「超ド年末&年始シャンパーニュ5本セット」を飲んでみた
「超ド年末&年始シャンパーニュ5本セット」というなんだかすごい名前のシャンパーニュのセットが送られてきたのはまだ超ド年末って感じではない12月初旬のこと。
1本は過去に飲んだことのある「ドミニク・マサン キュヴェ スペシャル ブリュット」。あとの4本はどれも初めましてのシャンパーニュだ。
セットとして未発売の段階で送ってもらったので商品説明のチラシなども同梱されておらず、ワインの詳細は不明。セット価格もわからないし、1本あたりの価格も不明。
正体を知らないワインを目の前にしたとき、それをブラインドテイスティングしたくなるのはワイン好き(一部)のサガ。というわけで今回は、5本のシャンパーニュをすべてブラインドで飲み、品種や価格を予想、予想した価格からセット全体の価格を予想するという企画を実施することとした。ひとりで。
超ド年末&年始シャンパーニュ5本セットのベンチマーク「ドミニク・マサン」
さて、先述したように、ドミニク マサン キュヴェ スペシャル ブリュットを私は飲んだことがある。おいしいんですよこれすごく。
ドミニク・マサンはシャンパーニュでも南のほうに位置するヴィル=シュル=アルスが本拠地の生産者。
そしてその「キュヴェ スペシャル ブリュット」は、
・認証取得のサスティナブル農法
・瓶熟最低3年
・ドサージュはピノ・ノワールベースのリキュールを使用
・デゴルジュマン後は半年休ませる
といっためっちゃ贅沢な造り。価格は6,600円で、この造りならば妥当〜ややお得感のある値付けに思える。なのだが、輸入元の直販ECのセットだとそれより大幅に割引されて販売されるのが通例となっている。ありがてえ。
今回改めて飲んでみたがやっぱりうまい。ピノ・ノワール100%のブラン・ド・ノワールならでは、そしてブルゴーニュに近い産地ならではのリッチなベリーの香り。溌剌とした泡に、黄金を溶かしたような色合い。
果実味と酸味をどちらも楽しむことができ、その酵母由来のトースト香が重なり合う。シャンパーニュを飲む喜びのバリューセットのような1本だ。これを毎日飲んで暮らせる男になりたい。
というわけでこれが6,600円。この1本をベンチマークに他のシャンパーニュの価格を予想しつつ、味わっていこう。
【果実味大爆発】アリス・ド・ラ・ジェルティエール ブリュット
さて、まず飲んだのはアリス・ド・ラ・ジェルティエール ブリュットという恥ずかしながら初耳のシャンパーニュだったのだが、これがいきなりうまい。
シャンパーニュには複雑系、さっぱり系、果実味系の3系統があると個人的に思っており、それぞれに魅力があると感じているが、このシャンパーニュは明らかに果実味系。
黒ぶどう主体を思わせる濃いめの色調で、はちみつを一滴加えたんじゃないかというくらいの甘やかな果実感を酸味が下支えしている。この果実感、ムニエ主体と見た!(正解はムニエ70%、ピノ・ノワール20%、シャルドネ10%)
アペリティフに最強という印象のワインで、とてもおいしいだけに、価格はドミニク・マサンと同じ6,600円と予想した。
【焼き立てパンの香り】ジャック・ボランド ブラン・ド・ノワール
続いてはジャック・ボランド ブラン・ド・ノワール。私はピノ・ノワールとムニエを半分ずつ使っていると予想したのだが、実際はピノ・ノワール100%を使って造るキュヴェで、アリス・ド・ラ・ジェルティエールとは打って変わってこちらは“複雑系”のシャンパーニュ。
金色に輝く液体は、今まさに窯から焼きたてのパンが取り出されたばかりのパン屋さんのようなトースト香がしっかりある。味わいはドライなのだがブラン・ド・ノワールならではのずっしりした果実感があり、わずかに熟成感も感じられる。
額縁に入れて「ブラン・ド・ノワール」という題をつけて美術館に飾りたいようなお手本ブラン・ド・ノワール。価格は(なんとなく)6,050円と予想してみた。
ここまで2本、いずれもおいしく連続ヒット。しかしこのとき私はまだ知らない。このあと飲む2本がとんでもないシャンパーニュであることを……!
