧に案内してくれたマッシミリアーノさん。ナイスガイ。

余談に次ぐ余談だが、私はアペロを「夕食前に軽くつまんでちょっと飲むこと」だと認識していたが、友人いわく昼食前でもアペロ呼びで問題ないのだそうだ。「ランチほどしっかり食べなければアペロ」なのだそうで、時間帯や内容ではなく要はそれに臨むアティテュードの問題であるよう。それをアペロだと思えばアペロである。『アペロ アペ郎』という漫画の原作を書きたい。モーニングで。

ともあれお誘いを受けて断る選択肢があるわけないので「よかったらアペ…」くらいのタイミングで「行きます」と食い気味に承諾し、ネットゥーノの市街地へ。そこにはカーサ・ディヴィーナ・プロヴィデンツァ直営のエノテカ(酒屋)兼レストランがある。

こちらのエノテカ兼レストランにお招きいただきました。素敵なお店だったなー。

ネットゥーノの街はマッコという硬い石の上にあり、街の地下にはこの石でできた洞窟がある。戦時中避難所として使われた洞窟は元々はワインの貯蔵所として使われており、このエノテカの地下にもその洞窟が広がっていて、ワインの熟成が進められている。

地下貯蔵庫の様子。中には湧水も。迷宮感!

地下洞窟の上にあるワイナリー直営のレストラン。行きたいに決まってるでしょこんなもん、という立地だ。楽しいなしかし。

てっきりマッシミリアーノさん&工場で案内してくれた醸造長のふたりと軽くメシかと思っていたら、この日はワイナリーの仕事納め。オーナー以下全従業員総出の日本でいう「納会」の日だったようで、レストランは貸切。その一角の小さなテーブルが我々だけに割り当てられ、「好きにやってくれ」という感じにしてくれた。繰り返しになるがワイナリーにとって私の友人は「取引先の人」。いわば接待のおこぼれに預かるカタチである。持つべきものは略。

ワイナリーのスタッフはぜんぶで20名くらいだろうか。老若男女が自分たちで造ったワインを酌み交わし、ワイワイと楽しむ。私は、上手くいえないのだがその土地とか日常とかに根ざした「飲み物としてのワイン」が好きなので、この光景になんだかすごく感動してしまったのだった。これが文化だの感があって。楽しい食事と会話には、やっぱりワインがよく似合う。

 

カーサ・ディヴィーナ・プロヴィデンツァの4種のワイン

さて、この場で飲ませてもらったワインは4種。

ワイナリー「納会」で出たワイン。左上から時計回りにサーヴされました。

まず乾杯に合わせて100%カッキョーネで造られたスパークリングワイン、「 マレディヴィーノ(Maredivino )」。

めちゃくちゃ泡に見えないけど泡。



続いてトレッビアーノとシャルドネブレンドで造られる「ブレザマリーナ(Breza Marina)」。どちらも青リンゴのようなさわやかさのあるワイン。カッキョーネ、すごくさわやかでクセがなく、フードフレンドリーな印象だ。

今回唯一の非・カッキョーネだったのがこれ。

合わせたのは生ハム、リコッタチーズとほうれん草入りの春巻き(的なもの)、メランザーネ(なす)のラザニア、パンチェッタを絡めたポテサラ、チーズと卵のオムレツみたいなやつ……といった前菜の盛り合わせ。

前菜。これとパンでお腹いっぱいってレベル。

料理のクオリティは高く、どれも手の込んだおいしい品ばかり。そのワインを造った人にワインを注いでもらいながらおいしい前菜をいただく。はっはっはっはっはっ(最高すぎて語彙消滅)。

アペロなのでこの前菜だけで十分だと思うのだが、パスタもでた。パスタはローマの名物メニュー・アマトリチャーナ。使うパスタは断面が四角い“トンナレッリ”で、イメージ上のスパゲティと比べたならばうどんと讃岐うどんくらい食感が異なる。つまり硬めでコシがある感じ。

そのパスタが濃厚なトマトとパンチェッタのソースをガッシリ受け止めて大変おいしかったのだがこれに合わせたのがワイナリーのフラグシップ、「ドゥエチェント・アニ (200anni)ビアンコ」。

ドゥエが2、チェントが100でドゥエチェント。売価40ユーロ。

カッキョーネ100%ながら新樽100%で熟成されるこのワインはまったくの別物。トロリ濃厚な黄金色の液体に見合う非常に分厚い味わいで「こりゃすげえ」となる味わいだった。価格は40ユーロ。マッシミリアーノさんいわく、「1年くらい置いてから飲んで」とのことだった。楽しみ。

シメにはふわりと軽いクッキーのような砂糖菓子のような甘いものが出たのだが、それに合わせたのがドシテオ(Dositheo)という名前のパッシート。

この甘口ワインも素晴らしかった。

カッキョーネ50%、マルヴァジア・プンティナータ50で造られるワインで、このワインも非常においしかった。甘口ワインながら絡みつくような甘さはなく、春の早朝に採取した花の蜜のような口に含むとサラリと消えるような甘みがあり、酸味もあり、クッキーと合わせて素晴らしい。これを書いている今なぜこのワインを買ってないんだおれはと激しく後悔するワインとなった。

買って帰ったワイン。ロゼと赤はイタリアで飲んじゃいましたが、どちらもとてもおいしかった。

泡にしても新樽で熟成させてもパッシートでもおいしい。この日のワインは図らずもカッキョーネの可能性を感じさせる構成で、カッキョーネというブドウをワイナリーのみなさんがどれだけ大切にしているかも伝わってくる。お肉やトマトソース中心のメニューながら白4本で通したのも面白かった。飲んだのはカッキョーネ(泡)、カッキョーネ(白)、カッキョーネ(新樽)、カッキョーネ(パッシート)。みんな違って、みんなカッキョーネ。

午前中さくっと見て回る予定だったワイナリー訪問だったが結局お店を出たのは太陽も西の空に傾く時分。これからのクリスマス&新年休暇に備えてタンクをもう一度確認しておくと醸造長は工場に戻り、そのほかのスタッフの方々は家族が待っているであろう自宅へと帰って行った。今日の1日はほぼ潰れてしまったが、まったくもってなんの問題もない最高の一日だった。「いやーまさかこんなに良くしてもらえるとは」みたいな感じで友だちも仰天するレベル。だよな。

ワインは特別なものではなく、会話の潤滑油であり、人と人をつなぐ糊のようなものだ。あると人生がちょっとだけ豊かで愉快になるただのアルコール飲料であり、人類の歴史に根ざした飲むことのできる文化体験でもある。そしてプロシュート・コットやブリザオラといったつまみに合わせるならば、飲み物としてはやはりワインが一番だ。つまりワインは素晴らしい。

ボナターレ!(メリークリスマス!)

