ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

南アフリカワイン試飲会で出会ったすごいワイン10選【2024年7月】

南アフリカワイン45種をテイスティング

インポーター・マスダの南アフリカワイン試飲会に参加してきた。

今回は夏ということで赤も白も濃厚なワインは少なめ。白はソーヴィニヨン・ブランやシュナン・ブランといった爽快な品種が中心。赤も濃厚なボルドーブレンド! ズシン! みたいなものはほぼなく、軽快なものが中心だった。

また、会場にはいわゆるピックアップ生産者的にポール・クルーヴァーのブースが設けられており、担当者の方が各ワインを詳しく説明してくれるという機会も得られた。

ちなみに本イベントは基本的にレストラン向け。私はメディア枠での参加だ。

また今回は、「ハッシャー」「ゾルフリート」「ブルースジャック」という新規取扱3生産者のワインが飲めるというのもうれしいところ。

 

新規生産者・ブルースジャックの衝撃

さて、最初にいきなり結論めいたことを書くならば、上で挙げた「ブルースジャック」がとにかくやべえ。バイヤーの三宅司さんいわく、「試飲会でソーヴィニヨン・ブランを飲んだ瞬間に仕入れることを決めた」のだそうで、そのソーヴィニヨン・ブランが非常に印象的だった。

ブルースジャック,ソーヴィニヨンブラン

私はソーヴィニヨン・ブラン単独のワインがあまり好みでない場合が多いのだが(セミヨンが入ってるのは大好き)、このブルースジャックのソーヴィニヨン・ブランは激うまだと感じた。この品種らしい爽やかさのなかにポカリスエットを煮詰めた汁みたいな果実感があってバランスが素晴らしい。小売価格2000円でこれは圧巻だ。

ブルースジャックはソーヴィニヨン・ブランにシラーをブレンドしたソーヴィニヨン・ブラッシュも素晴らしかった。

ブルースジャック,ブラッシュ

ほんの数%シラーを足しただけらしいのだがジャケットに対する肩パッド的効果があり、一気にワインに肩幅が生まれる。タンニンもしっかりと感じられ、白ならではのピュアな果実感とあいまって超イージー・トゥ・ドリンク。ロゼ、小難しいことしないで全部白とロゼ混ぜちゃえばいいんじゃないの?(暴言)と言いたくなるような、おいしいワインだった。

恐るべきことにブルース・ジャックはカベルネ・ソーヴィニヨンも素晴らしく、価格はすべて2000円。「とにかくおいしいものを造る」でなく、「とにかく安く造る」でなく、「とにかくおいしいものを安く造る」をミッションに掲げているのだそうだ。安くてうまいは南アの華。要注目の生産者といえそうだ。

 

 

固定概念を破壊してくれるワイン。オートガブリエール「アーニム」

というわけでブルース・ジャックの素晴らしさをぜひお伝えしたい今回の試飲会だったわけだがもちろん他にもおいしいものはあった。

ブルースジャックの「ブラッシュ」と同様、意外なブレンドという点で出色だったのがオートガブリエールの「アーニム ファミリーリザーブ」というワイン(3500円)。

これはシラーズにピノ・ノワールブレンドしたというワインで、超スッキリエレガント系ワインになっている。

白に赤を混ぜる、シラーにピノ・ノワールを混ぜる。どちらも「意外」と感じるが、なにが意外と感じさせるのかと言えばそれは先入観・固定概念にほかならず、それは欧州のワイン法がもたらす常識で、あれ、それってニッポンの飲み手である自分に関係あんだっけ? となるといった意味で、自分の中に固着した小さな常識を破壊してくれるようなワインだったのだった。

ちなみにオートガブリエールの醸造家のお名前は「タクアン」と言い、日本の沢庵禅師に由来するのだそうです。

 

ポール・クルーヴァーは「ビレッジ」レンジが秀逸

さて、あと触れておかなければなるまいなのがポール・クルーヴァーの「ヴィレッジ」のシャルドネピノ・ノワールだ。2800円と同社のラインナップのなかではエントリーレンジに位置するワインだが、こんなにおいしかったけってくらいおいしかった。

ポールクルーヴァー,ヴィレッジ,シャルドネ

ひとつ上級の「エステート」が3700円することもあり、選ぶなら俄然ヴィレッジだな、と思わされる味わい。聞けばヴィレッジはステンレスタンクと樽半々、エステートは樽で熟成させるのだそう。私はピュアな果実味のあるワインが好き(※主に安ワインの場合)なので、安くておいしくてヴィレッジ最高じゃん、となったのだった。

 

異常にうまい。ラーツ「フラフ・カベルネフラン」

やっべえやつも取り上げておかねばなるまい。ラーツの「フラフ・カベルネフラン 2022」(11,000円)だ。これはやべえやつオブザやべえやつであり、この試飲会で頭ひとつ抜けた単独峰として屹立していた。

ラーツ,カベルネフラン

カベルネ・フランといえばピーマンみたいな香りのする果実味の強い濃い赤ワイン、という印象があるかと思うがそれが吹き飛ぶ鬼エレガントワイン。竹のようなしなやかで強靭な酒質があり、非常にフレッシュで果実味もしっかりとある。それでいて複雑で、投げ込んだ石の水音がいつまで経っても聞こえてこない井戸のような奥深さもたたえている。すげえワインだなこりゃ。2022年ヴィンテージと年号が新しいのにもうバチバチに飲めるのも素晴らしい。

「天才という言葉を安易に使いたくないが、ラーツの醸造家は天才」と三宅さんがいうのも納得。ラーツは以前「イーデン ハイデンシティ シュナンブラン」を同じ試飲会で飲み、そのときのベストだと感じたが、2度目のヒマワイン最高賞受賞となった。ちなみにハイデンシティは「高密度」の意だが私は「ハイデンシティ」という都市があると勘違いしていたことをここに告白しておく。(台風一家、みたいなノリで)

ともかくみなさんラーツはガチです。

 

南アフリカワイン会で印象的だったワイン

以上が特に印象に残ったワインだが、他にもこりゃうまいわとなったのがあるので、駆け足で紹介したいこう。

 

ポール・クルーヴァー セブンフラッグス シャルドネ 8500円

ポール・クルーヴァーのフラッグシップで、わかりやすく高いシャルドネの味がする。想像を超えて異常にうまい、みたいなことはないけれど想像と期待通りにきっちりうまい。

 

ゾルフリート カベルネ・ソーヴィニヨン 4300円

新規生産者のゾルフリートはこのボルドーブレンドカベルネメルロー、プティヴェルド)が素晴らしかった。

ゾルフリート,カベルネ

グレネリーに通底する、本格的な味わいとチャーミングさの同居。

 

ドルニエ ピノタージュ 2900円

今回のわかりやすくおいしい赤ワインランキング1位がこれ。

ドルニエ,ピノタージュ

南ア安ピノタージュの最高峰・オーカ ピノタージュの上位互換という味わいだった。これは買う。

 

というわけでさすがはマスダ、定番から新規までの幅広いラインナップのなかに「これは!」というワインをいくつも見つけることができた。値上げしてもなお、やはり南アフリカワインはコスパ面で選ぶ理由がある。そう痛感した試飲会だったのだった。お招きいただき今回も感謝。