イタリアのナチュラルワイン16種類を試飲した
東京・神宮前のワインショップ・ウィルトスで開催された「ヴィナイオータ」試飲会に参加した。ヴィナイオータはイタリアワインを中心に、食品、さらにはそれらの造り手の哲学・理念までをも輸入したいと考えるインポーターとのこと。
ちなみに今回飲んだワインは酸化防止剤の添加を極力減らした自然派的なワインがほとんど。毎回書くことだが私はワインはおいしければなんでも良いという立場。無思想・無批判・無節操が本ブログのポリシーであり、自然派大好き! みたいな感じではないことを最初にお断りしておく。私はワインならなんでも好きだ。
さて、試飲会に話を戻すとこの日飲むことができたワインは16種類ですべてイタリアワイン。そのうち、配布資料においしかったマークをつけた6種類のワインについて記録しておこうと思う。
甘口ワインの造り手が造った辛口「フォル」と「リフォル」
まず面白かったのが、ピエモンテ州の造り手、エツィオ・チェッルーティの「フォル2017」と「リ フォル2018」。
配布資料によれば、エツィオさんは「モスカートの栽培と醸造に人生を賭けた」人物。もともとは甘口ワインのだけを造る珍しい生産者だったのが、ヴィナイオータの方曰く「やっぱりそんなには売れないので」という理由で辛口ワインも作ることになったんだそうだ。そりゃそうだ。
そうして造った辛口ワインが「フォル」。さらに、そのフォルにブドウ果汁(モスト)を加えて瓶詰めし、二次発酵を促したのが「リ フォル」。再フォル。
どちらも使用ブドウはモスカートで、飲んでみると桃の天然水のブドウバージョンみたいなスッキリした味わいで夏場にグビグビ飲みたくなるような感じ。リ フォルのほうはそのまんまの味が発泡してる印象で、全体の2番目と3番目に飲んだのだが早くも購入候補となった。ちなみにフォルはピエモンテの言葉で奇人・変人。リ フォルは奇人・変人再び、である。キュヴェ・奇人。
珍しい! 桃の葉を白ワインに漬けてつくる「ペルセギン」
次に印象に残ったのが、というかこの日もっとも印象に残ったのが8番目に飲んだリグーリア州の生産者、ポッサの「ペルセギン2016」で、彼の造るトップキュヴェだという白ワイン「チンクエテッレ」の発酵途中に桃の葉を漬け込んだという代物。
飲んでみるとまず昔懐かしい杜仲茶(90年前後になんか一瞬流行りましたよね)みたいな香りがして直前に試飲した「チンクエテッレ」よりも味は甘やか。聞けばカテキンの作用によって発酵が止まり、それによって残糖が残ったのだろうとのこと。それでいてアルコール度数はしっかり14度。また、ヴィンテージによって味わいはまったく違うようで「発泡してるヴィンテージは最高ですよ」とのこと。「発泡してるヴィンテージ」とかあるのかよ面白すぎるじゃないの。
なんでも「ペルセギン」は生産者の地元・リオマッジョーレに伝わる伝統的なお酒なんだそうで、桃の葉だけでなくハチミツやアルコールなども入れるリキュールなんだそうだ。この「ペルセギン」はワインに桃の葉を漬けただけでその他のものは添加していないそうだが、「果たしてこれをワインと呼んでいいのか……」とインポーターさんも悩む的なワイン。
ただ、香りは変わってるけど飲み口は完全にワイン。女性ウケも非常に良いんだそうで興味のある方は手に取る価値が十二分にあると思う。個人的にもこれが今回の購入の最終候補3つのうちのひとつとなった。
地元で不人気! 泡の出なかったランブルスコ
さて次はエミリアロマーニャの造り手、カミッロ・ドナーティのランブルスコ2016。ランブルスコといえば赤の発泡ワイン、なのだが、「このワイン、ほとんど泡がありません」とのこと。二次発酵がうまい具合に起こらなかったんだって。もちろん、人為的に介入すれば発泡は起こせるのだが、それをあえてしないのが「自然派のつらいとこ」とのこと。いろいろ大変だなあ……。