ボナーネ!(良いお年を!)

アウグーリ!(おめでとう!)

ボニッシモ!(こいつはうまいぜ!)

私が発したイタリア語はほぼこの4種のみだが、ワイナリーの方々と楽しくワインを飲むことができた。ワインは言語を超える。余裕で。

カーサ・ディヴィーナ・プロヴィデンツァ、残念ながら過去も現在も日本未輸入(一時期レストランとの付き合いはあったそうだが)。またイタリアに行って、必ずふたたび訪ねたい。そんなふうに思わせてくれた忘れがたいワイナリー訪問だった。

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「株主優待ワイン」の意外な実力! 巴工業と「ビュー・シャトー・デ・モワン2017」

巴工業の株主優待でもらったワイン「ビュー・シャトー・デ・モワン2017」とは

株主優待でワインがもらえるから、という理由で巴工業という企業の株を株主優待でワインがもらえるだけの数保有している。

ちなみに私が株式を所有しているのは巴工業のものだけであり、こうなるともはや年に1度ワインが届く広義のサブスクリプション、あるいはセルフお歳暮みたいなもんである。そして、この年に1度年末に届くワインが地味に1年の楽しみになっている。今年も早く届かないかなあまだ1月だけど。

さて、2022年末にも巴工業からワインが届いた。届いたワインはビュー・シャトー・デ・モワン2017。格付けはサン・テミリオン グランクリュだ。ちなみに、おっ、グランクリュ、すげえじゃんと一瞬思うのだがサン・テミリオン グランクリュは格付けではなくAOC名。AOCサンテミリオンよりは上だけど、格付けグラン・クリュ・クラッセよりは下というポジションだ。

 

「ビュー・シャトー・デ・モワン2017」とサン・テミリオン グランクリュ

じゃあAOCサンテミリオンAOCサン・テミリオングランクリュはなにが違うんだということになるわけだがこれは地理的な区分ではないようで、サン・テミリオン グランクリュに認められるためには収量を40hl/haに抑え、ワインを最低12か月熟成させる必要があるみたい(wikiより)。

なんとなくボルドーボルドー・シュペリエールの違いとか純米酒純米吟醸の違いとか30年前の千葉県下の公立高校における千葉北高校と千葉南高校の偏差値くらいの感じ(どちらが上だったかは忘れた)だと認識している。ちょっと差があるけどそこまでの差じゃないみたいな。

ワインに話は戻ってビュー・シャトー・デ・モワンを造っているのはシャトー・プレザンス。サン・テミリオンに19ヘクタールの畑を所有しているようで、そこからサン・テミリオン グランクリュのワインを3つ、ボルドー・シュペリウールのワインを2つリリースしている。

 

「ビュー・シャトー・デ・モワン2017」はどんなワインか?

つまりシャトー・プレザンス(生産者)が造るビュー・シャトー・デ・モワン(ブランド)、ということになってこのあたり大変わかりにくいのだが、どうやら畑違いを「別シャトー」としてリリースしているみたいだ。あるいは過去にビュー・シャトー・デ・モワンの地所をシャトー・プレザンスが取得して云々とかかもしれない。興味のある方は調べてみてください。

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今回届いたビュー・シャトー・デ・モワンはそれでもどっこい定価は4000円というそこそこ高級ワイン。公式サイトに情報がほぼないのでインポーター情報を見ると、2016ヴィンテージはメルロー80%、カベルネ・ソーヴィニヨン10%、カベルネ・フラン10%のブレンドで、アルコール発酵後50%を1年使用のオーク樽で18か月熟成させたというワイン。

 

巴工業の株主優待2022「ビュー・シャトー・デ・モワン2017」を飲んでみた。

飲んでみると、あれおいしくないスかこれ。グランヴァンが聖堂とか大伽藍、あるいは虚空に浮かぶ球体みたいなのをイメージさせるとしたら、このワインがイメージさせるのは街外れにありながら繁盛している一軒家レストラン。

果実味がしっかりとあり、果実の芳醇さを少しザラついた、でもそれが不快ではない渋みと爽やかな酸味が上手く支えている。こじんまりとしていて、気軽に楽しめるんだけど味わいは本格的、みたいな感じ。煙の感じ、木の感じ、少しのハーブの感じ、そのすべてが街外れの一軒家レストラン感につながっていくイメージだ。

いずれにせよ「タダ(タダじゃないけど)でもらったワイン」としては破格に素晴らしい。開けた瞬間からおいしくて、数日経ってもヘタらないのもうれしい。巴工業の株主で良かった。ありがとう巴工業。フォーエヴァー巴工業。しかも調べてみたら私が取得したときより株価もたぶん10%くらい上がってる。すごいぞ、巴工業。

 

「ビュー・シャトー・デ・モワン2017」の入手方法

このビュー・シャトー・デ・モワン、残念ながらAmazon楽天Yahoo!ショッピングの3大モールでは取り扱いがない。とはいえ手に入れる方法はある。メルカリだ。メルカリではおそらく私同様株主優待で送られてきたであろうワインたちが悲しみの大量出品されている。

ワインに興味のない人が純粋な投資目的で株式を保有していたらそらまあ不要にもなろうと理解はできるがワイン好きとしてはやや悲しい風景だ。巴工業の株主の方でワインのことが気になってこのページにたどり着いた方がもしおられたならば、ご自宅で飲まれることをオススメしたい。すき焼きとか、肉じゃがとか、ステーキとか、茶色いおかずにピッタリだ。

ちなみにビュー・シャトー・デ・モワン2017のインポーターは巴ワイン・アンド・スピリッツ株式会社。その名の通り巴工業の関連企業だ。巴工業から年末に株主優待のワインが届くのは、ひとえに巴工業本体の経営が健全で、かつ巴ワイン・アンド・スピリッツが存続しているが故。というわけで両企業のみなさん、いつもご苦労様です。応援してます! 100株(株主優待が受けられる最低の保有数)しか持ってないけど!

