ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

イタリア&ドイツ試飲会でおいしかったワイン6選【下北沢ワインショップ】

下北沢ワインショップの試飲会に参加した

下北沢ワインショップの試飲会に参加してきた。毎月異なるテーマの元、インポーター2社のワインを複数飲み比べでき、安く購入可能で、かつ1000円で我ら一般の愛好家も参加可能というありがたいイベントだ。

今回のテーマはドイツとイタリア。インポーターはドイツが八田、イタリアがフードライナー。

提供されたワインはドイツが甘口を中心に7種類。イタリアは北から南までバランス良く9種類の合計16種類。なかでもこれはおいしいと感じた6種類を振り返っていきたい。

 

おいしかったワイン1:カッシーナ キッコ「ロエロ アルネイス アンテリージオ」

まずはイタリアから、カッシーナ キッコのロエロ アルネイス アンテリージオ。

花びらや乾燥させた果物ごと淹れた中国の高いお茶、みたいな香り。そこに少しのハーブっぽさもあって香りがなにしろ良い。

味わいもドライなんだけどフルーツを感じられ、アンズみたいなかわいらしさがある。アルネイスの意味はピエモンテ語で「小さないたずらっ子」だそうだが、その通りのチャーミングでハツラツとした味がする。このいたずらっ子め!

アルネイス、かつてはバローロに混ぜられてバローロ・ビアンコみたいに言われていたのが20世紀以降バローロネッビオーロ100%で造られるようになった結果一時絶滅寸前まで追い込まれたのだそうだ。

そんなアルネイスを復興させたひとりがかのブルーノ・ジャコーザ。ブルーノ・ジャコーザのアルネイス飲んでみたい。いずれにせよ、このワインの試飲会特価2400円はかなりお値打ちだと感じた。

 

おいしかったワイン2:マスカ デル タッコ「リ フリッティ プリミティーヴォ ディ マンドゥーリア リゼルヴァ」

続いてはマスカ デル タッコのリ フリッティ プリミティーヴォ ディ マンドゥーリア リゼルヴァ。試飲会特価3300円のワインだが、これはすみませんプリミティーヴォをナメてました自分という素晴らしい味。

マスカ デル タッコって聞いたことあるよなと思って調べてみると、安うまプリミティーヴォの代名詞的存在である「プリミティーヴォ・ディ・マンドゥーリア」(黒地に青のラベルのやつ)の生産者、ポッジョ・レ・ヴォルピのオーナー兼醸造家が2010年に取得した協同組合だった。というわけでこれは1000円台前半で買える「プリミティーヴォ・ディ・マンドゥーリア」の完全上位互換と言っていい味。

プリミティーヴォの良いところは甘いところで、プリミティーヴォの悪いところは甘いところ、みたいなところが私の中であるところのものなのだがこのワインに関してはしっかりとした酸が果実を受け止めきっている。

スカイラブツインシュートでいえば土台となる次藤が酸、そこから射出される立花兄弟が果実味のイメージだ急に『キャプテン翼』の必殺技でたとえると。素晴らしいプリミティーヴォだった。

 

おいしかったワイン3:モンテ デル フラ「アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ クラッシコ」

イタリアで印象に残った最後はモンテ デル フラのアマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ クラッシコ。アマローネは個人的には以前ブラインドテイスティングで出題された際に経験がなさすぎて箸にも棒にもかからないまま正解を逃した苦い思い出のワインだがこのワインはとても素晴らしいワインだった。

液体分子表面の平滑性が他のワインと比べて高いんじゃないかと思えるような物理学をねじまげてくるなめらかなテクスチャー。酸がしっかりあるわけでなく印象としてはもちろん甘めなんだけれども、ダークチェリー色の液体のなかに墨のように純度の高い黒点があり、それが全体を引き締めている印象がある。甘くないリーダーの強権の元に甘み軍団が高度に統率されている感じ。