発泡していないので、だからつまりほぼ赤ワインなのだが、赤ワインとして飲んだときに非常においしかったのだった。ちょっと残糖がある感じで、甘酸っぱくてほんっっっのわずかな泡とともに楽しむと非常にうまい濃い目の甘酸っぱ。しかも「発泡してないランブルスコ」は地元でまったく売れないらしく、そのため値段も安い。これも購入候補である。
「超人農家」のつくるおいしい赤ワイン
さて、残すは赤ワイン2本。まずは再びピエモンテに戻ってフランチェスコ・ブレッツァのバルベーラ・デル・モンフェラッラート・スーペリオーレ2017。良年のみ造られるっていうキュヴェで、フリーランジュースだけで造るってだけあって(余った分はバッグ・イン・ボッグスになるそうな)雑味がないキレイな味わい。
フランチェスコさんは「自分はブドウ農家である」というスタンスの人で、インポーターの方の説明も「要するに農家です」とのこと。つまり農家なんスね。肉牛を育て、その排泄物で堆肥をつくり、それを畑に撒く循環農法を用い、ほぼ一人で管理する畑はなんと30ヘクタールってそれ東京ドーム6個分とかですよ。説明文いわく「超人」である。超人農家。ワイン造りもいたってシンプルなのだが、「専門の造り手でも敵わないくらいレベルが高い」のだという。たしかにうまい。
フランチェスコさんのもとには近所の人が大瓶を抱えて量り売りのワインを買いに来るのだそうだ。それをコップにいれてぐびぐび飲む。夏には炭酸と氷でやっぱりぐびぐび飲む。いいなそれ。最高だな。
ともあれ、果実味と酸味がクッキリとあってガブガブ飲んでもチビチビ飲んでもよさそうな、おおらかで生き生きしたワインだった。
イケメンが造るピノ・ネロ
そして最後はヴェネトの造り手、ダニエーレ・ピッチニンのピノ・ネロすなわちピノ・ノワール。これも両年のみ造られるキュヴェだそうで、いまいちな年はロゼのフリッツァンテになるんだそうだ。
ダニエーレさんは資料によれば38歳の「イケメンすぎる造り手」とのこと。「造り手の哲学・理念までをも輸入したい」ってだけあって、今回の試飲会は造り手がどんな人物で、何歳で……みたいな情報がいちいち多いのが特徴だった。へー、そういう感じのオッサンが造ったんだ、このワイン。みたいにイメージしながら飲めて非常に良かった。
ワインに話を戻すとこのダニエーレさんのピノ・ネロは自然派感はとくになく、ただのとってもおいしいピノ・ノワールという印象の一杯。ヴィンテージは2016。早めに販売すればお金になるところ、納得いかないワインはリリースしない! と販売時期を遅らせたりするようで、それだけに飲み頃感があったような気がした。味わいでいえばこれがベスト。だったのだが、先週の試飲会でフランスの自然派的なピノ・ノワールを買っているので今回は別のを買うことにした。
というわけで、選んだのが発泡してないランブルスコ。「発泡してないランブルスコって(笑)」っていう感じがなんとも乙で良い。しかも2100円なんですよこのワイン。味わいがベストだったピノ・ネロは先週購入した1本と価格もカブり気味な5000円。楽天スーパーセールに向けて体力温存したい民である私には約2000円のお値ごろランブルスコ(泡なし)がふさわしい。
ただ、ネタ消費っぽく書いてしまったがこのランブルスコ本当においしかったんですよ。1本まるまる飲んだらどんな感じか、今から楽しみである。
【番外編】「オランジーナの素」の“お湯割”がなんだかとってもおいしかった
最後に余談なのだがこの日はヴィナイオータが輸入する食品類も試食および試飲することができた。なかでも、生産者が「世に出回るあらゆるメーカーの商品と比較すること自体がナンセンスなほどの差があると思っている」と語ったという“オランジーナの素”をお湯で割ったものがめちゃくちゃ絶品だった。なんだったんだろう、あれ。なんでお湯割だったのか。冬だからかな。謎である。最高だったけども。
ともかく、いろいろ飲めて大満足のヴィナイオータ試飲会なのであった。