このドンペリ安い↓

 コノスルのブラン・ド・ブランはいつでも安い↓

 

 

2022年に飲んだ忘れられないワイン6選【高ワイン/安ワイン】

2022年もたくさんのおいしいワインと出会うことができたが、なかでも印象に残るものを発表していきたい。高ワインの部、安ワインの部に大別し、それぞれ赤・白・泡・シャンパーニュを1本ずつ挙げていきたい。早速いってみよう。

【高ワイン/泡】ダオサ ブラン・ド・ブラン 2015

まず泡部門はダオサ ブラン・ド・ブランだ。これは本当においしくて、間違いなく今年の非・シャンパーニュベスト。なんだよダオサって、知らねえよ、と思う方も多いと思うがこれはオーストラリアでボランジェの経営者ファミリーがつくる泡だ。これめっちゃくちゃおいしかった。

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飲んだ瞬間にどこでもドアで密林系の楽園にワープさせられたような感覚に陥る熱帯目爛熟類果実科の香り。「ボランジェがオーストラリアで造る泡」みたいな通りいっぺんの味わいではなく、もしドン・ペリニヨンがオーストラリアで生まれていたら……? みたいな壮大な歴史ifを感じるような味わいだったのだった自分でもなにを言っているかよくわかってないけど。

ともかくびっくりした。また飲みたい。

 

 

【高ワイン/赤】リシャール・マニエール エシェゾー2018

続いて赤だがこれはリシャール・マニエールのエシェゾー2018が素晴らしかった。本当に素晴らしかった。亀戸の名店・デゴルジュマンで開催された「シャンパーニュってなんだ? 会」でご馳走になった一杯だ。

VR薔薇園としか言いようがないすさまじい香り。呼びかけに応えると中に吸い込まれる『西遊記』に出てくる妖怪が持つひょうたんのように、グラスを覗き込むと仮想の薔薇園に吸い込まれていくような感覚に持っていかれる。2022年、ワイン自体の固有結界・領域展開感がもっとも強かったのがこのピノ・ノワールだった。

この日の感動はほかにもちょこちょこブルゴーニュピノ・ノワールを飲んだ2022年、ついに更新されなかった。また飲みたい。TKさんありがとうございます。

2020VT売ってた。↓

 

【高ワイン/白】オーベール シャルドネ ソノマコーストUV-SLヴィンヤード2011

白はカリフォルニア。「オーベール シャルドネ ソノマコーストUV-SLヴィンヤード2011」が素晴らしかった。

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今年はたくさんカリフォルニアのおいしいシャルドネを飲ませていただいた。コングスガード、キスラー、ピーター・マイケル、ポール・ラトー、ウィリアムズ・セリエムと枚挙にいとまがなくて我ながらマジかとなるが、私はオーベールが一貫して好きだった。また飲みたい。

これまた2020VTが売ってた↓

そして私の友人であるNagiさんが「研修生時代に造ったワイン」も素晴らしかった。こちらは市販品ではないのでアレだが、思い出に残る一杯となった。

 

【高ワイン/シャンパーニュ】ジャック・セロス「イニシャル」

続いてシャンパーニュだが、これは亀戸の名店・デゴルジュマンで飲んだジャック・セロスの「イニシャル」が素晴らしいにもほどがあった。安ワイン道場師範が居合わせた方からご馳走になったのをさらにお裾分けしてもらうという幸せカンパニーの孫請け企業みたいな飲み方をした1杯だったがこれは本当にすごかった。溶かした黄金が発泡しているような液体だった。

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さぞかしおいしいんだろうなあという期待のハードルを鳥人ブブカの跳躍を思わせる余裕さで超えて行った印象だった。いつかまた飲みたい。

考えてみると赤もシャンパーニュも今年のベストは自分でお金を払っていない。2022年もひとさまのふんどしで相撲を取りまくった一年であった。みなさんありがとうございます。

 

【安ワイン/赤】ヴィーニャ・ファレルニア「ピノ・ノワール グランレセルバ」

さて続いては安ワイン部門に移っていきたい。

まず赤ワインだが、ヴィーニャ・ファレルニア「ピノ・ノワール グランレセルバ」だ。標高2000メートルを超える高地、年間降雨量50mm、20hl/haという超低収量という三拍子揃ってお値段2000円台という脅威のワインで、このワインについて買いた私の記事には大胆にもドメーヌ・タカヒコのナナツモリを想起するみたいなことが書いてある。私の場合ピノ・ノワールから梅とかかつお節みたいなニュアンスを感じるとすぐにナナツモリを想起してしまうガバガバ具合なので話半分に聞いていただきたいのだが、冷涼薄うまピノなのは間違いがない。

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ワイン好きのみなさんからは見向きもされてない節があるが、私はワインにハマりたての頃から今に至るまでチリワインが大好物。なかでもこれは素晴らしい1本だと感じた。今年はもう少し意識的にチリワインを飲んでいきたい。まだまだ隠れた宝石が眠っているはずだ。

 