【明らか格上】ドミニク・フルール ブリュット グランクリュ アンボネイ
続いてはラベルはよくお見かけしていたが飲むのは初めてというドミニク・フルールの「ブリュット グランクリュ アンボネイ」。グランクリュと書いてあるので大いに期待して飲んだのだがこれがめっちゃくちゃ秀逸なシャンパーニュだったのだった。
あとから調べたところ、熟成期間は最低54カ月(!)で、特級アンボネイ村の自社畑で減農薬で栽培されたぶどうを使っているのだそうだ。アンボネイ村は、クリュッグの最高級ワイン「クロ・ダンボネ」の畑があったりRMの最高峰エグリ・ウーリエの本拠地があったりする要するにすごい村。こりゃ贅沢。
このシャンパーニュの特徴は異様なまでのバランスの良さにある。酸味、複雑さ、果実味が美しい正三角形を構成しており、繊細な泡がその調和した味わいにアクセントを加えている。私はシャルドネ、ピノ、ムニエ33.3%ずつと予想したがまったくの大外れで、正解はピノ・ノワール75%、シャルドネ25%。アンボネイ村自体がピノ・ノワールの名産地みたい。
余談だが、このセットに黒ぶどう主体のシャンパーニュが多いのはやはり年末年始を意識してのことだと思う。濃い味のものを食べる機会が多い年末年始には酒質の強いブラン・ド・ノワールがピッタリだ。
というわけでこれはちょっと今回の驚き。明らかに格上感のある味わいなので、価格は7,700円と予想した。8,250円でもいいくらい。(ちなみに今回もっとも価格をド外ししたのがこのワインです)
【お気に入りNO.1】ガルデ ロゼ ブリュット
そして最後の1本はガルデ ロゼ ブリュットだったんですが、最後の最後でとんでもないのが来てしまった。みなさん、友よ、このシャンパーニュは飲むべきだ。
ロゼシャンパーニュが私はもともと好きなのだが、これはその理想形のひとつといっていい気がする。完全なる果実系シャンパーニュで、飲んだ瞬間想起されるイメージはワイングラスに詰め込まれた山盛りフルーツ。
ミックスベリー、りんご、あんず、ブラッドオレンジ、チェリー……一口味わうごとに違う果物が顔を出す無限生成フルーツバスケット。果実感たっぷりなのに飲み飽きる気配がなく、シャンパーニュとして、ワインとして、液体として問答無用でうまい。
私の予想はピノ・ノワール70%、ムニエ30%だったのだが、正解はピノ45、ムニエ45、シャルドネ10と大外しでこの品種当てやる意味あったんかな感がエグいわけだが、シャルドネが入っているのも聞けば納得で、ピンク色の液体のなかにどこか白い印象があるのは、きっとシャルドネの働きなのだと思う。
もうひとつ特筆すべきは全体の10%使われている赤ワインが1年間樽熟成されているという点。果実味大爆発な味わいながら飲み飽きないのは、この赤ワインがもたらす複雑性の仕業に違いない。いやーおいしかった。大満足で価格は最高額の8,250円と予想した。
「超ド年末&年始シャンパーニュ5本セット」金額予想結果発表
以上、お気に入りのドミニク・マサンをベンチマークに飲んでいったわけだが、アリス・ド・ラ・ジェルティエールとジャック・ボランドはドミニク・マサンと拮抗するおいしさ。ドミニク・フルール とガルデのロゼはそれを一枚二枚上手の味わいという印象だった。
私の予想金額は以下。
<予想>
ドミニク マサン キュヴェ スペシャル ブリュット 6,600円(確定)
アリス ド ラ ジェルティエール ブリュット 6,600
ジャック ボランド ブラン ド ノワール 6,050円
ドミニク フルール ブリュット 7,700円
ガルデ ロゼ ブリュット 8,250円
以上5本で予想総額は35,200円。これをセットだしちょっと思い切って35%オフにして、予想セット価格は22,880円。この5本ならばかなりお得感がある。
果たして私の予想は正しかったのだろうか? 5本のワインの価格を調べてみた結果が以下だ。
<正解>
ドミニク マサン キュヴェ スペシャル ブリュット 6,600円(確定)
アリス ド ラ ジェルティエール ブリュット 6,600→正解は7,700円
ジャック ボランド ブラン ド ノワール 6,050円→正解は6,380円
ドミニク フルール ブリュット 7,700円→正解は9,900円
ガルデ ロゼ ブリュット 8,250円→正解は8,800円
全っ然合ってない……! とくに、ドミニク・フルールは“目玉シャンパーニュ”だけに予想をはるかに上回る9,900円という高級価格帯だったごめんなさい。ドミニク・マサンのコスパが良すぎるのが悪い。
正しい総額は39,380円と私の予想よりさらに4,000円以上高額。それでいてセット価格は19,999円と私の予想価格を2,000円以上下回ってきた。セット価格は単品合計のほぼ半額であり、1本あたりの単価は驚異の4,000円ジャスト。シャンパーニュ高騰の折、ほぼ最安値級の価格でこのレベルのシャンパーニュが買えてしまうのはすごいことだ。
すべてのシャンパーニュを一滴残らず飲み干した者として、間違いなくおすすめできるセット。とくにドミニク・フルール ブリュット、ガルデ・ロゼ ブリュットの2本は、“ド年末年始”の特別な日の乾杯にピッタリですよ!
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