ヒマだしワインのむ。|ワインブログ

年間500種類くらいワインを飲むワインブロガーのブログです。できる限り一次情報を。ワインと造り手に敬意を持って。

三軒茶屋「ペロウ(pero)」はどんなお店? 角打ちで自然派ワインを飲んできた

三軒茶屋のワインショップ「ペロウ」と角打ち

三軒茶屋に「ペロウ」という角打ちのできるワインショップがあることがわかったので行った。角打ちとは酒屋の一角で気軽な立ち飲みなのが楽しめる形式のことで、私はこれが大好き。

ワインショップ/ワインスタンドの「ペロウ(pero)」に行ってきました
日曜日の昼下がりに玉川通りを少し入った路地裏の半地下にひっそり位置するお店を訪ねると、小ぢんまりとした店内では女子会と思しきグループと、友だち同士でワイン片手に談笑している女性客がアンティーク感のあるテーブルを囲んでいてなにこの素敵空間
カウンターでの立ち飲みを選択すると、メニューはなく、白とか泡とかロゼとか希望を伝えるとそのとき開いてるボトルの中身を注いでもらえる形式であるとの説明がある。
 

ペロウで飲んだ泡レ・コステ「ピッズィカンテ ロッソ2019」

蒸し暑い日だったので迷わず泡をオーダーすると、出てきたのはイタリア・ラツィオの造り手、レ・コステの「ピッズィカンテ ロッソ2019」。サンジョヴェーゼ主体でチリエジョーロ、メルローブレンドしたアルコール度数11度の軽い赤泡。

聞き慣れない品種のチリエジョーロは「小さなチェリー」を意味するイタリア語で、品種としてはサンジョヴェーゼの子孫とも親とも言われているのだそうだ。アンタ、複雑な家庭の事情がありそうだね……。
有機栽培でラベルには自然派感が漂うけど味わいはキレイ。紫色の濃い色調ながら飲み口は軽くフレッシュで、酸味と渋みをお気持ち程度に漂う泡のオブラートが包み、アメリカンチェリー的な濃いめチャーミングな味わいに落とし込んでいる。赤泡は個人的に全ワインジャンルのなかでもなかなかピンときにくいジャンルだが、これは軽くて酸味もあって飲む駄菓子みたいな楽しさがあって良い。
 

ペロウとラディコン

聞けばお店のなかのワインはほぼイタリアの自然派オンリーなんだそうだ。店内奥のセラーを見ても、私でも知ってるイタリア自然派の有名どころがたくさん。なかでも目を引くのがなんつったって超有名どころのラディコンだ

ズラリと並ぶラディコン

 

「このお店は三軒茶屋のイタリアン『ブリッカ(Bricca)』の系列なんですが、ラディコンの現当主のサシャが新婚旅行で日本に来た際にブリッカに来てくれて、そのときに描いてもらったんです」とソムリエールのKさん(お名刺いただいた)が教えてくれたようにサシャ直筆の店名サインが店内にあったり、

オリジナルのトーションや制服もラディコンカラー(紺とブルー)で統一されてたりソムリエナイフがラディコンのロゴ入りだったり、

ラディコンロゴ入りソムリエナイフ。なにこれ欲しい。

 

割と強めのラディコン推し。
嬉しいことにラディコンはグラスでも飲めるのだそうで、ピノグリージョとピニョーリが開いてるという。ピノグリージョとピニョーリか、うーん悩むなあとちょい待ったよく考えるとピニョーリ初耳だわ。
ネットで調べると「Pignoloは『小さなことにこだわる]とか『面倒な、厄介な』という意味があり、その名に違わず栽培も難しい上に、「恐ろしくタニックでバランスが取れるまでに膨大な時間を必要とする品種」とある。品種名はピニョーロ。法律の関係でラベルに品種名を記載できないことから、ボトルには複数形のピニョーリ表記になってるのだそうだ。
余談だが「小さなことにこだわる」と「厄介」の意味が重なってるの趣深い。小さなことにこだわりすぎずにいきたいですよね、人生は。いずれにせよ厄介なワインは後に回してまずはピノグリージョをいただくことにした。
 