【安ワイン/泡】コノスル「ブラン・ド・ブラン」

さてそんなわけで続く泡部門もチリワインだ。2022年にもっとも感銘を受けた3000円以下のスパークリングワインはコノスル「ブラン・ド・ブラン」でした。1500円とか。隠れてもなんでもないやつですねこれ。

himawine.hatenablog.comコノスルのスパークリングワインは黄緑っぽいやつとピンクのロゼがスーパーなどに出回っているが、これは明確にイマイチ。コノスルは安くておいしいが泡はちょっとなあと思っていたのだがこのブラン・ド・ブランは素晴らしい。

スパークリングワインの味の方向性は大きくふたつに分かれると私は考えていて、ひとつはシャンパーニュ意識系(代表:カヴァ、フランチャコルタ等)で、もうひとつはシャンパーニュ知らん系(代表:プロセッコ、プロセッコ&プロセッコ)だが、このワインの味の方向性は完全にシャンパーニュ意識系。

1500円ながらしっかりと複雑みがあり、パン的な酵母を思わせる香りもする酵母の香り嗅いだことないけど。難点はあんまり売っていないことというだけの素晴らしいスパークリングワインだったので、見かけたらぜひ入手してください……!

 

【安ワイン/白】ドメーヌ・イノソンティ 「サン・ヴェラン レゼルヴ・ジョベール」

最後に白部門で、3000円以下の安ワインで2022年に驚かされたものの筆頭と言っていいのが、「下北沢ワインショップ」の試飲会で飲んだドメーヌ・イノソンティ のサン・ヴェラン レゼルヴ・ジョベールをご紹介したい。ボジョレーの造り手がブルゴーニュの南の端のマコネ地区のそのまた南の端のサン・ヴェランで造る白ワインなのだが、これが本当においしかったのだった。

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ブルゴーニュの白ワインに求めるのは酸味、果実味、樽のたっぷり感に加えて若干不本意ながらミネラル感としか呼びようのないなにか、だと思われるのだが各要素が80点くらいの感じでしっかり備わっている。ブルゴーニュのお高い白ワインのジェネリックというか、クローンというか、いい絵だなあと思って眺めていたら「これAIが0.02秒で描いたやつですよ」と言われたときみたいな衝撃を受けた。

今年NO.1安白ワインは間違いなくこれ。安ワイン全体1位だったかもしれない。ヒマワイン的安うま大賞と言える。

2本買った↓

というわけで2022年も素晴らしいワインとたくさん出会えたのだった。2023年もたくさんのいいワインと出会いたいものである。

ドイツで働く醸造家・Nagiさんってどんな人? どんなワインを造ってる?

醸造家・Nagiさんと私

2月11日に「Nagiさんワイン会」を開催することとなった(※現在は募集を締め切っています)。というわけで、やや唐突だが「私とNagiさん」という作文を今から書こうと思う。

Nagiさんはドイツでワインを造る醸造家だ。もともとワインラヴァーだったわけではなく、とある事情からワイン造りを志すことになり、東京でのサラリーマン生活に区切りをつけてドイツのガイゼンハイム大学に入学し、醸造学を修めて卒業。現在はドイツで800年続く醸造所の醸造責任者としてキャリアを築いているすごい人だ。

Nagiさんとの初対面がこちら↓

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Nagiさんの魅力を一言でいえば、誠実である、という点にあると思う。逆にいえば、適当でない、と言えるかもしれない。自然派、あるいは無農薬、みたいな文言に我々一般消費者は漠然と「良さそう」という印象を抱く。しかし、栽培・醸造の現場から見れば、それらはときに非科学的で、保証されるべき品質に対して妥当ではなかったりもするとNagiさんは指摘する。

Nagiさんが考える「いいワイン」の条件↓

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その姿勢を私は科学的だと感じる。科学的とはエビデンスが存在し、ゆえに再現可能な手法であるということ。それに対して現実のブドウ栽培は天候の影響を強く受けるため、厳密には再現可能ではそもそもない。その狭間で苦闘しながらも、日本人的律儀さでもって欧州基準の、きちんと現地の評価誌でも評価されるワインを造る。その姿勢が誠実だなあと感じるのだ。

それに対して私は適当だ。目の前のグラスに入っている液体がおいしいと感じられればあとはなんでもいい、というのが私のワインに対する基本的態度で、おそらくはワイン界隈マトリックス図があれば私はNagiさんの対極に位置している。にも関わらずとても仲良くさせていただいており、昨年からはYouTubeチャンネルも共同運営しているから不思議だ。ものすごくきっちりした女性がものすごく適当な男性と付き合ったりすることがあるが、そんな感じかもしれない。どんな感じなんだよ。

[Nagiさんと、ワインについてかんがえる。CH]ぜひご覧ください↓

www.youtube.com

「Nagiさんワイン会」開催の理由

そんなNagiさんと2月11日に「Nagiさんワイン会」を実施する。このワイン会を企画した理由はシンプルそのもので、私の「Nagiさんのワインをたっぷり飲みたい」という思いに起因する。Nagiさんのワインは現在日本国内で流通しておらず、国内で飲もうと思ったらNagiさんが帰国した際にハンドキャリーしてくれたものを飲むしか方法がない。それだとあまりたくさんは飲めない。でもたくさん飲みたい。困った。

ならばワイン会を実施すればいいんじゃないか、というのがシンプルすぎる企画意図だ。

だってむちゃくちゃおいしいんですよ、Nagiさんワイン。とくに昨年いただいた「Nagiさんが研修生時代に造ったワイン」がすごかった。それはNagiさんが某国の有名ワイナリーで研修生をしていた折、研修先の基準でハジかれた使わないブドウで造ったというTOKIOの番組『ザ!鉄腕!DASH!!』における“0円食堂”的企画で造ったというワインだったが、これが正直に申し上げて2022年の白ワインベスト級においしかったのだ。

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廃棄されるはずのブドウで造ったワインがこの味ならば、ドイツの特級畑で採れたブドウと専門の設備で造られたワインはどうなってしまうんだ? という興味を抑えることはできない。そのワインを飲んだ瞬間から、遠くない未来にNagiさんのワインをたくさん飲めるワイン会を企画しよう…! と考えていたのだった。それがついに実現する。胸熱だ。

