ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワイン歴2年のワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

シャンパーニュの味わいを決める「ふたつの要素」とは!? プロに教わった!

シャンパーニュ、なんでもおいしく感じてしまう問題

日本個人ワインサイト界の泰斗・安ワイン道場師範から「『シャンパーニュってなんだ?』 という会をやるからよかったら来ませんか」という連絡をもらったので「よかったら来ま」くらいまで読んだところで「行きます」と返信。先日無事に開催されたその会に参加してきたのでレポートしたい。

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シャンパーニュってなんだ?」会に参加してきました。

会場は亀戸の名店、シャンパンバーのデゴルジュマン。その店主・泡大将が予算のなかで「シャンパーニュを選ぶ基準や好みの方向性がわかるように」シャンパーニュを選抜、それをみんなで飲みながら学ぶという趣旨だ。こういうの大好き。また行きたい(まだ行ってない)。

そうなのだ。正直なところ私のなかには、「シャンパーニュを選ぶ基準や好みの方向性」が存在しない。シャンパーニュ=おいしい。で思考は止まっており、「こういう感じのシャンパーニュが好き」という言語化された好みはない。なんとなく酸味が強くてスッキリしたものかな〜? くらい。

スティルワインの場合あるじゃないすか、みんな。私の場合「甘酸っぱい赤ワインが好き」とか「ミネラル蜂蜜レモン水みたいな白ワインが好き」とか。好きな品種もあるし、産地もある。なのにシャンパーニュの場合、品種の割合によってどう味わいが変化するかすらよくわかっていない(どれもおいしい)し、ましてや産地をや。グランクリュ村のブドウを使ったからどう、みたいなことも正直よくわからない(どれもおいしい  ※下図参照)。

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前置きが長い割に結論を先に書いてしまうが、この会を経てモザイクレベルだった私のシャンパーニュ解像度は8bitレベルにまで向上した。4Kレベルとまではいかないが、シャンパーニュという王国を旅するための一枚目の地図は手に入れた感覚がある。というわけで、いざレポートに入ろう。

 

【1杯目】ポワルヴェール・ジャック

参加者等々の情報は安ワイン道場師範のレポートとの重複を避け、こちらでは割愛させていただいた。併読していただけると会の全貌がつぶさにわかると思うので、みなさんぜひ安ワイン道場をご覧ください。

さて、この日の1杯目、乾杯用として泡大将がグラスに注いでくれたのはポワルヴェール・ジャック。2000円くらいで買える安うまシャンパーニュの代表格で「これで十分おいしいから困る」という銘柄だ。私にとってももっともリピートしているワインBEST5に入る1本で、改めて飲んでも泡立ちしっかり、味ふくよか、酸味もあってうーん、やっぱりおいしい。これがこの日の味わいの基準となっていくだろう。

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1杯目はポワルヴェール・ジャック。安定のおいしさ。

一同でうまいうまいと飲み干して、2杯目からが本番だ。メインで使わせていただくグラスは二脚。タイプの異なるシャンパーニュをふたつずつ飲み、それによりシャンパーニュの味わいを決める要素を学んでいきましょうというのが泡大将の提案だ。

 

【2、3杯目】?????(ブラインド)

その第一セット、全体の2、3杯目はブラインドで供された。え、待って聞いてない。

シャンパーニュと、同じメゾンがシャンパーニュ以外の土地でつくるスパークリングワインをご用意しました。どちらがシャンパーニュかを当ててみてください」(泡大将)

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どちらがシャンパーニュなのか……!?

弊ブログを読んでくださる方ならご存知かと思うが、私はド素人にも関わらず知ったような顔をして「やはりシャンパーニュにはシャンパーニュにしかない味わいがある」とか「世界には2種類の泡がある。シャンパーニュか、それ以外か」とかローランドみたいなことを書いているわけなんですよ後者は今思いついたやつだけど。ここを外すと以降こういうイキッたこと書けなくなっちゃう……! 否、当てればいいのだ。

目の前にはふたつのグラス。どちらもグラスの底から繊細な泡が立ち上り、違いはわからない。色合いも、向かって左のグラスがやや薄いような気がしなくもないがほぼ同じ。香りは……ほんのわずかに右のグラスのほうからシャンパーニュならではのパン的な香りがするような気がすると思えば思えるような気がする。というわけで私の予想は香りの点から右がシャンパーニュ

 

