AOCボルドー・シュペリウール、シャトー・ラ・ファヴィエールを買ってみた
フランス・ボルドーはAOCボルドー・シュペリウールの「シャトー・ラ・ファヴィエール(2018)」を飲んだ。ツイッター上で非常にいい評判を目にしたので買ってみたワインだ。ちなみに値段も手ごろ(トスカニーで2200円)。
にしてもなんなんだろうボルドー・シュペリウールって。ボルドーは色の名前にもなってるくらいで問答無用でおそらく世界でもっとも有名な産地。ワインレッドの心といった場合、それはボルドーワイン色でしょうどう考えても。巨大産地だけに原産地呼称も複雑でなにがなんだかよくわからない。ので、調べてみることにした。
ボルドー・シュペリウールと「ジェネリック・ボルドー」
ボルドーワインの公式サイト、bordeaux-wines.jpによれば、ボルドーには60のAOCがあるうち、ボルドーのあるジロンド県全体にまたがる広域名的なAOCは7つ。ボルドー・シュペリウールはそのうちのひとつなのだが、せっかくなので以下に列挙してみよう。
ボルドー・ブラン
ボルドー・ルージュ
ボルドー・クレレ(濃いロゼ的なやつ)
ボルドー・ロゼ
ボルドー・シュペリウール・ブラン
ボルドー・シュペリウール・ルージュ
クレマン・ド・ボルドー
この7つのアペラシオンでボルドーの生産量全体の55%を占めるのだそうだ。これ以外はいわゆる地区名あるいは村名ということで合ってると思うたぶん。
これらのワインはジェネリック・ボルドーとも呼ばれるんだそうで、「Regional Bordeaux AOCs」のwikipediaには、「一般的にはネゴシアンや協同組合によって造られた品質の低いワインに使用され」ると書いてある。ひどい。
一方、エノテカのコラム「ワインの女王!ボルドーワインの狙い目アペラシオン」には、ボルドーとボルドシュペリウールはチリとかオーストラリアの安ワインと対抗するなかで「どのアペラシオンよりも、ダイナミックな品質向上を遂げて」きたとある。基本的にはスーパーで安売りされるワイン、なんだけど、スーパーの棚で新世界の安ワインとしのぎを削るために品質が向上している、みたいなことだと思われる。
AOCボルドーとAOCボルドー・シュペリウールはどう違うか
さて、ではボルドーとボルドー・シュペリウールはどう違うのかだが、使用品種は同じで以下の面々だ(赤ワインの場合)。
カベルネ・ソーヴィニヨン
カベルネ・フラン
カルメネール
メルロー
マルベック
プティ・ヴェルド
あれですね「いつメン」ってやつ。居酒屋ボルドーいくと大体このメンツいる。
違いはブドウの栽培方法、ブドウの品質、熟成にある。AOCボルドーが定めたよりもAOCボルドー・シュペリウールは
・より低収量で
・より最低のアルコール度数が高く
・より熟成期間が長い
よくある無印ワインとその1クラス上のワインの違いみたいな感じですねこれ。
シャトー・ラ・ファヴィエールはどんなワインか
個別のワインに関しては輸入元のモトックスのサイトに公式サイトの情報が翻訳されて掲載されているのでそちらででサクッと調べると、「スペリュール・クラスで格付に匹敵するワインを!」という見出しがドドンと出てくる。
2010年にサンクトペテルブルグ出身の夫婦がシャトーを購入し、2011年から「アンテグラル・ワインメイキング」を導入。それがなにかっていうと、畑に500リットルのオーク樽を持ち込み、粒単位で手摘みしたブドウをそのまま投入する手法。ブドウを採ってカゴに入れて選果台で選んで、みたいな作業なしでいきなり粒の状態で樽直行。
この樽は回転させられるんだそうで、必要以上のルモンタージュを行う必要がないんだそうですよ。よくわかんないけどすごそう。
でもって土壌はサン・テミリオンと地続きとアンタそれで逆になんでボルドー・シュペリウールなんだよと問いたくなる感じ。土地の制約とかそういうことなんですかね。
その2018年ヴィンテージはボルドー右岸らしくメルロー主体で60%、カベルネ・フラン30%、カベルネ・ソーヴィニヨン10%というブレンド比率。新樽率100%のフレンチオークで16カ月(公式サイトでは12カ月)熟成させるのだそうだ。新樽100%ってすごいなホントかな。いずれにせよこれで定価2500円はかなりお得ながする。生産本数は6万本だ。
ボルドー・シュペリウール「シャトー・ラ・ファヴィエール」を飲んでみた
さて、ではそのワインの実力はいかにと飲んでみることにしよう。その色、香り、味わいを表現するとこのようになる。
カシスすぎる赤ワイン
である。
もう四半世紀以上前になるが、16歳の私は地元のイタリアンレストランでバイトをはじめた。それまでお酒といえば法事で親戚のオジサンたちが飲むビールや清酒、あるいはコンビニの棚に並ぶ「カクテルバー」くらいしか知らなかったのだが、そのレストランにはカシスやカンパリ、ウォッカにラム、ジン、マリブ、コアントロー、といった多彩なボトルが並んでいたのだった。それらは可視化された「まだ見ぬ世界」だった。
なかでも目を引いたのがカシスで、その独特の香りを、カシスソーダをかき混ぜながら盗み見していたバイト仲間の19歳短大生のキレイなお姉さんの横顔とともに今も私は思い出すことができるワインの話だった。キレイなお姉さんの横顔思い出してる場合じゃなかった。
なんだっけ。シャトー・ラ・ファヴィエールの話だ。ボルドーのワインというと土とか鉄とか皮とかの香りと、樽の香り、ベリーの香りが共存しているみたいな印象があるけどこれはマジでカシス。樽も効いてはいるんだけれども樽を突き破るほどにカシス。
で、おいしいかおいしくないかでいうと非常においしいです。肉系であれば食事ともしっかり合う。かなり個性的な味わいではあるけど、もっと高くてもおかしくないと感じられるような味だ。
というわけでボルドー・シュペリウールなのだった。おいしかったので、またおいしい“ジェネリックボルドー”を探してみたい。