 

Nagiさんワイン会で飲めるワインについて

このワイン会のためにNagiさんが現地から送ってくれたワインは6種類。うち5種類はリースリングで、なかでも楽しみなのは3種類のGG(グローセス・ゲヴェックス、ドイツにおける格付け最上位の辛口ワイン)、すなわち。Johannisberg、Scharlachberg、Felseneckという3つの特級畑の飲み比べだ。

Nagiさんファーストヴィンテージのワインがこちら。おいしかったなあ。

「Felseneckは3本のなかではもっとも涼しい畑で酸が立っています。土壌は緑色粘板岩です。 JohannisbergはFelseneckよりも丸みがある酸で膨らみがあります。土壌は赤色粘板岩です。 Scharlachbergはナーエではなくラインヘッセンの畑で、この中ではもっとも暖かい畑です。水の供給がよくかなりボリューム感があります。土壌は石英中心の粘土ですね。 ちなみに3本ともMeiningerのGGコンテストで400本くらいのなかで上位5%に入っています」

この3本のワインについて聞いた際のNagiさんの回答がこれだ。GG400本のうちの上位5パーに入ってるって文末にさらっと書いてあるけどすごくないすかこれ。それって3本ともドイツの辛口ワインのBEST20に入ってるってことなんじゃ……?

というわけで、2月11日のNagiさんワイン会にぜひご参加を。(※現在は募集を締め切っています)ロシアのウクライナ侵攻を受けて航空便の値段が高騰していることもあって参加費はやや高めになってしまったが、Nagiさん本人によるワインの詳細な解説あり、直接質問もできるということもあって(もちろんおいしい食事もしっかりつく)、参加して損のない内容となっている。

参加希望の方は、
hima_wine@outlook.com
までメール、あるいはTwitterアカウント
@hima_wine
までDMをお送りいただきたい。トップにワイン会の告知投稿を固定しているので、そこにリプライを送っていただいてもOK。私ヒマワイン、ならびにNagiさんと面識がなくても参加は大歓迎だ。

ぜひ、ふるってご参加ください!

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ナイティンバー。イングリッシュスパークリングの“最大手”を飲んでみた。

「ナイティンバー」とイングリッシュスパークリングワインの歴史

イングリッシュスパークリングの雄である「ナイティンバー」がワインをあげるから飲め、と言ってくれたので「飲む」と回答したところ送ってきてくれたので飲んだ。ワインブログも3年もやってるとこんなありがたい話が舞い込んでくるものだ。桃栗3年、ブログも3年である。送っていただいたのは、ナイティンバーのクラシックキュヴェ マルチヴィンテージだ。

さて、ナイティンバーを語る前にまずは進境著しいイングリッシュスパークリングの現状について触れておきたい。

英泡の歴史は短い。ビックリするほど短い。なにしろその代表銘柄のひとつと言えるナイティンバーでさえ、畑にブドウが植えられたのが1988年。初リリースは1997年のことなのだ。1997年、割と最近感ある。

にもかかかわらず、2017年にイングランドウェールズで生産される割合の68%をスパークリングが占めたというからいかにこの四半世紀で英泡が伸びているかがわかる。シャンパーニュ3品種(ピノ・ノワールシャルドネ、ムニエ)が植えられたブドウ品種の71.2%を占めるっていうし。その前はドイツ品種で泡を造ったりしていたらしいのだが、90年代以降一気にシャンパーニュ品種に置き換わったようだ。

つまり「シャンパーニュに代わるワイン」はイギリスワイン産業におけるエースで4番。アナーキー・イン・UKならぬシャンパーニュ・イン・UK状態なのだ。

 

イングリッシュスパークリングワインの現在地点

その国で生産するスパークリングワインの割合がスティルワインの割合より多いのってちゃんと調べていないがおそらくイギリスだけのはず。イギリス人がそれだけ泡が好きだということだと思うし、それだけイングリッシュスパークリングの品質が高いということでもあると思う。

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最近ではテタンジェがイギリスでスパークリングワインを造り始めてもいるようだ(2024年以降のリリース)。気候変動でフランスのシャンパーニュ地方がどんどん暖かくなり、涼しくて土壌的にもシャンパーニュに近い白亜質だっていうイギリス南東部は、年々泡の産地としての存在感を高めている。とにかくイギリスではスパークリングワインの生産が近年爆増しているのだ。

ちなみに「イングリッシュ」や「イングリッシュ リージョナル」は原産地保護されている呼称で、使用される品種も規定されているようだが、基本、使われる品種はシャンパーニュと同じであるようだ。繰り返しになるが、すなわちピノ・ノワールシャルドネ、ムニエだ。

 

ナイティンバーはどんな生産者か

ナイティンバーに話を移すと、ナイティンバーはスパークリングワイン専門の生産者。イングランド南部のウエスサセックスハンプシャー、ケントの3州に11の畑を持つ英国最大の生産量を誇るイングリッシュスパークリングワインメーカーだ。

エスサセックスハンプシャー、ケントと言われてもどこだかさっぱりわからないが、ロンドンの南でイギリス海峡沿いの地域。シャンパーニュとは海を挟んだ逆側みたいに言えば言える的な地理であり、もともとは同じ土壌だった云々という話があるようだ。

ナイティンバーはシャンパーニュ品種を使い、シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵でワインを造った英国最初のワイナリーでもあり、すべてのワインを自社畑のブドウから造るというこだわりを持っている。

 

ナイティンバーと醸造シェリー・スプリッグス

2006年にオランダ人弁護士のエリック・ヘレマにオーナーが代わると、2007年にカナダ人女性醸造シェリー・スプリッグスを招聘。

オーナーのオランダ人弁護士エリック・ヘレマ(左)と醸造家夫妻。この3人が中心人物だそうだ

このシェリーさんが凄腕なようで、2018年にインターナショナルワインチャレンジのスパークリングワインメーカー・オブ・ザ・イヤーシャンパーニュ地方以外のスパークリングワインメーカーとして初めて、さらに女性としても初めて受賞。