【2、3杯目】ルイ・ロデレール コレクション242とカルテット・アンダーソンヴァレー ブリュット

で、これが無事に正解(右がルイ・ロデレールのコレクション242、左がロデレールがカリフォルニアで造るカルテット・アンダーソンヴァレー・ブリュット)でホッと一息だったのだが、泡大将いわく見分けるポイントは「酸」なのだという。

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正解は左がカルテット、右がコレクション242。どちらもルイ・ロデレール。

「酸の総量、キレがやはりシャンパーニュのほうがあると思います。涼しい地域ならではの酸はシャンパーニュの魅力で、アンダーソンヴァレーのほうは、シャンパーニュに比べると酸がゆるめなことが飲み比べるとわかると思います」(泡大将)

なるほどなー。泡大将いわくシャンパーニュに匹敵する酸があるのはイングリッシュスパークリング。それとの比較だと「難しすぎるかもしれない」からカリフォルニアとの比較にしたのだそうだ。

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前菜1皿目はヒラメのカルパッチョ。ビネガーの効いたソースで大変シャンパーニュに合う。

私は香りが差分だと思ったので正解はたまたま。ともあれこの飲み比べによってシャンパーニュの中核となるのは酸であるというこの日最初の学びを得た。あとコレクション242超おいしい。

 

【4、5杯目】ゴッセ グランドレゼルヴとべレッシュ・エ・フィス ブリュットレゼルヴ

さて、続いては2セット目、全体の4、5杯目に供されたのはゴッセのグランレゼルヴと、べレッシュ・エ・フィスのブリュットレゼルヴ。今度の差分はなんだろうか?

シャンパーニュの味わいを決める大きな要素として、マロ(マロラクティック発酵)がかかっているか? 樽を使っているか? のふたつがあります。この2杯はどちらもノンマロ(マロラクティック発酵を行っていない)ですが、ゴッセはステンレンスタンクで発酵・熟成を行い、べレッシュは樽で発酵・熟成を行っているという違いがあります。同じノンマロのなかで対極ともいえる造りなので、ぜひ飲み比べてみてください」(泡大将)

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2セット目はゴッセとべレッシュの飲み比べ。ステンレスタンクor樽。

マロラクティック発酵はアルコール発酵後に起こるリンゴ酸が乳酸に変わる反応のこと。酸味がおだやかになって微生物的にも安定するというそれを意図してかけるかかけないか。そして樽を使うか使わないか。このふたつが味わい・スタイルの大きな違いとなるようだ。

ゆえに、シャンパーニュの味のマトリクスは超ざっくり以下のようになるはず。以下4つのうちのどれかに、「自分好みのスタイル」がきっとある。

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目の前にあるグラスに話を戻して飲み比べてみると、これは私レベルの駄味覚でも違いが明確にわかる。樽がかかっているべレッシュのほうが色が濃く、それが味の濃さにも比例していて、味わいにも厚みと複雑さがある。一方のゴッセは定規で引いた線のような凛とした酸があって、さっぱり系のおいしさだ。

「フレッシュでミネラリー、酸が命のゴッセは、温度が上がることで味わいが変化していきスティルワイン的にも楽しむことができ、1本通しで飲むとまた違う魅力が出てきます。一方のべレッシュは力強さと凝縮感がある。この2アイテムは好みが分かれると思います」(泡大将)

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2皿目。上から時計回りにシャンピニオンのテリーヌ(絶品!)、TKさんのお土産の鹿のパテ、岩中豚のパテ。

ゴッセはわりと最近飲んだ際にすごく好きだなと思った銘柄。なのだが、こうして比較してみると私はべレッシュの複雑味がすごくいいなと思ってしまったのだった。どちらかを選べと言われたら……え、待って悩ましすぎるんですが。これは『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』においてフローラとビアンカどちらを花嫁に選ぶか以来の悩ましさ。どちらかを選ぶということは、もう片方を選ばないということ。だけどもう一度飲みたいのはベレッシュのほうかもしれない……! ゴッセごめん! 

 

【6、7杯目】ドゥラモット、ブテイユか? マグナムか?