そのリーダーがなにものかと言われると定かではないのだが、もしかしたらそれは遅摘み&乾燥によってもたらされる凝縮感と呼ばれるものなのかもしれないし、単純にアルコール度数15.5%がもたらすものなのかもしれない。15.5%って。

「糖度が28-30%に達するまで90〜120日間かけて乾燥」させて「樽とバリックで36か月」「瓶内で12か月」熟成させてからリリースという手間を考えると、試飲会特価6600円はむしろ安いみたいに思えるから不思議だ。

いずれにせよ、私の中であまろーね れべるが いち あがった、みたいな感覚があるテイスティング体験だった。ありがたい。

 

おいしかったワイン4:「オッペンバイマー クレーテンブルンネン アウスレーゼ

さて、続いてはドイツだがまずはオッペンバイマー クレーテンブルンネン アウスレーゼ2017という甘口ワインがよかった。

なにが素晴らしいかって750ml入りで2600円とコスパが良く、「ひき蛙の泉」という畑名とそれをイメージさせるラベルも良い。クリスマスの時期のホムパでみんなでちびちび飲んだら楽しそう。あんず味でおいしいし。

 

おいしかったワイン5:デックスハイマー「ヒーベルンハイマー ピルガーシュタイン シュペートブルグンダー アイスヴァイン」

続いてはこれが今回の私のベストワインかもしれないデックスハイマーのヒーベルンハイマー ピルガーシュタイン シュペートブルグンダー アイスヴァイン。

みなさん赤のアイスワイン飲んだことあります? 私は初。で、アイスワインといえばブドウを使って表現できる甘みの極地みたいな印象があるわけなんだがこのワインにはそこにちょっと果皮とか種とか由来なのかどうなのか、スパイシーなニュアンスが加わってくる。

女子校育ちのお嬢様が共学の大学に進学、そこで出会ったちょっと無頼派っぽい3年の先輩(21歳、一浪、バ畜)に異様に惹かれてしまう、みたいなことが世の中にはままあるがそれと似た感覚で「甘いと思ったらちょっと渋い……!(トゥンク…!)」みたいになる。なる。

甘いんだけどスパイシーで、どこかほっこりする印象もあるという点で、私が思い出したのはかつて旅したパキスタンの山中で飲んだスパイシーなチャイ。あれは甘くておいしかった。そんな冬のドイツとはかけ離れた青春時代の南アジアの思い出までよみがえる素晴らしい一杯だった。

ドイツでアイスワインをは外気温マイナス7℃以下で収穫しなければならないという規定があるのだそうで、今後気候変動が進むとそもそもアイスワインは造れるのか問題が生じかねないみたいな話も耳にする。アイスワイン、飲めるうちに飲みたい。

 

おいしかったワイン6:エルンストブレッツ「シルヴァーナ トロッケンベーレンアウスレーゼ

そしてラスト、エルンストブレッツの「シルヴァーナ トロッケンベーレンアウスレーゼ」もよかった。

これは同じ生産者のシャルドネアイスワインと飲み比べのようなカタチで連続して試飲させてもらったのだが、こちらには貴腐ブドウが使われていることで、純粋な甘みのアイスワインと、香りも楽しむ貴腐ワイン、両者の良さを味わうことができた。

私の好きなのは貴腐ブドウを使ったこちらのワインで、天日干しした布団に顔をうずめたときのような乾燥した草的香りがあり、甘さだけじゃない奥深さを感じられた。

 

試飲会を終えて

以上6杯がおいしかったのだったが、なかでもベストを挙げるならば、イタリアはアルネイス、ドイツはシュペートブルグンダーのアイスワインだ。お茶とかスパイスっぽい香りのする甘い(甘いニュアンスのある)ワインが好きなんだなあ、私は、ということがわかった試飲会でもあった。

下北沢ワインショップの試飲会は、次回12月にも開催されるそうだ。大変楽しいので、読者のみなさんもぜひご参加ください。

もうクリスマスですなー↓