キャンティと私
私はこれまでキャンティを避けてワイン人生を送ってきた。
そもそもキャンティなのかキヤンティなのかキアンティなのかわからないし。東京・表参道にある有名な玩具店はキティランドではなくキディランドでもなくキデイランドなんですよほんと。
なんの本で読んだのか忘れてしまったのだが、キャンティはあまりにも有名すぎるが故に粗製濫造っていうか、品質の悪いものもなかにはあるというのを読みかじり「そういうのに当たったらヤだから」という理由でプーリアのプリミティーヴォとかを飲んでいたという経緯だ。
そんななか、モノは試しだしなと買ってみたのがテヌータ・ラルニアノーネのサンタ・ヴィルジニア キャンティ 2018。デキャンターで2016年90点、2017年93点と2年連続でベストキャンティに選ばれたっていうキャンティだ。選ぶ基準がないわけだから、ひとつベストキャンティで行ってみようという金賞ボルドー的思考での購入である。
サンタ・ヴィルジニア キャンティとテヌータ・ラルニアノーネ
トスカーナはシエナが本拠地の造り手、テヌータ・ラルニアノーネは、元々パスタ製造業をしていた人物がキャンティの丘を見渡せる土地を気に入り購入、創業者の娘の夫に才覚があったようで、積極的な設備投資を行うことで品質を向上、3代目が所有し、4代目が経営する今に至っているようだ。イタリア人って本当に家族仲がいいよなあ。
サンタ・ヴィルジニア キャンティはそのフラグシップ。サンジョヴェーゼ 80%、コロリーノ15%、カナイオーロ5%で造られるとある。
コロリーノとカナイオーロに関して知見がないので調べると、カナイオーロは「18世紀まではキャンティのワインのブレンドにおいて最も比率の高いブドウ品種であった可能性が非常に高い」(wikipedia)のだそうだ。それが、フィロキセラ耐性がなかったことでサンジョヴェーゼに主役の座を奪われて、現在はサンジョヴェーゼの果実味を強めタンニンを和らげる補助品種として活躍している。また、コロリーノは味とかじゃなくて色を濃くするのに使われるみたい。
サンタ・ヴィルジニア キャンティはどんなワインか
セメントタンクで発酵後、セメントタンクで4カ月熟成その後フランスおよびハンガリー産のトノーで8カ月熟成とあってトノーとはなんぞやと調べると900リットル入りの木樽のことなんすね。へー。樽ひとつにもいろいろ呼び名があるものだよなあ。私が好きなのはドッペルシュトゥック(ドイツの2400リットル入りの樽)。ドッペルシュトゥックのドッペルはドッペルゲンガーのドッペルっていう豆知識を覚えて帰ってください。
発酵と最初の熟成がセメントタンクってことはこれ私の好きなピュアな感じになってるんじゃないすかね。私の好きなワインは「甘酸っぱいワイン」なので大いに期待しつつ、いざ抜栓だ。
サンタ・ヴィルジニア キャンティを飲んでみた
DIAM3のコルクをスポンと抜いてグラスに注ぐと、輝くようなルビー色。グラスからは新宿高野感っていうか千疋屋感っていうか、どこかハーブっぽさをともなうフルーツの感じが漂ってくる。いいな。
飲んでみるとこれがツンとしたタイプのピノ・ノワールに果実を足して繊細さを引いてプラスマイナスゼロにしたようなバランスの味わい。突出した個性はないけど、果実味酸味渋みがいい感じの三角形を形成し、かつそれぞれの角が良い具合に丸みを帯びているような、キャンティ=渋すっぱおわり。だったらどうしようという私の不安を一掃してくれる味わいであった。好きです。
単品価格は3000円台とちょっとお高いけど、1本2000円で買えるセットの1本としてなら大いにアリ。そんなキャンティDOCG体験でした。