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シェリーさんはオーストラリアとアメリカで学び、オーストラリア、ニュージーランドアメリカなどでキャリアを積んだという人物。経歴だけ見るとシャンパーニュでは学んだり働いたりしていないという点も、なんとなく新時代の造り手感がある。

そんなナイティンバー、2022ヴィンテージからは100万本の生産を見込んでいるのだそうで、だからつまり英国のワインの生産量の1/10以上をいち生産者が占めるレベルだそうなのだが、その生産量の85%は国内で消費されてしまうのだそうだ。イギリス人、ガチで泡好きすぎ。

そして100万本の生産をすべて自社畑のブドウっていうのがすごいメガRM、みたいな感じか。

100万本すべてを自社畑のブドウで造っているそう。

日本においてもしっかり人気なのだそうで、亡くなったエリザベス女王のプラチナ・ジュビリー(即位70周年)限定デザインのボトルは発売翌日に完売したそう。

その代表作であるクラシック・キュヴェ マルチヴィンテージはシャルドネピノ・ノワール、ムニエをブレンドし、最低36カ月熟成させたというワインだ。おいしそう。

 

ナイティンバー クラシック・キュヴェ マルチヴィンテージを飲んでみた

というわけで飲むことにしたのだが、まずグラスに注いですぐに細かい泡が勢いよく立ち上がるのが目に楽しい。レモン系の酸味を思わせる柑橘系の香りがして、飲むとやっぱり印象的なのは酸味。

プロ野球の投手が力感なく投げたボールがお辞儀せずにスーッと糸を引くようにキャッチャーの構えたミットに吸い込まれていく。そんなイメージで伸びやかでキレ味鋭い酸がグラスの底から液面までを貫いている。

vivinoの評価は4.2。たっか。

リンゴのような白桃のような果実味も豊かにあって、あとなんすかねこの香ばしさ。シャンパーニュのパン的な香りとはちょっと異なるこれはなんだろう。白系ナッツ、みたいな印象だ。

そして全体を標高の高い岩山から滲み出した水、みたいな雰囲気がまとめあげている。そして2日目くらいから紅茶みたいなニュアンスがやってくる。英国すぎるでしょこれ。

イングリッシュスパークリングというと「シャンパーニュと価格帯がかぶる」こと、なんなら英泡のほうが高いまであるってことが最大の問題点と言われがち。今回いただいたナイティンバーのクラシックキュヴェも9000円と、なかなかの値段がする。ただ、その味わいは非常に良く、「あえてこれを選ぶ」価値が十分にあると言っていいと思うんスよ。ブラインドで持ち込んで盛り上げちゃいましょう。

というわけで、いいシャンパーニュを買おうと思ったときに、ちょっと思いとどまって1回こちらを買ってみる選択肢は全然アリだと思う。イングリッシュスパークリング、今のところまったく外れがないです。いや、もらったから言うわけじゃなくて。

 



ドメーヌ・ルロワ ロマネ・サンヴィヴァン1997を飲んできた

ルロワのロマネ・サンヴィヴァン97を飲みに行った

ドメーヌ・ルロワのロマネ・サンヴィヴァン 97が飲めるワイン会に誘われたので貯金箱を叩き壊して参加することにした。

あのさあ、ふだん「この598円のワイン大発見! ウヒョー!」とか言ってる野郎がなんでそんな偉大なワインを飲めるんだよと思われる方もおられるかもしれぬがその秘密が参加した加州塾、というワイン会にある。

加州塾は2010年からスタートした歴史ある会。主催者のMさんがアメリカ駐在時代に買い集めたワインを月に2度みんなで集まって飲むという会で、その名の通りカリフォルニアワインを飲む「本編」と、それ以外の国のワインを飲む「番外編」が交互に開催されており、今回は「番外編」の“年末スペシャル”的位置付けの会。

今回のルロワは2000年頃にMさんがアメリカで購入したものだそうで、当時の価格で買っているからこその会費で提供してくださっている。そのため、普段はスーパーで78円の納豆と98円の納豆のどちらを買うかで長考するみたいな暮らしをしている私でも参加が叶ったという次第だ。つまりすべてはMさんのおかげである。

最初にあえて野暮なことを書くと、ルロワのロマネ・サンヴィヴァン 97は本稿執筆時点で楽天に商品ページの登録があり、その販売価格は202万1250円だ。もう一度言おう、2021250円だ。なんですかこの住宅ローンの頭金みたいな値段は。

私は普段だいたい1250円くらいのワインを飲んでいるので、今回飲ませていただいたワインは私の普段飲みのワインよりも202万円高い、ということになる。もちろん私の過去飲んだ最高額のワインだ。

価格はともあれドメーヌ・ルロワのワイン自体飲むのがはじめて。四半世紀の熟成をしたトップ生産者の特級畑、一体どんな味わいなのか…と期待に胸を弾ませつつ会場のイタリアン、ピアット・デル・ベオーネに向かった。ちなみにピアット・デル・ベオーネは東京・新橋にあり、ソムリエールの素敵なサービスとワインに合いまくるシェフの料理、そしてアットホームな雰囲気が最高なお店だ。

この日のラインナップは以上のような感じ。11本のワインを12人で飲む。このうち、ドメーヌ・ローランとルロワ、そしてロキオリのシングルヴィンヤード4本はMさんがリリース当時に購入されたもの。そこに会の趣旨に沿って適宜買い足して人数-1本で構成されている。まずは乾杯の泡から、グラス・バイ・グラスで会の模様をレポートしていきたい。

 

1. Bollinger Brut Champagne Special Cuvee N.V. 

乾杯の泡はボランジェ スペシャル キュヴェ。

ボランジェスペシャルキュヴェは私が一番好きなスタンダードシャンパーニュだが今回飲んだボトルももちろんおいしく、ミルキーな感じ、焚き火のような少し焦げた感じ、そこに切ったばかりの杉のような爽やかな香りが漂う飲む森林組合感をたっぷり楽しめる。何度飲んでもやっぱり好きだ。

