コノスル レゼルバ エスペシャル ヴァレー コレクション全8品種を飲むのもこれが最終回。今回は残りのシラーとピノ・ノワールを飲み、8品種のランキングを発表していこうと思う。さっそく行ってみよう。
前回はこちら↓
コノスル レゼルバ エスペシャル ヴァレー コレクションシラーを飲んでみた
シラーが栽培されているのはリマリヴァレー。コノスルの所有する畑のなかでも北のほうに位置するので温暖かと思いきや、Rimari Valley Wine Regionのwikiによれば、カマンチャカ、なる謎めいた名前の霧の影響を強く受け、意外と冷涼みたい。
さらに、降水量が年間「4インチ」だっていうんですよ全然ピンとこないけど。ピンとこないのでミリ換算すると約600ミリとなり、東京の降水量がだいたい1500ミリ、地球平均が1000ミリらしいのでかなり少ないことがわかる。なんかこう、ブドウを育てるのに良さそうなデータが揃う土地って印象だ。
2020年ヴィンテージのテックシートによれば、75%がバリックで25%がフュードルで12カ月熟成されるそう。フュードルってあれですよね。ローヌとかで使われる大樽。その後ステンレスタンクで1カ月熟成。
で、飲んでみるとこれ結構さわやかなシラーだな。シラー(ミント味)みたいな印象。なんていうかあれ今自分モヒート飲んでるんだっけみたいな香りがするわけなんですよ。
個性的でおいしいのだが、好みかと問われれば微妙、という味わいだったのだった。
コノスル レゼルバ エスペシャル ヴァレー コレクションピノ・ノワールを飲んでみた
さて、最後はコノスル エスペシャルランキングの本命候補であるピノ・ノワールだ。産地はサン・アントニオヴァレー。なんでもチリでもっとも新しいアペラシオンなのでそうで、太平洋に近いのが特徴。
となればもうこのコノスル調査で何度目にしたかわからないフンボルト海流の出番だ。またお前かよ。ただ、再頻出ワードであるのには理由があって、フンボルト海流がもたらす日中の霧により冷涼で、夜間に気温が下がることからこの土地ではブドウの生育期間が長くなり、酸度と熟度のバランスが良くなるんだそうだ。いいぞフンボルト海流。
ワインは2019年のデータによればピノ・ノワール100%で樽熟成12カ月、ステレンスタンク熟成1カ月とのこと。飲んでみると、やっぱりおいしいんですよコノスルのピノ・ノワールは。
すごいのは、明確に「薄うま」である点で、安ピノ・ノワールの(私の中の)常識としては、1000円台前半で薄うまはまず存在せず、総じて1000円台のおいしいピノ・ノワールは果実味が主体であり、薄うま系が登場するのは2000円台半ば以降となるはず。なのに1000円台前半で薄くておいしいのが偉い。産地の特徴がそのままワインになってる感じがするのもいい。
驚くほどおいしい、というわけではないのだが「1000円台前半で買えるおいしいピノ・ノワール」として、しっかり役割があるワインだ。
コノスル レゼルバ エスペシャル ヴァレー コレクション ランキング
さて、これで全8品種を飲み終えた。廉価レンジであるビシクレタを全品種飲んだ後でも発表したが、ここからはお楽しみのランキング発表タイムだ。ビシクレタでは1位がピノ・ノワール、2位カベルネ・ソーヴィニヨン、3位がヴィオニエだった。果たして上位レンジであるエスペシャルではどうか。まずは8位から6位を発表していこう。
8位:カルメネール
7位:シラー
6位:シャルドネ
というわけで申し訳ないが最下位はカルメネールとなった。シャルドネもビシクレタに引き続き上位進出ならず。シラーも好きな品種なのだが、これもビシクレタに引き続き下位に沈んだ。続いて5位から3位を見ていこう。
5位:ソーヴィニヨン・ブラン
4位:ピノ・ノワール
3位:リースリング
涼しいところが良さそうな品種が3つ並んだ。ソーヴィニヨン・ブランとリースリングはどちらも相当レベルが高く非常に悩ましかったが、酸っぱいのが好き、という個人的好みでこの順位とした。4位のピノ・ノワールは安定の高品質という印象だ。
というわけでいよいよ最後は2位と1位。これだっ。
2位:カベルネ・ソーヴィニヨン
1位:メルロー
というわけで個人的に最大のサプライズはメルローの大躍進だった。果実のボリュームがもっとも大きく、酸味、渋みも調和してもっとも赤ワインらしさがあった。
カベルネはあくまで好みだが、樽がちょっと主張しすぎなような気がした。
ビシクレタとエスペシャルどちらを買うべきか問題
「ビシクレタ」と「エスペシャル」の価格差は400円ほどだが、私はその400円は惜しまずにエスペシャルを買ったほうが幸せになれると思う。この価格帯の400円は小さい金額ではなく、価格の比でいえば1.5倍ほどになるが、味わいも1.5倍おいしいと言って過言でない。いや、ビシクレタも十分においしいのだが。
コノスル レゼルバ エスペシャル ヴァレー コレクション8種類を飲み終えて
とにもかくにもコノスル レゼルバ エスペシャル ヴァレー コレクション全8種類を飲み終えた。
チリのワインはボルドーからもたらされたワイン樹によってはじまった。ゆえに、おそらくアイデンティティの深いところにはボルドーがある。コノスルの親会社はチリ最大手のコンチャ・イ・トロだが、その歴史は1883年に創業者がボルドーからカベルネ・ソーヴィニヨン、ソーヴィニョン・ブラン、セミヨン、メルロー、カルネメールの5品種をチリのマイポヴァレーに運んだことに端を発する。
カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローがおいしいのはこのような歴史な裏打ちがあるからだと思う。カルメネールはもうちょっとがんばってくださいやればできるんだからアナタ。
さらに、コノスルは1999年からピノ・ノワールプロジェクトと称してブルゴーニュから醸造家を招聘してピノ・ノワールに特化したワイン造りを行なっていて、2009年にはピノ・ノワール専用セラーも建設している。だからピノ・ノワールもおいしい。
さらに、おそらくコノスルの所有する畑は、これはなんの裏付けもないただの私見だが、冷涼な畑がいい畑っぽい。なので、リースリング、ソーヴィニヨン・ブラン、ゲヴュルツトラ未ネールとかがおいしい。
というわけで結論として、「コノスル買うならボルドー、ピノ・ノワール、冷涼品種」という仮説を掲げてみたい。これが正しいか否か、今度はさらに1クラス上の「シングルヴィンヤード」シリーズを飲んで検証してみたいと思う。