ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

「ジョセフ・ドルーアン ボジョレー・ヴィラージュ」ヌーボー以外のボジョレーはどうなっているのかを調べてみた。【Joseph Drouhin Beaujolais-Villages 2016 】

ボジョレーはどんなところ?

ブルゴーニュワインの中心地、ボーヌを本拠地とする造り手であるジョセフ・ドルーアンのワインを飲んでみるシリーズの第二弾として今回は「ジョセフ・ドルーアン ボジョレー・ヴィラージュ2016」を飲んだ。

himawine.hatenablog.com

前回は広域名ブルゴーニュのワインを飲んだ。そして迎えた第二回、毎度毎度「そこからか」となるわけだが、私はボジョレーという場所がよくわからない。で、アータ、ブルゴーニュなの? ブルゴーニュじゃないの? と黒柳徹子みたいな顔でゲストのボジョレーさんに問い質したくなるがそういうわけにもいかないので調べてみると、日本語のウィキペディアにはボジョレーのワインは「ブルゴーニュワインの1種とされている」と書いてある。なんだよ「とされている」って。「遊び仲間の一人とされている」とか「チームメイトの一人とされている」とか書かれてたらわたしなら泣く。ともあれブルゴーニュワインであることはわかった。

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ジョセフ・ドルーアン ボジョレー・ヴィラージュ2016を飲みました。

ボジョレー・ヌーボーと「ヴァン・ド・メルド」騒動

続いて英語のウィキペディアを調べると、今度は「scandals」という項目があり、ややエグめな記載があった。食事中の方はご注意くださいレベル。

それによれば2000年代初頭、ボジョレーヌーボーは販売不振により、110万ケースが廃棄または蒸留されることになったのだそうだ。フランスのワイン評論家フロンソワ・モースは、生産者がボジョレーヌーボーの質の悪さに対する消費者からの警告を無視し、「ヴァン・ド・メルド」を作り続けたのがその事態を招いた理由だと地元紙のインタビューで主張。メルドってなんだろう? と調べると、まあなんていうか、アレですよね。人間と食品との関わりにおける、口から入るタイプではないほう的なアレです。ウンコですね。

生産者はウンコワイン呼ばわりされたことに激怒(そりゃそうだ)し、訴訟に発展。しかし、生産者が訴える根拠となったのが「フランス製品を非難することを罰する法律」っていう地雷感あふれる法律だったようで、最初は生産者に有利な判決が下るもののそれが世界的な論争を呼び、なんだかんだあって、最終的に生産者が新聞社に対して訴訟費用を支払う判決に落ち着く、みたいなこともあったようだ。ほかにも、悪いヴィンテージと良いヴィンテージを混ぜた事件、生産者に600トンもの砂糖を売ったことで逮捕者が出た事件など、なんだかいろいろあったようです。いろいろあったんだね、ボジョレー……(ポンと、肩に手を置く)。

なんだか飲む前から辛い気持ちになってきたのだが(ここまでの記述は飲む前に書いています)、いろいろなことの反動で、近年ではヌーボーだけでなく、オーク樽を使って長期熟成させるタイプや、単一畑のブドウで作られたものなどが出てきて再評価の機運も高まっているとのこと。

ボジョレーの3つの格付け。ボジョレー・ヴィラージュは松竹梅の「竹」

また、ボジョレーの96の村には3つの格付けがあるそうだ。まとめるとこうなる。

ボジョレAOC>96の村のうち主に60の村。この名称のワインは大半がヌーボーとして販売される。
ボジョレー・ヴィラージュ>39のコミューンと村をカバーし、ヌーボーとなるのはごく一部。土壌の違いによりボジョレAOCより高品質になる可能性がある。
クリュ・ボジョレー>北部の10の村とエリアに限られ、ヌーボーは生産できない。多くは、ラベルにボジョレーという言葉を表示しない。

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濃い緑がボジョレー・ヴィラージュ、オレンジっぽいのがクリュ・ボジョレー、ベージュっぽいのがそれ以外

今回飲むボジョレー・ヴィラージュは松竹梅の竹クラス。金の斧と銀の斧どちらか選べと言われたら「ここに銅の斧もあったら『じゃあ銀で』って言いやすいのなあ」と思う私は日本人なので、なんだかちょうどいい塩梅だ。そしてなにはともあれ以上のような情報をふまえ、いざ抜栓だ。品種はガメイ100%の模様。購入価格は1760円で、同じドルーアンの広域名ブルゴーニュのワインより安い。人気ないのかな、ボジョレー。

つーかですね、ドルーアンの公式サイトにこのワインの情報が震えるほどなにもない。どれほどないか。バタール・モンラッシェの情報ページと、ボジョレー・ヴィラージュの情報ページを画像をそれぞれご覧いただきたい。

まずはバタール・モンラッシェ。グラン・クリュだけに実に充実した内容だ。

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こちらバタール・モンラッシェのデータページ。充実の内容。

一方ボジョレー・ヴィラージュはどうか。こちらです。

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えっ……

白紙ですよまさかの。かわいそうじゃないですか、ボジョレー・ヴィラージュ。そりゃまあね、バタール・モンラッシェは調べたら5万くらいするみたいですよ。ボジョレー・ヴィラージュ、1760円ですよ。価格差約1/28。バタール・モンラッシェ26ml分が1本に相当。大さじ2弱。大さじ2弱の値段ですよ1本が。でもさあ、白紙って。こうなると俄然ボジョレー・ヴィラージュの肩を持ちたくなる私は判官贔屓の日本人であります。よし、飲もう。

ジョセフ・ドルーアン ボジョレー・ヴィラージュを飲んでみた

んでもって飲んでみるとですね、ガメイちゃん(私はガメイが好きなので愛情を込めてちゃんづけ)ならではのイチゴ味って感じではなく、品よくまとまった味わい。酸味、渋み、果実味が調和して、とがったところがとくにない。おいしい! とか、微妙! とか「!」がつく感覚なく、「ぼくはいま赤ワインを飲んでいるね。この地球の上で。」みたいな星の王子様かよというコメントしか出てこない。でもなんかアレですよね。果実味が強くてわかりやすくおいしいワインばかりを飲んでいると、こういうシンプルなワインを飲んだときになんともいえない心の平安、安寧、みたいなものが得られるような気がします。飲む座禅、みたいなところがある。これはこれで、よろしいのではないでしょうか。心が落ち着く。

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vivinoの点数は3.7点。おいしいワインです。

ルーアンをめぐる旅。次回はコート・ド・ニュイ・ヴィラージュの予定。うーん、楽しみっす。