サンクリスピーノ・ロッソがおいしい秘密を探ろう
セブンイレブンで売っている紙パック入りワイン「サンクリスピーノ・ロッソ」がおいしい、とツイートしたところ多くの反響をいただいた。
セブンイレブンなどで売ってるこの紙パックのワインが本当に全然悪くないという事実は知っていて損がない。価格は500円台後半で500ml入りと価格と量のバランス最高。原産地は安うまワインの宝庫シチリアで品質はシラーとメルローというありそうで意外とない組み合わせ。キャンプとかにも良さそう。 pic.twitter.com/NrzHdmiSiw
— ヒマワイン|ワインブロガー (@hima_wine) 2022年4月1日
コンビニで気楽に買える500ml入りで500円台のワインがおいしいとプロ野球でいうところの年俸800万円のドラ5野手がホームラン20本打って新人王候補になったみたいなお得感があるもんなあ伝われ。
ではこのワインはなぜ安くておいしいのか。パッケージには「BIO」って書いてあって、パッケージにはEUの有機農業規則に従って生産されたことを証明するユーロリーフも表示されてる。オーガニック栽培は慣行農法に比べコストがかかりそうな印象を受けるが、それでもなお安いのはなぜか。その理由を深堀りしていこう。
サンクリスピーノ・ロッソはどこのブドウで造っているのか
さてこのワイン、つくっているのはイタリア・エミリアロマーニャのテッレ・チェビコという団体。1963年創業で、イタリア全土に22のワイナリー、5000の農家を傘下に納めるイタリア2位の生産量を誇り、世界44カ国にワインを輸出している協同組合だ。
そして、このワインにブドウを供給しているのが出ましたシチリアのコロンバビアンカ。シチリア島最大の生産協同組合で、管理している畑は6900ヘクタール。神奈川県藤沢市すべてをブドウ畑にした規模で、そのうち1800ヘクタールの畑が有機農法というこれまた協同組合。
なぜシチリアか。フォーブスの解説記事にはシチリアは気候が良すぎてブドウが育ちまくるため有機農法がやりやすい、みたいに書いてある。ブドウを植えると勝手にすくすく育っちゃう土地、それがシチリアなのだもちろん農家の方の努力あってのことだろうけれども。いずれにせよオーガニックブドウを大量に調達するにはイタリア全土を見回してシチリアが適していたのだろう。
サンクリスピーノ・ロッソの製造とパッケージ
https://www.youtube.com/watch?v=3zjmVpzm6vY&t=105s
このワインの紹介動画を観ると、実際にワインを製造しているのはテッレ・チェビコの工場のようだ。オーガニックに栽培したブドウを大規模工場で大規模に生産する。そのスケールメリットで価格を安くしていることがわかる。オーガニック×工場、まさかの好相性。
さらにパッケージもポイントだ。使用している紙パックはスウェーデンの多国籍企業・テトラパック社の紙容器、テトラ・ブリック・アセプティック。テトラパック社の公式サイトを見ると、そのコーポレートコピーは「大切なものを包んでいます」でなんか直球で非常に良い。ワインは大切なものだからな……!
輸送関係のことを調べると出てくるのが「空気を運ばない」というワードだが、このような直方体のパッケージだと輸送時に空気を運ぶ量を普通のワインボトル比で限りなく減らせると思われる。しかも軽い。ゆえに二酸化炭素排出量も少なくて済む。しかもワインの鮮度を常温で長く保つのはもちろん、リサイクル可能でサスティナブル。いいじゃん紙容器。好きです、紙容器。
紙パック=安物
というわけではつまりなくて、安くて高品質なワインを実現するための紙パックというソリューションを採用しているということだろう。もちろんワインは瓶に入ってないと無理という方も多くおられると思うが、私のようになにに入っていてもいいです派にはいい選択肢と言える。缶でもいいし紙パックでもなんでもいい。選択肢は多ければ多いほうが良い。
サンクリスピーノ・ロッソが安くておいしい理由まとめ
まとめると、
シチリア最大の協同組合=栽培上のスケールメリット
イタリア2位の協同組合=製造・流通のスケールメリット
紙パッケージ=輸送コストの低減
の3要素がリーチ・一発・三色同順で満貫、みたいになってのコストパフォーマンスの発揮であることがわかる。安ワインにおいて大量調達大量生産大量流通は正義。
さて、以上のようなところで「この紙パックワインのコスパの良い理由」の分析を終えて、ワイン自体がどのようなものかを見ていこう。
サンクリスピーノ・ロッソはどんなワインか?
使っているブドウはシチリア産のシラーとメルロー。格付けはIGTテッラ・シチリアで、これは特定の地域ではなくシチリア全土のブドウを使ってOKな格付け。シラーとメルローというなんかこう、意外と組み合わせることがない気がする組み合わせを選んだのは「シラーのスパイス味とメルローの香りを合成したかったから」なのだそうだ。
収穫したブドウはオーガニック認証された天然由来の酵母で発酵させ、タンクで6〜8カ月熟成。ブレンド後、軽く清澄、濾過して。二酸化硫黄の使用量も通常のワインより30%減らしているんだって。割と自然派…?
飲んでみるとシラー優勢でメルローの存在感はあんまりないような気がするのだが、果実味が感じられておいしい。ただ茹でただけのそのへんで売ってるウインナー、とかに合いそうな味だ。
なにしろちょっと飲みたりないときに気楽に飲めるのがいい。残ったらそのまま冷蔵庫放置できるし味が落ちたら料理に使っちゃえばいい。カレーの隠し味に赤ワインを入れ、手が滑ってついでに飲む、とかも非常に良い。料理に使う分は残しておいてくださいね…!
というわけで、お手軽ワインライフのスターターとして大変おすすめしたいワインなのだった。そして、このあたりを入り口にワインに興味を持ったらぜひ「専門店のエントリー向けワインセット」をどうぞ。専門店が選ぶワインは一味違う。