さて3セット目、全体の6、7杯目はマグナムとブテイユの飲み比べだ。ブテイユはbouteilleでフランス語で「ボトル」の意。ボルドーワインのラベルによくmis en bouteille au chateauとか書いてあるけどあの「bouteille=ブテイユ」ですよねこれ。つまり普通の750ml入りのボトル。それとマグナムとの飲み比べだ。

マロがかかっているか、かかっていないか、樽か、ステンレスか。それ以外にももちろんシャンパーニュの味わいの差分となる要素はまだまだある。マグナムか、ブテイユかもそのうちのひとつということだ。

両者の違いとしてよく目にするのがマグナムとブテイユでは熟成のスピードが違うというもの。内容量は2倍なのに瓶口のサイズは同じであるため瓶内に入っている酸素量も同量。マグナムのほうが相対的に酸素量が少ないということになり、そのためゆっくりと熟成するというものだが、泡大将いわく、実際はそれ以上の違いがあるケースも多いのだそうだ。

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ドゥラモットのブテイユ(左)とマグナム(右)の飲み比べ。その違いは!?

「ブテイユとマグナムでは味わいが全然違います。生産者によってはアッサンブラージュを変えるケースもありますし、ブテイユには入っているムニエがマグナムには入っていないということさえあるんです。生産者によっては『ブテイユはハーフマグナムだ』という人もいるくらい。ドゥラモットはその違いが明確にわかると思うので、比べてみてください」(泡大将)

というわけでドゥラモットのブテイユとマグナムの飲み比べという贅沢すぎることをやってしまったのだった。マグナムは参加者のおひとり、TKさんのお持ち込み。ありがたや……!

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真剣に飲み比べる参加者のみなさん。若干マラカス振ってるように見える……!?

しかし。しかしなのだ。本当に心苦しいが正直に書こう。私には違いがほとんどわからなかった。いやホント無念。参加者の方のなかには両者の違いを明確にとらえている人がおられたし、泡大将も「明らかに違います」とおっしゃっていたのだが、言われてみるとマグナムのほうが全体に味わいのボリュームが大きい感じかなくらいのレベル。オレの味覚お前さあ……。

そんななか参加者のおひとり・MOMOさんが「ブテイユとマグナムでは『なくなり度』が違う……!」と定性ではなく定量で鋭く分析していたのを特筆しておきたい。シャンパーニュはおいしいが、飲むとなくなってしまうのが難点。できればなくなってほしくないという気持ちを定量化し、それを「なくなり度」というパワーワードで表現しておられたMOMOさん、さすがの一言である。

ちなみにMOMOさんはブテイユとマグナムの味の違いを明確に感じられたうちの一人。「価格差(マグナムのほうが高い)を考えても、買うならマグナムのほうがお得かも。なくなり度も低いし……」とおっしゃっていた。料理名人として知られるだけに、さすがの味覚だ。私もいつか、両者の違いがわかるようになりたい。ホントに。

 

【8、9杯目】ドラピエ ブリュットナチュール、ドゥラモット ブラン・ド・ブランNV

いよいよ会も終盤に向かい、最後の飲み比べとなったのは樽なし・マロ発酵ありのブラン・ド・ブランとブラン・ド・ノワールの飲み比べ。

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出てきたのはドゥラモットのブラン・ド・ブラン(NV)とドラピエのブラン・ド・ノワール(ブリュットナチュール)で、後者のほうは糖分を添加しない、いわゆるノンドゼ。シャルドネピノ・ノワール、最後の最後で品種違いを味わってみようということだったと思う(酔っ払ってきてます)。

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ドラピエのブラン・ド・ノワール(左、ブリュットナチュール)とドゥラモットのブラン・ド・ブラン(右)の飲み比べ。

「ドゥラモットのノンヴィンのブラン・ド・ブランはサロンが造られなかった年にサロンの畑のブドウで造られるワイン(ドゥラモットのブラン・ド・ブランでもミレジムのほうはドゥラモットの畑のブドウで造られるそうだ)と言われていて、サロン感があるかと言われるとそんなこともないんですが、ブラン・ド・ブランらしいブラン・ド・ブランです。一方のドラピエはノンドゼ、ノンフィルターでリザーヴワインを使って造ったブラン・ド・ノワールらしさを感じられるワインです」(泡大将)

飲んでみると、こちらも私の好みはブラン・ド・ノワールのほうだった。ノンドゼであるにも関わらずふくよかで果実をしっかり感じられるのは、熟度を高めてから収穫しているからなのだそうで、わかりやすく、かつ複雑でおいしかった。ドゥラモットのブラン・ド・ノワールはまさに対極でスッキリの極みという味わい。