 

2. Bollinger Brut Champagne PN VZ16 N.V. 

開幕はボランジェ2連発。続いてはボランジェが2015VTからリリースをはじめたという「PNシリーズ」で、これはピノ・ノワールで造るブラン・ド・ノワール。VZはヴェルズネ村のブドウを主としていることを示しているそうだ。

ほんの少しピンクがかっていて、味わいに果実の厚みがあり、リザーヴワインをふんだんに使っているというだけに複雑味や熟成感も加わって非常においしい。

前菜はワカサギのエスカベッシュ。南蛮漬け的な甘酸っぱい味がシャンパーニュに合う。

ちなみにこのキュヴェの17ヴィンテージは「VZ」から「TX」へと変わっており、この「TX」ってなんだろうという話になった。調べてみると正解はトーシエール村のブドウを主としているの意だったのだが、「うーん、なんでしょうか。テキサスかな?」というMさんのカリフォルニアジョークが最高だったことを付記しておきたい。

 

3. J. Rochioli Chardonnay Russian River Valley Sweetwater 2011

泡を飲み干すと、会はロキオリのシングルヴィンヤード4連発のシャルドネゾーンに突入していく。同一生産者の同一ヴィンテージの畑違いの飲み比べで、ここだけ普段の加州塾本編のイメージだ。

「ロキオリはもともとはウィリアムズ・セリエムなどにブドウを供給していた人で、1980年代から本格的にロキオリの名前でワインを造り始めています。ロシアンリバーヴァレー右岸のウエストサイドロードっていう道沿いにはいくつかワイナリーがあるのですが、ロキオリはなかでもオススメのワイナリーです」(Mさん)

畑の地図を示しながらのMさんの説明で解像度がグッと上がる。なるほどなあ、ロシアンリバーヴァレーにも右岸とか左岸とかあるんだよな。

その一本目はロキオリの畑のなかでもっとも標高の高い位置にある「スウィートウォーター」で、飲んでみると蜜りんごのような果実感、黄金糖のような甘みで全体に甘露系の味筋。これをベンチマークに、続く3本を飲んでいくことになる。

 

4. J. Rochioli Chardonnay Russian River Valley South River 2011 

続くのはサウスリバー。これがちょっとビックリするくらい色が濃い。同じ年の同じ生産者のワインでも10年超の熟成を経ているとこんな違いが出るんだ、という印象だ。

「樽が控えめで、酸がキレイに出ていますね」とMさん。私はカラメルのような甘苦さを感じて、最後飲み干すときには焼き栗みたいな香ばしさも感じた。

ポルチーニのポタージュはシャルドネにピッタリだった

Mさんいわく、このような畑違いを飲み比べる場合、熟成による個体差が出る前、リリースから3-4年後に飲むのがベストなのだそうだ。勉強になるなあ。

 

5. J. Rochioli Chardonnay Russian River Valley River Block 2011 

つづいては「リヴァーブロック」で、こちらは明確に色が薄い。ストレートな酸が残るすごくキレイでフードフレンドリーなシャルドネという印象で、すべてが90点といったようなバランスの良さがあった。

カリフォルニアのシャルドネ=樽みたいなイメージは、この会に参加させてもらうといつも思うことだが一側面にしか過ぎず、実際はこういうエレガントなものもあるから面白い。

 

6. J. Rochioli Chardonnay Russian River Valley Rachael’s Vineyard 2011

最後に出てきたのがレイチェルヴィンヤード。問答無用の本命だ。なぜなら娘の名前がつけられた畑だから。娘の名前キュヴェにハズレなしの法則である。生産者、手持ちの最良の区画・最良のキュヴェに娘の名前をつけがち。

みたいなことを話していたら「娘の名前をつける生産者は多くいますが、妻の名前をつける生産者はほとんどいません。離婚のリスクがありますからね……」とMさん。余談だがキスラーの「キャスリーン」は妻の名前キュヴェかつトップキュヴェ。キスラー、男の中の男だぜ……!

さてこのワインだが法則に則り非常に素晴らしいワインだった。個人的にはロキオリの4つのボトルのなかで抜けて素晴らしいと感じた。

ブドウの樹にストローをブッ刺して流れるプラチナ色の樹液をそのまま飲んでいるようなクリーンさとリッチさが共存し、果実のフレッシュさも残っていて、これはもう私が飲んだ限りのシャルドネの究極系のひとつという印象だった。すごいなレイチェル。娘の名前のキュヴェにハズレ、ガチでない。

以上、ロキオリの畑違いのシャルドネ飲み比べは大満足で幕を下ろしたのだった。いやー、素晴らしい会でした。良いお年を! と帰宅できるレベルだが夜はまだまだこれから。会はルロワに向けてさらにじんわりと熱を帯びていく。

 

7. Charles Noellat (Cellier des Ursulines) Bourgogne Pinot Noir 2009

会はこの後2009年のブルゴーニュ2本を経て、1997年のブルゴーニュ3連発へという流れ。トップバッターがシャルル・ノエラのブルゴーニュ09だ。

シャルル・ノエラはかつてはドメーヌの名前だったが現在は屋号だけが残っている。ドメーヌ時代の畑はラルー・ビーズ・ルロワに売却しているそうなので、ルロワつながりといえばルロワつながりだ。

「ワインを買ってきてシャルル・ノエラの名前でリリースするのですが、その目利きは悪くないと思っています。すごい! はないけど、悪くないのを飲ませてくれるんです」

キャベツとウナギのリゾット。以前もいただいたこの料理、非常においしい。

とMさんが解説をしてくれたのだが運ばれてきたグラスからはあんまり香りがこない。あれおかしいな。ロキオリで鼻が麻痺した…!?