ペロウで飲んだワイン/ラディコン シヴィ ピノ・グリージョ2019

ピノ・グリージョはサシャが引き継いだ2009年から作り始めたといセカンドライン的なワイン。

ラディコンの特徴である長期熟成は、ワインに唯一無二の味わいを与えるけれども熟成している間はひたすらスペースをとり、かつお金にならない。製造業的にどうなのよ、常識的に考えて」となったのか、どうなのか、わからないけれどもともかく短期間の熟成でリリースされるのがこのセカンドライン的シリーズ「シヴィ」なんだそうだ。ラディコン特有の500mlとか1000ml入りのボトルではなく、普通の750ml入りボトルなのも特徴だ。

 

私はこの「シヴィ」に対して先入観でこう思っていた「それだと普通のワインなんじゃないの?」と。ラディコンっつったら長期熟成だと思うわけなのでそれがないといっやー正直どうなのって思っちゃいますよね自分、みたいに思っていたのだが杞憂だった。

角打ちメニューの「鯖と里芋のテリーヌ」めちゃくちゃおいしかった。


まず色がめっちゃ赤。一週間ほど醸しているのだそうだけど、ピノグリージョがピノノワールの変異種だって言ってもこんな色になる⁉︎ みたいな鮮やかなルビー色。まさにラディコン、って感じの色だ。

あとで調べたらvivino評価も超高い。そりゃそうだ。


味も素晴らしい。雨の日の書斎で電気をつけずに飲む紅茶、みたいな暗いけれどもそこだけ華やかみたいな香り。そこに乾燥させたキノコをポリポリ食べるみたいな旨みが乗り、ワイン自体の甘酸っぱくてチャーミングな素顔に微妙な陰影を与えている。え、これむちゃくちゃうまくないすかね。

 

ペロウで飲んだワイン/ラディコン ピニョーリ2010

12杯飲んでサクッと帰ろうと思っていたがこうなると赤も飲まずにはおられぬ。ピノグリージョをチュッと飲み干してピニョーリも頼むことにした。

こちらのヴィンテージは2010年。しっかり熟成期間がとられたワインながら色合いはド紫。そしてガツンと熟成香がして、ラグジュアリーな中古車の内装のような少しクセのある香りもする。味わいは渋・酸・うまの三重奏だが、全体としてはクセ強めだ。
おいしいのだが、わかりやすくおいしいのは圧倒的にピノグリージョ。

左がピノ・グリージョのボトル。右がラディコン特有の1000mlボトル。天然ボトルの枯渇を視野に入れ、細い瓶口を採用してるそうです。

ある方が「ワインは10000円くらいまでは価格に比例しておいしくなっていき、10000円を超えたあたりから生産者の個性が強く出るようになる」とおっしゃっていて至言・オブ・ザ・イヤーじゃんと思ったのだが1000ml入りだと1万円を超えるこのワイン、まさに生産者の強いクセがガツンと前に出てる感じだ。

 

ペロウ滞在を終えて

赤泡、赤い色をした白ワイン、熟成クセ強赤と、どれも赤い色をしているけどもすべて「ふつうの赤ワインじゃない」というワインを3杯続けて飲む楽しい体験となった。泡、白、赤と頼んでこの3杯が出てくるのは間違いなくお店の個性と言ってよく、次はなにが飲めるかなと再訪が楽しみになった。

角打ちメニューはこんな感じでした。



というわけで2名で5杯とつまみを2皿、ミネラルウォーター1本で8000円ちょっとの会計を済ませて、1時間弱の滞在を終えたのだった。また行きます。

 

これは素晴らしかった。楽天では販売ここだけみたい↓

こちらはかなりディープな味。好きな方は途方なく好きだと思われる↓