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タラバガニとユズのパスタ。めっちゃくちゃおいしかった。

私レベルでもわかるくらいブラン・ド・ブランとブラン・ド・ノワールの特徴が問答無用で出ている。こういうのを選んでくれるから泡大将はすごいよなあ。ドラピエは初めて飲んだが、とてもおいしかった。これはまた必ず飲む。

ともかく、私はシャンパーニュにおいても酸味が強いものが好きだと思っていたが誤解で、ふくよかで果実味と複雑さのあるものがむしろ好きという結果になった。そして、この日飲んだ中でもっとも果実味が強調されていたのはポワルヴェールジャックで、ポワルヴェールジャックってわかりやすさ全振りシャンパーニュなんだな、っていうこともよくわかった。

すべて飲んでみてこそ、比較してみてこそわかること。この日得た知見は今後シャンパーニュを選ぶ際の明確な指針になると思う。

 

【10杯目】リシャール・マニエール エシェゾー グランクリュ2018

こうして4セット+1杯、9杯のシャンパーニュ(とスパークリングワイン)を飲んできた。時計の針もくるくる回り、そろそろ会もお開きかな……というタイミングで、とんでもないワインが登場したんですよみなさん。リシャール・マニエールのエシェゾー グランクリュ2018がそれ。参加者のTKさんのお持ち込みだ。あれ? とんでもないの出てきたゾ……?

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リシャール・マニエールのエシェゾー グランクリュ2018。これはやばいやつ。

もちろん私は飲んだことのない&知らない生産者だが、泡大将いわく「知らない人が多い今のうちに買ったほうがいい」生産者なのだとか。

これはけっこう本当に途方もない代物で、なにが起きたかといえばグラスに注いで参加者に配られたあと「だれも飲まない」という現象が起きた。あまりにも香りが良すぎて飲むのがもったいなく感じてしまうわけですね。「これ香水にしたい……」とつぶやく者、「風呂に入れたい……」と漏らす者(私です)をはじめ、グラスに鼻を突っ込んだまま気を失っているんじゃないかこの人、という状態になる参加者が続出した(私です)。これはやべえやつ・オブ・ザ・イヤー候補。

正直テイスティングコメント的なものはなにも思い浮かばない。ただただ良い。よよよの良(よ)今の私にとっては語彙の向こう側にあるワインだ。よーく知ってるピノ・ノワールの味。その極致という味わいだ。

このワインに関しては、じっくりと賞味した安ワイン道場師範が、しばしの沈思黙考の後、厚い城門がゆっくりと開くような厳粛さとともに放った「……ワインは高いほうがうまい!」という一言がまさに至言だと感じた次第だ。ワインは高いほうがうまい。我ら安ワイン愛好家にとってははなはだ不都合な真実だが真実だから仕方ない。TKさん素晴らしいワインを本当にありがとうございました。

 

シャンパーニュを知ろう! 会を終えて

こうしてデゴルジュマンでの「シャンパーニュってなんだ? 会」は幕を下ろした。すげえ会だった。こうして振り返ってみて驚かされるのだが、9杯続けてシャンパーニュを飲んだのに、ちっとも飽きなかったんですよ。ふつうほかの飲みたくなるわけじゃないですか。そんなふうにまったく思わなかった。

そういうふうに思えたのは、会の構成ももちろんだが、用意いただいた料理の影響も大きいと思う。カルパッチョは酸味が主体。パテの盛り合わせにもバルサミコのソースが添えられ、タラバカニのパスタにはグレーターで削られたゆず皮が散らされていた。

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素晴らしい会だったなあ……。

会の冒頭に泡大将はシャンパーニュの本領は「酸」にあると説明してくれたが、この日出していただいた料理も「酸」がキーワードだった気がする。当たり前かもしれないけど、料理もしっかりシャンパーニュに寄り添っている。デゴルジュマンはシャンパーニュもおいしいけど本当に料理がおいしいと思うんすよ自分。

そんなこんなであっという間に時は過ぎ、会はお開きとなった。発起人の師範、素晴らしい構成の会を驚きのお値段で実現してくれた泡大将と助手のソムたまさん、すさまじいワインを提供してくれたTKさん、そして参加者のみなさんに改めて感謝申し上げたい。楽し過ぎてビックリした。えっ、こんなに楽しいことってあんだっけってなった。みなさんまた飲みましょう。

そしてまだの方はぜひ、亀戸の名店デゴルジュマンへ。知れば知るほど魅力的なシャンパーニュのことを、飲みながら楽しくやさしく教えてもらえると思いますよ!