サイクルズ・グラディエーターのラベルの謎
プティシラーっていうブドウはどんな味なんだろうと気になって、それをたしかめるべくサイクルズ・グラディエーターのプティシラーを買った。
で、届いたボトルを手にとって私は思った。「なんで裸の女性が自転車に乗っているのか」と。自転車に乗っているっていうか、なんていうんですかね。運動神経のいい小学4年生男子がやる感じの曲乗りみたいなのを披露している。裸で。ラベルが気になりすぎる。
というわけで調べてみると、1900年のパリ万博を頂点とするパリ文化華やかなりし時期、ベル・エポックの時代のポスターにインスパイアされたラベルなんだとか。
ポスターを見るに、サイクル・グラディエーターっていうのは、モンマルトル通りの自転車店ってことなんでしょうか。モンマルトルといえば有名なキャバレー、ムーラン・ルージュを描いたトゥールーズ・ロートレックのポスターが有名であります。ちなみに、ベル・エポックを日本語に訳すと「良き時代」。ざっくりか。
なにはともかく裸の女性が自転車に乗っているこのラベルは自由・開放・新しい時代・フリーダムみたいなことを表現していることはわかった。自由とフリーダムかぶってるけど。
サイクルズ・グラディエーター プティシラーはどんなワインか
自転車店、ではなくワイナリーのサイクルズ・グラディエーターは、ハーン・ワイナリーの醸造家だったアダム・ラザールがファウンダー兼ワインメーカーとして設立したそうで、購入したしあわせワイン倶楽部の商品ページによれば、使われているのはプティシラー90%、カベルネソーヴィニョン7%、シラー3%。フレンチオーク(40%新樽)にて熟成しているとのこと(※2015ビンテージ)
「イギリス王立化学会の化学者が教えるワイン学入門」によれば、オークの新樽は1個500ユーロするとのことなので、安価(買値1628円)なわりにお金をかけて造ってる気がする。アメリカの生産者のうまいと安いを両立させようとする努力には本当に頭が下がる次第です。ハリウッド映画は製作にアホほどお金をかけるけど、だからって鑑賞料金が高いわけではないのとなんか似てる。
さて、メイン品種のプティシラーについても調べるべく「petit syrah」と検索すると、「Durif」というwikipediaのページが出てくる。1860年代、フランスの植物学者のドゥリフさんが自宅でペルーシンとシラー、ふたつの品種を栽培していたところこれが交配、誕生したのがデュリフで、これがアメリカではプティシラーと呼ばれるんだそうな。ちなみにシラーのつづりはsyrahだけどプティシラー のつづりはsirah。なんでそうなっちゃうんだよ。
サイクルズ・グラディエーター プティシラーの味わい
さて、飲んでみると、果実味しっかり&ほんのりスパイシー。樽が効いててめちゃうまい。同価格帯のほかのカリフォルニアの赤ワイン、それもカベルネ・ソーヴィニヨン主体のものと比べると、やっぱりスパイシーさで差別化されてる気がする。熟成中の樽にピンクペッパーかなんか落ちましたか? みたいな感じ。あるいは熟成中の樽の横にケバブ屋が突然開業、毎日羊肉を香ばしく焼き上げているうちにその香りが移ったかなんかしました? みたいな印象だ。ケバブに合うだろうなあ、このワイン。ケバブが食べたい。秋葉原とかの路上で売ってるやつワインの話だった。
果実味しっかりでスパイシーでいかにも肉料理に合いそう……ということで味の印象は私にはシラーっていうかシラーズと区別がつかない。プティシラーはシラーとペルーシンの掛け合わせのはずなのにペルーシンが仕事してる形跡が見られないので「ペルーシン」とカタカナで検索すると「もしかして ペルシン」となってアボカドに含まれる毒素について解説したページが表示される始末。ペルーシンお前そういうとこだぞ。
ともかく、カリフォルニアのワインらしく、非常にグッドバリューフォーザマネーな仕上がり。ワインのことを調べるようになってわかったんだけど英語でコスパのことコスパって言わないんすね。アフォーダブルなワインでした。「入手可能な/手頃な」みたいな意味だそうです。英語使用者が実際に使ってる英語を英語の授業では教えるべきですよ(熱弁)!
さて、この文章のシメに、このワインを飲んで5月のさわやかな気候のなか自転車乗ったら楽しいだろなあ(裸で)、と書こうとして念のため調べると、自転車は軽車両なので飲酒運転は道交法上の罰則の対象になるとのこと。みなさん、ご注意を!