味わいも普通においしいのだがちょっぴり果実が弱くて渋みが強め。でもまああれですよ。ちょっと期待値に届かなかったみたいなワインのほうが印象に残ったりするのもワイン会の妙なんですよ。イチローだって6割以上の確率で凡退するんですよ急に野球の話をすると。次行きましょう。

 

8. Domaine Jacques Cacheux et Fils Bourgogne-Hautes Cotes de Nuits Rouge 2009

09の2本目がジャック・カシュー

「ちょっとタンニンが浮いた感じ」「全体にちょっと薄い」といった声が会場からは聞かれて私も大筋同意だがラッシャー木村vs永源遙の前座があってはじめて三沢光晴vsスタン・ハンセンのメインイベントが輝くんですよ急に平成初期の全日本プロレスの話をすると。ワイン会でも全部のワインが大当たりなんてことはむしろ少なく、多少の凹凸があったほうがよりメモラブルになるというものだ。いやホントに。

 

9. Lou Dumont Nuits-St.-Georges Lea Selection 1997

09年という名の第3コーナーを駆け抜けて、会はいよいよ最後の直線へと入っていく。先頭を切るのは日本人醸造家・仲田晃司さんが買い付けたワインを自社ブランドとしてリリースするルー・デュモンの「レア セレクション」からニュイ・サンジョルジュ97。

で、これがブルゴーニュ3本目にして素晴らしいワインだったのだった。よかった。

ブルゴーニュのワインらしい薔薇の香り。飲んでみるとオレンジの皮を剥いたあとの部屋みたいな酸味とフレッシュさ、それに青畳みたいなボタニカルな香りもしてとてもよかった。熟成してくたびれた感じ、枯れた感じはほぼなく、熟成香的なものもとくに感じない非常に健全な状態だったと思う。

 

10. Dominique Laurent Mazis-Chambertin 1997

続いてはドミニク・ローランのマジ・シャンベルタン97。ドミニク・ローランといえば買い付けたワインを新樽に移し、しばらくのちにまた別の新樽に移すという“新樽率200%”で知られる醸造家。(現在は畑を取得し、ドメーヌものはエレガントな造りとのこと)

このワインにも新樽率200%が採用されているか否かはさだかでないが、マジ・シャンベルタンというよりガチ・シャンベルタンと言いたくなるようなパワフルな味わいなのは間違いなかった。繊細ではなく強靭。

以前、カリフォルニアの果実味もタンニンも力強いスタイルのことを現地では「ビッグ&ボールド」と呼ぶのだとMさんに教えていただいたが、このワインはまさしくビッグ&ボールドなブルゴーニュ、という印象。

牛ホホ肉の赤ワイン煮は冬のご馳走って感じがする。

「僕は好きですが、ブルゴーニュ好きの人にはこのタンニンの感じが好きじゃない人がいるのもわかります。ただ、ロバート・パーカーは好きだったんですよ、こういうワインが」というMさんの話がまた面白い。

90年代、パーカリゼーション華やかなりし頃、私はワインを飲んでいなかった(なんとまだ10代だった)。その当時の話は人に聞いたり本で読んだ知識しかないが、ワインの世界ではなんと教科書を飲むことができるのだ。この97年のマジ・シャンベルタンは「当時はこういう味が流行ってたんだよ」と教えてくれているみたいな印象だった。

 

11. Domaine Leroy Romanee St.-Vivant 1997

そして我々はついにドメーヌ・ルロワのロマネ・サンヴィヴァン1997へとたどり着いた。

そしてやっぱりこれはすごいワインだったのだった。まず驚かされるのはとにかく凄まじい香り。過去に類似する香りを味わったことがないのでたとえようがないのだが強いて言えば天国香、みたいな香りだ。気持ち悪いたとえをすると少女に手を引かれて森の中を歩いて行って気がついたら宇宙でした、みたいな脈絡のないスケール感がある。ダッシュしてジャンプしたら月に手が届いてしまったような感覚と言ってもいい。ちなみに自分でもなにを言っているのかさっぱりわからない。

味わいにおいては果実もしっかりとあり、旨味がそれと拮抗している。おいしく熟成したピノ・ノワールには出汁感があるなんてよくいうが、これは出汁を超えてスープ感がある。

さらにもっといえば、けつえき。みたいな感じもする。体液を経口補水している感覚というか、異様なまでに体に馴染むのだ。私がこのワイン会の帰り道に事故にあって大量出血したら輸血はこのワインでやってください、みたいなことを真顔で考えてしまうような感じがする。おいしいワインは科学リテラシーを破壊する。

ブルゴーニュのお手本」

「これだけ飲んでいたい」

「寝てたわけじゃないが目が覚める」

みたいな声が会場からは聞こえて、そのすべてに同意だ。最初はわずかに閉じていように感じたが、少しずつ、じんわりと、その大輪の花を咲かせていった。

ただしかしここは加州塾。最高のカリフォルニアワインで己の味覚を鍛え上げたみなさんのなかには、このワインに無条件に100点を付けない方もおられた。

「まだ少し若いと思います。5年後くらいに本領を発揮するのでは?」

「ルロワのスタイルは意外と濃いめ。この薄さは議論が分かれると思う」

といった意見も聞かれ「ドミニク・ローランのマジ・シャンベルタンのほうが好み」という方もおられた。

1本のワインに対して抱く感情は100%自由だ。それってワインの素晴らしさだと思いませんかみなさんッ(ネクタイを頭に巻き付け、机に突っ伏した状態で)。

そしてたしかに、そう言われてみると、香りは100点満点ながらもしかしたら味わいにはまだ先があるのかもみたいな気がしてくるといえばしてくる気がするような気がしないでもないような気もする。ワインの道に果てはないですなぁ。

「いずれ、ドメーヌ・ルロワの前後のヴィンテージもお出しします」とMさん。その日がくるまで、また豚のカタチの貯金箱に小銭を放り込む暮らしをせねばなるまい。と思った加州塾番外編だったのだった。Mさん、いつもありがとうございます!

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